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【文具時評】ちょっとリッチなプレミアムボールペンが人気《なめらか油性編》

北澤孝之

ブームが続く日本の文房具の中でもひと際人気なのが筆記具。その中で、高機能シャープペンシルとともにトレンドとなっているのが“プレミアムボールペン”だ。1,000円~5,000円のミドルクラスと言われる価格帯で、書き味を重視したボールペンがビジネスマンを中心にヒットしている。

そんなプレミアムボールペンの動向について、文具のフリーマガジン『Bun2(ブンツウ)』北澤編集長が解説。第1回目は、なめらか低粘度油性ボールペンについて取り上げた。

*「水性・ゲルインク編」はこちら

ジェットストリーム プライム(三菱鉛筆)

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三菱鉛筆の低粘度油性ボールペン「ジェットストリーム」の高級版「ジェットストリーム プライム」は、2013年9月に第1弾が発売された。第1弾のラインアップは「回転繰り出し式多機能ペン 3&1」(税抜5,000円、写真奥の商品)と、「ノック式3色ボールペン」(同3,000円、写真手前の2本)の2種類。

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これまでにないなめらかさで発色よく書ける「ジェットストリーム」の登場により、“ジェットストリームの高級版”を望む声は多かったようだ。そこで満を持して登場した「プライム」だが、いくら多機能ペンとはいえ5,000円前後の価格帯は冒険ではないかと危惧する声も多かったと聞く。しかし、フタを開けてみると品薄になるほどのヒットとなり、年間目標を半年で達成。しかも、高額な5,000円の「回転繰り出し式多機能ペン 3&1」の方がより売れたというのだ。

ちょうどこの時期は、“アベノミクス”の影響で高額品が売れ始めていたこともあり、それも追い風になったようだが、それにしても「高いものは売れない」というのが半ば常識だったのに、高いものの方が売れたのであるから、そのインパクトは大きかった。この商品の成功をきっかけに、各社は高級路線へと舵を切っていくことになる。「ジェットストリーム」は、なめらかボールペンのパイオニアであるが、プレミアムボールペンでもパイオニアとなったのだ。

「ジェットストリーム プライム」は、ビジュアル的にカッコよくなっただけでなく、機能面でも強化を図っている。例えば、回転繰り出し式では、360°ボディが回転するようになっているし、ノック式3色ボールペンは新開発のノック機構を搭載している。従来だと、ノック時にノック棒が軸にもぐり込む仕組みになっているが、これはノック棒が軸にもぐり込まないので押しやすくスムーズにロックできる機構となっている。初めてこのノックを押したときに、あまりにもスムーズでしかも「カチッ」という音が全くしない静音ノックだったので感動した。そうした新機構を採用するぐらい力を入れて開発したことも、高評価の要因になっているのは間違いないだろう。


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翌年、2014年10月には単色のノック式「ジェットストリーム プライム ノック式シングル」が発売された。価格は税抜2,200円。こちらも静音ノックの新機構を採用していてヒットとなった。

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2015年10月には、ノック式3色ボールペンと同じデザインの「ジェットストリーム プライム 多機能ペン2&1」(税抜3,000円)が発売。そして今年、2018年2月には回転繰り出し式シングルタイプとなる「ジェットストリーム プライム 回転繰り出し式シングル」(税抜3,000円、上写真)が満を持して登場。しかも、国際規格に準拠した金属製の新リフィルを搭載しているのも話題となった。リフィルは1本600円という価格だが、本体とともによく購入されているという。

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アクロドライブ(パイロット)

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「ジェットストリーム」に続き登場したなめらか油性ボールペンが、“アクロインキ”を搭載したパイロットコーポレーションの「アクロボール」。実は「アクロボール」以外にも、同社の油性ボールペンにアクロインキを搭載しているものは多い。今回取り上げているミドルクラスのボールペンでも、税抜1,500円の「コクーン」や同5,000円の「タイムライン」などにアクロインキを搭載している。

しかし、「アクロインキの名前を冠したフラッグシップボールペンを」という想いは強く、そこから生まれたのが2015年9月発売の「アクロドライブ」。回転繰り出し式の単色ボールペンで、価格は税抜3,000円。アクロインキのなめらかさをイメージした、流れるような形状のデザインに仕上げており、先端がふくらみを帯びた独特の形状となっている。金具の色は金と銀の2色で、ボディカラーは各3色。この金色の金具はかなり上品な色合いで、このあたりはさすが高級筆記具を作り慣れている同社ならではのものだ。アクロインキ自体も、初期の頃より書き味が向上している印象だが、実際に日々インキの改良を続けているそうだ。


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同じ年の11月には、多機能筆記具「2+1アクロ ドライブ」も発売された。こちらはノック式の多機能ペンで、価格は税抜2,500円。回転繰り出し式とノック式の違いはあるが、多機能より単色の方が値段が高いという逆転現象は面白い。

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アクロブランドではしばらく動きがなかったが、今年2018年2月に税抜1,000円のノック式単色ボールペン「アクロ1000」が発売された。「アクロドライブ」ではなく「アクロ」という名前ではあるが、グリップ部がふくらんでいるのは「アクロドライブ」と同じ。店頭で見かけると、結構商品がなくなっており、かなり売れているようだ。なお、同デザインで樹脂軸の税抜300円の「アクロ300」も同時発売。こちらも人気となっている。

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ビクーニャEX(ぺんてる)

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2010年2月に “世界で最も低粘度の油性インキ”をうたったボールペン「ビクーニャ」がぺんてるから発売された。インキ粘度を極限まで下げた、まるで水性インキのような書き味と発色が特徴だ。その高級版「ビクーニャEX1」は、2012年2月に発売。黒・赤+シャープペンシルで価格は税抜1,000円。

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ビクーニャ2.jpg2015年9月には、重厚感のある金属製ボディを採用したハイグレードモデルを追加。ノック式単色ボールペン「ビクーニャEX2」(税抜2,000円、写真左の2本、その隣の2本は同デザインのシャープペンシル)と、黒・赤+シャープペンシルの多機能ペン「ビクーニャEX3」(税抜3,000円、写真右の2本)をラインアップしている。

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ぺんてるは女性向け筆記具のデザインが得意なメーカーと個人的に感じているが、この「ビクーニャEX」シリーズも、全体的に丸みを帯びたフォルムや明るいカラーリングを採用するなど、女性ユーザーをかなり意識していると思われる。

それがより明確になったのが、昨年2017年10月に発売されたノック式単色ボールペン「ビクーニャEX Cielina(シエリナ)」(税抜3,000円)。働く女性をメーンターゲットに、女性に人気のパステルカラー×パール調を採用。また、ジュエリーで若い女性に人気がある「ピンクゴールド」を採用するなど、かわいらしくゴージャスなデザインとなっている。今のところ、数あるプレミアムボールペンで一番“女子色”が強いボールペンと言えるだろう。

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フィラーレ(ゼブラ)

フィラーレ1.jpgフィラーレ2.jpgゼブラのプレミアムボールペン「フィラーレ」は、2015年11月に回転繰り出し式(税抜2,000円、上写真)、2016年2月にノック式(同1,000円、下写真右)に発売された(いずれも単色ペン)。同社は、2010年5月に発売したボールペン「スラリ」に、油性のしっかりした手ごたえと、水性のさらさらした筆記感を兼ね備えたエマルジョンインクを搭載しているが、「フィラーレ」にもこのエマルジョンインクを搭載している。

デザイン的にはシンプルで、回転操り出し式(ゼブラではツイスト式と表記)は太めの軸で重厚感があるが、ノック式はスリムなボディとなっている。2017年2月には、黒・赤+シャープペンシルの多機能ペン「フィラーレ 2+S」(3,000円、下写真左)を発売。よりエレガントなボディデザインとなった。

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シャーボX.jpgちなみに、ゼブラでプレミアムなボールペンといえば、好きなボディとリフィルを組み合わせられる「シャーボX」の存在がある。発売は2007年1月なので、ここで紹介したどのボールペンよりも一番の古株になる。多機能ペンのプレミアム版であると同時に、カスタマイズペンで唯一のプレミアム版でもある。歴史は長いが、今もなおキャラクターをデザインした限定軸を発売して大きな反響を呼ぶなど息の長い人気を誇っている。

価格は3,000円~10,000円(税抜)とかなりのプレミアム。ボディは3機能~4機能、ボールペンリフィルは当初油性とゲルの2種類だったが、現在はエマルジョンインクも加わり3種類となった。

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ZOOM(トンボ鉛筆)

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「ZOOM」は、トンボ鉛筆が1986年以来30年以上の長きにわたって展開しているデザイン筆記具ブランド。同ブランドでも低粘度油性ボールペンをラインアップしており、まず2013年8月に発売されたのが「ZOOM L102」ノック式単色ボールペン(1,000円)。就活生やフレッシャーズをメーンターゲットに発売したもので、リクルート、フレッシャーズのスーツスタイルに調和するデザインを採用し、薄くて強度のあるアルミ管をボディの素材に採用している。

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2015年11月には、新社会人にふさわしい新鮮で上質感のある回転繰り出し式単色ボールペン「ZOOM L105」(税抜1,800円)が発売。「L102」が軽いアルミ管素材なのに対して、こちらは真ちゅう製。適度な重みがあるので筆記に安定感がある。発色と光沢が魅力的な流行のシャイニーカラー6色(写真左の6本)をラインアップしているが、2017年11月に手帳などにコーディネートしやすいソフトカラー3色(写真右の3本)も追加している。

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