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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.85 あの定番文具がさらに進化! その3
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、さらなる進化を遂げた定番文具についてブング・ジャムのみなさんに語っていただきました。
第3回目は、三菱鉛筆の「JETSTREAM Lite touch ink」シリーズです。
(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2023年11月11日撮影
*鼎談は2024年4月5日にリモートで行われました。
より軽やか&色鮮やかな新インクが登場!

ペンケースを持たずに1本でマルチに使える「JETSTREAM 多機能ペン 4&1」は、いつでもそばに置いておきたくなる親しみやすいデザイン。従来品より軸の全長を短くすることで、持ち運びやすさと、操作性を向上させた。ボール径は0.5㎜(シャープ芯径は0.5㎜)、軸色は全5色(メローホワイト、スチールブルー、ミストブルー、グラスグリーン、コーラルピンク)。
「JETSTREAM シングル」は、新インクの性能を最大化し「誰にとっても、普通に使いやすい」設計を突き詰めた。ノック棒には、筆記時の微細な振動や異音を抑える機構を搭載し、より心地よく使える工夫をほどこした。クリップは折れにくく、手帳やポケットに収まりのよい形状を追求。カラーリングは生活に調和しながら、かろやかさを感じられるトーンを採用し、先端までラバーで覆われた先軸は、機能性とシームレスなデザインを両立している。ボール径は0.5㎜と0.7㎜、軸色は全5色(ライトブルー、オフブラック、シェルホワイト、セージ、コーラル)。
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――最後は「JETSTREAM Lite touch ink(ジェットストリーム ライトタッチインク)」搭載の新しい「ジェットストリーム」です。
【きだて】俺は大宮ロフトで買ったけど、それから1週間ぐらいしたら売り切れてたわ。
【他故】池袋ロフトも土日で売り切れて、翌週でおかわりでしたよ。
――それはすごいな。
【高畑】新しいインクがどこまでユーザーに伝わったのか、よく分からないところもあって。ボディがマットなカラーで可愛いから売れているだけなのかもしれないけど、試し書きをして、この違いに惚れて買うっていうリテラシーの高さなのかどうかというところはちょっとまだ分からんけどね。
【きだて】従来の「ジェットストリーム」と書き比べて、何割の人がちゃんとリアルに違いを把握できているかっていう。
【高畑】でもね、確かに軽いとは思う。クラシックな油性しかなかった時代に「ジェットストリーム」を初めて使った時の、あのびっくりする感じっていうのはさすがにないんだけど、それこそ「ビクーニャ入れた?」みたいな感じの(笑)。
【きだて】初期の「ビクーニャ」よりはコントロールしやすいんだけどね。
【高畑】だから、粘度低い側というか、そっちへ振ってはいるんだよね。
【きだて】今までの「ジェットストリーム」ユーザーが、「ジェットストリーム」の派生系だと把握できるぐらいの味付けで、かつ軽くしなきゃいけないわけで、結構な仕事だなと。
【高畑】まあ、そういうことだよね。
――そうか、「これはジェットストリームです」って分かる書き味がということですね。
【きだて】だって、「ジェットストリーム」の名前で売っているわけだから、大きくは外せないわけじゃない。
【他故】そうだね。
【きだて】そういう縛りの中でやったんだなっていうのは分かるんだけど、あんまり俺の好きな味付けじゃないなっていう。
【高畑】きだてさんは、元々の「ジェットストリーム」も「滑り過ぎる」と言っているわけだから。きだてさん的には、トンボ鉛筆の「モノグラフライトボールペン」みたいな、それなりの抵抗感とカリカリ感もありつつみたいな感じが好みなんだよね。
【きだて】そうそう。
【高畑】きだてさん的にはちょっと苦手な方向に振ってるから。
【きだて】俺を相手にしたバージョンアップじゃないのは分かってるので、そこに関してはいいんだけどね。とはいえ主に官能性の部分でのバージョンアップなので、そこに共感できないと、ものすごく紹介しづらいっていうのがあるね。
【他故】ああ。
【高畑】それで、今回「低粘度で軽くしましたよ」っていうの、黒は一応 0.7㎜もあるんだけど、それ以外のは基本的に全部0.5㎜なんだよね。今回は0.7 の多機能ないでしょう。
【他故】0.7なかったっけか? 全部0.5だっけ?
【高畑】店で見たときに「0.7ないじゃん」って思って。
――多機能は全部0.5です。0.7はシングルだけなんですね。
【高畑】そうなんだよ。今回は本当に黒の書き心地だけの話なんだなっていう。粘度がゆるい方向に行ってるのはいいんだけど、「ジェットストリーム」があまりにもど真ん中を突き過ぎているので、そのゆるい方向をどう捉えるかというのが結構難しい。やっぱり、ゆるくすると書き方によってボテが出るから、0.7だとそれが分かっちゃうので。書いた後に指でこすると、インク溜まりのところが伸びるんだよね。王者「ジェットストリーム」としてど真ん中をずっと行き過ぎているところから、何かやりたいというのもなくはないだろうし。値段も違うんだっけ?
【他故】うん、高くなった。
【高畑】単価上げたいから作ったのかもしれないし、そこは分からないけど、そういう気分にちょっとなってしまうところはあるので。使い比べてみても、やっぱり従来の「ジェットストリーム」のバランスの良さを感じる。あと、黒を書いてみて思うんだけど、色が違うんだよね。
【他故】インク色は違うね。
【高畑】従来のが赤紫系じゃん。あれに比べると赤くないっていうか、黒になってはいるんだよね。だから、書くと「ジェットストリーム」っぽくないっていう感じがする。
【きだて】赤黒から紫黒になったような感じ。
【高畑】ちょっと色が違うよね。赤紫系の「ジェットストリーム」っぽい色じゃないんだよね。だから、いろんな意味で「ジェットストリーム」らしくないっていう。まあそれは、いつもの「ジェットストリーム」じゃないからそうなんだけど、ここはやっぱり賛否あるんだろうなと思うし。だから、「ジェットストリーム ライトタッチ」っていうのと、きだてさんみたいな人に向けて「ジェットストリーム ヘビータッチ」っていうのを作ったらいいのかも。
【きだて】ははは(笑)。
【高畑】微妙にクラシック寄せで、抵抗感ありみたいな。
【きだて】そういう需要はないのかね?
【他故】いや、あるんじゃない。
【高畑】「カリカリ系のゲルインク好きです」とか、「bicのクラシック油性が好き」みたいな人は、みんなそうなんじゃない。だから、「ジェットストリームじゃない方がいい」っていう人は全然いるんじゃないかな。
【きだて】その場合は「油性を使わなくてもいいんですよ」という話になるので、別にいいんだけどね。
――同じ三菱鉛筆の油性でも「ジェットストリームじゃなくて、パワータンクの方が好き」っていう人もいるわけですからね。
【他故】もちろん、いますよ。
【高畑】何か、今回はきだてさんが寂しそうだな(笑)。
【きだて】すごい頑張って作ったんだろうなぁというのは分かるので、できれば褒めたいんだけどね。それにしても俺の好みじゃなさ過ぎて(苦笑)。
【高畑】改めて、スタンダードな「ジェットストリーム」の雰囲気というか、あの書き心地のバランスの良さをすごい感じてしまう。あと、既存品の軸にリフィルを入れ替えて使ったりとかしてるわけさ。従来の「ジェットストリーム4&1」と比べたときに、ボディのこともあってさ、悩ましいんだけれども、ラバーグリップのありなしっていう問題もあるじゃない。
【他故】ああ、あるね。
【高畑】新しいのもカッコいいんだけどね。今っぽくはなったんだろうなとは思うんだが…っていうところもあるんだよね。ここも意見が分かれるところだと思うよ。
【きだて】今っぽくし過ぎでは。
【高畑】俺は、このラバーグリップが付いている「4&1」の方が好きなんだよねってなっちゃうんだよね。
【きだて】新しいやつのノックの色があまりも見えないのがちょっと嫌。
【高畑】ああ、前からしか色が見えないっていうやつね。
【他故】上から見えないんだよね。
――ノック棒の下に色が付いているんですよね。
【高畑】色が下側にあるから、ペンを自分の顔よりも低い位置に持っていって押すときにはすごい見づらいんですよ。そこは「ちょっと」って感じですね。
【きだて】それ以上にね、単色の方の要素削りすぎが何かしっくりこない。
【他故】ツルンしたところが?
【高畑】既存のが、ゴツゴツしていろんな要素が入っていたので、それを整理したかったんだなっていうのは分かるんだけどね。
――シングルは、グリップにラバーが付いているんですよね。
【他故】このシングルのグリップは良いですよ。
【きだて】このゴムグリップがまた効くんだわ。
【高畑】「4&1」は滑るから従来のでいいやと思うんだけど、シングルは今度のでもいいやと思う。だけど、「ユニボールワン」がカッコ良すぎたから、ちょっと期待しちゃう部分はあるよね。でも、持ちやすいよ。すっごい持ちやすいので良いんだけどね。
【きだて】このグリップはめっちゃ良いんだよ。
【高畑】良いよね。
――ちょっと「ユニボールRT1」っぽいですよね。
【他故】先の方までラバーですからね。
【きだて】そう。このラバーが、ちょっとペトペトした感じで、すごいグリップあるんだわ。
【他故】そう、これはすごく良い。
【高畑】ボディの上下でちゃんと色がキレイに揃ってるしさ。見た目にもあんまりジャマじゃないところは全然いいんだよね。だから、あとコショウ二振りぐらいしたいっていう感じなんだよね。
【きだて】そうなんですよ。
【高畑】でも、そろそろ置き換わってほしいじゃん。従来のじゃなくて、いろんなのになっていけばいいなと思うんだけど。「ユニボールワン」みたいな、「おっ、こっちに来たか」って感じの強さがちょっと何かね。クリップも金属クリップにはできないんだろうし、そういうのもあったりするんだけれども。
【きだて】「フリクションシナジーノック」を取り上げたときにも言ったけど(こちらの記事を参照)、「ここまでせんでもええやん」っていうぐらい、フラットデザインへの憧れが強すぎる。
――筆記具界全体的に言えることなんですかね、そういうデザインの傾向っていうか。
【高畑】そういうこともあるでしょうね。「4&1」がそろそろ新しいのに乗り換えられるかと思ったんだけどさ、今までので良かったって感じになっちゃうんだよね。
【他故】「4&1」は、シャープのノックが後ろになって、でかくなったのは良かったんだけどね。クリップノックじゃなくなったからさ。
【きだて】そうね、これはすごく良いんだよね。
【他故】これはすごく良いんだよ。
――「4&1」もシングルと同じようなグリップでもよかったんじゃないですかね。
【きだて】そう。これもゴムでよかったじゃんっていう。
【高畑】ゴムにできるんでしょう、みたいな。
【他故】それはそう思った。
【高畑】まあ、価格の問題とかもあるんだろうな。
【きだて】「もう100円上がりますけど、ラバー付けます」とかの方がよくね?
――それでも買う人はいますよね。
【高畑】あと、ボディ短くなったよね。
【他故】ああ、短くなった。
【高畑】だいぶ短くなったのと、なんかずんぐりした感じになった。この辺のボディラインが好きかどうかっていう話ではあるんだけど。僕は割と、既存品の無骨なところというか、シャープなところが結構好きだったりもするので、難しいところではあるけどね。
――これリフィルは互換性があるんですよね。
【高畑】そう。だから、既存品に今入れて使ってみてるんですよ。替え芯だけでも売っているので。好みは分かれるかな。ここまで軽くしなくてもいいかなっていうぐらい軽い感じはするし、紙によっても変わるけどちょっとダマが出る感じがするのが気にはなる。
【きだて】ぶっちゃけジェットってさ、こんだけヌルヌルしているのにダマになんないってのが一つのウリでもあったわけじゃん。そこはもったいなくね?
【高畑】でも、このタッチの軽さが低粘度油性としては好きっていう人は結構いるから。最近、僕はハッピーハッキングキーボードの新しいやつを使い始めているんだけど、前のキーボードのタイプが重く感じるっていうかさ。キーボードを押す圧とかも、好きな人はわずかに軽いやつとかに変えたりとかするじゃないですか。
【他故】ああ、あるある。
【高畑】そうすると、重いやつは本当に重く感じるんだよね。だから、これも多分軽い方のジェットが好きっていう人は、従来のジェットを使うと「重い」って感じるんだよ。
【他故】するだろうね。
【高畑】確かに、体感できるぐらいの差は作ってるよ。多分、条件にもよるけどね。「ジェットストリーム重いな」って思ってた人は、「これこれ!」って言う人が結構いると思う。とにかく、軽い方に振り切ってる方が好きっていう人はこのインクで全然いいと思うし。
――これは全部こっちに移行しちゃうわけじゃなくて、併売するわけじゃないですか。多分、従来の「ジェットストリーム」もやりつつ、「ライトタッチインク」もやるっていう。
【他故】でしょうね。
――だから、従来のジェットが良いっていう人はいればそのまま使えばいいし、もっと軽くて黒っぽいインクが使えますよということで、「ライトタッチインク」に行く人もいるんじゃないかっていう話ですよね。
【高畑】それは全然あるけどね。このボディが「ライトタッチインク」搭載用ボディとして作られたのか、それとも従来版でも出たりとかするのかなって思うと、だんだんややこしくはなるよね。
――デザインが一緒になっちゃうと、という話ですね。
【高畑】「このかたちは、ライトタッチインク搭載モデルにしか使えませんよ」っていう風に売るんだったら、それはそれで分かるんだけど、普通のジェットストリームインクでも同じボディで作りはじめたら、もうどれがなんだか分かんなくなるよね。
【きだて】いやー、さすがにそれは錯綜しすぎるだろう。
【高畑】今後の展開はちょっと気になる。しかも「4&1」は0.5しか作ってないわけじゃん。今後、じゃあどういう風にするの?って言ったときに、ある意味テスト販売的な商品なのか、それとも今後本気で何か考えようとしてるのか。
――パイロットの「フリクションシナジーノック」的な感じでそっちにどんどん行っちゃう風ではあるのかどうかってことですよね?
【高畑】「シナジーノック」は、先端見たら形が違うから分かるけど、これはめちゃくちゃ分かりにくいので。
――インクの違いだけですからね。
【高畑】書いたら確かに軽いと思うけど、1回シャッフルされたら元に戻すの大変だよ。
【他故】それは無理だわ。
【高畑】そうなっちゃうじゃない。「ライトタッチインク」専用でこの型を起こしたのかな。
――既存品のボディは今まで通りなんじゃないですか。だってこの間、新しい軸色を出してましたよね。
関連記事:【新製品】発売以来初の新軸色を追加「ジェットストリームスタンダード」
【他故】色のバリエーション増えましたよね。
【高畑】もちろん、まだいきなりやめるとは思わないけど、こっちの立ち位置が、「ライトタッチインク」を入れる専用機として今後もあるのか。あと、ライトタッチが0.5中心でやっていくのかって考えたら、ちょっとどうなのかなって。
【きだて】その辺も含めて、ある程度はテスト期間中なところもあるんじゃないのかね。
【他故】そうかもね。
【高畑】今回のこの評判によっては、今後の展開がもしかしたら変わるのかもしれないし、考えてないとしたらちょっと無造作に出し過ぎって感じがするので。
【きだて】考えてないことはないだろ。
【他故】走りながら考えているところはあるかもしれないけどね。
【高畑】やってみてラインアップが変わる可能性っていうのは当然あるんだけど、俺はドンピシャでこっちに行きたいっていう感じがちょっとまだ分からんので。
【きだて】リフィルを値上げしたいということで考えると、ライトタッチに置き換えていきたいんじゃないかなとは思うんだけど。
【高畑】「ジェットストリーム」を全体的にもっと軽くしようとしているんだったら、そっちに行ってほしいかっていうと、そうでもねーなって思っちゃう。
【きだて】だから、その辺も含めての様子見なんじゃない?
【高畑】真意が測りかねるというか、「この裏で何考えてんの?」っていう風に深読みしてしまうところはあるね。リフィルの違いが全く分かんない。1個1個ルーペで見ながら 「XRの何番」っていうのを見てようやく分かる話だから、ちょっと厳しい。
【他故】お店に来た人が、「この芯ください」って言って裸の芯を持ってきたらどうすんのって話でしょ。
【きだて】文具店1店舗に1人ぐらい、ひよこのオスメス鑑定士みたいな感じで「ライトタッチインク」鑑定士が現れるんだよ(笑)。
【高畑】でも、質は全然悪くないよ。単体で「こういうペンがあります」って言われたらアリなんだけど、「ジェットストリーム」と並べて、同じメーカーの同じブランドの新種が出ましたって考えると、評価難しいなーって感じだよね。
【きだて】ジェットもフリクションも看板がでかくなりすぎていろいろ大変だなあというところなんだけどね。俺は「ジェットストリームエッジ ライトタッチインク」が出た時に改めて評価することにしてるよ。
【高畑】まあね。
【きだて】軽くなった状態で超極細の「ジェットストリームエッジ」がどうなるのかっていうのはちょっと興味あるんで、それまで評価は一旦保留にさせてください。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】きだてさんが「一旦保留」ってなかなかないからさ。
【他故】そうだね、面白いね。相当悩んでるね(笑)。
【きだて】本当に悩んでる。
【高畑】筆圧めっちゃ弱く書く人にとっては、従来のジェットとの差は結構あるなっていう感じはする。ここにはまるというか、「これは確かに良いな」って思う人もいるんだろうな。
【他故】そういうチューンだと思うよ。
【高畑】ベンチマークに他ならぬ「ジェットストリーム」がいるっていうのは、やっぱり厳しいところがあるよね。でも色はキレイ。従来の「ジェットストリーム」より俺は好き。
――インクの色がですか?
【高畑】そう。インクの色は好きだね。
【他故】この黒は好き。
――結構パキッとしてますよね。
【高畑】パキッとしてる。なんか割とシャープな印象もある。最初0.7を買った時に、「これ0.7だっけ?」って思った。ベチャって感じはしないんだよね。滑走する感じっていうのかな、非常に軽く滑るので。非常に軽く滑ってるけど、ちゃんとインクが出てるので、そこは本当に性能がいいんだろうな。
――なるほど。
【高畑】そうなればなるほど、きだてさんの言うように、きちんと手を動かせる人にとってみたらものすごい楽なペンなんだけどね。でも、正確に手を動かすのが苦手な人にとってみると、より文字が暴れる感じがする。
【きだて】「魔法のザラザラ下じき」(関連記事)とセットじゃないと使う気になれない。
【高畑】ここら辺は、使い手が試されるところもちょっとあるな。
【他故】合う・合わないがはっきりするわ。
【高畑】違いが分かるかどうかも含めて、「お前にはこれが分かるか」と言われてペンを渡されている感じがする。
【きだて】試されているのか。
【高畑】いろんな意味で試されてる感がする。「お前はこれでレビューが書けるか」って渡されてるきだてさんみたいな。
【きだて】それは無理(苦笑)。
【高畑】でも、「ジェットストリーム」だとか「ビクーニャ」とか、「ユニボールワン」とかいろんなものを使っているからこそ、今これ出しても「違うかも」って言いながら使えるぐらいにはユーザーが育ってきたんじゃないですか。その育った感じはちょっとするかな。
――今後どういう動きになるかっていうのもちょっと興味があるところですけどね。
【高畑】それですよ。芯径増やすのかどうなのかとか、新しく作ったボディに既存品のリフィル入れるのか入れないのかもそうだし、いろんな意味でこれがどうなっていくのかっていうのがちょっと気になるね。
――きだてさんの言う、「エッジ」に行くのかどうかっていうのもあるし。
【きだて】それはだいぶ後だろうけどね。
【高畑】「エッジ」のリフィル作ったら作ったで、ボディは多分これでは出さないだろうから。
――「ジェットストリーム プライム」とかどうするんですかね?
【きだて】どうなんだろう。そこも含めてだね。
【高畑】どのボディの「プライム」を使うのかみたいなのもあるし。
【他故】それとも新規でやるのか。
【きだて】パーカータイプのリフィルが出るのかとかさ。
【高畑】なんなら、それでラミーを出すのか出さないのかとかね、色々と広がるわけだから。ちょっとそこは何かね、ユーザー側から見るとまだちょっと得体の知れない感がすごくある気がする。
【他故】読めないね。
【きだて】インタビュー見ていたら、だいぶ若い人たちばっかりでやっていたみたいだし。
【高畑】若手が新しいチャレンジするのはいいと思うし、「ジェットストリーム」が脱皮していきたい感はすごく分かるんだけど、その中で「ライトタッチインク」の立ち位置がどうなるのか。今後のラインアップが分かりにくくなっちゃうんだったら困るし、上手くいってくれればいいけどね。めっちゃ金かけて作っていると思うしね。
【他故】これはすごいと思うよ。
【高畑】多機能でクリップノックやめたというのは、すごい分かるじゃん。
【他故】分かる分かる。
【高畑】これ、既存の「4&1」をきっちり作り直してくれたら2,000円で出してくれてもいいと思うんだよ。
【他故】絶対そうでしょ。
【高畑】今までの1,000円が安すぎると思っているので。そこへくると、税抜で1,400円っていう価格で、この立ち位置。しかも「ライトタッチインクで出しました」っていうところのいろんな複雑さが。だから、同時にパラメーターが多過ぎるっていうか。
【きだて】言わんとしていることは分かる。
【高畑】フリクションは、パラメータ 1 個ずつしかいじらないから分かりやすいじゃん。
【他故】2つ同時に新しいことやらないからね。
【高畑】1個ずつ埋めてくから、そういう意味では分かりやすいんだけど。いっぺんにいろんなパラメータ変え過ぎて、「どこ狙ってんだ?」みたいな感じになってしまうね。
【きだて】メーカーの姿勢の違いは出るね。パイロットが極端なんだけど(笑)。
【高畑】パイロットにしても三菱にしてもそうだけどさ、やっぱり作り込みはすごいよ。筆記具作りのさ、細かいところまで高めていく感じはすごいよ。このクリップなんかもさ、単純に加工品としては従来のより全然レベルは高いんだよね。それはそうなんだけど、全体としてのメタ認知が足りんっていうかさ。俯瞰して考えると、どこを狙いたいのか分かんない感じがします。ただ、今後の期待感はある。
【他故】次にどう出るかっていうのを含めてね。
【高畑】でも、俺は緑のリフィルをちゃんと作ってくれたところは評価する。
【他故】最初から0.5の緑出てくるのは確かにすごいよな。
【高畑】むしろ今までの三菱だったら、単色出した後に、緑のない黒・赤・青の3色ペンを出すみたいな流れが多いので、
【きだて】順番としては、多分それの方が真っ当だと思うんだよ。
【他故】これがヘビーステップ過ぎるんだよ。
【高畑】むしろ雰囲気としたらさ、前に出た軸がすごい細い3色タイプがあったじゃん。あのボディを「ライトタッチインク」にしてあげると、すごいライトタッチ感もあるし、悪くない気がするので、何かいいなと思うんだけど。でも、今回はグリーンが出てくれてるから嬉しい。“齋藤3色派”としてはやっぱりグリーンは要るよね。
【他故】それは俺も思う。
【高畑】前に、三菱鉛筆から「次に何作ってほしいですか?」って聞かれた時に、「エッジの緑作ってくれ」みたいなことはすごい思ったので、そこはちゃんとしてるよね。そこは三菱鉛筆さんが、まだまだいろんなことをしてくれると思うのでね。ラミーとのコラボもちょっと気になるところだし。
【他故】ねえ。
【高畑】これ世界的に考えたら、めちゃくちゃレベルの高い話をしてるんだけどね。日本のペンなんて本当にさ、もう純度の高いところでの戦いだからさ。こんなことに文句を言ってる俺らが、ちょっと贅沢すぎる感はあるけどね(笑)。
――まあ、「ジェットストリーム」同士の戦いになってますからね。
【高畑】そう。だってさ、13 年連続世界チャンピオンみたいなのを相手に新しい新人を作ろうとしてるんだから、そこは何か困難はあると思う。
【きだて】あとはさ、もしかしたらボールペン総選挙の「OKB48」で、「ジェットストリーム」の票割れが起きるんじゃないかって話もあるでしょ。
【他故】可能性はあるよね。
【高畑】“ジェットストリーム対ジェットストリーム”でね。
【きだて】今度こそ大きな動きあるかもしれないじゃん。
【高畑】まあでも、「ジェットストリーム」にまだ手を加えようというところで、色々と試行錯誤してるのは悪くはないかな。
――この書き味の軽さに感動する人はいるでしょうからね、今後の展開に期待ということでいいんじゃないですか。
【高畑】ちょっとみんなの意見も聞いてみたいので、やっぱり今年は「OKB48」にこれを入れないわけにはいかないでしょ。
【他故】「ないの?」って言われちゃうからね。
【高畑】僕の意見もそうだけど、「これみんなどうよ?」って聞いてみたいので、みんなに書いてもらいたい。みんなにアンケート用紙を付けて、勝手に送りつけたいっていう気分。あと、ブラインドテストとかやってほしい。ペプシコーラみたいにさ、街頭とかで使ってもらって、どっちがどうみたいなのを知らない人に使ってもらいたい。俺たちは先入観があり過ぎるじゃん。
【他故】まあね。
【高畑】このニュースを知らない人で、割とペンが好きっていう人に使ってもらいたい。ちょっと色々聞いてみたい。みんなの意見を聞きたいです。
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プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/
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