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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.74 個性派の最新カラーペンをチェック! その3

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、個性派の最新カラーペンを取り上げました。

第3回目は、パイロットコーポレーションの「ILMILY Color two color (イルミリー カラー トゥー カラー)」です。

写真左から他故さん、高畑編集長、きだてさん*2022年11月9日撮影
*鼎談は2023年5月29日にリモートで行われました。

月刊ブング・ジャム Vol.74 個性派の最新カラーペンをチェック! その1
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/017601/

月刊ブング・ジャム Vol.74 個性派の最新カラーペンをチェック! その2
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/017603/

こすると筆跡の色が変わる!

イルミリー0.jpgILMILY Color two color (イルミリー カラー トゥー カラー)」(パイロットコーポレーション) パイロットコーポレーションが、手書き時間の楽しさと価値を提案する文房具ブランド「ILMILY(イルミリー)」の第3弾アイテムとして2022年10月に発売。ペン後部の専用ラバーでこすると筆跡の色を変化させることができるマーカー(税込165円)とボールペン(同275円)をラインアップ。

■文具のとびら関連記事■
「ILMILY」第3弾発売、こすると筆跡の色が変わるペンを展開
https://www.buntobi.com/articles/entry/news/016360/


――最後は「イルミリー」ですね。「Color two color」のマーカーとボールペンの2つです。

【高畑】これも最新ではなくて、本当はフリクションができる前にあったやつだよ。

【きだて】フリクションどころか、2002年発売の「イリュージョン」だよ。

【高畑】フリクションが登場するちょっと前にあったやつだよ。

【他故】それで、すぐ消えたやつだよっていう(笑)。

【高畑】製品自体が消えたっていう(笑)。

――今回取り上げた3つとも、そうした前史があるわけですね。

【他故】そうですね。たまたま。

【高畑】そういう過去のものを持ってきて、それぞれにアレンジしてるよね。「イルミリー」もさ、前の「イリュージョン」は、「本当は消したかったけど、消えるとこまで行かないけども、商品として出してしまえ」ってい感じの製品だったわけで。昔はちょっとした後ろめたさがあった部分が、今はそれを上手いこと商品として出してきてるっていうか、あえて出すっていう。

【他故】あえて出す。

【きだて】わりと堂々と胸張って出してきてるよね。ペン先にシナジーチップまで使ってるしさ。

【高畑】しっかり出すっていうか、これはどこまで言っていいのか分からないけども、要は完全には消えないところに色をあえて入れておくことで、「何か色が変わる」っていう機能として見せられるよねっていう。「完全に消えます」って言おうと思ったら、透明化がまだちょっと不完全だった時に、あえて残す色を加えておくことでごまかしていたっていうか。消せるペンの前に色チェンジペンとして出してたやつを、今は逆に「色が変わるペンが面白いじゃん」ってすぐに持ってこれたっていうのは、これも何か考え方が変わったというか、当時は目標としてたのではなかったかもしれないけど、今となったら「そういう遊び方もありだよね」っていうことだよ。

【他故】うん。

【高畑】昔、「イリュージョン」で黒が赤になるやつとかあったんだけど、それと普通の黒を混ぜてくじを作るっていうのを子ども向けイベントでやってたね。全部黒なんだけど、こすったり、ドライヤーで温めると正解の部分だけ赤に変わるみたいなのができたので。結構面白くそういう風なギミックとして使って遊んでたんだけども。今もそうだね。

【きだて】なんだけどさ、令和の「イルミリー」はそれなりに真面目に使わせようとしてるでしょ。カラーからグレーに色変えして「グレイアウトの感じが出せるから仕事にも使えて実用ですよ」みたいな。黒から赤に変わるとか、そういうダイナミズムみたいなものが感じにくいんだよね。ただ単に「薄くなります」みたいなところに収めちゃってて。

【高畑】多分、パイロットとしては、あくまで「イルミリー」とは違う機能として見せたいわけだよ。

【きだて】真面目なんだよ。

【高畑】この間、九州で文具イベントあったけど、パイロットの社員だけ全員スーツにネクタイ姿で、めっちゃシナジーチップ熱く語ってたよ。

【きだて】「君たちちょっと肩の力抜きたまえよ」っていう(笑)。その社風は嫌いじゃないんだけど。例えばさ、同じこのインクを渡しても、サンスターなら絶対これやんないじゃん。

【高畑】もうちょっと面白系に持ってくんだろうね。

【他故】まあそうだね。

【きだて】多分、色が派手に変わる方を選ぶと思うんだよ。黒からグレーみたいなことは絶対しないはずでさ。

【高畑】なるほどね。だから、グレーアウトするという意味合いとしてのところで、やっぱり機能性なんだろうな。

【他故】まあそうだね。今回のやつは、色が薄くなる変化が多いんだよね。同系色か色が薄くなるかで、限定の「ナイトサクラ」だけがダイナミックに動くんだよね。

イルミリー2.jpg

「ILMILY Color two colorボールペン」は写真下2本が限定色


イルミリー3.jpg
「ILMILY Color two Colorマーカー」も下2本が限定色


【きだて】あっそうだね。あれは黒赤系のやつだよね。

【高畑】昔に比べて何色からでもできるんだよね。薄い色から濃い色にはできないので、基本色が抜けるのを利用してるから、濃い色から薄い色っていうのはそうなんだけど。

【きだて】黒がベースであれば、大体何色でもできないことはないじゃん。だからなんかもうちょっと「わー、きれい」みたいな、そういう面白系がちょっとあると。散々「何に使うの、これ」とか「ミルキーブラッシュ」に対して言ってたのに、今度は実用性があるとそれに文句を付けるっていうね。

【他故】ははは、うるさい人だね(笑)。

【きだて】我ながら面倒くさいことを言ってると思うんだけど、これはちょっと違うんだって。

――さっきは、「何に使うんだ」って言ってたのに(笑)。

【高畑】「イルミリー」は、本当に手帳に使ってほしいんでしょ。

【他故】これはそうだろうね。

【高畑】手帳に線を引いて、文字を書いてほしいという。多分ね、パイロットのは、額面通りに受け取ってもいいんじゃないかな。それでも、パイロットにしたって若手女子意見を採用しました的な感じのね。

【他故】まあ、このシリーズは特にね。

【きだて】うん、確かそうだよね。

【他故】地味に、今まであったやつじゃないものを入れてくるのが、びっくりするとこもあるんだけどね。何か流用してくるんじゃなくって、これもインクはこのために作ってるし。あと、キャップ式でシナジーチップ入ったのって初めてだよね。

【きだて】ああ、そうか。

【他故】だから、今までないボディとないインクを使ってきてるっていう、まるまる新製品って、逆にすげえなっていつも思ってるんだけど。

【高畑】これでも、ボディ自体はあったやつじゃないの?

【他故】ボディは、昔あった「フリクションポイント 04」で、ラバーだけ新しくなってるんだよね。新型ラバーにしてるし。

【高畑】「イルミリー」の一番新しいやつ(ニュアンスブラック)も、フリクションのボディじゃないの?

【他故】違うんじゃない。まだ写真でしか見たことないけど、なんか完全な新型に見えるんだけど。

【高畑】そうなの? ラバーを取ったフリクションじゃねえのって思ったんだけど、そうではないか。

【他故】黒が 7 色だっけ?

【きだて】何か、今までのパイロットのボディじゃない気はするよ。

【他故】何か見たことないんだよね、同じやつを。

【高畑】クリップあたりの、あのスライドノック自体は割とフリクションぽいというか、あの後ろにポチってラバーを付けたくなるお尻のデザイン。

【他故】まあそうね。ラバーがスポッとなくなってる感じのお尻ではある。

【高畑】逆に、これにラバー付けて、こんな感じの色合いのフリクション出したらいいのにって思うぐらいシンプルなボディでいいなと思う。

――「ニュアンスブラック」に関しては、ボディは新しく作ったそうです。

【高畑】ちょっと脱線しちゃったけども、多分パイロットさんは真面目なんだよ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】すごく真面目に楽しみ方を提案してる。

――ホームページに「旅ノートのダウンロードができます」とありますね。

【他故】このシリーズは、一緒にパッケージにしたりとか何かやってたね。

【きだて】「Color two color」は、メモセットとかいくつかあったよね。

【他故】あった、あった。箱に入ったやつがあったね。

【きだて】ベースまでちゃんと作ってるあたりも真面目だなっていうね。

【高畑】スタンプとか、ただかわいいだけみたいな感じの消し方もしてるしね。地球が昼から夜になる、夜から昼になるみたいなのがあったけど、いやなかなか地味なスタンプなんですよね。

イルミリー.jpgスタンプ(上)と専用ラバー(下)、どちらも限定品


――スタンプは限定商品なんですよね。

【他故】スタンプはみんな限定でしたね。

【高畑】この地球儀が、微妙に夜が入れ替わるところがかわいいなと思いました。

【きだて】このスタンプのサイズだと、色変わっててもあんまり目視で分かんないよね。

【高畑】めっちゃ分かりにい。

【他故】まあこれだけだとね。

【きだて】押しそこなってちょっとインク少ないよみたいな。

【高畑】そういうところでいくと、ちゃんとこれがチェックボックスとして使えたりとかすると良かったんじゃないのかなっていう気がしなくもないのだが。まあ、でもまあパイロットさんの持ってる技術を上手く、これまでフリクションは便利になったペンとしてすごくあったんだけど、それをかわいいとか面白いとかっていう方向に、ようやく持ってくるようになった感じはあるのでいいんじゃないかなと思う。

【他故】幅が広がるよね、こういうことをやるとね。

【高畑】あと、これの専用のラバーがかわいいんですよ。

【他故】ああ、ラバーのやつね。

【高畑】専用ラバー使うとやっぱりね、フリクションのインクはすごいキレイに消える。これの場合だと色が変わるので。割と専用ラバーはおすすめだったりするね。

――これも限定品なのかな。

【他故】限定とは書いてありますね。

【高畑】同じ形のもので普通のフリクション専用ラバーはあるので、それでも全然いい。お尻で消してもいいんだけど、こういう専用のラバーで消すと結構しっかり消せていいよ。――これはかわいいデザインですよね。

【他故】色がかわいいですよね。

【高畑】型は別に全然新しいものっていうわけではないんだけど、色とかは本当にキレイになった。いいんじゃないですかね。まあでも確かに、きだてさんが言うみたいに、ちょっと変化は地味なのが多いね。

【きだて】だから多分ね、今まで「イルミリー」をやってきたパイロットの女性スタッフの人たちは、もうちょっとドラマティックな色の変化をさせたかったんじゃないかなー、と思うんだけども。

【高畑】どうだろう。パイロットの女性社員は真面目だと思うよ。この地味に消えるところも、おしゃれと言えばおしゃれなので、どっちも否定はしないけれど。面白いのもあったらあったで楽しいなと思うし、この大人かわいいところに持っていく感じも分からなくもないというか。だって、「イルミリー」はこれに先立って出てるやつ全部おしゃれ系だからさ。

【きだて】ねえ。

――これは一応定番なんですかね?

【他故】限定とは書いてないですからね。限定色はあるけど、これ自体は限定じゃないんですよね。

【高畑】ああそうか。定番品だけだと、ますますきだてさんが言う地味な方向に行くな。

――もしかしたら、また限定色を出すのかもしれないですけど。

【高畑】確かにね。まあ、色が変わるっていうのが、それなりに流行ってくれればいいんだろうけど。これも上手くやれば、飾り罫的なものを作るのにも使えたり、文字を一部だけ色変えたりとかできるよね。

――こういうのもフリクションが成熟したから出てきた感じですよね。

【高畑】まあ、そうでしょうね。一方ではバージョン2だからね。

――ああそうか。

【他故】方やまだ進化をして(笑)。

【高畑】ある意味では、そこが落ち着いたというかね。一定のところまでは行ってるからね。でも、パイロットじゃないとできない遊びなんでね。ここは他のメーカーがなかなかやりづらい遊びだから、いいんじゃないですか。

【他故】なるほど。

【高畑】それこそ、さっきの水平思考的なものではなくて、全く他がやりづらいものだったりするので。ならではの技術を使うところだからね。

――もっともっと色々とやってもいいのかなっていう気がしますしね。

■文具のとびら関連記事■
自分だけのこだわりの黒を選べる「ILMILY ニュアンスブラック」
https://www.buntobi.com/articles/entry/news/017397/

プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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