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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.74 個性派の最新カラーペンをチェック! その1

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、個性派の最新カラーペンを取り上げました。

第1回目は、ぺんてるの「ミルキーブラッシュ」です。

写真左から他故さん、高畑編集長、きだてさん*2022年11月9日撮影
*鼎談は2023年5月29日にリモートで行われました。

一世を風靡したあのボールペンが筆ペンに!

ミルキーブラッシュ.jpgミルキーブラッシュ」(ぺんてる) ぺんてるが1996年に発売して人気を博したパステルカラーのボールペン「ハイブリッドミルキー」のインクを搭載した、ブラッシュタイプの筆ペン。書き味のなめらかさを維持しつつ、下地を隠す隠ぺい性が高く、濃い色の紙にもはっきり色が映える、バランスの良いインクを実現。また、ロングセラー「ぺんてる筆」で培った技術を生かした、まとまりが良くコシのある高品質な穂先を採用している。パステルミントグリーン、パステルオレンジ、パステルイエロー、パステルグリーン、パステルピンク、パステルブルー、パステルバイオレット、ホワイトの8色で、各税込550円。8色セットは同4,400円。

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――今回はカラーペンを取り上げます。まずは「ミルキーブラッシュ」からにしましょうか。「ハイブリッドミルキー」の世界を筆ペンで再現したわけですね。

【高畑】これを見て「懐かしい」っていうのは世代が知れるよっていう話ではあるね(笑)。ここにいるメンバーは全員「懐かしい」って言える人たちですよ。

【きだて】おそらく、今40歳になったかならないかぐらいの世代がドンピシャ世代なはずで。

【他故】うん、そうだよね。

【きだて】だから、そのぐらいに中高生だった世代。確か、発売は96年だよね?

――そうです、96年ですね。

【他故】俺らはもう大人だよね。

【高畑】きだてさんは就職したぐらいだよね。

【きだて】そうね。

【高畑】俺がは93 年に大学に入学したのよ。だから 96 年って言ったら、「大学院どうしようかな」って言ってる時だよ。

【他故】まだ学生だったんだね。

【高畑】そう。だけど、きだてさんとかはもう社会人だったんだね。

【きだて】だからあれが流行ってるのを直に見てはいるんだけど、ちょっと遠くから「おー、コギャルたちが楽しそうだわ」って眺めてるような印象で。

【他故】自分じゃ使わなかった?

【きだて】もちろん使ってはいたよ。当時は文パラ(文具パラダイスフォーラム。パソコン通信「NIFTY-Serve」の文房具好きが集まっていた会議室)でも大分話題になってたよね。

【他故】そうだよね。

【高畑】僕がまだ文パラに参加する前の時代だね。そのぐらいの頃のものなので、まさに「懐かしい」というミルキーなんだけど、これは昔、ボールペンで流行った色なんだよということですね。当時は、ゲルインクボールペンというのが出たことによって、ボールペンの色数が爆発的に増えた時期に、いろんな試みの中で出てきたのが、このミルキーカラーというやつで。それまで、ボールペンで下地を隠せるやつってなかったんだよね。

【他故】うん、まあそうだね。

【高畑】真っ黒の写真とかに書いても下が透けない。写真に落書きをしても映えるみたい“元祖映え系文具”ではあるんだけど。それが、もうとうの昔になってしまった今、なんか気がついたら、突然これが筆ペンになって戻ってきたっていうのは、ちょっとなんか感慨深いものがありますね。

【きだて】なんかねー、放流した覚えのない鮭が帰ってきたような感覚というか。「まさか、こんなものが今こういう形で戻ってくるとは」みたいな。

【高畑】あれだよ、今レコードが流行ってるの見て「えっ今頃?」みたいな、そんな感じだよ。

【きだて】この感覚はそれに近いのかな。

【高畑】もう 1 回、ポラロイド系の「チェキ」とかも流行ってるし。

【他故】そうね。

【高畑】ああいうインスタントカメラみたいなのもそうだし、未だにリアルに書くものがまだあるからこそ、この辺のペンなのかなっていう。あと、ブラッシュが流行ってるよね。各メーカーがいろんなブラッシュを作ってるじゃん。

【他故】特にカラーのものがすごく多いからね。

【きだて】これ、インバウンドのお土産で売れてるらしいよ

【高畑】「筆ペン」っていうところではないじゃん。一時までは速乾の筆ペンとかさ、筆ペンの延長だった部分もあったけど。まあ「ABT」とかは昔からやってるけど。ぺんてるも「ぺんてる筆」のカラー版はやってるじゃん。

【他故】あるよね。

【高畑】昔からあるものだけど、最近よくインスタとか見てるとさ、カリグラフィーで使うじゃない。だから割といろんなところでブラッシュペンを見るなぁと思っていたら、何かいいタイミングで、このパステルカラーの「ミルキーブラッシュ」が出てきた。何か 1 色だけ違うんだっけ? 昔なかった色が入ってんだよね。

【きだて】そうそう、ミントグリーンだったっけかな?

【高畑】そういえば、筆ペンでこういう感じのものっていうのがあんまなかったなという気はするんだけど。下地を隠せるぐらい顔料がガッツリ入った隠蔽性みたいなところは難しいのかね。

【他故】そうかもね。

【高畑】書いてみたら、めっちゃ隠蔽力が強いよこれ。

【きだて】インクのたっぷりさ加減ってのもちろんあるんだろうけどね。インクだけで考えると、「ハイブリッドミルキー」の方が隠蔽力が強い感じなんだよ。

【高畑】まあ、面が広いからすげえなあと思ったんだけど。特に、黒い紙とかに書いたときの、鮮やかさが本当にすごいね。最近のインクは、他のもすごい性能がいいものが増えたから、これだけじゃないじゃないかもしれないけど、ただしっかりガッツリ下地を隠してくれるぐらいの、いわゆるペイントマーカー的な使い方ができるじゃない。

20220914pentel2.jpg


【他故】そうだよね。

【高畑】ペイントマーカーとか「ポスカ」みたいなイメージで使えるので。下地がほとんど透けないペンとして見ると、なかなかいい感じだなあと思って。パステルだからというよりも、この下が透けない感が面白いなあと思います。使ってみるとそんな感じがする。

【他故】重ねて塗れるとかね。このあたりはやっぱりすごいよね。

【高畑】そう。だから、アートとしては「ポスカ」で書いてるみたいな感じというか、ポスターカラー的なベターッとした色が出るよね。

【他故】それでいてこの筆みたいな形でさ、細かく描いたりもできるし、塗ったりもできるしっていう楽しさがあるよね。

【きだて】って言うけどさ。これ買った人は実際にはどんな感じで使ってるのかな、と。その辺がまだピンときてないところがあってさ。これのレビュー書いた時は「画材として使えそう」みたいな収め方をしたんだけど、実際のユーザーさんたちはどうしてんだろう?って。

【他故】でも、どっちかっていうと、デコなんじゃないの?

【きだて】この場合は、例えば手帳とかその辺の話?

【他故】まあそうだよね。その色を塗るっていう。絵を描くというほどではないけど、色を塗るっていうことの楽しさ。

【きだて】うーん。

【高畑】カリグラフィーっぽい使い方をしないのかな? どうなんでしょう? カリグラフィーは割とよく見るようになったし、カリグラフィーの教則本とかも増えたし、使ってる人が多いから。カリグラフィーを練習して、バレットジャーナルのトップのところの今月の月表示だったりとか、カード書いたりとかに使えるのかなという気がするけどね。

【きだて】だけど、これは白い手帳の紙に書いても、あんまり効果が実感できないじゃん。

【高畑】確かに、一番面白いところはね。

【きだて】結局、「どこなんだろう?」っていうのが本当に分かんなくて。実際に使ってる人にちゃんと話を聞いてみたいなと思ってる道具の一つなのよ。

【他故】そういうことね。

【きだて】割と人気だという話は聞いてるので、実際売れてはいるんでしょ?

【他故】だと思うよ。

――トンボ鉛筆も「筆之助」でパステルのを出したじゃないですか。あれも結構人気あるみたいなんで。パステル系のブラッシュペンは結構受けてる感じがしますよね。

【高畑】うーん。

――イラストなんですかね?

【きだて】カード作りとかそんなのかね。カリグラフィー的な使い方ができて。

【高畑】白い紙にイラストを描くんだったら、普通に「ABT」とか「コピック」とかがあるじゃん。ブラッシュタイプのやつも前からあったりはするんだけども。それこそ、これだけでも4,000円とかなので、まあまあ金額もするしね。どっちかというと、何色か好きな色で文字書いたりとかなんじゃないのかな。これで絵を描くところまでできるかというと、それだとしたら色が全部パステルだしなと思ったりするんでね。ブラックボードアートとかだったらまたあるんだろうけれども、なんかちょっとそうでもないような気持ちするし。

【きだて】そうなのよ。イラスト用にしては、ちょっとインクの粘性が強すぎるような気がしてて。その辺の自由度が少ないなという。やっぱり、どうしても大分特殊な用途のペンなんだろうな。

【高畑】それって、「ハイブリッドミルキーで何描くの?」っていうのと割と近いのかもしれないね。

【きだて】ただ、当時の「ハイブリッドミルキー」は、チェキとか、流行りだしてたプリクラの上から書き込むみたいな使い方で人気が出たわけじゃん。そういうギャル文化の文脈に沿った流れだから理解しやすいんだよ。だけど、「ミルキーブラッシュ」を現在の女子中高生とかが使ってるのかというと、多分使ってないよね。金額的なところ考えても。

【他故】まあ、1本500円だからね。

【高畑】どうなんでしょうね、その辺のユーザー層がね。確かに、そう言われるとちょっと高いのかな。

――1本の金額が高いから、やっぱり昔ミルキー使ってた人たちのためなのかしら。

【他故】まあ、年代層で言うとね。

【高畑】インスタとかで画像拾うと、やっぱ文字系が多いね。イラスト描いてる人もいるんだけど、文字が多いかな。アート書道みたいな感じ。インスタで見たときには、文字が普通に映えてる感じがするね。インスタでミルキーブラッシュで検索すると、8 割以上は文字みたいな感じだね。

【他故】そうなんだ。

【高畑】そんな感じだよ。

【きだて】だから、「使ってみたい」っていうのと、あとはもうこれでしかできない表現がしたいというので文字なのか。

【高畑】ほら。「今日の練習」で1枚書いたりとかあるけど、「ミルキーブラッシュ」の場合はどっちかっていうと本当にカードみたいな感じだね。

【他故】カードね。

【高畑】だから、昔のカナヘイの一期一会みたいな話だよ。「つながるって素敵」とか書いてあるよ。これは「今行動を起こせない人に次回とか来年とかいう資格はない」って書いてあるよ。あと、ひな祭りの歌が書いてある。だから、やっぱりちょっとアート書道っぽい人が割と多い。何か宇田川一美さんがやってるみたいなやつ。

――「ゆる文字」ですね。

【高畑】いわゆるあの書道的な本当に上手い人もいるし、ちょっとアートっぽい書道の人もいるし。絵を描いてる人もなくはないけど、絵を描いてる人の方が少ないね。

【他故】やっぱり文字なのか。

【高畑】文字じゃないかな。絵を描いている人もいるはいるけど、輪郭線はミルキーじゃないやつで入れてるね。輪郭線をクッキリさせてから、塗るところだけこれを使ってる感じだね。「うる星やつら」とかあの辺のイメージだね。

【他故】昔のポップなカラーイラストだよね。

【高畑】ミルキーで調べると、そんな感じのイラストが出てきますね。

【他故】文字か。

【高畑】ミルキーだけで調べると不二家が出てくる。

――まあそれはそうですよね(笑)。

【高畑】「ミルキーブラッシュ」で調べると、文字をかっこよく書く人が多いのかな。でも、そんなにめちゃくちゃ多いのかって言われると、全体的にはきだてさんが言うほどの市場なのかどうなのか。

【きだて】なんとなく俺の感覚なんだけど、割と買っただけで満足しちゃう系なんじゃないのかという(笑)。96 年頃にがっつり使ってたギャルの人たちが。

【高畑】どうなんだろう?

【きだて】ギャルが「ミルキー懐しい」って買って、それで割と満足しちゃうようなものでもないのか。

【他故】どうだろうね。

【きだて】俺の中では、それぐらいまだ使いどころが見えてない道具なので。非常にむずいなという。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】僕はまだ使っている方で、ハガキ書いたりとかしてるから。普段は万年筆で、年賀状は筆ペンでみたいな感じなんだけど、万年筆の代わりに使ってもいいかなっていう面白さはある。ただ、住所書くには弱いかな。

【他故】ちょっと住所を書くのはな。

【高畑】ちょっと読みづらいかなという気がしてるので、そこら辺が確かに、メッセージには使えるけど、どうですかね。

【他故】どうなんだろうね。昔みたいにさ、黒い紙とかをぺんてるが出せばいいのに。今回は紙出してないよね?

【きだて】出してないね。

【他故】そういう気はないのかな?

【高畑】でも、カラーペーパーとかノートとかっていうのは、逆に他から出てるから。

【他故】昔は、「ハイブリッド」っていう名前で結構黒い紙とか売ってたわけじゃん。これはフロッピーラベルだけど。

【高畑】フロッピーラベルっていうのがなかなかだけど(笑)。逆に、それを限定として出したとしても使ってくれないんじゃない。

【他故】そうだよねー。

【高畑】そのアイテムを使ったからって言って、それで使ってくれるのかって言うとそうじゃなくて、多分自分が書きたいのに書くんじゃないのかなと思うけどね。僕の中では、写真に描いたりするのは久しぶりにやったら面白いんだろうなって気がするけどね。でも、あんまりインスタとかにプリントした写真に描いたものを投稿しないと思うので。実際やってる人たちがインスタにアップしてるかどうかっていうのは、例えば写真に描いてるとしたら、インスタじゃなくってリアルにやってるのかなという感じがしなくもないけど。

【他故】ああ。

【高畑】昔パルコが出してた「ゴメス」だっけ? そういうフリーペーパーがあって、そこに写真に落書きをする投稿コーナーで「ナマぬる」っていう、生写真に塗るっていうコーナーがあった。そういう写真落書きが流行ってた時期があって。

【きだて】そういう文化だったんだよね。あと、プリクラに直接落書きしていたのが、次第にプリクラ自体に落書き機能が搭載されちゃったりして、ペンが不要になっちゃったというのもあって。そこからインスタに移行してるから、そもそも写真に書き込むペンの需要が消失しちゃってる。

【高畑】それだと、やっぱりインスタントカメラなんじゃない。可能性としてはね。まあ、どのぐらいこの層の人たちが使ってるか分からないけど、インスタントカメラがめっちゃ売れてるみたいだからね。

【きだて】この辺のポラロイドなりチェキを買ってる層と、「ミルキーブラッシュ」の層は、意外と相性はいいのかもしれないんだけど、使用例をまだ見てないんだよ。

【高畑】春に出てきてたから、どっちかっていうと色紙とかそういうのに書いたりするのにはいいかもねって思ったけど。

【他故】そうだね。

――メーカー的には、年末に「年賀状で使ってね」みたいな感じで PR してたような気がしますけどね。

【きだて】年賀状か、なるほどね。

【他故】カードですよね、結局ね。お誕生カードとかそういうやつ。

――年賀状でキャンペーンをやってましたよ。

【高畑】テクニックはそんなになくても、それっぽく見えるっていうところがまあ良いところではあるんじゃないのかな。文字とかがかわいく見えるっていうのは、なくはないとは思うが、確かに作例をネットに上げてる人があんまり多くないというのはあるね。

【他故】最初の頃に、ぺんてる主催で何かやらなかったっけ? 「ミルキーブラッシュ」の使い方みたいなので。

【高畑】色々とやってるよ。写真に書いたりとか、タグに書いたりとか、「こんな風に使うといいよ」って色々やってた。まあ全体的には、やっぱり写真に書くのとカードに書くっていう提案が多い。あとは、「プレゼントとかのデコレーションに使いましょう」みたいな感じ。

【他故】はい、はい。

【高畑】「デュアルメタリックブラッシュ」の時はどうだったんだろうね。これより前に「デュアルメタリックブラッシュ」も出てるじゃん。あの時もやっぱ文字だったんじゃないのかなと思うけどね。

――まあそうですね。

【高畑】あれが調子よかったから、今回もあれなんじゃないかな。でも、あの時はもうちょっとイラスト寄りという気もするね。「デュアルメタリックブラッシュ」は文字も多いけど、あっちの方がもうちょっとアートぽかった。

――ボールペンと大体似たような使用用途って感じですかね?

【高畑】ですかね。メインターゲットの部分の人たちに対して、おっさんが集まって「そうなのかなあ?」って言うのは。

【きだて】そもそも論は言うなよ(苦笑)。

【高畑】確かに、「使ってるところを俺は見たんだよ」っていうのがあれば話は早いのだけど。実際、自分の周りでそれを使っている作例をそんなに見てなかったのは確かだね。

【きだて】「群盲象を撫でる」じゃないけど、「おじさんたちミルキーブラッシュを語る」みたいなね。

【高畑】でもね、「デュアルメタリックブラッシュ」もやっぱりね、インスタを見ると基本的には文字ばっかりだね。カッコよく文字を書くっていうか、色紙みたいなのに格言とか歌詞とか、どこかの文章を書いてたりとか。最近、ネットの中で書道も流行ってるじゃん。カッコいい書道っていうか、そんな感じだね。「リアルメタリックブラッシュ」の方がちょっと古いからいっぱい出てるんだけど、それもやっぱり見るとほとんど文字だね。文字と色紙だね。多分「ミルキーブラッシュ」もそうなんじゃない。その人たちじゃないかな。

【きだて】まあ、シンプルに考えれば、イラスト描くより字を書く方が簡単っていう話であって。

【高畑】あと、この色の特性上、色紙に書いたりとか、石とかにペイントとしたりとか。

【きだて】パステルもメタリックもだけど、変わった画材というか、変わった色で書くと下手な字でもパンチが効いて見栄えがするじゃん。

――ヘタウマな感じで。

【高畑】ヘタウマというか、黒で書くより多分、いわゆるゆる文字系だったりとか。でも、ゆる文字じゃない人も結構多い。なんか、本当にかっこいい書道になってる。

【他故】書道ってそうなっちゃうのかな。でも本来これってさ、かわいいを極めるためのものなんじゃないの?

【高畑】いや、どうなんだろう。上手い字を綺麗な色で書くっていうのは、一定数あるんじゃない? ぺんてるはこれより前にも「金の穂」とかあったじゃない。あれも全部一緒だね。だから、本当にみんな字が上手いんだよ。

【他故】見せる人は上手いよな(笑)。

【高畑】見せる人はそうなんだけど、練習してる人も大体同じ感じで、どっちかだね。ゆる文字とかみつをとか、カナヘイが昔やってたみたいなやつとか、あんな感じの「色紙書いてます」だったりだけど、なんか上手く見えるんじゃない。やっぱりかっこよく見えるんじゃないかなあ。

――ぺんてるのサイトを見たら、やっぱりカードにメッセージ書いてるみたいな画像が多いですよね。「ハッピーバースデー」とか。

【きだて】結局、カードだと濃い色の紙が使いやすいんですよ。

――そういうことですね。

【きだて】だからまあ、載せやすいという感じではあるんだろう。

【高畑】うん、そんな感じなんじゃない。でもやっぱり、メッセージとか文字だね。

【きだて】これに関しては、いつまで喋ってても「そうなんじゃないかな」にしかならないね(笑)。

【他故】これは本当によく使ってる人が入ってこないとね。

【高畑】でも、使ってると楽しいですよ。あと、ぺんてるのこのシステムが、全部そうなんだけど、後ろを押してインクを出すじゃん。だから、インクが結構ダクダクに出せるので、そこはやっぱいいね。ボテッと濃い感じでこの不透明インクを出せるっていうのが、やっぱり大きいね。ゴールドの時にも思ったけど、ここがこのぺんてるの筆ペンのシリーズの強みかな。

【他故】うん、たっぷり出るからね。

【きだて】やっぱり、圧かけてダクダクに書くからこその良さが出るからね。

【高畑】普通にストレートに書いているのが面白いっていう感じがするので。まあ嫌いではないね。

【他故】ただ手遊びで水玉っぽいもの描いたり、ハートポエムのを描いたりしても、これはこれで楽しいよ。

【高畑】そういう落書き的な感じでね。

【他故】全然楽しいよ。

【きだて】1本500円っていう値段がね、そういうちょっとした落書きに使うのに躊躇させるというか(苦笑)。

【他故】まあ、「かわいい」と思って買った人は、かわいいっていう分だけは使うんじゃない。全色買う人はなかなかいないと思うけど。

【高畑】これは、本にサインを書くのにいいかと思ったよ。

【他故】ああ、それはいいね。

【高畑】性能的には非常に優秀なのでいいっすね。で、その値段だね。500円っていうのがあるので、「いっぱい色揃えて楽しみたい」みたいな部分との兼ね合いはちょっとあるかな。だから大人なのかな。大人が多いような気もするね。インスタとかに出てるのを見るとそういうのが多いよね。

――まあ、金額的なことを考えてもやっぱり大人の人ですよね。

【高畑】そうですね。でも。いい感じに遊べるよっていう。

【他故】うん、そうそう。

【高畑】これはまあ、文字文化のところとか、あとちょっとしたデコレーションのところに関しては、選択肢としてはいいんじゃないのかな。文字を書くのがこれだけ多いとのを見ると、海外の人たちにお土産としてはいいんじゃないのかな。さっきインバウンドという話があったけど、それはいいんじゃん。

【他故】うん。

【高畑】こういうリッチなカラーが出せるっていうのも、なかなか他のペンであんまり見ないので。ブラッシュタイプのカラーペン自体は割と珍しくなくなってきたけど、ナイロン植毛じゃないタイプのブラッシュだったら結構どこにでもあるけど、ナイロン植毛タイプでかつ不透明度の高いインクをこれだけ出せるっていうのは、ジャンルとしてはかなりユニークなんじゃないのかな。

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【きだて】という感じかね。

【高畑】何か、ずっときだてさんのモニョモニョした、納得のいかない感じがずっとあって(笑)。

【きだて】俺も全然嫌いじゃないので、もうちょっとポジティブなことを言いたいんだけど、分からなさが強すぎる。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】俺個人は全然嫌いな道具ではないんだけど。

【高畑】でも、あれもそうじゃん「ぺんてるサインペン」で先端ブラッシュになってるやつとかもさ、結構売れてるみたいじゃん。

――「筆タッチサインペン」ですよね。

【高畑】結局字を書くのがちょこっと楽しく、それっぽくしたいっていうのじゃないかな。そんな気はします。

――これを読んだ読者の方がどう思うかですね。「そうだ」と言うのか、「ちょっと違うよって」言うかもしれないけど。

【他故】そこはいろんなご意見をいただけるといいですよね。

【きだて】むしろ「聞かせてください」という感じで。

――じゃあ、ご意見をお待ちしております。

*次回はサンスター文具の「デコット」です。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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