1. 連載企画
  2. 【連載】月刊ブング・ジャム Vol.71 ブング・ジャムの2023年初文具はコレだ!(その3)

【連載】月刊ブング・ジャム Vol.71 ブング・ジャムの2023年初文具はコレだ!(その3)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんが2023年に初めて購入した文房具を紹介してもらいました。

第3回目はきだてさんが購入した中国製文房具の数々を紹介します。

写真左から他故さん、高畑編集長、きだてさん*2022年11月9日撮影
*鼎談は2023年1月23日にリモートで行われました。

今、中国の文房具が面白い!

きだて1.jpg

――最後はきだてさんですね。どんなものをご紹介していただけるか、非常に気になるところですが(笑)。

【きだて】中国から、11 月ぐらいに発注しといたものが正月早々に届きましたよ。

【高畑】めっちゃ気になる(笑)。

【きだて】相変わらず中国の文房具が面白いので、ガバガバ買っちゃってるんですけど、最近強く感じるのが、中国の文房具が今、大体日本の 2012、2013年頃を歩んでる感じなのよ。

【他故】10年前ぐらい?

【きだて】そうね。なんとなくだけど、現在まで続く文房具ブームの根っこの辺りのイメージかな。新製品が思いもよらなかった方向から出てきたり、すごい意外性のある合体文具が出たりとか。とにかく面白かった時期の雰囲気が出てるのね。例えばさ、これペン型の修正テープなんだけど、分かるかな? ヘッドに対して、リールが正対してないの。

きだて2.jpg

【高畑】中でねじれてる感じなんだね。

【きだて】そう、中で90°ねじれてるんだよ。ねじれてる意味は全くないじゃない。それどころか、ねじれてるおかげで、早めにテープ引くと中で割とからまるんだよ。なんだけど、スマートさという点では、こっちのは確かに見た目的にはスマートなんだよね。

【他故】まあ、そうだね。

【きだて】そういうチャレンジブルなところがあったりとか。

【高畑】この間のプラスが出したやつは、直角じゃないのか。

【きだて】この間のプラスのは、普通にヘッドに対して順方向にリールが付いてる。90°曲がってない。

【高畑】あそうだね、横向いてるんだね。だから、引くときにジャマにならないってこと?

【きだて】それでヘッド周りが見やすいようにはなってるんだけどね。ほら、軸からリールを引き抜いてみたら見えるかな。テープがひねられてるの。

【高畑】あ~すげ~、ひねられてる。

【他故】ねじれております(笑)。これは、負荷がかかるだろう。

【きだて】明らかに、やらなくていいことをやってんだけど。結局のところ、こういうところから面白イノベーションが生まれそうな気もしてるし。

【高畑】面白そうだね。

【きだて】あと、合体文具系だと、ペン型ハサミと一枚切りがくっついてるやつとか。こういうのもあの当時に出てたと思うんだ。

きだて4.jpg

【他故】うん。

【きだて】最近、中国の文房具がすごい面白いなと感じてるのが、特にこの勢いの感じ。

【高畑】なんかその、色々と余裕ががなくなってくると、ムダなものを作らなくなるじゃない。思いつきで作らなくなるんだよね。よくよく考えて、「本当に要るかどうかを考えましょう」となるじゃない。

【きだて】「勢いで作っちゃった」がないじゃない。

【高畑】ああ、確かに。

【他故】そういうものが出ないよね。

【高畑】「勢いで作っちゃった」が、案外面白かったり、よかったりするときもあるよね。【きだて】むしろ、僕としてはそういうのが大好物なので。だからといって、日本が 2012、2013 年頃にこういうものを作ってたかというと、そうではないよね。

【他故】それは違うな(笑)。

【高畑】それは80 年代ぐらいまで戻らないか。

【きだて】これはロボットペンで、つま先から引っこ抜くと、中からペンが出てくる。

きだて0.jpg【他故】立派なペンが出るね(笑)。

【きだて】しかも中のペンは、前から言ってるニードルのすごい書きやすいゲルのやつ。中華ゲルはいまビックリするぐらい良くなってる。

【他故】あー、そこは進化してるんだ(笑)。

【高畑】中身はすごいけど、40年くらいさかのぼったぞ。

【きだて】ははは(笑)。それで、これは腕が付いているんだけども、これをグッと押し込んで、「変形!」って言うんだけど、変形して何になったの?っていう(笑)。

きだて3.jpg

【他故】ははは(笑)。

【きだて】頭と腕を収納しただけなんだけど、よく分からないよねっていう。

【他故】まあ、宇宙船的な何か。

【高畑】それは、マクロスの変形とかさ、ザブングルの基地の変形とかさ。

【他故】アイアン・ギアーか(笑)。

【きだて】そうそう。「ええ、そうなると思ってましたよ」系の変形というか。

【高畑】ザブングルの基地の方がさ、ただ立ち上がるだけでロボットみたいなのがあったじゃない(笑)。これは、頭引っ込むだけというのがすごいね。でも、宇宙船っぽい。

【きだて】それこそ、80年代のテイストじゃん。このテイストは本当に大好物でね。というのもあって、今は中国文房具に夢中ですよ。

【高畑】逆に言うと、日本のメーカーが、きだてさんの好きなものをなかなか作ってくれなくなりつつあるんだね。

【きだて】そうそう。でも技術的にもさっき言ったゲルとかかなりの勢いでアップデートされてるわけさ。中国の文房具を安物とバカにしてる人も多いんだけど、そのうちそうも言ってられなくなるはずだよ。例えば最初のペン型修正テープも、テープ自体は今プラスでやってる薄膜テープ並みの薄さなの。紙と段差ができにくいぐらいに薄い。それぐらい技術は充分にあるのに、ちょっとバカなこともやるのが偉いんだ。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】日本の今の技術と、中国の勢いのハイブリッドが今後もガンガン出てくんじゃないかなと思って。ちょっとね、注目しといた方がいいよって思う。

――なるほど。

【きだて】あ、あとこれがね、キャップ取るとデザインカッターなんですよ。具体的に見せると怒られるやつかなコレ。

きだて5.jpg【他故】ははは(爆笑)。

【高畑】それいいね(笑)。

【きだて】中国で、どんだけあの金型出回ってんの?っていう。

【高畑】全ての文具があのペンのかたちになりそうだね。

【きだて】メタルペンシルもこのデザインでやってたし、修液ペンも発見してる。後ろにポンプが付いていて、押すと修正液が出てくるやつ。

【高畑】全部あのかたちだけど、機能が違うみたいなのがさ。

【きだて】なんかコレクションできるなと思って。

【高畑】いいね。俺それすごい興味あるわ(笑)。これ、今出した四つで全部?

【きだて】正月明けのタイミングで届いたのはこれだけなんだけども。

【高畑】去年の時に見せてもらって、きだてさんからゆずってもらったけど、ノック式の万年筆だけどキャップが要るやつとかね。

【きだて】そういうのも含めて、チャレンジングというか。

【他故】不思議だよね。買う人がいるから作ってるんだよね。

【きだて】だと思うよ。やっぱり十何億人も人間がいたら、例えば全人口の 0.01% の人が欲しがっただけでも、それなりの市場規模になっちゃうわけだから。それを思えば、人の桁が多いのってすごいよ。

【他故】「試しに売ってみるか」って言っても、それなりの商売になっちゃうのかね。

【きだて】そうなんだと思うよ。その辺の自由度はあるんだろうね。

【高畑】ノリと勢いで作られた文房具というのが、きだてさん目線から見ると特にそれが際立って見えるんだね。

【きだて】いや、もちろんノリと勢いの商品開発が全て正しいとは思ってないよ。90年代にそれで潰れちゃった企業もいっぱいあったわけだから。

【高畑】ノリと勢いと言うのか、チャレンジと言うのかっていうのはあるじゃない。だって、新商品自体に前例はないわけじゃん。だから、売れるかどうかなんていうのは、やってみないと分からないところもちろんあるし、あんまり慎重にいってると、ロットは小さくなるし、チャレンジできなくなるというのもあるから。さっきの色替えみたいな話とかで、売れてる商品の色替えは比較的できるけど、全く作ったことがない新しい商品が作れるかというときに、やっぱり「やってしまおう」という国が勢いがあるんだろうな。

【他故】そうだね。

【きだて】あとね、あの国でちょっとヒットしちゃうと、死ぬほどコピー品が出回っちゃうんだわ。だから、どうせコピーされるんだから、先行していろんなものを種類多く作っちゃえ、みたいな雰囲気もあるみたい。

【他故】ふーん!

【きだて】そういう、新製品を開発しやすい土壌というのはあるんじゃないのかね。

【高畑】あるんじゃない。社会的にとか、今の状況的にとか。子どもにどれぐらいかけるというのもあるだろうし。どのぐらい余裕があるかというのは、購買層の問題もあるからね。

【きだて】作る側にしてもさ、3Dプリンターのおかげで、モックが異常に作りやすくなったというのがあるじゃない。

【高畑】あるある。

【きだて】それこそ日本でそういう新製品開発してた時期には、まだ3Dプリンターは出回ってなかったでしょ。

【高畑】そんなになかったよね。

【きだて】あの時代に今の 3Dプリンターを各メーカーに1台ずつあげたら、逆にすごい面白いことになってたんじゃないかなと思うんだよ。

【他故】あ~。

【高畑】とは思うんだけど、3D プリンターで検証した結果、さっきのロボットなのか?っていう問題はあるけど。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】それはセンスが必要だから(苦笑)。

【高畑】ああ、そういうことか。

【きだて】今中国は、3D プリンターなんかもすごいいっぱい作ってるし、土壌も整って、条件もよくてという感じではあるのかもしれないね。

【他故】そうかもね。

【高畑】それが直接かどうかは分からないけど、日本にいると日本の文房具とか、日本の市場にあるものでものを見がちだけど、きだてさんみたいに、中国のそういうのを見ていたりすると、見えてくるものが違うっていうか。日本って、結構特殊な国じゃない。多分、世界の中で文房具市場としてはかなり偏った市場だと思うから、何かそういうのもあって、きだてさんみたいな視点で外を見るのもそうだし。他の切り口でもあると思うけど。自分のところに関して言うと、そんなに世界中でやってるのかというと、こんなに微妙な差を追求してるのは、日本ぐらいかなという気はしなくもないけど。最近は、台湾なんかがちょっと自由な発想でものを作ったりするじゃん。

【きだて】はいはい。あの辺りもステキなの多いよね

【高畑】ああいうのも、面白いしね。たまにきだてさんが入れてくるもので、なんか欲しくなるものがちょいちょいある。

【他故】あるね。

【きだて】この辺も、今度の「文具マーケット」で売るので。

【他故】ははは、宣伝だ(笑)。

【高畑】「文具マーケット」では、きだてさんが仕入れたものが並ぶのね。自分で探そうと思ったら、なかなか大変だからね。「書肆イロブン」でしたっけ? ぜひ来て下さい。

――「文具マーケット」はいつ開催ですか?

【きだて】2023年2月25日、五反田TOCの13階ホールHです。ブング・ジャムも全員ブースを出してるので、見に来てね。

【他故】ぜひぜひ。私は「他故壁氏(POWERTAC)」で出しますので。

――高畑編集長は?

【高畑】僕は「文具王工作室」という名前で出ます。僕は、自分で作ったものを売る感じです。

――ということで、2月25 日は「文具マーケット」で買い物をしましょう。

(一同)よろしくお願いします!

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう