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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.70 新春スペシャル ブング・ジャムの2023年文具大予測!?(その1)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は「新春スペシャル」として3日連続で、ブング・ジャムのみなさんに「2023年の文具はこうなる!」という予測を語ってもらいました。

第1回目は文具王・高畑編集長の2023年予測です。

写真左から他故さん、高畑編集長、きだてさん*2022年11月9日撮影
*鼎談は2022年12月5日にリモートで行われました。

ファスト・デコとネオファンシー

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――あけましておめでとうございます。

(一同)おめでとうございます!

――みなさんには、新年一発目の恒例ということで、2023年の文具界の予測をしてもらいます。業界的な予測はもちろん、個人的な抱負をお話いただいても構いません。まずは、文具のとびら編集長の高畑さんお願いします。

【高畑】2022年は、全体的に「コレ」という大きなムーブメントが語りづらいというか、細かな話が多かった印象で、決め手に欠ける感じはしたかなと思います。「SNS頑張ってるね」とか、「SDGsに対応した商品が出てきたよね」とか、割とそんな感じじゃん。

【他故】うん。

【高畑】年末に「フリクションボールノックゾーン」が出たけどさ、それ以外は「限定色で何とかしのぎました」という感じがするじゃん。

【きだて】そうなー。どうしてもトピックは少なかったよね。

【高畑】その中でいくと、ジャンルとして変わったかなと思うのがシールとスタンプで、これは結構伸びたんじゃないかな。コアなファンの間では、シーリングスタンプが増えたと思うんですよ。それ以上に増えたのがシール。この間から僕が言ってるのは、以前なら何かモチーフがあって、病院へ行くなら病院のモチーフ、デートがあるからハートのマークとか、誕生日だからプレゼントとか、そういうのだったんだけど、そういうことじゃなくて、全然関係ないよく分からない英語のスタンプとかが流行ってるのが面白いと思ってる。植物画のシールとか、プラスの「デコラッシュ」にも何が書いてあるのか分からない英文がいっぱい出てくるのがある。


「デコラッシュ」新柄にも英文柄が(2023年1月18日発売)


【他故】ははは(笑)。

【高畑】読んでみても、“It’s a happy day”とか“Keep smiling”とか、楽しい日常みたいなことが書いてあるだけだったりして、よく分からない英語が書いてる。

【きだて】何か、80年代オシャレポップみたいな感じ(笑)。

【高畑】まんまそんな感じ。英字新聞のように、読めないけどかっこよさげみたいな。あと、英語が書いてあるシールでも、ヘミングウェイの小説から抜いてきた言葉なんかが載ってたり。

【きだて】それは、おしゃれなのかね(苦笑)。

【高畑】これは、きだてさんが言ってたことなんだけど、ノートに書くことないじゃん。それで、「大きいシールをバーンと貼ったら、それでページが埋まるじゃん」と言ってたんだけど、それがもうちょい繊細だったということなんだよ。要は、大きいシールをバーンと貼ってしまうと、そこに自分のクリエイティブが出ないじゃん。

【きだて】ああ。

【高畑】いろんなシールを貼ってコラージュをしていくと、そこにオリジナリティが発生するんだよ。

【きだて】いやー、でもコラージュはセンスが要るぞ。

【高畑】コラージュもセンスが要るんだけど、何か分からない英文と何か分からない風景と、何か分からない女の子のシールを貼るんだよ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】それで色味を揃えてあげれば、いい感じになるんだよ。それが結構重要。それと中身が関係なくても、それっぽい雰囲気ができる。雑誌ぽい見た目のページができると、それっぽくなるんだよね。そういうのが増えたんだよ。

【きだて】あー、言われてみるとそうかも。

【高畑】それで、シール売り場が広がっているんだけど、前のシール売り場は、目的が分かるシールがあったんだけど、今はよく分からないモヤッとした風景とか、そういうのばっかりのシールを売っていて、これまでの「キャラクターのシールがあるから貼りたいです」とかじゃなくて、完全に要素としてのシールなんだよ。フリー素材としての要素みたいなシールがいっぱいあって、それをペタペタ貼り付けて世界を作るためのもので、最初から部品なんだよ。完成品としての絵ではなくてというシールが多い。スタンプも、フレームとか、それ自体で完成しないスタンプが増えたと思っていて。

【他故】うん。

【高畑】これまで手描きでやれていた人たち、スキルがある人は、バレットジャーナルみたいに自分の好きな手帳を作ればいい。でも、できない人はできないなりにということなんだけど、そういう人に対し、デコレーションを簡単にする方法として、その世界観ができてきたような気がして。僕は勝手に「ファスト・デコ」って呼んでるんですけど。いわゆる本格的に絵を描くでもなく、すごいでもないけど、それだと字が下手なのバレないじゃん。

【きだて・他故】うん。

【高畑】絵が下手とか字が下手なのって、最低限のレベルをクリアするまでが難しいじゃん。だけど、そのシールのコラージュだと、コラージュの上手い・下手はもちろんあるんだけど、1個、1個の絵はちゃんとしてるから、写真を撮ってSNSにあげたときとか、最低限のレベルをクリアできる。

【きだて】そうかなあ。「思ってたのと違う!」ってならないの?

【他故】それは、理想のコラージュがあるからじゃないの?

【高畑】それが多分、分からないんだよ。分からない人は、分からないで出せるんだよ。

【他故】そうそう。

【高畑】絵が下手は明らかに分かるじゃん。

【きだて】まあ、そうかな。

【高畑】「イヌの絵が描けません」っていうのは分かるじゃん。すごくかわいいイヌのシールをコラージュとして、青空のシールを貼った上にイヌのシールを貼って、キラキラの文字で「今日はおさんぽ」みたいなのが英語で書いてあるシールがペタペタと貼ってある。

【きだて】そうか、結局のところ自分が納得できればいいから、それでいいのか。

【高畑】その納得レベルが、何もしてないはやっぱり嫌なんだよ。クリエイティブがないというのは嫌で。コラージュだけでも、自分としてのオリジナリティとしての組み合わせが発生するから、他の人とかぶらないじゃない。全面シールを1枚ペタッと貼ってしまったら、買ってきたものと変わらないよねとなってしまうんだよ。自分のクリエイティブを発揮する要素として、レイアウトが入ってるんじゃないのと思うのが一つ。

【きだて】うんうん。

【高畑】もう1個は、文具女子博でもすごかったんだけど、「アデリアレトロ」と、「mizutama」さんと、「ちいかわ」みたいなのがあるじゃない。

【きだて】本当に、今年は“文具mizutama博”だったよね。


サンスター文具がmizutamaさんとコラボした文具は、一部アイテムを文具女子博で先行発売(関連記事

【他故】ははは(笑)。

【高畑】mizutamaさんの力はすごいなというのがあるんだけど、俺はあれは新しいファンシーで、90年代の再来だと思っている。キティちゃんをもう一回買うのは気恥ずかしいんだけど、mizutamaさんはアリなんだよ。一周まわったときに、同じものでなくて、再構成したい。当時あったものがかわいらしいんだけど、リバイバルならアリというのがあって、シモジマとか、フエキくんとかをやってるヘソプロダクションみたいに、洗練された再構成をかけた状態の90年代ファンシーをやりたい。要は、紙博とかペンショーに行くような感度が高かったり、スキルがある人じゃなくて、これもシール貼っている人と同じレベル感なんだけど、そんなにスキルを持ってない人でも分かりやすいかわいさ。

【きだて】う~ん。

【高畑】mizutamaさんのすごいところは、「かわいい」というのが書いてあるじゃん。難しくない「かわいい」なんだよ。

【きだて】それは分かる。かわいい要素がシンプルで伝わりやすい。

【高畑】多分、シモジマやヘソプロダクションなんかもそうだけど、誰が見てもかわいいという記号で書かれたかわいいだから、歴史上の名画を美しいととらえることができるかどうかみたいな、背景の知識みたいなものは全く何も要らないし、判断に迷うみたいなかわいさじゃなくて、もう「かわいいです」という。キティちゃんが持ってるかわいさと一緒じゃん。

【きだて】ファンシーの文脈の分かりやすさというのが、不思議だな。うん、なるほどな。

【高畑】アデリアレトロを今買ってる人たちも、必ずしも若い人ばかりでなく、歳が行った人も多い。90年代を経たことがある人たちが、mizutamaさんを「かわいい、かわいい」といっぱい買っている層にいるじゃん。女子博に行っているような人って、若い子もいるんだけど、比較的年齢層高めじゃん。

【他故】まあ、まあね。

【高畑】一巡した人たちが、もう一回ファンシーにハマれるもの。超ハイセンスじゃなくても、紙の手触りが良いとか、活版の美しさとか、そういうややこしいことじゃなくて、超かわいいじゃん。誰が見てもかわいいじゃん。「フエキくんかわいいじゃん」みたいな、分かりやすい“かわいい”が安心できるんじゃないか。昔ファンシーで「かわいい」と言って、キティちゃんとかサンリオグッズを買ってたような人たちに、ちょうどいいんじゃないのかなという感じがする。

【他故】うん。

【高畑】でも、あのまんまじゃダメだと思うんだよ。その時に買ったのと同じじゃなくて、一周回った分だけズラしが必要だと思う。

【きだて】う~む。

【高畑】そこにめっちゃハマったのがmizutamaさんなんじゃないかな。

【きだて】かわいいといっても、例えば、萩原まおさんの絵のかわいさって、ちょっとオタク要素があるかわいさなんだよね。複雑味というかさ。mizutamaさんのはそれがないから、全方向に伝わりやすいというか。

【高畑】だから、受け入れる器のでかさがすごいじゃん。

【きだて】幼児からちゃんと「カワイイ」って言える幅の広さ。

【他故】汎用性が高いよなあ。

【きだて】あのかわいさを生み出したmizutamaさんがとにかく上手いというのはあるんだけど、それはそれとしてメーカーが安易に起用しすぎ(苦笑)。

【高畑】いやまあ、売れるからな。

【きだて】分かるんだけどさ。同じ使うにせよ、メーカーももうちょい工夫しなさいよと。

【高畑】それは、キティちゃんが何とでもコラボするみたいなのと同じで。

【きだて】キティちゃんはもはやシルエットだけでもキティちゃんになるんだけど、mizutamaさんの絵柄はまだそこまで人口に膾炙してないじゃない。

【高畑】同じ絵と同じモチーフがいっぱい出てくるよね。

【きだて】もちろん、その辺はバックボーンが足りないというのもあるんだけど。

【高畑】そこは、この先どうなるか分からないね。あとすごいのは、mizutamaさんの文具との相性の良さなんだよ。

【きだて】ああ。

【高畑】文具だけじゃなくて雑貨まで広げると、例えば「カナヘイ」とか「タヌキとキツネ」とか色々あるじゃん。でも文具だと、mizutamaさんが圧倒的に強いんだよ。それで、mizutamaさんは文具以外のジャンルはそれほど強くないんだよ。

【他故】ああ、そうか。

【高畑】他の雑貨であんまり見ないでしょ。

【きだて】そうだね。

【高畑】mizutamaさんはすごい特殊で、文具との相性だけめちゃくちゃいいという。

【きだて】何だろうな。面の問題なのかな。

【高畑】文具と雑貨ってものすごく近いから、「この人に描かせよう」というのがもっと出てきそうなんだけど、何かしらの相性があるんじゃないか。

【他故】何だろうね。

【きだて】mizutamaさんの特徴って、単位面積あたりの絵柄の密度が実は意外と高いんだよね。ベタ塗りまで含めて密度が高いというか。その辺が、ノートとかにバチッとハマるんだけど、ワンポイントで使うと雑貨向きじゃないということなのかな。

【高畑】あと背景が弱いんだよね。mizutamaさんのに出てくるキャラクターって、どんな性格か分からないんだよ。どんな生活をしてて、どんな性格か分からないんだけど、「カナヘイ」のピスケとうさぎなんかだとキャラクター性が強いじゃない。「タヌキとキツネ」もすごい性格が分かるんだけど、mizutamaさんの絵に出てくる男の子と女の子は、何を考えてるかあんまり分からないんだよ。

【きだて】そうだね。

【高畑】あれは純粋にファンシーのイラストとしてのキャラクターなのかなという気がする。

【他故】確かに、ストーリー性はないんだよね。

【高畑】文具にしたときの収まりがめっちゃいいんだけど、ぬいぐるみ展開はされないし、案外そこから外へは行かない。

【きだて】mizutama論はもうちょっと考える余地はあるよね。現代ファンシー論として。

【高畑】でも、こんなに広がってるから、何かしら使われる理由はあるんだよね。女子博に行った時のmizutamaさんの多さはすごかった。

【他故】うん。

【高畑】あと、アデリアレトロが最近すごいなと。

【きだて】そうだね。

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郵便局で限定販売されたアデリアレトロの日付印とスタンプセット(エンスカイ)

【高畑】あれこそ幅が狭いじゃん。かつてあったガラス食器の模様なんてさ、大してないんだけど。でも、花柄だからファンシーの一種なんだろうね。

【きだて】まあ、文化柄だよね。炊飯器とかに付いてた。

【高畑】アデリアレトロだけあそこから独立したね。象印とかタイガーじゃなくて。それもやってるけどさ。アデリアレトロ一色になったので。版権の出し方もあるにしても、それにしたって。それもひっくるめて、安易なファンシーというとカドが立つんだけど、いわゆる分かりやすいファンシー。オタクっぽい、分かりにくいファンシーじゃなくて、「活版がステキ」とかじゃなくて、かわいいものはかわいいと言っちゃって安心できるかわいさというのがアデリアレトロにはあるんじゃないかな。mizutamaさんとかフエキくんとか、ああいうののかわいさというのは、最初からキャラクターが記号として「かわいいです」と言ってるじゃん。

【きだて・他故】うん。

【高畑】今は、「インク沼」とか言ってる人がある程度先鋭化しちゃったじゃない。深くもぐったというか。もうちょっと浅いところでさ、「楽しくコレクションしましょう」と。昔、メモ帳いっぱい集めてたみたいな楽しみ方でいいじゃん。それでいいような気もするんだよね。

【きだて】いや、それで何の過不足もないと思うよ。

【他故】まあね(笑)。

【高畑】ここしばらくの紙ブーム、インクブームがすごかったから、僕らもついそっちを見がちだったけど、それってどっちかというとギュッと狭くなる方向で。今は、紙質にもうるさい女子もいっぱいいるんだけどさ、そういう人たちは全然悪くないけど、それはあんまり広がりを持っているわけではない。

【きだて】うん、そうだろ。

【高畑】もっともっといっぱいの人が楽しめる遊びがあるよねというところで。

【きだて】いやー、正直なところ、印刷屋とか紙屋でもないのにやたら紙質に詳しいやつっていけ好かないじゃない(笑)。同人誌界隈にもいるけど。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】いいじゃん。女子博で「かわいい」って言って。だから、女子博の雰囲気も変わってきたと思うんだよ。最初に来てた人たちより、ライトな人か増えてたもの。

【きだて】うん、そっちの方がいい。そっちの方が、より文具の幅が広がるじゃない。

【高畑】それでもいいかなって思う。インクの沼もあってもいいんだけど、これとは別にね。案外重要だし、さっきのファストデコもそうなんだけど、すごいスキルはないけど、見せるのを恥ずかしいと思わせたら負けだなと思って。

【きだて】はいはい。

【高畑】「買ってみたんだけど」「まだ下手なんだけど」と言って見せるときでも、それでも最低限のレベルというのがあって。今はネットで上手い人の作品はいくらでも出てくるんだけど、自分があんまり下手過ぎると、「マンガ描いて見せます」ができないじゃん、

【他故】うん。

【高畑】「僕マンガまだ下手なんだけど」という人が、発表しづらい世の中になっちゃったとすごく思う。僕らの中学生の頃は、友だちがマンガ描いてみんなに見せてたけど、今の時代はもっと上手いものを見過ぎてるから、最低限のレベルをクリアしてないものを見せる勇気がなかなかないよね。というときに、スタンプだったら素敵なスタンプを押してコラージュした感じで。スタンプのパッドも、今はいろんな色を混ぜたりとかがかわいかったりするから。でも、そこには、その人の工夫ができたりするじゃない。だから、全部買ってきたのだけじゃないよということで、ちょっと創意工夫の枠を残して簡単にできる。だから、「遊びに参加するのは恐くないですよ、大丈夫ですよ」「mizutamaさんを買っておけば大丈夫ですよ」って。

【他故・きだて】ははは(笑)。

【高畑】「心配しなくても、みんなかわいいと思ってるから、大丈夫だよ」という、そんな感じがするんだけど。

【きだて】ただ、さすがに現状のmizutamaさん一極集中はちょっと寂しいでしょ。もう少しいろんなファンシーがあったほうが楽しいかな。

【高畑】だから、新しく出てほしいなというのはある。

【きだて】もっと広がってもいいと思う。

【高畑】だから、いわゆる分かりやすいファンシーの世界が、もうちょっと広がってもいいんじゃないか。mizutamaさんのライバルが出てもいいと思うし、アデリアレトロの対抗馬が出てきてもいいし、そっちの世界が広がってもいいよね。

【他故】まあね。

【高畑】機能的な部分が、かなり極限まできているのは、僕らも認識しているところもあるし。来年あたりに出てくるかというと、開発に時間かかる商品って、コロナのおかげで遅れてたりするじゃん。

【他故】そうね。

【高畑】それまでに開発してたものって、わーっと開発している部分があって、去年あたりは息切れしてたと思うんだよね。

【他故】うん。

【高畑】新商品開発で大玉を期待できない中で、文具を楽しむといったときに、機能でいくといわゆるデジタル化が進んでいるときに、「文房具楽しいよね」というのを広げるために。だって、女子博に行ったとき、隣で「ちょっと買い過ぎちゃった」「いくら買ったの?」「4万円」という人が結構いるのよ。3万円以上買うとクリアフォルダーのおまけがもらえたんだけど、クリアホルダーをもらっている人がバンバンいるんだよ(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】それはそれでいいんだけど。僕ら3人ともマニアックで、それこそ「このインクの性能は」というのを言ってきたわけだけど、その反省もあって、女子博を見に行ったわけだけど、純粋に「かわいい」を楽しむ人たちがいて、そういう人たちがかわいいmizutamaさんの商品を買って楽しそうにしているのが、それはそれでアリだよねと。

【きだて】うん、本当にアリだよ。

【高畑】今年は、みんなが楽しめる文具が、もうちょっと増えてくれたらいいなという希望も含めて、そんな感じかな。

【きだて】これを一文にまとめるとすると何なんだ?

【高畑】「ファストデコとネオファンシー」かな。簡単なデコとファンシー。

【他故】なるほどね。

【高畑】その中には、「色がかわいい」とかも含まれてくるのかな。「色がかわいいだけで買ったらいいじゃん」というのも含まれるよね。

――ファストデコがシールやスタンプで、ネオファンシーがmizutamaさんとかですね?

【高畑】そう。mizutamaさんとかアデリアレトロ。

【きだて】アデリアレトロがMacとタイアップして、「iMac」作んないかなと思ったんだけど。

【高畑】ああ、かわいいね!

【きだて】それ、フラワーパワーだろって突っ込めよ!(笑)。(きだて注:フラワーパワーとは、2001年に発売された花柄のiMacのこと)

【他故】ははは(笑)。いいね。

【高畑】アデリアレトロでもっと何かできてもいいね。でも、アデリアレトロは当時の柄に限りがあるんだよね。

【他故】ああ、そうか。

【高畑】新しく作っちゃうと、当時らしさが出ないから、難しいよね。

【きだて】そうなんだよね。

――要は、昭和っぽいレトロな柄ということですか。

【高畑】そうなんですけど、ブランドとしてアデリアレトロがはっきりとしたので。アデリアレトロという枠ができたのは大きかったですね。割とはっきりと、アデリアレトロは別格になったね。

【他故】うん。

【高畑】昭和っぽければ何でもいいのかというのは、まだどうか分からないけど、でもライバルは出てきてもいいかなと思う。上手いことやる人たちがこれから出てきて、「その柄もアリかも」というのが出てくればいい。だから、サンリオに対するサンエックスみたいな存在が出てきてもいいかな。キティちゃんに対して、リラックマとかをちょっとずらした感じで出してくるみたいな、そういうキャラクターがあってもいいかな。

――はい。

【高畑】mizutamaさんの強さは本当に不思議で、「ああ、ここか」みたいに分析できればいいけど。

【きだて】mizutamaさんのあのイラストと、それこそシモジマの「ストップペイル」あたりとの共通項も考えていけるはずなんだよ。

【他故】そうだよね。

【高畑】何かあるかもしれない。

――シモジマはいっぱい出てますね。

【高畑】シモジマが考えていることと、ヘソプロダクションが考えていることとは、果たして同じなのか、違うのか。色々と考えることはありそうだし、考えると面白そうな気はする。今流行ってるファンシーっぽい図柄って何だろうね。案外、外に広がってない感じ。シモジマも案外普通の雑貨には広がらないじゃない。

シモジマ1.jpg
フェリシモがシモジマとコラボした「シモジマ×シロップ. ストップペイルのぷっくりがま口ポーチ

【きだて】それはそれとして、シモジマは俺になんぼか払ってくれてもいいんじゃないか(笑)。

【他故】ははは(笑)。

――きだてさんは、そうですよね(笑)。

【高畑】きだてさんは、大分貢献したね。

【きだて】多少はブームの火付けに寄与したはずだぞ(笑)。

――やっぱり、きだてさんのあの記事が大きいのかな(こちらの記事も参照)。

【他故】あれから火が付いた感じだね。

【高畑】シモジマのグッズの横にきだてさんの写真が載っていて、「きだてたく監修」って書いてあるとねぇ。

【きだて】本当に、なにを流行らせても俺には金が入らない(苦笑)。

【高畑】確かに、ちょっとね。

【きだて】でも、ストップペイルの横におっさんの顔はダメだわ。

【他故】ダメかぁ(笑)。

【きだて】何で俺は40代おっさんなんだろう。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】きだてさんはバ美肉(バーチャル美少女受肉の略。デジタル技術によってバーチャルな美少女の体を手に入れること)だよ。

【きだて】Vチューバーかあ。それはちょっと本気で考えよう。メタバースこそ俺の生きる場所かもしれない。

【高畑】メタバースで何かやる人として。

【他故】「何かやる」って(笑)。

【高畑】メタバースで文具が売れるかどうか分からないけど。

【他故】メタバースで文具は使わないなぁ(笑)。

【高畑】きだてさんが美少女キャラになる日も近い。それで有名になったら、そこに美少女キャラとしてシールが貼られるかもしれない。

【きだて】可能性はある。

【高畑】そういう時代になってきているから。

――話が何だか分からなくなりましたけど(苦笑)。

【高畑】分からなくなったけど(笑)、みんなが楽しめるかわいらしさが、もう一回見直されてきているし、それが広がってくれるといいいねという感じで。だから、小難しい機構とか、メカニズムとか。すごい性能がアップして、コンパクトな文具がという感じでもないかもしれないね。

お知らせ
ブング・ジャムのみなさんが「2022年Bun2大賞」ベスト文具に選ばれた文具たちについて激論を繰り広げた「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで有料公開しています(1記事200円)。ぜひ、ご覧いただき、面白くてためになる「文具エンターテインメントショー」を楽しんでください。
https://note.com/bun2_stationer01/

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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