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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.59 ブング・ジャムの2022年初文具(その1)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんが2022年になって初めて買った文房具を紹介してもらいました。

第1回目は文具王・高畑編集長の「isshoni. ノート」です。

写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長*2021年11月9日撮影
*鼎談は2022年1月25日にリモートで行われました。

ノートの新トレンド「B6横サイズ」

――今回、みなさんにご紹介いただくのは、今年初めて買った文房具です。まずは、高畑編集長からお願いします。

ダイゴー.jpgisshoni. ノート デスク 厚口タイプ(ダイゴー)

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【高畑】僕は、割とシンプルにノートです。ダイゴーの「isshoni. ノート デスク」厚口タイプです。B6のE綴じ、つまり横綴じなんですけど、ダイゴーさんは15インチノートサイズと言っています。要は、パソコンの手前に置くときに、横の幅がノートパソコンと大体同じくらいの15インチだよということで。

【きだて】文具王のMacBookは大きい方だっけか。

【高畑】僕のは16インチぐらいなので、ほぼほぼ一緒。外で仕事するときは、ノートパソコンにピッタリだし、家で使うときは、キーボードを別付けにしてるけど、キーボードの手前に置いて使ってます。

ダイゴー1.jpg

【高畑】これは、最近言われるようになった、パソコンの手前でノートを使うようになったという、コロナ禍で顕在化してきた、家で仕事をするとか、狭い机で仕事をしようと思ったら、「パソコンの手前にノートを置くスペースがないよね」問題を解決するために、ノートを小っちゃくしましたということだね。

【きだて】オフィスデスクならまだしもね、自宅の机だとパソコンの横にノートを広げる余地なんかないって話でしょ。あとはGIGAスクールの問題もあるよね。学校の机だってめちゃくちゃ狭いんだから。

【他故】狭いからね。

【高畑】だから、どっちにしても置くところはないよねということで、手前に収まるように。僕はこのノートが出てから、「横長ノートではなくて、縦を短くした“縦短ノート”だ」ってずっと言ってるんですけど。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】他社でも、コクヨは「キャンパスノート ハーフサイズ」というのがあって、高さを半分にしてるんだけど、まさにあれを昔からやってる人はいるんだよね。

【きだて】真っ二つに断裁しましたってやつ。

【他故】ああ、あるね。

【高畑】それが商品としてちゃんとしたかたちで出ているのはいいんですけどね。縦を半分に切ったB5ノートというのはベースにあって。実は、この「isshoni. ノート デスク」厚口タイプは、糸綴じになっている、割とちゃんとした手帳と同じ綴じ方なんだけど、当然、ダイゴーが手帳メーカーなので、2021年版でこれと同じサイズの手帳を出したんだよね。

【他故】はいはい。

【高畑】それで、これと同じサイズで、こういうちゃんとした分厚くてきっちり綴じのノートは、他にないんだよ。

【他故】ないの?

【高畑】ようやく「キャンパスノート」が出て、これから出てくるのもちらほらあるんだけどね。ど真ん中を糸綴じやホッチキス綴じしているノートは、これまでにもあるのね。ツバメノートとか。

【他故】ああ、あるね。

【きだて】ロディアのがあったよね。

【高畑】ああ、ロディアの「ウェブノート」の横綴じだっけ? 強いて言えば、そのロディアのはそうなんだけど、モレスキンのは基本縦開きなんだよね。速記の人が使うやつ。真ん中に線が入っていて。あれは、縦に長いというつもりで作ってるので、罫線も横に入ってるしね。横長でちゃんと製本されたノートは、あまり売ってないんだよ。

【他故】うむ。

【高畑】他になんかありますか? B6くらいのやつで。A5サイズだとリングのやつとかいくつかあるんだけど、A5だとでかいんだよ。パソコンの幅よりだいぶでかくなるから。あと、奥行きが結構でちゃうんだよね。だから、縦が短いB6サイズで横に開いて、簡易製本じゃなくて割としっかりした製本のやつってあんまりないな。

【きだて】言われてみれば、確かにピンとくるものはないな。

【他故】そうだね。

【高畑】あんまり見ないよね。去年手帳を調べたら、手帳メーカーが横長をすごい出してたのね。だから、手帳はあるんだよ。「ロルバーン」もB6の横型はあるんだけど、手帳にしかないんだよ。(*今は数社から糸綴じのB6横サイズのノートが登場しています)

【他故】ああ~。

【高畑】最初に日玉があるんだけど、この日玉が入ってるのしか売ってないから、補充用のノートは売ってないんだよ。これ困るじゃんと思って。ダイゴーは去年の手帳シーズンに、普通のノートも一緒に出してたのね。だから、これを買って使い始めたら「いいじゃん」となって。すごい良かったので、すでに半分くらい使ったけど、なくなる前に買おうと思って、年始に買い足しましたということなので。

【他故】はいはいはい。

【高畑】恐らく、こういうノートは今後いっぱい出てくると思うのよ。

【きだて】うん、需要はすっごくあると思う。現在進行形で困ってる人は多いから。

【高畑】多分これって、ノートの新しいスタンダードサイズとして、B6横というのが標準的なサイズの一つとして新たに加わるんじゃないかという風には思ってるんだけど。

【他故】うん。

【高畑】だけど、まだそんなに出てないんだよ。なので、これからだなと思いながら、今年の最初に、補充用にこれを買いました。

――すでに去年から使ってたんですね。

【高畑】でも、本格的に使い出したのは、今年になってからにはなるんだけど。年末に手帳とか色々とみていて、ちょっと書き始めてたんだけど、年が明けてからパソコンの手前で使い始めたら、案外良いなと思って。僕はいつもデスクでパソコン使ってるけど、キーボードとノートを両立させるのは難しいので、僕はふせんを使ってたんですよ。ポップアップタイプの3Mのふせんを使っていて、打ち合わせしていて思い付いたこととか、忘れてはいけないことなんかを書き込んでいたんだけど、ノートにしておくとそのまま持ち出せるし、案外良いなと思って、今は割とノートを使ってる。

【きだて】普通のオフィスだと、みんなそれをブロックメモでやってたんだよね。

【高畑】ああ、そうかもしれない。そんな感じ。

【きだて】そうなんだけど、家で仕事をするにあたって、ブロックメモを横に置く場所すらないんだなと思って。

【高畑】ああ。でも、ブロックメモって、いっぱい書くとバラバラになるじゃん。

【他故】まあね。

【きだて】だから、これはブロックメモに代わるものなんだよ。

【高畑】ああ、そうかもしれないな。

【きだて】使い途としては、何かをちょちょっと書き残すためのものじゃない。

【高畑】だからそうなの。きちんと書くノートかというと、とりあえず書いておくメモ用としてすごくいいので。僕の書いている内容は、ふせんやブロックメモに書いているようなことだから。ブロックメモだと散逸しちゃうから、計算した途中のやつを放っていたらどっかへ行っちゃうじゃん。

【他故】ああ、分かる。

【高畑】そういうのを散らさずに置いておけるのね。ちょっと遡れるメモなので、案外良かった。

【きだて】うん。

【高畑】あと、これは小さいので、カバンにもするっと入るから。自宅と会社を行ったり来たりするときに、前はふせんに書いてそれを何枚も手帳に貼ってたけど、それが要らないなと思って。昨日、一昨日書いたことも遡って見られるし、それをキーボードの手前に置いておけるので。

【他故】うん。

【高畑】まあ、きだてさんは「手汗が」って言ってたけどさ。

【きだて】手汗が染みたところにペンで書くと、じんわりにじむからね。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】キーボードの前だと、常にノートの上に手を置く形になるじゃん。そこが問題なんだよ。

【高畑】僕も置く。だから、手汗とかで合わない人も、もしかしたらいるかもしれない。僕の場合だと、Bluetoothキーボードを外付けしていて、いつもはキーボードの手前でメモったりしてるんだけど、例えばメモったことを元にメールをしたりするときは、キーボードの向こう側にも置けるんだよね。前後入れ替えたりができるので、案外便利。だから、キーボードの奥側に置いても、幅が狭いからパソコンと干渉しないところに置けるんだよね。案外、置く場所の自由度も高かったなと思って。

【他故】はいはい。

【高畑】これまでだって、パソコンを使いながらメモるときに、狭いと思ってカッターで切っていた人もいたから、そういう需要ってあったんだけど、コロナだリモートだ、それに合わせて何か作らないと、となったときに、それがはっきりとこのかたちになったのは、ちょっと面白いなと思って。

【他故】そうだね。面白いよね。

【高畑】これって、明らかにパソコンありきのサイズというか、かたちじゃない。普通のノートは、ノート単体で使いやすいようにデザインされているから、何処で使うというような設定がないというか、ノートだけどこかにあるという風に考えられているデザインだと思うんだけど。このノートは、明らかにパソコンありきのノート。このノートがこのかたちであるということイコール、「横にはパソコンがありますぜ」っていうメッセージを持っているのはすごく面白いなと思って。

【きだて】まあ、そうだね。パソコンのジャマにならないかたちとサイズという設定があるわけじゃない。

【高畑】このかたちである時点で、パソコンの存在を暗に示しているわけじゃないですか。もうノートの時代ではないというか、パソコンがあって、その前に置く。パソコンを使っていてノートを使ってない人はいるけど、ノートだけ使っていてパソコンを使ってない人はいないよなっていう感じがあって、そらそうだよなっていう。「どっち」というときに、パソコンの方が主にあるというのを暗に表現してしまっているところが、「もうそんな時代だよね」っていう気がする。

【他故】あ~なるほどね。

【高畑】今回改めて、「サイズがデザインだな」と思った。みんな「測量野帳」を便利と言ってるけど、あれは作業服の胸ポケットに入るサイズにしているから縦に長いんだけど、パソコンの手間に置きやすいかといったら全然置きやすくはないじゃないですか。

【他故】うん。

【高畑】断裁してまで使うかといったら、まあいいかなと思ってずっとふせんを使ってたんだけど、ノートを手前に置いたら案外便利じゃんと思っちゃったのが、今年1月の発見かな。

【きだて】聞いてて「あー」と思ったのが、文具王が自宅と会社を往復してて、ブロックメモだとそれがやりづらかったんだけど、ノートになったらそれができるというのが、「ああそうか」と思って。

【他故】うん、そうそうそう。

【きだて】オフィスと在宅ワークどっちもある場合、会社でメモったものを家に持ち帰れないというのは意外と不便なんだよね。そう考えると、このノートのかたちと機能は正しいんだと。

【高畑】うん、そのような気がする。

【きだて】聞いてて、ちょっと「ハッ」とすることが多かったね。

【高畑】これだって、言われれば当たり前なことだし、実際に横長の細いノートを手前に置くというのをやってみて「そうかそうか」という。これまで、ふせんをティッシュのようにといって山ほどやってたけど、そのティッシュみたいなふせんを、「そうだ、今日会社でやらなきゃ」と言って、5、6枚重ね直して、手帳にはさんで持ち歩いていたんだよ。のり付いてないブロックはバラバラになっちゃうし、付いてたら付いてたで扱いにくいしで、じゃあノートでもいいかという変な納得感というか、まあ案外便利だねという。

【きだて】望むらくは、ユポで作ってくれよという(笑)。

【高畑】ははは(笑)。きだてさん的にはね。それは確かにね。

【きだて】本当に、それ夏場には使えないよ。

【他故】汗でね。

【高畑】逆に、きだてさんだと手を置く台がね。難しいよね、ユポだと普段使ってるペンが乗らないかもしれないから。

【他故】そうそう。鉛筆だったいいかもしれないけど。

【高畑】耐洗紙でやるとか。

【きだて】結局のところ俺は手前に置けないから、無理矢理キーボードの横にスペース作って、ふせんや情報カードを置いたりしているわけですよ。

【高畑】それはそれであると思うんだよ。手前に置きたくない人には。例えば、パソコンの横に、ブロックメモではないんだけど、パソコンの横でジャマになりにくい、ちょっとメモみたいなのが。あるいは、これを縦にしてパソコンの横に置くとか。

【きだて】そういう横長いものがね。

【高畑】縦長メモとして使うとかね。

【きだて】俺の感覚では、横で置きやすいメモが欲しいんだけど。でも、何にせよ、パソコンの前に置くにせよ、横に置くにせよ、結局のところは込みで使うものなんだなと。

【他故】まあ、そうだね。

【高畑】普通のノートでも、A5だとちょっとジャマだなと。

【きだて】ジャマだよ。

【高畑】かと言って、A5よりもどんどん小さくしていくと、今度は書くスペースが小さくなるじゃん。そう考えると、ある程度面積を確保しながら置きやすいかたちというのを模索しないといけないんだよね。きだてさんが言うような、手前じゃないところに置くのの最適解ももしかしたらあるのかもしれない。

【きだて】その辺は、俺として模索したいんだけど。文具王は手前で全然よかったという話だし。

【高畑】以前だったら、マウスパッドになるメモとかあったじゃん。

【他故】あったね。

【高畑】あんな感じの立ち位置かもしれないね。文具王としては、パソコン手前の横長はアリだなという感じ。それで、追加のノートを買ってきたということで、今年らしい1冊かなと思います。

*次回は「ジェットストリーム 新3色ボールペン」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


「ブング・ジャムの文具放談 特別編・完全収録版~『ブング・ジャム的Bun2大賞』ベスト文具を決定!~」〈前編・後編〉と「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2020年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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