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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.54 最新の進化系マーカー&筆ペンをチェック!(その2)
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。
今回は、最新の進化系マーカー&筆ペンを取り上げました。
第2回目は、パイロットコーポレーションの「瞬筆 顔料インキ」です。
(写真左からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2021年6月30日撮影
*鼎談は2021年9月2日にリモートで行われました。
人気の速乾筆ペンに水濡れに強い顔料タイプが登場!
――次は「瞬筆」です。
【高畑】最初に出た「瞬筆」は、染料インクだったんだよね。
【きだて】そうそう。
【他故】2019年に発売されたんだよ。
【高畑】それで、今回は顔料タイプが出ましたと。顔料なので、水に流れにくいということだよね。あとは、色が濃いとか。確かに、早く乾くからすごい便利なんだけど、墨が好きな人からみたら、これはちょっと青いよねという感じだったじゃない。
【他故】そういう話をしたよね。
【高畑】早く乾くけどそれはどうかなという話だったんだけど、そこに今回顔料系が出たことで、そこは期待していたんだけど、線が茶色いんだよね。
【きだて】一転して赤黒色というね。
【高畑】それで、軸の色が茶色になってるんだよ。
【きだて】そう、まさに。ある意味分かりやすいな(笑)。
【高畑】サクラクレパスの「ボールサインiD」でいくと、ナイトブラックからカシスブラックに変わったみたいな。ちょっと茶色いぞという気はするんだけど。
【きだて】結局、青黒か赤黒のどっちかにしか振れないのかという。
【高畑】案外赤いというのが、ちょっと気になりました。
【きだて】俺は、この赤黒系の雰囲気が好きではないので。単純に色の好みからいうと、染料「瞬筆」の方が好きだった。
【他故】あ、色としてはね。
【高畑】顔料系になって期待してたんだけど、ちょっと赤に振りすぎかなと思ったので、もうちょっと黒だとよかったかなと思います。ただ、速乾性は速乾性で、原理的には近いんだろうね。確かに、きれいに乾くし。あと、これは水に強いのかな。
【他故】耐水性はあるはずだよ。
【きだて】確かに、流れはしない。
【高畑】前の「瞬筆」は流れるのかな?
【他故】前の「瞬筆」は染料だけど、そういえば試したことないな。でも、耐水性はないんじゃないの。
【きだて】前のも、そんなにデロデロに流れるという感じじゃなかったかな。
【他故】ああ、そうなの。
【きだて】ただ、輪郭がぼやっと溶けてくる雰囲気で。
【高畑】今ちょっと水を噴いてみたけど、染料系のはじんわりと紫色が流れ出てくる。そういう意味では、今回の方が耐水性ということでは安心かな。前回のもダメかというと、言うほど流れてないけど。
【きだて】さすがに、筆ペンとして売る以上は、その辺もちゃんとしていると思うんだよ。
【高畑】扱いやすは扱いやすいし、乾くの速いし、書きやすくはある。どっちが好きかと言われると、前の青より茶色の方が好きなんで、どっちかというと前のより好き方向に寄ってるんだけど、でも真ん中にしてくれって思う(笑)。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】どっちかと言われたらの話だけど、そこは気になったな。
【他故】そうね。
【高畑】前は、このツインタイプってあった?
【他故】前あったのは、片っぽが薄墨だったんだよ(こちらの記事を参照)。
【高畑】それが今回は、細字・中字のツインタイプになりましたよということか。きだてさんは、筆タイプよりこっちの方がいいんでしょ。
【きだて】そうなのよ。俺は昔から、パイロットの樹脂筆がすごい好きで。それこそ「筆まかせ」なんて、ずっとペンケースに入れてるものね。「二役」も書きやすくていいです。というか、筆ペン使うんだったら樹脂筆一択なぐらいに毛筆が苦手だから。
【他故】この「本格毛筆」のタイプがね。
【きだて】そう。俺の手ではコントロールできません。
――今回の「瞬筆」のそのタイプは使いやすいですか?
【きだて】この「二役」は使いやすいです。細い方がかなり硬めのチューニングになっているので、カラーペンを使い慣れている人なら、まずまず使い方で戸惑うことはないだろうという硬さ。グッと力を入れてようやくしなるぐらいの硬さなので。本当に硬いよ。
【高畑】本格毛筆で書こうとすると、ほとんど筆圧をかけずにコントロールしないといけないので、ちょっと難しいっちゃ難しいよね。
――これは宛名書きにいいですよね。
【他故】これだと水に流れないですしね。速乾性があるのに慣れてしまうと、なかなか他のに替えられないというのがあって。
【きだて】多分、「顔料タイプを出してくれ」っていう要望が多かったんだろうね。
【他故】やっぱり、筆ペンで書くとなったら、はがきの表書きだよねと言われたら、ぐうの音も出ないじゃないですか。「耐水性のある顔料を使ってほしい」というのはあったんじゃないですか。表書きをする分には、これが最強だと考えていいんじゃないですかね。
――うちの家族にも、宛名書きでこれを渡しましたよ。
【高畑】速乾性は速乾性で便利なのでね。インクの色も前の青よりは気にならなくなったかな、という気はします。前のは本当に青いという気がしたんだよね。
【他故】そうそう、それは僕も思ってた。
【高畑】それでいくと、きだてさんの言っている「二役」の方は、確かにインクが茶色いと言われればそうなんだけど、こっちは割かし目立ちにくいよ。そんなに言うほど茶色かというと、まあそこまでは。
【他故】もっと他に黒いのがあると言われたら仕方ないんだけどね。
【高畑】前の青のときよりは気にならない。
【きだて】みんな青黒嫌うな。俺は青黒は気にならないんだけどな。
――きだてさん的には、染料系の「瞬筆」のインク色の方がいいんですね。
【きだて】うーん、好みの問題なんだけど、赤黒が視覚的に締まりが無くて苦手で。油性ボールペンをそんなに好まないのも、赤黒系インクが多いからって部分はあるし。
【高畑】どっちか派って出るよね。
【他故】そうね。
【高畑】そこは好みだけど、僕は悪くないかなと思う。欲を言えば、もうちょい黒くしてほしかったな。
【他故】これは、年々改良されて黒っぽくなってたりはしないのかな。
【高畑】気になるのは、軸の色がちゃんと青と茶色というところだよ。
染料タイプの「瞬筆」は軸色が青い
【他故】まあね(笑)。
【高畑】わざわざ茶色にしてるんじゃないかと思うぐらい茶色いから。
【きだて】改良型が出ると、軸が黒になるんでしょ。
【他故】軸の色も段々と黒くなってくるんだ(笑)。
――さすがにこの軸の色ぐらい茶色くないですよ、若干そうかな?ぐらいで(苦笑)。
【高畑】それはそうなんだけど、軸の色がこうなので気になるね。
――速乾性を持たせたインクなので、真っ黒くするのは難しいんですかね。
【きだて】どうなんだろうね。
【他故】各メーカーの考え方が違うだけじゃないですか。
【高畑】あえてこの色にしたのかというところだよね。
【他故】そうそう、この色にしかできなかったのかどうなのかは分からないので。
【高畑】あえて、染料系と顔料系が分かるように青系と赤系に分けましたとか。
【きだて】その色分けは、一般の人にどれだけ役立つんだ(笑)。
【高畑】だいたい、一般の人が染料系と顔料系で筆ペンを使い分けるかというと、どれか1個「これがいいよ」というやつを作ってくれとなるよね。
【きだて】まあ、そうだろうね。そうなると、やっぱりこの顔料系を薦めるしかないじゃない。
【高畑】まあ、そうなるけどね。僕らは気になってないけど、きだてさんが気になるというのは、少なからずそういう人はいるということだからね。
【他故】そうだよね。
【高畑】とはいえ、早く乾くのは正義だよね、というのはあるね。
【他故】そりゃもうそうだ。「瞬筆」は、筆ペンのインクの乾き方じゃないんだよ。
【高畑】筆ペンじゃねえじゃんっていう(笑)。
【他故】シュパッと乾いていっちゃうので(笑)。
【高畑】筆ペンらしさが、いい意味でも悪い意味でもない。水性なんだけど、書いていると油性マーカーみたいな雰囲気なんだよね。
【きだて】前に記事を書いたときにも使った表現なんだけど、「瞬筆」は砂漠に水滴を落としたような乾き具合という印象で。
【他故】そうね。とにかく、紙の中に消えていくような感じ。
――まあ、最初に速乾筆ペンを作ったのが、そんなに筆ペンを作ってないメーカーだったという。
【きだて】だからこそできた発想というのもあるんだろうけどね。
【他故】そうだろうね。シェアの少ないところが、どうやって喰っていこうかという意味合いもあっただろうからね。
――前の「瞬筆」は、「2019年Bun2大賞」で7位に入りましたからね。今回のも、文とびに載せたときに、結構反響が大きかったですよ。やっぱり、「速乾」というのは響くんだなと思いましたけどね。
【他故】そうでしょうね。使ってる人にとって、早く乾くというのは、やっぱり嬉しいことだと思うんですよ。作業している人は特にそうだと思うんですけどね。
【きだて】筆ペンの乾きが遅いというのは、人類にとって長きの悩みだったわけじゃない。
【他故】ふふふ(笑)。
【高畑】年賀状を乾かす場所がない問題があるからね。書いた年賀状が、段々と床に広がっていくというのがあるから。
【きだて】逆に言えば、筆ペンがすぐ乾くと聞けば、みんなそのメリットにピンとくるんだよね。
【高畑】そうだね。
【きだて】だいたいの人は筆ペンの乾きの遅さで嫌な思いをしているだろうからさ。反響があったというのは、まあそういうことだよね。
【他故】それが満を持して顔料系が出て、耐水性が出ましたということなのでね。
――それにしても、速乾インクの発明はすごかったということですね。
【高畑】その後、他のメーカーが追随してきたということは、やっぱりメリットはあったんだろうね。気になるアイテムではあるよね。*次回は「速乾ぺんてる筆」です。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が群馬県沼田市のコミュニティFM「FM OZE」で好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
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