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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.47 最新人気筆記具のココに注目!(その1)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は最新の人気筆記具3本をセレクト、ブング・ジャムの独自の視点からそれぞれの気になるポイントについて語ってもらいました。

第1回目は、三菱鉛筆の「ジェットストリーム エッジ3」です。

写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長*2020年11月7日撮影
*鼎談は2021年1月25日にリモートで行われました。


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これぞ“未来”のボールペンだ!

三菱1.jpgジェットストリーム エッジ 3」(三菱鉛筆) 油性ボールペンで世界初のボール径0.28㎜を実現した超極細ボールペン「ジェットストリーム エッジ」に3色モデルが登場。後端のダイヤルを回すことで3色のリフィルが回転し繰り出すことができる“スピロテック機構”を新たに開発し、新しいアシンメトリーな偏芯形状である“ポイントノーズ”形状をペン先に搭載することにより、本体軸に対しリフィルが常に真っすぐペン先に向かって出てくることを可能にしている。軸色は(上写真左から)ブラック、ホワイトレッド、ツートンターコイズ、ツートンレッド(限定)、ネイビー(限定)の5色をラインアップ。税抜2,500円。

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――今回は、最新の気になる筆記具3本をセレクトしました。まずは「ジェットストリーム エッジ3」からいきましょう。

【きだて】「ジェットストリーム エッジ」を最初に見たときには、「そうか、油性で0.28㎜ができるんだ!」って驚きがあったじゃない。「エッジ3」も驚いたんだけど、でもその驚きって、檄細字とかそういう部分とは別のところでしょ。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】とにかく妙な回転繰り出し機構とか、偏った口金とか、そういうところに目がいくわけなんだけど。でもこれは奇をてらったんじゃなくて、ただ純粋に0.28㎜を3色で書きやすくするがための機構なんだよね。

【他故】そうだね。

【きだて】よくここまで、変なギミックを盛り込んで作ったなと思って。そういう意味で感動はあったんだよね。

【高畑】そうなんだよね。ボールペンではない何かの道具感がすごくあって。

【きだて】ん? どういうこと?

【高畑】新しい、別の道具を持っている感じがする。

【きだて】あ~。

【高畑】道具というか、機械というか。その辺はよく分からないけど、ガジェット系の何かを持っている感じがする。僕の中では、ボールペンという印象があまりなくて。すごく違うもの感というか、別のものだなという感じはすごいする。

【きだて】ボールペンって、書くという行為全般のための汎用機械でしょ。でもこいつは性能を「0.28で快適に3色が書ける」に振り分けた、ある意味局所的なものだから、それでちょっと違う感じがあるのかね。

【高畑】あとね、仕上がりと重さとギミックとかのバランスが、ボールペンの仕上がりとはまた違う、それこそデジタル器機だとかの仕上がりに近い感じの出来にみえるのよ。俺的にはね。

【きだて】ほ~。どの辺でそう感じるんだろうね?

【高畑】少なくとも、自分の中では、ボールペンとは別物感がすごくあって、ギミックもそうだし、この太さの六角軸で、縦筋のグリップがあって、変なかたちにスライドしているペン先があってというのが、多分一々ちょっとずつズレてるんだろうな。こういうのを、例えばワコムが作りましたとか、デジタル系のところが作った何かだったら、「ああそうなの」と言えるけど、「これはジェットストリームです」と言われると違和感がすごくあるんだよね。

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【きだて】デジタルガジェットに近いというのは、先端にカメラが付いているスマートペンってあるじゃない。

【他故】あったね。今でもあるか。

【きだて】「Livescribe」とか、その辺と同じかたちなんだよね。要は偏芯してて、下の方にカメラが付いているみたいな。

【高畑】それはそう。Anotoなんかのシステムに近いというのもあるんだけど、だからというわけでもなく、仕上げ方が一々違うというところだと思う。中心ずらしてるのもそうだし、グリップがグリップとして機能してないところとか、軸が六角だったり、芯を繰り出すのにダイアルだったりとかというのが、これまでのボールペンの流儀からちょっとずつ外してるんだよ。全部がちょっとずつ外れてるから、トータルとして、ボールペンというカテゴリーから外に出ている。俺の中でのボールペンらしさが1個もないという感じ。

【きだて】文脈としてのボールペンじゃないと?

【高畑】僕のイメージするボールペンらしさが、軸の中にもないし、ペン先のかたちにもないし、ペン先から出てきたリフィルにもない。だから、今まで僕が知っているボールペンらしさを持たない何かに見えるんだよ。

【他故】う~ん。

【高畑】それは、僕の勝手なイメージかもしれないけど。このあと取り上げる「シャーボNu」は、ほぼこれまでのボールペンで、クリップだけ変えましたみたいな感じがするじゃん。軸の部分はそんなに珍しくない感じだし。クリップのあたりが違うぐらいで、そこから先だけを見た感じだと、これまでのボールペンとたいして変わらないじゃんという感じがするんだけど、こっちは一々違う気がするんだよね。クリップも、これまでとはちょっと違うかたちのものを使ってきてるじゃない。

【きだて】う~む。

【高畑】1カ所だけでなくて、前から後ろまで全部がちょっとずつズレてきているから、結果的には違うものに見えているというのが、自分の中にはある。重さとかのバランスが全然違うので。

【きだて】分かったような、分からないような。

【他故】本当に(笑)。

【高畑】ちょっと分からないか。僕の知っているボールペン像から、「軸ちょっとズレてます、グリップちょっとズレてます、ノックのノブちょっとズレてます、クリップもちょっとズレてます、中から出てくるリフィルもちょっとズレてます」というのが、全部ズレてると、ちょっとSFという気がするんだよね。ちょっとした架空の何かに見えてしまうような感じがする。何かね、現実感があんまりない。何かの小道具のように作られた感じがするっていう。良く分からないけど、俺的にはそんな感じ。

【他故】なるほどね。

【高畑】誰かが創造して作った別の世界線という言い方がいいのかどうか分からないけど、どこかの人が別のところから考えて作ったらこうなったみたいな感じで。今までのところを知っていたら、こちらには行かなかった気がする。

【きだて】1990年代に想像されていた2020年の未来ボールペンとか、そういう感じかな。

【高畑】そうそう、例えばそんな感じ。

【きだて】『ブレードランナー』に出てくるガジェットみたいなの。

【高畑】そう、シド・ミードが描いたらこうなったみたいな。

【他故】はいはい、そういうことね。

【高畑】何かそんな気がするんだよ。それこそ、これのスケッチなんてさ、『ブレードランナー』のスピナーの横に置いてあったら、それっぽい感じがしなくもないじゃないですか。

【きだて】そういうことな。

【他故】それなら分かる。

【高畑】どこかで枝分かれした、別の誰かが考えた未来の文房具みたいな感じで。それがデジタルペンじゃなくて、普通のボールペンだったのが違和感になるというかさ。これがカメラ付いていたら、別に違和感がなくてデジタルペンという感じがするんだけど、それがボールペンといわれると「ボールペンってこんなんじゃないじゃん」みたいか感じが俺の中には結構あって。昔の「AXIS」とかによく載ってそうな。

(一同爆笑)

【高畑】俺が大学に入った頃の「AXIS」とかには、こんな感じのコンセプトスケッチみたいなのが載ってたりするんだよね。それは別にけなしているわけではなくて、そういうのって今は普通にできないじゃん。今の時代から考えたら、今のもののちょっとズレしか作らないけど、これ全部ズレてるから。

【きだて】それこそ、モーターショーのコンセプトカーに近いんだろうな。

【他故】コンセプトカーか。

【きだて】もしまだ三菱鉛筆がISOT(国際文具紙製品展)に出てて、「これがコンセプトボールペンです」と出てきたら、「お~」となるという。

【高畑】そうそう、多分そうだと思う。「実際にはまだ走らないんだろう」というコンセプトカーを見せられた感じで、地に足が着いてない感じというかさ。

【きだて】それ、大分ほめてないな(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】いや、違うんだよ。コンセプトカーを見たときの、「それはないわ」と思いながらも「かっこいい」という部分ってあるじゃん。

【他故】ああ、あるね。

【高畑】ちょっと現実になさそう。コンセプトカーって、街を走ってる姿がいまいち想像できないじゃん。でも、かっこいいじゃん。ちょっと現実離れ感があって、これが商品として普通に出ているのが違和感があるくらいで、コンセプトカーを見ている感じなんだよ。

【きだて】さっきも言ってたけど、0.28を3色で書くというコンセプトを突き詰めているということだもんね。

【高畑】そういうこと。

【きだて】ある意味、コンセプトモデルで合ってるんだよね。

【高畑】そういうことだよ。0.28という極端な芯を使っていますというところで、それを使うために特殊なロータリーシステムを作ったらこうなりましたってなるよね。それを活かすためにはこんなかたちになりましたと。今発売されている他のペンは、そんなことを言いつつも、どちらかというと今までの現行のかたちに近いところで落ち着くじゃん。

【他故】はいはい。

【高畑】でも、落ち着く前に出ちゃってる感じがあって、こんな真ん中がズレてる芯とか、コンセプトモデルとして勇気がないと、こんなかたちにならないじゃん。

【きだて】ある意味、理詰めで作られているとは思うんだけど、理論の部分が文脈にないということだね。

【高畑】多分そう。今までの流れにないところを頭で考えて、理屈っぽく作っていったら、確かにこういうかたちとしてできるんだけど。これの真逆のところに、パイロットの「アクロボール」の0.3㎜があるじゃん。パイロットの0.3って、未来でも何でもないところに落ち着くじゃない。でも、書きやすいじゃん。あれはあれで正義だと思うんだけど、こっちは全然地に足が着いてないところにあって、これで正義だと思うんだよ。このかたちであることの面白さというのが、本当に別格という感じがするんだよね。これまでの他のものに、あまり似ていない。

【他故】あ~そうね。

【高畑】俺の知っている他のペンに、あまり似ていない。俺の中ではそんな気がしてるのね。ごめんなさい、ちょっと僕のイメージで色々と言っちゃったけど。

【きだて】割と長々としゃべってて、何となく落ち着いたけど(笑)。

【他故】ははは(笑)。

――こういうかたちのボールペンって、他にないですかね?

【高畑】アウロラとかラミーとかが、センターがオフセットしている三角のかたちの変わったペンを出してたじゃないですか。あと、きだてさんの持ってる「テゼット」とか。

【きだて】その辺は、偏芯している意味があんまりないペンじゃない。「テゼット」は電卓を配置する必要があるから別だけど。

【高畑】偏芯している意味がないというか、あれはあれで考えたのかもしれないけど、「ジェットストリーム エッジ3」は意味があるからね。

【きだて】こういう「理詰めで作ってみたら、だいぶ無茶な感じになりました」というの、結構好きなんだよね。見た目も何もかもわりと好みだわ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】僕も、その違和感が嫌いじゃなくて、好きなんだよ。

【きだて】他故さんは、これどうなの?

【他故】僕はこれ、昔見たことのある未来、という感じがしてたのね。今の文具王の話に近いかどうかは分からないけどさ。色で引っ張られちゃってると思うんだけど、フェラーリに見えるんですよ。

【きだて】他故さん前もそんなこと言ってたね。

【他故】フェラーリが365GT4/BBっていう、初めて時速300㎞を超えるスーパーカーを出したときのカラーリングとかたちにそっくりなのね。

――あ~、その赤と黒のボディが。

【他故】赤と黒のツートンカラーをやったのって、365BBと512BBしかないんですよ。子どもの頃にあこがれていたものが、今もう一回出てきたという未来感。ボールペンとして優れているということとちょっと違って、僕はこの色に引っ張られちゃってるね。正直に言えば、この接点だけが好きなんだよ(笑)。

【きだて】ははは(笑)。

【高畑】スーパーカー感があるんだよ。ロータスヨーロッパのあのよく分からない出っぱってる背中とか、カウンタックを初めて見たときのあの面の取り方とか、クルマとして違和感があるじゃん。そういう感じはするよね。

【他故】そこが僕は大好き。

【高畑】スーパーカーとかコンセプトカーとかそんな感じで、日常のクルマとは明らかに違うじゃん。色も含めてだけど。

【他故】乗る人を選ぶよね。

【きだて】ただ単に、3色の極細ボールペンというだけなんだけどね。

【他故】あははは(笑)。

【高畑】0.28というのがいかに特殊であるか。リフィルだけ作るとよく分からないけど。単色の「エッジ」もそうだけど、わざと普通じゃなくしている感じはするんだよね。

【他故】そうだね、うん。

【きだて】単色の「エッジ」って、何かイキってる感じがするんだよね。何か、ここまでする必要あったの?っていう。

【高畑】ふむ。

【きだて】無理に頑張って面白いことしようとしてるだろ?みたいな雰囲気というか、作りに合理性を感じられなくてね。それが「エッジ3」になると、一転して理屈のかたまりになったよね。俺は、単色より「エッジ3」の方が圧倒的に好きだわ。

【高畑】それは分かる。一番気になっているのが、単色の「エッジ」のクリップの根元にある四角い箱が意味分からない。

【他故】ああ、ここね。

【高畑】同じことをやろうとしているんだろうけど、「エッジ3」の方が全然きれいに収まってるじゃん。

【他故】ここは一体何なんだろうね。

【きだて】分からん。

【高畑】三菱的には、ただ単に芯径が細くなっただけじゃない、違うものを作ったんだよというのが、このイキってる感に現れているんじゃないかなと思うんだけど。それを3色にしたときに、その特殊性を全部入れてったら、きだてさんも納得のかたちになったんだじゃいかな。

【きだて】結局、これを実現するために、イキる余裕もなく、全部詰め込んだんじゃないかなと、そこまでは思うよね。

【高畑】なるほどね。

【きだて】それで、肝心の書いた感じはどうかという話ですよ。

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【高畑】僕は、持ち方自体が人によって変わるかなと思うんだけど。これはスーパーカーで、乗りこなすのにはクセがあるので。これは、合う・合わない結構バラつくと思うけど。

【他故】あるだろうね。

【高畑】僕はね、持つときに上下逆さま派なんですよ。

【きだて】あ~クリップが下向いちゃう。

【高畑】引っくり返さないと、ちょうどいい角度で書けなくて。真裏とはいかなくても、かなり逆向きに持っている感じ。

【きだて】うん。

【高畑】この持ち方が正しいかというと、多分人によって違うと思うんだけど。

【きだて】それ分かる。ちょっと傾けた方が、ペン先の視界がよくなるじゃない。

【高畑】それもあるよね。

【きだて】俺は、45°くらい傾け派。

【高畑】ちょっと向こうに傾いている感じ?

【きだて】そうそう。クリップが自分より向こうを向いちゃう感じ。それくらい傾けると、ペン先の視界が割とよくて書きやすい。

【高畑】そうやって、ちょうどいい書き心地を探してクルクル回して、「どこだろうな」という感じになっちゃうのは、これまでだったら選択の余地がなく真ん中なんだけど、これはやっぱりズレてるからさ。このまま持つのが見た目にもしっくりくるんだろうけどさ、ただ実際に文字を書こうとすると、そうじゃない人が多いというか。

【他故】そうだろうね。俺もきだて氏と同じかな。ロゴが上を向いちゃう感じ。

【きだて】そう、ロゴが上を向く。

【他故】僕は、クリップが当たるので、ほぼ90°近くまでいっちゃうけど。

【高畑】クリップの位置をずらしたくなるんだよね。

【他故】そうそう。

【高畑】でもね、書いているときの感触は、単色よりもこっちの方が好きなくらい。

【きだて】これ個体差なのかもしれないけど、すごいカチャカチャいうのよ。

【高畑】多分、それは設計だと思う。

【きだて】だから、書いているときの感触は、単色の方が圧倒的にいい。

【他故】単色はカチャカチャいわないからね。すき間ないから。

【高畑】わざわざ偏芯させたにもかかわらず、ちょっとすき間があるのは、もう少し詰めてほしい感じはするね。

【きだて】ここまでやるんだったら、もうちょっとできたと思うけどね。

――3色だからカチャカチャするんですか?

【きだて】そうそう。

【高畑】スライドして芯が出てくるのが、ギリギリまで追い込むと、引っかかったりして動かないのかもしれないね。

【きだて】どこかでクリアランスを大きめにとる必要があったのかもな。

【他故】そうなのかもしれないね。

【きだて】でも、この回転式は正解なんだよね。単なるノックじゃ書きづらくて。

【高畑】うん。

【きだて】従来の「ジェットストリーム」の3色ボディにエッジリフィルを入れたら、本当に書けないんだ。

【高畑】気持ち悪いよね。単色が出た時点で、これを4&1に入れてみたんだけど、「うわ~、これは無理」と思った。

【きだて】本当にね、垂直ぐらいまで立てないと書けない。寝かしていくと、あっという間にガリッと引っかかってダメになる。

【高畑】それで、多色ペン独特のななめに芯が出てくるので、ペン先の向きがずれるとすごく書きづらくなるじゃないですか。だから、この機構自体は、このペンに対しては良かったんだろうなとは思うけどね。

――この回転のダイアルの部分はどうですか?

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【きだて】最初にレビューしたときに、このダイアルの後ろにカラーセレクトがあるのに気が付かなくて。

【高畑】気付かないと色選べないね。

【きだて】これ、黒だと見づらいって。

【高畑】黒インクは白で表示してたりするんだよね。

【他故】そうそう。

【きだて】だから、後から気が付いて「ああっ」となったんだけど。

【他故】まあ、無いに等しいよね。

【きだて】これはね、もうちょっと何とかならんかと。

【高畑】後ろに表示があるのはいいんだけどさ、前の方にも付けておいてほしいよね。

【きだて】そうなのよ。そこは要るだろうって。

【高畑】この線に合わせるわけじゃん。だから、合わせるところで見たいじゃん。手で持って回すと、分かんないんだよね。

【他故】下のところ、ちゃんと同じように出っ張ってんのにね。

【高畑】そう、だからそこにも色を付けてほしいよね。

【他故】リフィルの先に色が付いているじゃない。とはいえごめん、俺そろそろこれ見えないわ。

【きだて】あっははは(笑)。よかった、俺はまだ見えるぞ。

【高畑】それもだけど、使ってたらこの色落ちてきたりしないの? 一応塗ってあるけどさ。

【他故】ここは触らないから落ちないんじゃないの?

【きだて】この出方だから、口金内部でガリッと削れることはないんだろうけど。

【高畑】でも、青はまだしも、赤はちょっと薄いよね。もっとはっきりでもいいくらい。

――このリフィルの先端には、識別用に色が付いているんですか?

【他故】黒以外は色が付いてるんですよ。

三菱2.jpg

――インクで汚れてるのかと思った(苦笑)。

【きだて】それはそれで色が分かるじゃん(笑)。

――親切設計でそうなってるんですね。なるほど。

【きだて】そう、汚れじゃないよっていう。

【他故】三菱鉛筆のリフィルに詳しくないから、後で調べないと分からないけど、他の0.5とか0.7の多色のリフィルって、確か先端に色が付いてないよね(*ジェットストリームプライム用のリフィルには色が付いています)。

【高畑】付いてない。

【他故】0.28で初めて付いたよね。

【きだて】そういえばそうかも。

【高畑】このボディに0.5とか入れて使いたいという人がいたけど、0.5を入れるとますます分かりづらくなる。

【他故】分からなくなるよね。

【きだて】先端に色を付けたということは、三菱鉛筆もカラーセレクトはやりづらいとは分かっているんだよね。

【高畑】そうじゃない。他の芯を入れたらますます分からないよ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】でも、他の芯だったら、この出し方しなくていいという気はするけどね。

【他故】まあね。

【きだて】エッジほどリニアに差は出ないだろうから、わざわざ使う必要はないだろうけども。ただ、カッコいいから使いたいというなら、気持ちは分かるけど。

【他故】このボディがね。

【きだて】だって俺は、グリップを外してリフィルを回しているだけで30分いけるもの。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】見ているだけでカッコよくて。

【高畑】面白いよね。メカとかは本当に面白いと思います。

【きだて】うん。

【高畑】ただこれは、本当に気を付けないと、グリップの抜き方が分からなくて、ひねって壊してあるやつが店頭に結構ある。

【きだて】Twitterでそういう報告を俺ももらいました。

【他故】「どうやって外していいか分からない」というやつね。

【きだて】何も書いてないんだもの。

【高畑】そう、真っ直ぐ引けば抜けるんだけど、これをひねって抜こうとして、ギュウッとやって壊しちゃうというのがあるので、これは気を付けないとね。

【きだて】いやでも、他のペンでグリップが異様に硬いやつとかあるじゃない。

【他故】まあね。回すのがきついというやつね。

【きだて】そう。だから、回らないからって無理に回しちゃうのは分かるので。でも、これ何でだろうね?

【高畑】だってこれ、ペン先が出てたら回せないじゃん。

【きだて】そうか、そりゃそうだな。

【高畑】ペン先がずれて出てるから、無理に回すとペン先の方が壊れちゃう。

【他故】回転するすき間がないのよ。

【きだて】「どうした?」じゃないわ、そうだわ。

【高畑】だから、「分かるけどさ」という話なんだよ。

【他故】だったら、説明書を付けておかないと。これ、説明書とかなかったよね。

【きだて】ないない。

【高畑】やるんだったら、本体にはがせるシールを貼るとか。

【きだて】そうだね。

【他故】「引き抜く」とか書いておけば。

【高畑】そうだね。

――私も最初、グリップを回しそうになりましたよ。

【他故】だって、この方向のタテ溝のグリップを引き抜くなんて思わないですよ。

【高畑】そうなんだよね。誘導はできてないので、そこはちょっとね。

【他故】そこもイタリアンスーパーカーなんだよ。

【きだて】その説にこだわるな(笑)。

【高畑】でも、そんな感じだと思います。乗る人が作法を覚えないといけない、みたいなところがあるじゃん。

【きだて】「ハイドロサスはそういうものですけど、何か?」という感じ(笑)。

――まあ、立てて書かないといけないとか、そういう制約的な部分が他のボールペンと違いますものね。

【他故】そう。

【高畑】でも、乗りこなせたときに、「おーっ、いい感じ」と悦に入る感じが。

【他故】ははは(笑)。

――軸の色は、赤・黒のがベストですか?

【高畑】どれもカッコいいですよ。

【きだて】俺は割と黒がカッコいいと思って、黒を選んだんですけど。

【高畑】僕は、どれもいいなと思いますね。

【きだて】そうそう、軸が完全に太さ変わらずの真っ直ぐになってるじゃん。これはきっと手帳用だよね。

【高畑】まあ、手帳用に持って行ってほしいというのはあるよね。

【他故】そうだろう。

【高畑】真っ直ぐだから、スポッと抜きやすいのはいいよね。グリップがラバーじゃないから、手帳のループには入れやすいよね。

【きだて】単色の「エッジ」が、その辺を何も考えていないかたちだったじゃない。その辺りはユーザークレームあったかもしれないなと思って。

【高畑】どうだろう。クレームかどうかは分からないけど、小さい文字を書くのは手帳だからね。

【きだて】3色で細字といったら、手帳しかないわな。

【高畑】これ、使い慣れてくれば、それはそれでいい感じだけど、それにはいろんな意味で慣れが必要ですよね。

【きだて】でも、これだけ細い3色というのに需要は確実にあるわけでさ。

【他故】うん、あるね。

【高畑】そのコンセプトモデルとしての立ち位置として、最初に出したのがこのかたちだったというのは、やっぱりよかったんじゃない。「新しい、こういうものができたんですよ」とすごい主張しているのがいいんじゃないかな。それで、「君に乗りこなせるか」ということを言う的なね。昔よくあった惹句ですけど、そんな感じの。

【きだて】でも、こういうものを設計して新造しちゃうだけの余裕が三菱鉛筆にはあるんだなー、というね。すごいわー。

【他故】これはちょっとすごいな。

【きだて】メーカーとしての余裕がないと、こんなコンセプトモデルは作れないでしょ。

【高畑】多分、いろんな意味で、これまでと大分作り方が違う感じがするじゃん。

【きだて】そうだね。

【他故】今までの設計を流用しました、というのとは全然違うと思うし。

【他故】そうだね。

――これは、単色の発売前から開発を計画していたみたいですけどね。

【きだて】そうじゃないと、1年でできないでしょ。

【高畑】かたちが似ているから、単色と一遍に考えていた可能性はあるし、むしろこっちがベースであって、このライト版として単色を作った可能性もなくはないけど。だから、こっちが完成品で。

【きだて】単色はプロトタイプになるのかな。

【高畑】いやでも、カッコいいと思いますよ。

【他故】うん、カッコいいですよ。

【高畑】これは乗りこなせるかどうか問題があるので、可能であれば、お店とかで試し書きをしてから買ってもらった方がいいかな。

【きだて】まあ、お安くもないからね。

【高畑】もしかしたら、徹底的に合わない人も居そうなのよ。使う人を選ぶ感じはすごいする。それぐらい思い切ったところが、逆にカッコいいと思うところだな。

【きだて】でも、0.28㎜がここまでピーキーなことをしないと多色化できなかったわけじゃない。「アクロボール」の0.3㎜はどうするんだろうね。

【他故】「アクロボール」はチップのかたちが同じだから、クリアランス的には不可能じゃないよ(こちらの記事を参照)。

【高畑】パイロットは真逆の考え方で、いかにこれまでの延長線上にあるかというのを主張しているわけじゃないですか。そこが、パイロットと三菱鉛筆の考え方が違うところ。たまたま三菱鉛筆の方が先に出たというのがあるけど、三菱鉛筆は違うもの感をはっきり出してきているのが、僕としてはこれでいいんじゃないかなと思うけど。

――油性ボールペンの激細は、今後も競争が続くんですかね?

【高畑】そうね。他社も出てくるんじゃない。三菱鉛筆とパイロットが出してきたら、ゼブラあたりも黙ってないんじゃないかな。油性も機能性のところで戦い始めると思うけどね。

【他故】何か出てきそうだよね。

【きだて】油性はインク沼にはなかなか行きづらいからね。

【高畑】極細関係は、これからちょいちょい出てくると思いますけどね。

【きだて】今ようやく出てきた、油性での新しい話題なので。メーカーとしても、この流れをつぶしたくないよね。

【他故】そうだね。

*次回は「シャーボNu」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2020年Bun2大賞を斬る!~」をnoteで有料公開中!!

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