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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.40 最新個性派ノートがずらり!(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、最新の個性派ノートについて熱い議論を繰り広げました。

第3回目はコクヨの「白と黒で書くノート」です。
(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)

灰色の紙に黒と白の文字を書く超個性派ノート

コクヨ.jpg白と黒で書くノート」(コクヨ) 灰色の紙に黒と白の文字を書く、ノートとその書き方の提案。 紙の色に対して暗い色の文字と明るい色の文字は同時に読みにくいという視覚が持つ性質を利用することで、大切な部分を際立たせたり、周辺情報を十分に記せたり、光と影を描けたり、ノートの新しい使い心地が生まれる。PC画面などを意識した見開き時16:10の特殊サイズ(H210 x W168㎜)で、中紙には5㎜方眼罫を採用。フラットに開くことができる製本法を採用し、アイデアをまとめたり発散するのにも便利。 2020年6月25日からコクヨデザインアワード2018優秀賞受賞作品を商品化。東京・千駄ヶ谷のショップ&カフェ「THINK OF THINGS(シンク オブ シングス)」、 コクヨ公式オンラインショップ「コクヨショーケース」で販売。


――最後は「白と黒で書くノート」です。

【高畑】おおっ!

――今日が発売初日だったので(*この鼎談は6月25日に収録)、THINK OF THINGSへ行って買ってきましたよ。

【他故】今日の分はもう売り切れたみたいね。

【高畑】これ、いくらだっけ?

――900円です。

【きだて】お~、結構な値段だな。

【高畑】それ、紙に色が付いている? 印刷でそうなってるの?

【きだて】紙の色だと思うよ。

【他故】紙の色なんだ。

【高畑】紙の色っぽいね。

――普通の「キャンパスノート」と比べて、紙質違います?

【きだて】全然違うね。大分粗い。

【他故】ザラッとした感じで。

【高畑】これは、コクヨのデザインアワードの受賞作品で、これが受賞したときの展示を見て「ほうほう」と思ってたんですけど。コクヨがすごいのは、それを市販品のレベルにまで作って売るところだよね。それこそ、夢のノートの一つなわけですよ。

【きだて】これを見たときに「へぇ~白が」と思ったんだけど、そうなると気になるのは黒で書いたときの視認性だよね。

sub4.jpg

【高畑】要はその中間にしているから、0~100のところを真ん中に持ってきて、+50、-50に振るという話だから。

【きだて】でも、これって50%グレーの色ではないよね、パッと見だけど。

【高畑】書いたときに、白でも黒でも両方見えるようにするために、中間を探るとこうなったんじゃない。

【他故】そうだろうね。

【きだて】それで、ベストなところは探してるんだろうけどな。

【高畑】きだてさんが自分のパーソナルカラーをオレンジにしているのは、白ヌキも黒のせもできるからと昔聞いてなるほどと思ったんだけど。その時にきだてさんが作ってたら、賞金もらえてたかもしれない。

【きだて】そうか~。そうなったら、全面オレンジの目が痛いノートになったかもしれない けど(笑)。

【他故】そっちなのか(笑)。

【高畑】そういう意味でも、オレンジはいい色なんだけどね。このノートは紙色を中間にして、プラスとマイナスの両方に明るさを振るというのが面白いところではあるんだけど。

【きだて】そのバランスって、結構難しいじゃない。実際に、のせ色にもヌキ色にも使える色って、やってみるとバランスがすごく難しいわけですよ。

【高畑】この作品を発表した人がその当時言っていたのが、「白の情報と黒の情報は、どっちかを見ているときは、どっちかが浮き出して見える。白の情報を見ているときは、黒の情報は後ろに引いていて、黒を見ようとすると、白の情報は見えなくなる」ということなんだけど。

【きだて】あ~それは分かる。

【高畑】一つのものに多重の情報を載せて、それそれをオン・オフというか、前にいったり後ろにいったりして。

【きだて】レイヤーの入れ替えみたいな操作を、視覚情報と脳だけでできるわけだ。それはかなり面白いよね。

【高畑】絵を描いたときの色の違いということではなくて、白で書く情報と黒で書く情報の位置付けを分けることができるというようなコンセプトが確か書いてあったと思うんだよ。それは分からなくもないな。

【他故】ちょっとザラザラしているのは、鉛筆というか、色鉛筆みたいなものを想定しているんじゃないかな。

【高畑】アワードのときの作例は色鉛筆だったよ。

【他故】白の色鉛筆というイメージもするんだけど。

【高畑】それこそ、「ジュースアップ」の白とか、ああいうのははっきり見えるんじゃない。

【他故】むしろ、鉛筆の黒がかなりきれいに見えるなと思って。

【きだて】黒の視認性は悪くないね。

【高畑】品のいい感じ。

【きだて】それこそ、「ハイブリッドミルキー」なんかでも、多分かなりヌケ色で見えると思うんだけどな。

【高畑】単純に視認性と言ってしまうと、コントラストが落ちるから。でも、読めなくはないね。

【他故】そんなに悪くないよ。目にはいいよ。

【きだて】光が当たると見にくいか。でも、ボールペンの黒は全然問題ないね。

【高畑】だから、白黒のボールペンを使う分には全然いけるし、鉛筆でシャシャシャッとグラデを使おうと思えば、使えなくはないよ。

【他故】そうね。

【高畑】アワードのときの作例で、白の色鉛筆で中間的な影とか付けてたりしてたけど。

【きだて】やってたね。「へぇー」と思って。でも、そういう使い方よりも、さっき言っていた最初の発想で、「本文は黒、註釈は白で書いて」とか。

【高畑】面白いなと思うのは、白いノートに書く場合は、ゼロの部分に上に上に黒をのせていくじゃない。のせていったその先に黒の100があるじゃん。黒い紙に白いペンの場合も同じ話なんだけど、真ん中のところからでもどっちにいってものせていくというのが面白いなと思うんだよ。

【他故】ほぉ~。

【高畑】向きが逆向きになってる。鉛筆だと、薄くしようと思ったら、書くのを薄くするか、消しゴムで消すという方向じゃん。でも、このノートの場合、消しゴムで消すと真ん中に寄るという。

【他故】あ~。

【高畑】どっちに進むにしろ、のせていって極を反対側にもっていくのって、確かに画材だとできない。ニュートラルのベースがないと、できないことだなと思って。白に黒をのせていくもの、黒に白をのせていくのも1方向に行って、それを取り去ったら元に戻るという感じなんだけど。

【きだて】絶対値のお話しですわな。

【高畑】プラスをのせる道具と、マイナスをのせる道具の2つがあるのが面白いなと思って。それが1枚の紙面上にあるのが面白い。

【他故】鉛筆好きから言わせてもらうと、これ書いていて気持ちがいいね。

【きだて】紙自体のタッチは気持ちいい。

【高畑】何か、高そうな紙だね(笑)。

【他故】高そうな気もするけど。

【きだて】そうなのかな。

【他故】すごく気持ちいいよ。

【高畑】濃度が高そうなグレーの紙だから、結構高そうな気がする。

――1冊900円もしますからね。

【他故】この大きさって、何か意味があるの?

【高畑】あるんだよ、これが。確か、見開きにするとパソコンのモニターと同じ比率になるんじゃないかな。

【他故】紙の大きさを全く無視しているんだ。

【高畑】確か、変な比率だったはずだよ。

――16:10だそうですよ。

【高畑】何で16:9にしなかったんだろう。パソコンの画面ってそうなんだっけ?

【きだて】アスペクト比で考えれば16:9だろ。

【他故】それとも、最近のやつはちょっと長いの? だって、16:9だったら「測量野帳」と一緒になるぜ。開いた状態じゃないけどね。

【高畑】何で16:10なのかな(*ビジネス用ノートPCの多くが16:10の比率だそうです)。

――ノート開きながら、パソコンで作業するときに便利だからとかですかね。

【他故】でも、ちゃんと「キャンパスノート」っぽいデザインになってる。

【高畑】そこはそうだよね。

【きだて】コクヨのアイデンティティーだから。

【高畑】裏表紙の隅に、珍しく電話番号が書いてあるね。

【他故】何の電話番号だろう?

――お客様相談室の番号ですね。

【きだて】学童文具以外の商品で、電話番号が印刷してあるなんて珍しいね。

【高畑】それと、ノートの綴じが「水平開きノート」みたいになってるね。

――かなりフラットになりますね。

sub2.jpg

【きだて】その辺は、パソコンのモニターを意識したと言っている以上は、開くのも当然水平じゃないとダメだろうな。

【高畑】普通の「キャンパスノート」って、紙を断裁して天のりじゃなかったっけ?

【きだて】天のりだよ。

【高畑】天のりだから、折ってないよね。これは1枚ずつ折ってるから、「水平開きノート」と同じ綴じ方だ。

【他故】1枚ずつ折ってくっつけてるんだ。

【きだて】3人が3人とも、細かいところを見るのにメガネを外して(笑)。

【高畑】外さないとここは見えないな。

【他故】コクヨでも水平開きができますよという意味なのか? でも、あっちの水平開きノートと比べると、こっちはページが外れないね。

【高畑】あっちのは、ある意味取れそうだから。

【他故】取ること前提なんじゃない?みたいにのりが付いているから。

【高畑】コクヨのは、それが分からないようにつないであるから。でも、綴じ方も気になるよね。

【他故】コクヨでは、こういうノートは初めてかな?

【きだて】見た事ないね。テストとしてこれでやっている感じはあるね。

【他故】こういうところで技術を試して、OKだったら量産するんじゃないか。

【高畑】900円のノートだから、いろんな技術を試せるということなんじゃないかな。

【他故】1枚はがして、周りがバラバラにならないんだったら欲しいな。

【高畑】バラバラにはならないと思うけど、900円だからな。

【きだて】気軽に挑戦しづらい(笑)。

【他故】見開きで使うときに、そういうノートって便利なので。個人的には、同じかたちじゃなくてもいいから量産してほしいな。

【高畑】それは白でも?

【他故】白でもいい。

【高畑】他故さん的には、この綴じ方と紙質がいいんだ。

【他故】そう。この紙のザラザラっとした感じが、鉛筆好きにはいい。

【高畑】仕上がりがいいよね。

【他故】とりあえず、鉛筆ファンには使ってほしい雰囲気は持ってるので。

【高畑】白はどうする? 白を使わないとこのノートを使っている意味がないでしょ。

【他故】白い色鉛筆は、普通の鉛筆と書き味は違うけど、普段使わない色だから、使ってみるのは面白いと思うよ。

【きだて】カスタマイズボールペンに白黒で入れて専用で使ってみたいな。

【高畑】現実的なところでいくとゲルインクの白でいくか、色鉛筆の白と鉛筆でいくかだね。

【他故】そうだね。

【高畑】鉛筆の黒はテカるから、そういう意味では、鉛筆の白黒でもいいのかも。

【きだて】ああ、そっちでもいいかもね。

【高畑】これ使って、何を書いたら面白いかな? 普通に授業のノートを取ることもできるけど。

【きだて】う~ん。とりあえず、議事録を黒で書いて、それに対するコメントを白で書くとかさ。そういうレイヤー構造が面白いと思うんだ。

【他故】まずはそうだろうね。

【きだて】図形を白で描いたりとかだと、特に見た目だけの問題で、機能ではないじゃん。黒と白で注意するだけで、階層が変わるというのが面白いなと思ったので、それを活かすやり方をしたいよね。二人芝居のセリフを白黒で交互に書くとかさ。

【高畑】あっ、漫才の台本! 漫才の台本にはいいかもね。

【他故】そういうコントラストが出るのはいいね。

【高畑】それはいいかも。同じところを見ているけど、自分のセリフの部分だけ見ることはできるかも。その意味では、すごくいいかもしれない。

【きだて】そういうのは、面白い使い方だと思うよ。

【他故】二人で見ていて、見るところが違うというのは、早々はできないからな。面白いね。

【高畑】漫才の台本を同じ黒で書いてあったら、頭にどっちのセリフかが分かる何か書いてあげないといけないけど、これだったらすごいやりやすいよね。

【きだて】意識するだけでパキッと分かれるんだったら、それは面白いじゃん。

【高畑】あとは、セリフとト書きみたいなね。

【きだて】地図を黒で描いて、工事情報を白で書き込んどくとか、そういうのも面白いじゃん。作るときにレイヤーで分けとくようなものはいけそうな気がするんだよ。

【高畑】それも、二つに分かれるのがいいよね。それが平等なやつが本当はいいよね。

【他故】うん。

【高畑】〇✕ゲームみたいに、白と黒で書いていくゲームとか。

【きだて】他にも、家の間取り図とかさ。1階を黒で、2階を白で重ねて描いたら、意識するだけで1階と2階がそれぞれ浮き出して見えるとか、面白いだろうな。

【他故】そういう感じか。

【きだて】色々とやってみたいことはあるよ。

【高畑】俺的には、さっきの漫才の台本というのは、すごくいいと思う。でも、トリオになると、3人目どうする問題が出てくるけど、コンビでやるにはいいかもね。

【きだて】大丈夫だよ。トリオだと、3人目はあんまりしゃべらないから(笑)。

【高畑】あっ、ブング・ジャムはダメじゃん。3人いるから。

【きだて】そうだね。3人ともしゃべるからね…って、そもそも今まで一回も台本準備したことないわ(笑)。

(一同爆笑)

【他故】読んだことないわ(笑)。

【高畑】でも、俺の中では漫才の台本ノートとして確定。

【きだて】確定なのか(笑)。

コクヨ2.jpg漫才の台本に便利!?


【高畑】それ以上上手い使い方を、今のところ思い付かないから、すごいいいと思った。きだてさん冴えてるという感じ。

【きだて】じゃあ、よかったよ。

【他故】いいね。

【高畑】ということで、漫才やる方にはぜひ買っていただきたいノートだね。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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