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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.40 最新個性派ノートがずらり!(その2)
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、最新の個性派ノートについて熱い議論を繰り広げました。
第2回目はLIHIT LAB.の「ソフティツイストノート」です。
(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)
“夢のノート”がついに実現!

――次は「ソフティツイストノート」です。
【高畑】これは、きだてさんが「俺が考えた最強のリングノート」と言ってるから。
【きだて】去年の12月にリヒトさんの展示会にお邪魔したら、広報さんがそっと寄ってきて「きだてさんが前から仰ってた例のアレ、ついにできましたよ」なんて耳打ちされて(笑)。
――ははは(笑)。
【きだて】いや、また繊細な話をしますけど、リングノートのリングに手がのる嫌さというのはあるわけですよ。
【他故】まあね。それはよく言われる話だよね。
【きだて】それで、コクヨの「ソフトリングノート」はとても良いと。
【高畑】そうですね。
【きだて】でも、ツイストノート愛用者としては、「コクヨのソフトリングは、ページの差し替えができないじゃない」と。
【他故】普通、リングノートはできないわな。
【きだて】だから「ツイストリングのやわらかいやつ作るべきだろ」と、ずっと言い続けてたの。いや、もちろん俺は常識派なので、そんなの物理的に不可能だって分かってますよ?だから、あくまでも冗談のつもりだったんだけど…本当に作っちゃったっていうね(笑)。
【他故】わはは(笑)。
【きだて】しかも、そうきたか!という方法で。
【他故】そこがそうなるとは思わなかったという感じだね。
【きだて】ちょっとね、びっくりしたわけですよ。
【他故】噛み合ってないリングが、押すとつぶれるというのは、まあよく考えたね。
【きだて】実際、樹脂製でぷにょっとした「ソフトリングノート」と比べたら、やっぱり硬さはあるんだけど。それでも、金属製のダブルリングや従来の「ツイストノート」よりはちゃんと柔らかさがある。「これはすごいぞ!」と興奮して使ってたんだけど、実際にしばらく使ってると「うーん、まだちょっと違うな」という。
【他故】欲が出るんだ(笑)。何が違う?
【きだて】あのね、このリング、手にささらない?
【他故】ああ、この重なっているところ?
【きだて】噛み合ってない、重なっているリングの先端がチクチクするの。
【高畑】ふふふ(笑)。
【他故】そこまで感じたことはなかったけどな。
【きだて】しばらく使ってると、よりソフトな感触を求めて…
【高畑】押しちゃうんだ(笑)。
【きだて】そう、押したり、手をずらしたりして、リングの当たりのやわらかいところを探しちゃって。そうするとね、チクッ、チクッていうのがくるのよ。
【高畑】寝ながら布団の冷たいところを探すみたいな。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】あと、ソフトさを最大限に享受しようと思うと、リングの背骨パーツが垂直になっている状態が一番当たりがやわらかいんだけど、そんな状態には普通はならないじゃん。
【他故】そこは寝るわな。
【きだて】表側か裏側のどっちかに。
【他故】偏っちゃうよね。
【きだて】そうなると、ちょと違うなと。
【高畑】俺は、真横に向いている状態が好きなんだけど。でも、その場合だときだてさんの言うチクチクが…。
【きだて】そう、刺さるのがもっとダイレクトになるわけだよ。
【高畑】俺はあんまりチクチクが気にならなかったから、横向きの方がやわらかい。
【きだて】でも、この背骨が垂直になっているのが一番ソフトだと思うよ。
【高畑】本当?
【他故】両方を折り込む感じ?
【きだて】そう。それで指で押さえてやってみると。
【他故】そういうことか。両方入り込む感じがね。
【高畑】それで、70枚とじの厚い方は、真ん中に2カ所硬いのがあるんだよ。
【きだて】そう、そこも気になるところでさ。
【高畑】上下のリングはななめにはまるけど、真ん中の2個はカッチンと。
【きだて】上からかぶさってカチンと留まるやつなので。
――でも、それは厚みがあるから、真ん中で留めないと。
【高畑】そう。留めないと力が足りないんだよ。
【きだて】まぁ、そこは構造上仕方がないのは分かるんだよね。でも、ページを抜き差しする前提なら、ノート自体は薄くてもいいじゃん、とも思うしさ。
【高畑】そういうことだったら、30枚とじの方でいいよね。
【きだて】まあ、学生さんだったら、厚い方がいいという場合もあるかもしれないけど。
【他故】多い方がいいという人もいるだろうね。
【高畑】あとはA5欲しいなと思って。
【きだて】そう。A5は欲しい。
【他故】欲しいね。
【高畑】A4だと、真ん中に硬いのを付けないといけないと思うんだけど、A5ならいけるよね。
【他故】A5いけるでしょう。
【きだて】これのレビュー記事にも「A5早く」って書いた。
【高畑】きだてさんは言うだけだからいいよ。作る方は大変だから(笑)。でも、ここまで作ってきたのはすごいよね。
――これ、サイズ変わると色々と大変なんですかね?
【高畑】どうだろう?
【きだて】いや、A5化するのはそんなに…。
【高畑】真ん中のコマが減るだけだものね。A4だと大きいから、また真ん中に硬いのを入れないといけないかもしれないけど。
【他故】元々の「ツイストノート」って、A5があるんだよね。
【きだて】もちろん。A6もA7もあるよ。
【他故】なら、全然問題ないじゃん。
【きだて】でね、もう一つあるんですよ。
【高畑】えっ、なになに?
【きだて】普通の「ツイストノート」に比べて、紙の入れ替えがやりにくい。
【高畑】あ~、凸凹してるから。
【きだて】要は、リングが重なり合う向きが左右交互になっているので、紙を出し入れするときに、長い方のリングの先が穴に引っかかったりして。
【高畑】ああ、分かるな。普通の「ツイストノート」は、リングが硬いからパカッて開くんだけど、これがミニョッて中間で止まるんだよ。なんかね、しっかり開かないの。
【きだて】ツメが入ってない穴というのがいくつか生まれたりするんだよ。
【高畑】そうすると、ひっかかってめくれないもんね。
【きだて】だから、俺の中での「ソフティツイストノート」はまだパーフェクトではないんだけど、結局のところ「最高」っていう(笑)。
【高畑】差し替えができてソフトなわけですよ。
【きだて】だって、俺の夢をかなえてくれたんだもの。
【高畑】これで、来年とか再来年に、新作でもっとやわらかくなっているかもしれないし。
【他故】そうだよ。
【高畑】今、ここまできたことに対して歓迎しないと。
【きだて】だって、「ソフティツイストノート」しかないんだもの。なので、俺はこれを推していく所存ですよ。
【高畑】「所存ですよ」(笑)。
【他故】わはは(笑)。
【きだて】俺が、より良いノート生活を送るためには、これに売れてもらわないといけないから。
【高畑】これがいっぱい売れたら、改良もどんどん進むかもしれないし。
――これは、もっとリングをやわらかくできますかね?
【きだて】やわらかくするのは、ちょっと難しいんじゃないかな。
【他故】どういう風にするかですよね。
【高畑】手が全くないかどうかは、これからだよね。
【他故】そうそう。これで、ユーザーの中から全く異なった意見が出てきて、それでひらめくかもしれないし。今のところは全然ひらめかないけど、使っているうちに出てくるかもしれない。
【高畑】部分によって、硬さの違う材料を使うとか。
【きだて】違う材料とか使えるのかな。
【高畑】こことここのパーツの材料が、同じじゃなくてもいいんじゃない。そんなのも、どうなのか分からないしさ。
【他故】そうだよね。
【高畑】これだって、構造的にそうやってもたせているだけだから、ここの設計も上手になったら、もう少しやわらかさを感じさせるようなかたちは作れるかもしれない。
【きだて】取り急ぎ、チクチクは何とかしてくれないかな(笑)。
【他故】これは、改良してくるんじゃないのかな。意見がどんどん出てくれば。むしろ、意見を言った方がいいんじゃないかな。
【高畑】できれば改良したいんだろうな。多分、きだてさんが言うまでもなくというか、本人たちも分かっていると思う。だって、ライバルは明らかじゃん。本当はあそこまでやわらかく感じさせたいじゃん。手触りは、あそこまで持っていきたいんだよ。ライバルがいるから、目標ははっきりしているんだよね。
【きだて】ライバルを意識しているのは、表紙を並べて見たら一目瞭然ですよ(笑)。
【高畑】でもさ、リヒトこれまでノートを作ってなかったわけですよ。これより前は、ファイルは作っていたけど、ノートは1冊も作ってなかったでしょ。それが今や、リングノート売り場に行ったら、絶対に入ってるじゃん。
【きだて】うん。
【高畑】コクヨが入っているのは分かるじゃん。今までずっとやってきて、あんだけラインアップがあるから。それと全然意味が違うじゃん。単品でそこの市場をこじ開けて、絶対的な不動の場所を確保しているというのは、すごいことだなと思う。
【他故】本当にそう思うよ。ゼロからここまで来ちゃったんだから。
【高畑】俺的にはいいところまできているので、紙のバリエーションが増えてくれたら差し替えのメリットがもっと出てくると思うけどね。
【きだて】紙に関しては、リヒトはリングリムーバーも出し、ワンサードパンチも出していているので、ユーザーにお任せしているわけですよ(笑)。
【高畑】まあ、確かにな。それでいくと、さっきの「ロルバーン フレキシブル」みたいに、紙はすごくいいけど、互換性のないシステムに発展する方向もあるし、こっちは互換性があってとにかくリングのベースはこれを使えという。いろんなやり方があるよね。面白い。
【きだて】俺みたいに、改造とかいじるの好きというタイプの人間だと、こっちのシステムの方が純粋に楽しい。
【高畑】ギミック好きとしては、これを見た瞬間に「うわ!」ってなるじゃん。「そういうこと」って(笑)。
【きだて】本当にね、「こんなやり方あったんですか」って(笑)。
【他故】ねえ(笑)。
【きだて】驚きはあるよ。
【高畑】やっぱり、そうきたか感は強かったよ。だって、最初の「ツイストノート」のときから、「頭いいな」と思っていたけど、そこからさらにライバルに感化されてここまでになるというのは、なかなかすごいよね。
【きだて】まあ「ツイストノート」は、世界3大発明の一つだからね。
【高畑】火薬、活版印刷、ツイストノート(笑)。
【他故】大きく出たな(笑)。
【きだて】俺は、それぐらいだと思ってるよ。本当に。
【高畑】すげえな(笑)。
【きだて】人類の進化を後押ししていると思うよ。
リーフのさしかえができる「ツイストノート」は世界3大発明の一つ!?
【高畑】このチャレンジは、僕ら文具ファンとして、両手をあげて応援したい。
【きだて】当然ですよ。
【高畑】この成熟産業で、「まだこの手があるか」というのを出してくるのは、どのジャンルでもそうだけど、盛り上がるよね。
【きだて】だって、青いバラなんて遺伝子的に絶対に不可能だと言われていたのがさ、努力すればできるわけじゃない。やわらかい「ツイストノート」なんて不可能だと思わずにやったリヒトは偉い。
【高畑】本当に、きだてさんにとっては、何年来の夢のノートなんだね(笑)。
【きだて】夢のノートですよ。
【高畑】冗談で言うぐらい、できると思ってなかったんだ。
【きだて】「できればいいな」ぐらいの夢だったけど、叶っちゃったわけですから。叶った以上は、パーフェクトなものをリヒトに望むので。
【高畑】それはもちろん。
【きだて】とりあえず、チクチクしないやつ(笑)。
【他故】本当にチクチクするか、みなさんも試してください。
【きだて】そんな勧め方怒られるわ(笑)。
【高畑】でも、これを見たとき、久しぶりに「おお~」って思ったよ。
【きだて】いや、本当に興奮したよ。
【他故】待ち望んでたものだからね。
*次回は「白と黒で書くノート」です。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。
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