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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.24 その4

便利! ユニーク! 春はこの文具に注目!!

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左からきだてさん、高畑編集長、他故さん


本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.24では、注目の最新文房具の中から4点をピックアップして、ブング・ジャムが激論を繰り広げました。

第4回目の今回は、キングジムのペンケース「オクトタツ」を取り上げます。

史上最強に倒れないペンケース

キング1.jpgオクトタツ」(キングジム) ペンケースの底面に吸着パッドと衝撃低減バネを内蔵することで、机に置くだけでピタッと密着して自立する、倒れないペンケース。吸着パッドはペンケースを置くだけで机の表面にしっかり密着し、木製机でもたおれることはない。衝撃低減バネはペンを取り出すときなどにかかる衝撃を回避する。Sサイズ(税抜950円)、Mサイズ(同1,200円)の2サイズで、カラーはピンク・アカ・キイロ・ミドリ・アオ・クロの6色。Mサイズのキャップ部分には、消しゴムやクリップなどを収納できる小物入れを備えている。

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――最後は「オクトタツ」です。

【他故】これは、買おうと思ってるよ。

【高畑】なんか「ボトルペンケース」みたいなかたちだね。

【きだて】これがね、机にくっつくんですわ。

【高畑】これは、テレビの下に付けて、地震のときに大丈夫というやつだ。

【きだて】そう、耐振とかに使っている粘着パッドのゲルのやつ。

【他故】あ~、はいはい。

【きだて】さっきのアイデアの話だと、「細長いから倒れそうだけど、机に貼り付けちゃえば大丈夫じゃん」までは簡単に思いつくんだよね。ところが、吸盤や粘着材で貼ると斜め方向の力に弱いじゃない。でもペン立てとして運用すると、ペンを取るときに斜めの力がかかることは避けられない。

【他故】引っ張られるからね。

【きだて】そこで「じゃあサスペンション入れよう」ってなるのがキングジムの面白さなんだよな。

【他故】微妙に動くんだ。

【きだて】バネが入っていて動くんだよ。

【他故】多少動く分には全然問題ないんだ。結構くっついてるよ。

【きだて】学校の机みたいにツルンとしてれば、貼り付けて45°ぐらい傾けても全然立ってるもの。

【他故】ほほう!

――揺らしても倒れないですね。

【きだて】揺らしたぐらいじゃ倒れないです。

【他故】へぇ~。

【きだて】「そこまでして倒したくなかったか、キングジム」っていう(笑)。

【高畑】ここにバネが入ってるのね。

【他故】「吸着パッド+衝撃低減バネ」って書いてあるよ。

【高畑】まあ、立つシリーズもいろいろ作ったけど。

【きだて】立つシリーズの中で一番倒れないのはこれだね。

【他故】吸着までしちゃうわけだからね。

キング2.jpg【高畑】フタは、ネジじゃなくて、ひねれば開くんだ。

【きだて】そう、本当に15°か20°ぐらいひねれば開いちゃう。軽い。

――これは、細いタイプの方が立つありがたみがあるんじゃないですか。細いと安定性がないですからね。

【高畑】確かにね。

【きだて】でもね、このボトルタイプは、どうしても小物入れが欲しいんですよ。だから小物入れがついてる大きい方がおすすめかな。

――消しゴムスペースがある方を使いたいと。

【きだて】でもさ、小さな消しゴムスペースだから(笑)。

【他故】60円サイズでギリギリ?

【きだて】うん、結構ギリ。

【他故】これ、高さ的に鉛筆入るかな?

【きだて】入ると思うよ。

――キャップ付き鉛筆を入れてみましょうか。ああ、大丈夫そうですね。

【高畑】上のフタはなりゆきで開くけど、下はヒンジが入ってるのね。一つ余分な。

【きだて】うん、二重関節にしないと。

【他故】メカメカしい感じだよ。

【高畑】金属の軸入ってるし、中にバネも入ってるし。

【きだて】見た目の割に、手がかかってる感があるんだよ。

【他故】おもちゃじゃないけど、おもちゃっぽい雰囲気があって、逆に好きなんだけどな。

【高畑】意地悪なことをしなければ、普通に転ぶことはなさそうだし。

【きだて】ただね、キャップを付けるために底フタを広げるとやや外れやすくなるんだよ。たたんだ状態が一番安定するんだけどね。

【他故】そうなんだ。

【きだて】最終的に、キャップは別のところに置いておくようになると思うけどね。

【高畑】文具を立てるのが大好きな他故さん的には、このネタはどうなんですか?

【他故】基本的に、立つやつは立てたいなと思いつつ、これは立てる状態にするためには、下を開ける状態にしないといけないんですよね。

【きだて】そこはたたんでおけばいいんだよ(下写真)。それで安定。

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【高畑】キモはやっぱり、このバネなのかな。

【きだて】だと思う。実際に、ついここをビンビンさせちゃうし(笑)。

【他故】わはは(笑)。ここ、すごい効いているものね。

【きだて】まあ、立つペンケースに対して「倒れるじゃん」ていう人はいたわけだよ。

【他故】そうだね。

【高畑】「倒れるから立つペンケースはダメ」とか、学校で先生に言われたとか、そういう話があるわけですよ。

【他故】ガーンと倒れちゃう。

【高畑】でも、「倒れないもーん」って。

【きだて】「倒れませ~ん」って言えるのは楽しいじゃん。

【他故】それはそうね。

【きだて】何よりも、「そこまで倒れないものを作ったか」という楽しさがあるので。ギミック的にまだ難点があるのは分かりつつ、でも俺はこれが好きなの。俺は立つペンケースはあんまり使ってないんだけどね。

【他故】ああ、どっちかというと、たっぷり入るポーチ型だよね。

【きだて】そうそう。ポーチがトレーに変形するタイプが好きなの。だけど、こいつは心意気が好きだな。

【他故】心意気(笑)。

【きだて】意地でも倒さないという、その心意気だけで好きなの。

【高畑】さっきからペコペコして遊んでるから、大分吸着力が弱くなってきたよ。

【他故】そういう場合は、水洗いすればいいのかな。「吸着パッドは、ティッシュでは拭かないで下さい」と書いてあるよ。

【高畑】そうそう、細かいのが付いちゃうんだよね。文とびの読者のみなさんは、気をつけて下さいね。

【他故】「ウエットティッシュで拭いて自然乾燥」という書き方をしてますね。

【きだて】指先にたっぷりめに水をつけてスリスリしてやると手早いよ。

【高畑】「収納物を入れ過ぎると、本製品の破損の原因となります」って、どんな詰め方をするんだ?

【きだて】どんなシーンを想定してるのかな?

――「どこまで入るんだ」って実験するんじゃ。

【きだて】そんなエクストリームな(爆笑)。

【高畑】いや、このボディは強いよ。

【きだて】結構な厚みだぜ。

【高畑】ねえ、PET強いからな。

【きだて】なかなか割れないよ、これ。

【他故】軽く落としたぐらいじゃ割れないよ。ちょっとゴツいけど、小物入れが欲しいので、大きいのを買おうかな。小さいのにも小物入れが欲しかったんですけど、そこに入る消しゴムはなさそうだし。

【きだて】ないよ。

【他故】とりあえず、「立つのは正義」なので、これを買います。

【高畑】キャップはネジにしなかったのは正解だね。カチって止まる方がいいね。しかし、このバネをわざわざ入れたのがすごいね。

【きだて】そこはトピックですよ。

【高畑】見えないところにいろいろと技術を入れてくるっていうのが、日本人以外では考えないよね。

【きだて】まぁ、考えないね(笑)。

【他故】毎月何種類も筆箱が出てくる国はないので(笑)。

【高畑】それを立たせるためにさ、吸着材入れてその上からバネで何とかしてってさ、そこまでするか(笑)。

【きだて】普通はしないだろ。

【高畑】「そんなに落とす?」って聞かれるよね(笑)。

【きだて】「落とさないように使えば?」って言われちゃうよ(笑)。

――でも、逆に吸盤でくっつけないで置いたら不安ですよね。

【きだて】不安でしょ。心細くなっちゃう。

【高畑】確かに、このまま置くと滑るものな。

【きだて】立つペンケースだと、最近はこれのほかに「ネオクリッツシェルフ」が出たでしょ。ペンケースはまだまだ面白いな。

――「デルデフラットポーチ」も出ましたしね。

【きだて】あと、レイメイ藤井の「とっておきスタイルペンケース」も面白いよね。

【高畑】何か、「ペンケースに採用できる技術大喜利」みたいになってきてるじゃん。

【他故】わはは(笑)。

【きだて】まさに大喜利だ。

【高畑】1個のテーマに対して、みんなが「こんなのできるよ」となっているので。面白い言葉じゃなくて、面白いギミックで大喜利をやるというのが。

【きだて】とりあえず、一時の乱世から、大きな道筋が2つに絞られてきたわけじゃん。トレー変形と立つペンケースで。それぞれに弱点はあるけども、それをブラッシュアップしていこうという状態に入ったなと思っていて。これも、そのブラッシュアップの一つだよね。

【他故】そうだね。

【きだて】「立つペンケース倒れるでしょ」「いや、倒れません」って。ここ数年、ペンケースはどれが決定版なのかという話はずっとでているんだけど。

【他故】確かにね。

【きだて】もうちょっと我慢すれば、決定版が出そうな雰囲気になってきたなと思う。

【他故】う~ん。

【きだて】個人の嗜好があるので、真の決定版はありえないんだけど、とりあえず「これを買っておけ」と言えるようなものが出てくるのでは。

【他故】進化が止まらないな。進化というか変化かな。

【高畑】これだけみんなが参入してくるというのは、それだけ売れているということだものね。

【他故】そういうことだろうね。

【きだて】参入し過ぎて、どれ買っていいか分からない状態なんだってば(笑)。

【高畑】分かる。

【他故】売り場で一番でかいよね。面が広いから(笑)。

【高畑】ペンケースが面白いのは、筆記具と比べてまだ自由度が高いじゃん。

【他故】そうだね。

【高畑】入れる物を変えてみることができるし、いろいろとできるから、メーカー的に遊ぶ余地がまだあるじゃん。

【きだて】そうなんだよね。

【高畑】アイデアの出しどころとして、ここはまだ面白いというか、みんなが同じものを作って、微妙な性能差になっちゃうとさ。もちろん、それでもいいんだけど、僕ら的には、カンブリア紀の面白さがあって「何じゃこりゃ」って言いながら、それを見るのが面白いから。

【きだて】「最近の文房具で何が面白いですか」と訊かれたら、一択でペンケースって言うものな。

【他故】まずペンケースだよね。しかも、毎月紹介してもまだ数があるという(笑)。

――先日の『ブング・ジャムの文具放談6』で、“ナナメ”みたいなペンケースが出てくるという話が出ましたが。

【高畑】タテ型とヨコ型のペンケースが出たから、今度はナナメが出てくるぞという話か。

【きだて】まだ、我々が思いもよらないものが出てくる可能性があるわけで。

――「オクトタツ」はその一歩ですかね。

【きだて】割と近いね。サスペンション付きは想像してないじゃん(笑)。

【他故】「倒れない」というのもそうだけど、サスペンション付きは考えないわな(笑)。

【きだて】吸盤付きは思いついたかもしれないけどね。そこは、コクヨの四角いスティックのりと同じだよ。

【他故】さらにその先を読んで、サスペンションを付けたんだ。

【きだて】そこら辺にキングジムとかコクヨの面白さがあるのかもしれないよ。ちゃんと開発力を持っているメーカーとしての。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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