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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.24 その3

便利! ユニーク! 春はこの文具に注目!!

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左からきだてさん、高畑編集長、他故さん


本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.24では、注目の最新文房具の中から4点をピックアップして、ブング・ジャムが激論を繰り広げました。

第3回目の今回は、コクヨの「GLOO」スティックのりを取り上げます。

四角いだけじゃダメなのよ

コクヨ1.jpg「GLOO 角までぬりやすいスティックのり」(コクヨ) デザイナー・佐藤オオキ氏が率いるデザインオフィス「nendo(ネンド)」と協業し、シンプル・ミニマル・スタイリッシュなデザインと、高い機能性、使いやすさを追及した接着・粘着用品の新ブランド「GLOO(グルー)」の、紙のカドまでしっかり塗るために四角い形に作られたスティックのり。四角いキャップだと気密性が不十分なので、独自の円形キャップを開発。大きめのフチを付けたので、片手でも簡単に開けられるのもポイント。Sサイズ税抜130円、Mサイズ同250円、Lサイズ同380円。

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――次もnendoつながりで「GLOO」の角までぬりやすいスティックのりです。

【高畑】四角いのりに丸いキャップを付けたのが、ものすごい発明かなと思っていて。実は、海外では同じようなものを販売していたんだけどね。もちろん、デザインは違うけど。

【きだて】ブラッシュアップされたから。

【高畑】四角いのりって、みんな思い付くんだよ。

【きだて】うん、そうだろうよ。

【高畑】角まで塗りたいというのは、みんな思い付くんだよ。

【他故】そうだよね。

【高畑】過去に、多くの勇者がそこに挑戦してですね。

【他故】勇者(笑)。

【高畑】まあ、散々な目にあってきているわけですよ。四角いと密閉性の問題があって、中身が乾燥しちゃって、「1年置いておいたら使えなくなってたよ」って返品されてくるという宿命があったんだけど、それをとうとう克服したというですね、なかなか大きな一歩なんですよ。

【きだて】耐久性さえ担保されていれば、四角いのりが使いやすいのは、自明の理なんだよね。

【他故】分かってるからね。

【きだて】誰もが思いつくぐらいだから当然なんだけど、やっぱり使うと「なるほど、これはいい」って感じるよね。中高生がノートにプリント貼るのも、角がちゃんと塗れてないとそこから剥がれやすいしさ。

【他故】ああ、まあそうだね。

【きだて】というのが解消されるし。塗るときにはみ出さないから、机も汚れないしね。

【高畑】丸いのりで塗っていると、どこまでがはじっこだか分からないからさ、どの辺にのりを持ってくるとちょうど端にくるのかが分からないんだよね。

【きだて】その辺って、もう経験と技術だから。

【高畑】上手な子はうまくできるけど、そうでないと「あ~あ」ってなるから。

【きだて】のり貼るの下手な子とかいたじゃん。俺とか(笑)。

【他故】俺も下手だった(笑)。

【高畑】だから、はみ出す前提で、下に紙を敷くとかね。

【他故】はいはい。

――細かいところを塗るために、わざと手にのりを付けてから塗ってましたよ。

【きだて】面倒な(笑)。

【高畑】でも、本当にはみ出すじゃないですか。それがはみ出さないんだから、そりゃ使いやすいよ。

――見るからに使いやすそうですものね。

【高畑】そして、他故さんが大好きな立つタイプになってる。

【他故】そうそう、何でも立ってほしい人なので、本当に嬉しいですよ。

――基本的に、従来のスティックのりでも立たせることができますけどね。

【きだて】それはそうだけど、安定はしないじゃない。

【他故】立つデザインかというとそうでもない。単なる円筒形でしかないので。

【高畑】これは、最初から「立たせて下さい」というデザインだからね。

――キャップがそんなかたちですね。

【他故】逆に、寝かせると不安定になるから。

【高畑】キャップが横に広がっているのは、引っ張りやすくするためだよね。

【きだて】そうそう、爪かけられるから。

――他故さんのために開発したわけではないでしょうけど(笑)。

【他故】ありがたいですよ。

【高畑】他故さんのためにnendoに発注したんだったらすごいよ。

【きだて】それはもう、コクヨと結婚しちゃえよという話だよ(笑)。

【高畑】それで、中身が四角いのが分かるように、ボディの上の方は四角くなってる。まあ、しいていえば、反対側を開けようとしちゃうんだよね。

――ああ、四角くなっているハンドルの方を。

【高畑】本当はね、キャップが半透明ぐらいになってたら分かりやすくていいかなと思うけど。

【きだて】半透明じゃなくても、色替えしてあった方が親切だけどね。でも、デザイン的にそうはできないかな、という話だよね。

――一体感を出しているわけですね。

【高畑】素材が違っても、あえて同じ色になるようにしているわけですよ。

【他故】上の四角いつまみが、いかにも「そこからだよね」というデザインなんだよ(笑)。

【きだて】外れそうに見える。

【高畑】それはともかくも、多分こういうのがコロンブスの卵という話なんだよね。「キャップ丸くすればよくないですか」っていうのは、簡単な話なんだけど、意外とその発想がなかった。

――この丸いのが段々と四角くなっていくデザインはなかなかいいじゃないですか。

【きだて】スカイツリーっぽいよね。

【高畑】これ、従来品より20円くらい高いのかな。あんまり高過ぎないようになっていて。さっきの「ブレン」がど真ん中のスタンダードなボールペンになるかというと、ちょっと違うかなと思うけど。

【きだて】まあ、現状ではね。

【高畑】このスティックのりも、四角いかたちで従来品を駆逐できるかというと、不安もありつつという感じかな。

【きだて】コクヨは今後「うちのスティックのりはこれです」という売り方をするんでしょ。GLOOはどこまで他に対抗できるか。

【他故】PrittとPiTという大きなライバルがいるからね。

【高畑】そこへ持ってきて、ステッドラーが久しぶりに「UHU」というブランドを持ってくるから。

――のりも意外に競争が激しいですね。

【きだて】そこまで競い合うほど、スティックのりの需要ってあるのかな?

【他故】やっぱり、子どもだよね。学童需要って考えたときには、安くてたくさん入っているやつを買うという方向になりかねないので。

【高畑】それだと、便利性より丸軸の方がいいじゃないですか。となると事務用なんだけど、事務用でもお徳用があるじゃないですか。それに対して、このスティックのりが便利性でどこまで対抗できるか。未だにのりじゃないとだめな事務作業ってあるんだよ。まだ紙を使っているところは多いから。

【きだて】でも増えることはないじゃん。う~ん難しいなとは思うんだけど。

【高畑】「GLOO」四兄弟だけど、その中で一番数が出そうだよね。

【他故】まあ、そうだろうね。

――四角いのりって、分かりやすいですよね。

【他故】これだと使ってみたいと思いますものね。

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「GLOO」ブランドの4アイテム

【きだて】俺は、「GLOO」の中ではテープカッターが一番好きなのよ。

【高畑】「GLOO」四天王の中で。

――四天王(笑)。

【きだて】四天王最強はテープカッターかな、と。今までも、吸盤でくっつくテープカッターはダイソーが出してたりとか、色々とあったんだけども。でも、弁付き吸盤で持ち上げるだけで簡単に外れます、っていうのは面白い。

【高畑】あの仕組みはさ、ステンレスボトルを固定するための薄い弁を作るためにできた技術で、あれ自体は前からあったみたいだよ。

【きだて】え~、そうなんだ。

【他故】転ばないステンレスボトルって、確かにあるね。

コクヨ2.jpg片手で軽く切りやすいテープカッター

【高畑】今回、まるっきり新しい技術が入っているのは、そのテープカッターだよ。中に入っている技術はすごいなというのがあって。でも、それとも違ってこのスティックのりは、「四角いのり便利じゃん」はみんな言えるんだけど、それを実現するまでの道のりが長かった。

【きだて】だよね。

【高畑】それは、「インクが消えたら便利じゃん」て簡単に言うやつというのと同じだから。

【きだて】いるね。

【高畑】それでこれ、メイド イン インディアなんだよ。インドから持ってくるときに、すごく時間がかかるし、赤道直下を通ってくるのにも関わらず、まったく問題なさそうに見える。実際、先行して販売されていた海外モデルは、香港とかですでに実績あるし、この密閉度というのは、完成度が高い。

――このキャップは片手で開けられるんですよね。

【高畑】閉めるときは、机の上にキャップを置いて、ゴーンとやれば。

【他故】確実に閉められる。

【高畑】それで、最終的にはシュッとしてて、「何でもないですよ」という風を装っているけど、実はそこには技術があるわけですよ。メディアでは「四角いから隅まで塗れてすごい」と言っているけど、それはみんな思ってたことだから。

【他故】そこじゃない(笑)。

【高畑】そこを思い付いたのは全然普通なんだけど、思い付いたけどできなかったことを、できるようにするのが、この技術の進歩だから。大体の人は四角いのりで止まっちゃうんだよね。多分、乾くということすら想定してないんだよ。だから、これまで商品化して青ざめたメーカーがあるんだよ。

【きだて】だから、そこはコクヨの叡智なわけだよね。

【高畑】これは、発売する前に相当試験をしていると思うんだよ。

【きだて】そらそうだよな。

【高畑】のりで試験するといったら、相当な時間がかかるし。しかも、普通は恒温室で加速試験をするんだけど、試験では上手くいったけど、本番ではダメだったということもあるからね。これは、コクヨが真面目に長い時間をかけてテストしているからというのはあって、生半可なメーカーが作れたかどうか。答えだけ見ると「あ~、何だよ」って思うけど、これがなかなか難しいところだよ。

――思い付きそうで、思い付かないですよね。

【高畑】そうなんですよ。これこそコロンブスの卵で、みんな答えを思い付いてもよさそうだから。「ベルヌーイカーブ」みたいに数学を知らなくても、「丸にしたらいいんじゃない」というのは万人が思い付けるから。

【きだて】そうだね。アイデアの問題として、チャンスはあったんだ。

【高畑】俺にもあったはず。悔しい。

【きだて】10年ぐらい前にタイムスリップできるんなら、とりあえずこれを持って行こうかな。

【高畑】本当そうだよ。そういう話だと思うよ。これだったら、みんなにちゃんと説明できるじゃん。10年前にスマホの説明しても作れないじゃん。

【きだて】これなら、とりあえずできるからね。

【他故】できるね。

【高畑】だから、今まで僕らは簡単に分かる答えを見逃していた。それで、できあがってみたら、やっぱり便利だったという話だよ。

(明日は「オクトタツ」を取り上げます)

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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