【連載】月刊ブング・ジャム Vol.22 2019年新春スペシャル その3
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は「新春スペシャル」として3日連続で、ブング・ジャムのみなさんに「2019年の文具はこうなる!」という予測を語ってもらいました。
文具動画で子供ウケ。(きだてさん)
――じゃあ、最後はきだてさんですね。きだてさんは、個人の目標みたいな話ですか。
【きだて】そうですね。文具王と他故さんが業界の動向とか、ちょっと小難しい話をしてたわけじゃないですか(笑)。僕はもうちょっと明快に、自分がプレーヤーになる話なんですけども。「子どもウケしたい」と。
【高畑】子どもウケしたい!?
【きだて】もうね、年寄りに物を売ってもしょうがないじゃん。
【他故】おおっ(笑)。
【きだて】個人的には、年寄りに顔を売ってもしょうがないから。
【高畑】ああ、なるほど。
【きだて】現状というより、今後の自分の立ち位置を安定させるにはどうすればいいかというのを考えてるんだよ。
【他故】なるほど。
【高畑】だから、将来の自分の地位を安定させるために、今どこに手を打つかといったら、大人じゃなくて子どもだろうと。
【きだて】そういうことです。それで、どうすれば子どもにウケるんだろうと。ゼブラは「サラサクリップ」を若年層にアピールし続けたことで、彼らに「ボールペンと言えばゲルで、ゲルと言えばサラサだ」と根付かせたでしょ。若い子はもう低粘度油性よりゲル派だから、こうなるともうゼブラは今後30年ぐらいは割と安泰じゃないですか。
【高畑】未来に向けて、減っていく要素よりは、新しく購買力が伸びていくわけですからね。
【きだて】そういうことを考えると子どもなんだけど、じゃあ俺が持っている牌の中でどれが子どもウケするのかを考えたときに、イロモノ文具があったと。
【高畑】まあ、そうね。あれは強力だろう。
【きだて】文房具の中で、子どもウケが最高じゃないですか。面白文具は。
【高畑】それは間違いない。
【きだて】それを持っているのに、子どもウケを狙ってなかったなと思って。
【高畑】おお~。
【きだて】ということに、ハタと気がつきまして。
【高畑】今までは、大人目線でいっていたわけね。
――まあ、生首が飛び出たりしますからね(笑)。
【きだて】どうしても、大人に向けて話をしていたんだけど、それこそチンチンだウンコだみたいな話をさ。
――要は、ドリフ的な感じで。
【きだて】そうそう。そういうようなものも含めて、もっとバカっぽいもの。さらに、それをどう子どもに認知させるかというと、ユーチューバーになるしかないと。
【高畑】出たっ!
――ユーチューバー宣言ですね(笑)。
【きだて】何か、いま改めてユーチューバーっていう言葉を口にするだけで、頬が赤らんじゃうよね(笑)。「恥ずかしい」ってなっちゃうんだけど、でもまあそこだろうと。
【高畑】いや、そこを恥ずかしがっていると、前に出られないからね。
【他故】ですよね。
【きだて】そうなんですよ。子どもウケするためには、恥ずかしがってちゃいけない。
【高畑】今はもう、完全にユーチューブですからね。
【きだて】そう。だから「みんな! イロブンのお兄さんだよ!」っていう動画をですね、やんなきゃいけないんじゃないかと。そうすることによって、イロモノ文具は面白いっていうのと、「文房具といえばきだてさん」っていう感じで、文房具ときだてをイコールでつながせる。
【高畑】出た、マインドシェアを上げるってやつね。
【きだて】すると今後10年、20年先になって、誰かに文房具の話を聞くんだったら誰だろう?ってなったときに「きだてさんに聞けばいいでしょ」となるわけですよ。
【高畑】おおっ、なるほど。
【きだて】そうやって、戦略的にやっていこうかなと。
【高畑】戦略的にユーチューバーになる。
【きだて】そう。戦略的ユーチューバー。だから今、動画撮影用のビデオライトを真剣に選んでいて。
【他故】じゃあ、自宅の一室をスタジオっぽく?
【きだて】うちの部屋というと、文具王の家と並んで、2大文具の壁といわれる巨大な文具棚があるわけですよ。それを使わない手はないよね。
【他故】イロブンウォールがあるかないかで大分違うから。
――イロブンウォール(爆笑)。
【きだて】そうです。「ここに4千点からの文房具があります」というだけでキャッチーなわけじゃないですか。
【他故】全然違いますよね。
【高畑】俺も、文房具の動画をあげてるんですけど。
【きだて】文具王は、無編集で平気で20分とかやっちゃうじゃないですか。
【他故】無修正ノーカット(笑)。
【きだて】やっぱりね、今みてると、動画で普通に見てもらえるのって、2、3分なんだね。
【高畑】まあそうだね。
【きだて】そういうショートコンテンツという意味で、イロモノ文具っていいわけですよ。
【高畑】まあね、そうだね。
【きだて】使い方をじっくり説明するんじゃなくて、1個の文房具をちょちょっと動かして、「ははっバカだな」ってそれだけで終われるという。ああ、俺のコンテンツはかようにユーチューブ向けだったかと。
【高畑】なるほど(笑)。
【きだて】今は、「文房具といえば文具王」という流れになっているけど、20年後どうなっているか分からねえぞという。
【他故】今から20年後(笑)。
【高畑】大分先を見たな(笑)。そうか、その小学生が大人にならなきゃいけないわけだ。
【きだて】そういうこと。正直な話、今から5年後に文具王にシェアで勝てている自信はないんですよ。
(一同爆笑)
【他故】おいおい(笑)。
【きだて】ある日突然死ぬとか、そういうのでもない限りはまだまだ難しいわけですよ。
【高畑】死なないよ。
【きだて】過労で倒れる可能性はあるけど。
【高畑】それはあるかも。いや、だから他のプレーヤーも、みんなどちらかというと大人に向けてやっているから、今のうちに子どもに種をまいておけば。
【きだて】今、ユーチューブに文房具動画をあげている人を研究のために見ているんですけど、やっぱり文房具のプロじゃない人たちがやっているわけですよ。
【他故】まあ、そうね。
【きだて】微妙にツボを外していたりとか、「そこじゃない」っていうのが、微妙に見受けられるんですよ。だから、最終的には、「そこ」っていうツボをおさえた動画を、20分もやらず。
【高畑】あ~、はい。僕はずっと20分でやるけど。
【きだて】やるんだ(笑)。
【高畑】まあ、でも動画はいいと思うよ。
【きだて】うん。で、他故さんのお子さんは今小6?
【他故】小6でございます。
【きだて】だから、小学校高学年から中学生までをターゲットにして。
【他故】もう、うちの息子も毎日のようにずっとiPad見てますから。ずっとユーチューブですよ。
――あ~。
【他故】もうね、ゲームの実況か何かは知らないけど、ずっとけたたましい声が聞こえてくるから。「あひゃひゃひゃ」っていう声が聞こえてくるから。
――まさに、その世代を狙っているわけですね。
【きだて】そう。もうね、見ていると「あひゃひゃひゃ」って笑えないとダメだなと思って。
【他故】そうね、中の人たちもそういう風に笑わないとダメなんじゃないかな。
【きだて】そうなんですよ。テンションをあげないと、見る側のテンション上がらないのね。
――それは、昔のコント番組でおばちゃんたちの笑い声が入っているみたいに。
【きだて】そうそう。「ここは笑っていいところですよ」というのをちゃんと分かりやすくしておくのは大事っぽい。
【高畑】なるほど。
――笑うのはどうするんです?
【きだて】自分で笑いますよ。
【他故】「自分で笑いますよ」って(笑)。
――忙しいですね(笑)。
【きだて】大分忙しいですけどね。
【他故】一人でやっている人って、あんまりゲラゲラ笑えないから難しいんだよ。
――奥さんが隣にいて笑うとか。
【きだて】あ~、笑いの人を雇うかという話はあるよね。
――笑い屋さんをね。
【高畑】でも、ユーチューバーの人でも、一人でやっててテンション高い人いるからね。
【きだて】いるね。
【高畑】HIKAKINもはじめしゃちょーもテンション高いよ。
【きだて】高いよ。HIKAKINなんて、見ていると本当に勉強になる。間の取り方絶妙だし。見ていて嫌な気持ちにならない工夫が随所にある。
【高畑】そこからの、きだてユーチューバ-爆誕。
【きだて】そうすることで、子どもウケを狙い、面白文房具で引きつけて、真面目な文房具にシフトしていく。今、ベネッセとかで勉強向けの文房具の連載とかしているから。
【高畑】そんなことやってるんだ。
【他故】知らなかったな。
【きだて】やってるんですよ。
【高畑】きだてさんがベネッセで教えるようになるとは(笑)。
【他故】いや、元々家庭教師をやっていた人だから。
――伝説の家庭教師だったんですよね。
【きだて】そうなんです。30人以上受け持って合格率100%の男なんで。
【高畑】それは、目標を下げさせるプロじゃなくて?
【きだて】えっとね、そういうのもやる(笑)。とにかく合格させるから。
【高畑】なるほど。
【きだて】まずは、他故さんのお子さん世代をターゲットにして。他故家で俺の声が聞こえてきたら、ひとまず成功なんですよ。
――他故さんのお子さんは、文房具どうなんですか?
【他故】普段から文房具目にしているから、普通の小6よりは文房具のリテラシーが高いと思いますよ。
【きだて】目が肥えているよね。
【高畑】きだてさんが狙わないといけないのは、すごい文房具リテラシーの高い小学生ではないので。レベル的には、「ケシカスくん」と並ばないといけないわけですよ。
【きだて】そうそう。この「消しゴムはチンチン付いてる。面白い」って。そこですよ。
【高畑】だから、ネタ的にはあの世代の子らが読んでいるマンガにいかないといけない。
【きだて】そうです。レベルを落とすとかではなくて、わざわざちゃんとそこを狙っていくという。
(一同)ほぉ~。
【きだて】レベル下げても、子どもは気づくから。
【高畑】そうだね。
【きだて】レベルを下げるんじゃなくて、本気の子どもだましをやる。
――それはそうですよね。
【きだて】「本気の子どもだまし」は、昔サカモトに対して言っていた言葉で、ガッツリと作り込んだ子どもだましをやるという。
【高畑】はいはい。
【きだて】あのときのサカモトの精神を、今改めて俺の中に入れるという。
【他故】サカモト魂(笑)。
【高畑】じゃあ、きだてさんの本気の子どもだましが、今年は見られるわけですね。
【きだて】やっていこうかなと。
【高畑】何月スタート?
【きだて】まだ決めてない。
【他故】日取りのいいときにパッと始めておかないと。
【きだて】とりあえず、部屋を片付けるところから始めないと。
(一同爆笑)
【高畑】まあ、重要な問題だからな。
【きだて】狭い部屋だから、動画撮るための画角をとるのが大変なんだよ。
【高畑】それ、すごい分かる(笑)。
――とりあえず、部屋を片付けるところから、新年が始まるということでよろしいでしょうか。
【きだて】そうですね。
【他故】部屋を片付けるところから流せばいいんじゃない。
【高畑】ああ、そうそう。「こんなの出てきたよ」みたいな。
【他故】みんなに言わなくていいから。
【きだて】さすがにね、お見せできる状態ではない(笑)。
(一同爆笑)
【きだて】きつい(苦笑)。
【高畑】奥さんにハンディカムを持ってもらっててさ、「今片付けてま~す」とか(笑)。
【他故】「こんなものまで持ってま~す」みたいな(笑)。
――お片付け系の違ったものになりそうですが(笑)。
【きだて】整頓動画? そういう需要もあるのかね?
【高畑】それはそれであるんじゃない。ビフォーを撮っておいてね。
【他故】「ビフォーアフター」みたいに。
【きだて】一応、ビフォーの写真を撮ったんですけど、人に見せられない。嫁さんにハンディカムで撮ってもらおうにも、俺の足の踏み場すらないから。
――ちゃんと片付けて「なんということでしょう」ってナレーションを付けないと。
【きだて】そうね。最終的にはそこなんですけど。
【高畑】なるほど。
【きだて】とりあえず、イロモノ文具から始めて、ちゃんと真面目な文房具までやって。
【高畑】普通のユーチューバーで、「文房具紹介しました」っていうのはあるけど、“文房具ユーチューバー”って言えるほどやっている人はいないので。
【他故】そうね。
【高畑】あとは、中高生が自分で発信しているのはあるけど、そこは大人の本気を見せるということで。楽しみ。
【きだて】今までバカにしていたアンボックス動画までやろうかなとか、色々と考えているわけですよ。今世界中で一番儲けているユーチューバーは、イスラム圏の子どもで、年間24億円儲けているみたいな。
【高畑】マジか!
【きだて】それは主にアンボックス動画なんだって。要は開封の儀。
【高畑】そうなんだ。
【きだて】そういうことも含めて、色々と試行錯誤はしていく所存ですので。
【他故】いろんな技を使って。
――きだてさんのアンボックス動画は、Amazonの箱を開けるところから始まるんでしょ。
【きだて】そう。「このツールを使うと、簡単に開くんですよ」って。
【他故】「ハコアケ」の紹介じゃんよ(笑)。
【きだて】「アンボックスツール動画」っていう(笑)。
――「ハコアケ」とか「ダンボールカッター」を紹介して。
【高畑】箱を開けるところで終わって、中身は次回。
【きだて】中身はやらない。
【他故】買ったものは見せないんだ(笑)。
【きだて】そういうのも込みで、今年はユーチューバーとして精力的になっていこうかなと。
【高畑】それは楽しみなので。
――文とび読者のみなさんに宣言したので、ぜひとも実現してほしいですね。
【きだて】さすがに、これだけ言っておいて、「やりませんでした」じゃ済まされないので。
【高畑】それで、ユーチューバーで儲かっちゃったら大変じゃんね。
【きだて】そうだよ。来年のこの鼎談なんて、俺参加してないかもしれないよ。お金儲かり過ぎちゃって。「もう文とびはいいよ」って言ってるかもしれない(笑)。
【高畑】マジで?
――ブング・ジャム脱退?
【きだて】「ピンの方が儲かるんで」って(笑)。
【他故】あははは(爆笑)。
【高畑】やっぱり、それぐらい顔が売れてくると面白くなるんだよ。
【きだて】そうだね。俺は文具界のフレディ・マーキュリーになるよって、死ぬんかい!
【他故】死ぬのか(笑)。
――それで映画化してもらえばいいですよ。
【きだて】映画化待ったなしですよ。
【他故】俺たちがオープニングからギター弾いてやるよ(笑)。
――手拍子ありで(笑)
【きだて】そう、応援上映ありで。それで、フレフレシャープを振ってもらうとか。
【他故】シャッシャッって(笑)。
【きだて】そんな感じで頑張っていこうと思います。
【高畑】最終的には映画化ということで。
――どんな話だ(笑)。
【きだて】そんなまとめ方なのか?
【高畑】いや、まあ、期待してますということで。
【きだて】頑張ります!プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
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