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- 【連載】『小粋な手紙箱』 #96・手紙の最後に添える結びの言葉

【連載】『小粋な手紙箱』 #96・手紙の最後に添える結びの言葉
(社)手紙文化振興協会認定・手紙の書き方コンサルタントの田丸有子さんは、子どもの頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの手紙好き。コンサルタントとして手紙文化を広めるために活動している田丸さんに、手紙の書き方のコツや手紙に関するトピックなどを毎月紹介してもらいます。
手紙で気持ちを伝えよう!
早春の花信が届くころとなりました。みなさまいかがお過ごしですか?
さて、最近一冊の本を読みましたのでご紹介します。『あとは切手を、一枚貼るだけ』は、14通にわたる往復書簡小説です。架空の話ですが、手紙の中で話題になっている本や映画などは実在しています。現実と想像の境目が読み手にとっては実にあいまいで、その境目を行ったり来たりただようようにして読んでいく不思議な感覚の小説です。ともに芥川賞作家でもある小川洋子と堀江敏幸が、手紙を交わす2人を担当し、打ち合わせもせずに物語を進めていったところがこの本の面白さでもあります。最後に、お2人の後日談がありますが、本当に受け取った手紙の内容だけが物語を進める拠り所になっていたそうで、手紙に書かれている文章から何を受け取り、読み取り、そして進めていくのか、まったく未知だったそう。想像力のぶつかり合いとでもいうのでしょうか。今までにない感覚の小説でした。
ところで、『あとは切手を、一枚貼るだけ』で私がとても気に入って、自分の手紙にも取り入れている部分があります。それは手紙の最後に添える日付の部分。これを小説の中ではその日を表す言葉で表現しています。たとえばこんなふうに。
・春の終わり、風の強い夜に
・北極星が見えない、生暖かい夜に
・雨の去った夕暮れに
・地球の向こう側から日食のニュースが流れてくる夜に
・台風の黒い目の中で
映像としてパッと頭に浮かんできますし、ただ日付を書くより臨場感があります。私はこれが気に入り、自分の手紙にも日付に加えて手紙を書いている時間が、どんな日、どんな時間だったのかを一言に表して記すようになりました。趣のある結びの言葉としてとてもおすすめです。
手紙トピック
デンマークの郵便配達が今年いっぱいで廃止になるニュースを驚きとさみしさを持って受け止めました。もし、手紙のない世界で生きていくとしたら…。郵便事業のない国で生きていくとしたら…。いろいろと考えさせられました。
日本が郵便趣味や文通を楽しむ人々にとっていかに恵まれた国であるかもひしひしと感じています。この当たり前を決して当たり前と思うなかれ。デンマークの一件で、郵便や手紙文化に対して、そこに携わる人々に対して、愛と感謝の気持ちが一段と自分の中で深まった出来事でした。
今月のマキシマムカード

テーマ: Spring
ポストカード: Kitahara Asuka(Triangle)
特殊切手と絵入りハト印:春のグリーティング
お知らせ
忙しい人でも自分のペースで学べます。
楽しく学んで手紙上手になりましょう!
【入門講座 /通信講座「手紙の書き方講座」】
【ビジネスメール講座 /通信講座「仕事で差がつく!メール・文章の書き方講座」】
【美文字講座 /通信講座「仕事で差がつく!実用美字・美手紙講座」】
プロフィール
田丸有子(たまるゆうこ)
(社)手紙文化振興協会認定・手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。でも手紙の何がそこまで自分を魅了するのか、深く考えたことはありませんでした。講座を受けて一番良かったことは、手紙が私の憧れを実現する手段であると気付いたことです。自分を表現することで人に喜んでもらいたい。叶えるために出来ることは何かずっと探してきました。その表現方法こそ私にとっての手紙であり、魅かれる理由なのだと気付いた瞬間、「やっと見つけた!」そんな気持ちになりました。
また、郵趣のコミュニティに参加したことで、手紙にも色々な楽しみ方が有ることを知りました。私が今夢中になっているのは、葉書と切手、消印をコーディネートするマキシマムカード。いかにセンス良く仕上げて個性を出すか、考えるだけでワクワクします。
ブログ「てがみまYukoのふみあかり」
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