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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.95 ブング・ジャムの2025年初文具 その3
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんが2025年に初めて購入した文房具を紹介してもらいました。
第3回目は他故さんの初文具です。
(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年11月9日撮影
*鼎談は2025年2月3日にリモートで行われました。
あのロングセラー商品の魅力を再発見
――じゃあ、最後は他故さんお願いします。
【他故】私が一番ライトで普通の話題になると思います。正月に文房具を買おうと思っても、今年の1月1日、2日、3日は店がどこもやってなかったんですよ。とにかく、でかい店だろうがちっちゃい店だろうが、正月は何も店がやってない。というわけで、買ったのは4日なんですけども、4日も朝起きて「文具マーケット」に直行したので、文具店に寄ることはできなくて。京急蒲田のドンキホーテで今年初めて買った文房具っていうのが「オーバンド」。
【高畑】何で?
【きだて】あんたは、輪ゴムに困るような人か(笑)。
【他故】「オーバンド」が欲しかったっていうよりは、茶色い輪ゴムが欲しかった。うちにある輪ゴムは、「オーバンド」だけどカラフルなのばっかりなんだよ。紫とかピンクとか緑とかの。
【きだて】ああ、はいはい。おしゃれ「オーバンド」ね。
【他故】おしゃれなのばっかりで、茶色い「オーバンド」が欲しかったんだけども、正月3日間は文具店がやってないと。じゃあどうしようかなと思ったときに、ドンキだったらこういうの置いてそうじゃんと思って、店の中を見たらズバリ大きい箱があったので。
【きだて】とりあえず「オーバンド」はいいけど、そもそも何で「オーバンド」を欲したのよ?
【高畑】何で茶色い「オーバンド」が欲しかったの?
【他故】それは、今回の「文具マーケット」の出店社さんの商品で、どうしても欲しかったものがあって。AobecoArtさんが、「ゴムブラン」っていう輪ゴムを乗っけてモンブランのかたちにするっていう便利文房具を売ってたんですよ。
【高畑】なるほど、やっと分かった(笑)。
【他故】これを買いたくって。だけど、おそらく輪ゴムは同梱されてないだろうから、「これ買ったぜ!」って言ったときに、「輪ゴムが載ってないよ」っていうわけにいかないじゃんということで、まず前もって輪ゴムを買おうと。
【きだて】そうか、紹介写真をすぐさまアップするときに必要だろうと。
【他故】そう。買ったらすぐ「俺これ買ったぜ」ってやりたいのに、輪ゴム乗ってなかったらあげるわけにいかないじゃん、と俺は思ったんだよ。
【高畑】輪ゴムがなかったらモンブランにならないから。
【他故】だからこれを買って、もう満を持して、始まってすぐに「ください」って言ったら…。
【きだて】満を持し過ぎるだろ(苦笑)。
【他故】そしたら、会場限定で輪ゴムの載ってるのを売ってたんですよ(笑)。本来だったら、この製品って、基部になってる下のクッキーの部分と、軸と、軸の上につける栗だけなんだけども、会場ではケースと輪ゴムが一緒になってる特別セットが売られていて、ぶっちゃけこれいらなかったんですよ(笑)。でもね、ちょっと盛りが弱いんだよ。
【高畑】盛りが弱い!?
【他故】だから、こうやって輪ゴム増し増しにして、後で家に帰ってから写真を撮るというのをやったんだよ。それが今、こんだけ盛られてる状態なんだけど。
【きだて】それぐらい盛らないと、ちょっとモンブランぽくなりきれないんだよね。
【他故】そうそう、この半分ぐらいしか盛られてなかったので。なので、今年初めて買った文房具は「オーバンド」。
【きだて】ははは(笑)。
【他故】本当に欲しかったのは「ゴムブラン」。
――まあ、それはそうですよ(笑)。
【高畑】こっちを買う前に、その準備がさ。
【きだて】その辺の抜かりないところが、やっぱ他故さんなんだよなぁ。
【高畑】すごいよね。本当にそこら辺は、どこからそれを動き始めるかっていうのがなかなか。
【他故】それでも、正月3日間どこも開いてないは想定外だったので、正直焦った。
【きだて】今年はいろんな店が正月閉めてたね。
【他故】閉めてたんだよね。
――働き方改革ですかね。
【きだて】スーパーも、ちょっと前までは正月1日から開いてただろうと思うんだけどね。
――それこそ、我々の子どもの頃は、正月3日は大型店はどこも休みでしたからね。
【他故】そうでしたよね。で今年は、1月1日に実家に帰ったんですよ。その一日だけだったんですけども。帰って午前中に実家へ行って、午後はK-MIXっていう静岡のFM局で生出演をしてきまして、文房具の話をしてきたんだけども、その時に飯を食いに行く場所がない。結局、駅のスタバで飯を食ったんだけど、なんで正月の昼にスタバで飯を食べないといかんのだみたいな。
【きだて】浜松でも開いてないんだ。
【他故】びっくりしたね。駅ビルも何にも開いてない。今年は久しぶりにお正月に実家に帰ったっていうのもあるんだけども、世の中がちょっとずつ様変わりしてる部分を見てしまったなっていう。本来だったら、実家に帰ったら行ける範囲で街の文房具店に寄ったりするんだけど、今回はそれも全くできず。
――どこも開いてないという。
【他故】どこも開いてないので4日までお預けで、4日に初めて買ったのは「オーバンド」。
(一同爆笑)
【高畑】そして、なくてもなんとかなったっていう(笑)。
【他故】輪ゴムはね、別にあったらあったで全然使うものなのでこれでいいんだけど。
【きだて】なんぼあっても困るもんじゃないからね。
【他故】まるっきり困るもんじゃないし。
【きだて】腐りはするけれど。
【高畑】そう、腐るんだよね(古くなると劣化する)。だからゴムバンドって、新鮮じゃないとダメだから、ちょいちょい買わないとね。
【他故】それはある。
【高畑】だから、使うところでちゃんと補充して、ちゃんと使わないとさ。何年も置いてあったやつを開けるとさ、中でピカピになってたりすることもあるからさ。
【他故】「オーバンド」のカラーのやつってさ、これシリコンなのかね?
【高畑】シリコンでしょ。
【他故】だから、割と簡単に経年劣化しちゃって、ブチブチ切れちゃうんだよね。信頼性でいうと、やっぱりゴムの輪ゴムの方が長持ちはするなって気はしてるんだけど。
【高畑】ゴムのやつも、ちょっと忘れてるとさ、まあちょっとといっても何年も経ってんだと思うけどさ、まとめて束にしてあったやつがこのかたちのままで固まっちゃってたことがあるからさ。
【他故】くっついてるのあるね。
【高畑】切れてたりすることもあるから、気にはしてるけど、でも輪ゴムって便利だからね。ちょっと留めたいときは便利なので、やっぱり輪ゴムは輪ゴムで使うよね。
【他故】本当に久しぶりにオリジナルの「オーバンド」を箱で買ったけどね。こうやって「ゴムブラン」に入れてみると、最初に入ってた輪ゴムと、その上に盛った「オーバンド」の質が違ってて、やっぱり「オーバンド」って普通に質がいいなって(笑)。
【きだて】ははは(笑)。
【他故】元々入ってたやつが割と貧弱に見える。
――その輪ゴムは「オーバンド」じゃないんですね。
【他故】そう、どこのかは分からないですけど。その上から盛ると上のクリームがすごくツヤツヤして美味しそうみたいな(笑)。
【きだて】微妙に違うんだよね。
【高畑】サービスで入れなきゃいけないからさ、ちゃんとしたブランドのちゃんとした輪ゴムだと、ちょっと割高なんじゃない?
【きだて】サービスでつけてくれたんだから。
【他故】いや、文句言ってるわけじゃなくて、やっぱり触ってみると質ってあるんだねっていうのが改めて感じられたっていうね。
――普段何気なく使ってる「オーバンド」は、結構いいやつだったっていう話ですね。
【きだて】市販品の輪ゴム鉄砲でも、ちゃんと「オーバンド」を指定してたりするね。
【他故】やっぱりそうか。
【高畑】日本ゴム銃射撃協会かなんかの公式の輪ゴムが「オーバンド」じゃなかったっけ?
【きだて】そう、レギュレーションとして「オーバンド」あるんですよ。
【高畑】「オーバンド」の何号っていう輪ゴムが基本なんだよ。もちろん違うのも使えるけど、公式の競技会ではこれを使うみたいなね。
【きだて】ちゃんと競技会で計測結果出すには、「オーバンド」を使わないと参考結果になっちゃうっていう。
【他故】まあ、レギュレーションとして決まってる方がいいだろうし。これの方が性能いいって言われば、これを使うわな。
【きだて】それだけ「オーバンド」は品質安定してんだよね。
【他故】だろうね。
――こうやって他故さんが正月に「オーバンド」を買わなければ、こういう話ができなかったわけですよ。
【他故】ははは(笑)。
――実は「オーバンド」って、品質が良いんだぞっていう。だから今回は、貴重な経験になりましたよ。
【他故】定番品として昔からあって、知ってはいるつもりでも、改めて買ってないっていうものがあるなっていうのは、これを買って気がつきましたけどね。やっぱり、オリジナルっていいよねっていう。どうしても新製品にばかり目が行ってしまうんですけど、たまには原点というかオリジナルに戻るのもいいな。なので、「オーバンド」はおすすめですよ。
【高畑】僕は缶の「オーバンド」で、紙の箱で買ったやつはこっちにちょっとずつ移して使ってる。マグネットで壁に貼り付けて使ってるんだけど。
【他故】なるほどね。
【高畑】でも、紙の箱もかわいくていいよね。その絵がかわいくていい。
【他故】これがいいですよ。小学校の頃、教室にあったやつと変わらずみたいなこの感じが。
【きだて】その色の箱を見たら輪ゴムだなって思うもんね。アイコンとしての茶色。
【他故】思うね。
【高畑】定番が長いこと使われてて、未だにそれがいいよねっていうのがあるからね。今、 MDFとかをカットして箱を作ったりとか、色々と木工のグッズを作ったりしてるんだけど、ボンドつけて乾くまでの間、このゴムバンドで留めてる。ああいう工作の乾くまでを待つ間に押さえててくれるものとして、僕は「オーバンド」はかなり信頼してるんですけどね。
【きだて】接着剤によっては、「オーバーンド」まで貼っちゃうことない?
【高畑】のりがはみ出してると、「オーバンド」ごとくっついてるときはあるので、はみ出さないようにする必要はあるけれども。そういうのの仮留めっていうか、軽く留めるのにちょうどいいよね。すごい大げさでもなくてね。
――ちなみに、それ一箱いくらだったんですか?
【他故】ええっと、いくらだったかな?
――そんな高いもんじゃないですよね。
【きだて】300円前後かな。
【他故】これ何gなんだろう? 100gだとアスクルで 246円だから、300円はしないと思うね。
【高畑】昔「TVチャンピオン」という番組で、今他故さんが持ってる箱に入ってるやつを全部縦に繋げて、引っ張ったら何メートルまで伸びて切れるかっていうのを当てさせられたよ。全然当たらなかったけど。
【他故】分かるわけないだろ(笑)。
【高畑】チェーンつなぎすると1箱で200m以上いくっていう。二度とやりたくない思い出が…。
【きだて】「TVチャンピオン」はそんなのばっかだな(笑)。
【他故】そんなの文房具の知識じゃないない。
――「オーバンド」って、結構サイズがいろいろあるんですね。
【高畑】一番多いのが16号っていう。
【他故】そう、これが16号。
【高畑】それが普通なんだけど。
【他故】箱の裏に大きさ表が載ってるのが好きで。ちっちゃい表だけど、7号から18号まで、一般使いの大きさのバリエーションが載ってるのが、割とかわいくて好き。
【他故】何だ、裏に何本入ってるか書いてあるじゃん。
【高畑】それは、あの時には分かんないから。見せてくれないんだもん。
【きだて】何本入ってんの?
【他故】16号の100g箱で680本。
【きだて】そんなに入ってんの!
【高畑】何個入ってるかを教えてくれないんだよ。「この箱に」って見せられてさ、「この箱に入ってるやつを全部繋げたらどのくらいでしょう」って問題で。
【他故】ひどいな、それ。
【高畑】何本かは教えてくれない。何本か分かると計算しやすいじゃん。「何本入ってるかもなんとなく考えろ」みたいな話だったと思う。
――色々と勉強になりました。
【他故】あんまり話が広がらないかなと思ったけど、みんな付き合ってくれてありがとう(笑)。
――いや、なかなかこういう機会がないと「オーバンド」についてここまで語らないでしょ。
【他故】そうかもしれないですね。
プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/
https://buntobi.stores.jp/items/676b8e121008560336e05fac
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