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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.78 段ボールの開梱に便利! 機能性はさみの最新アイテム その3

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、段ボールの開梱に使える、機能性はさみの最新アイテムを取り上げました。

第3回目は、コクヨの「2Way携帯ハサミ〈ハコアケ〉」です。

写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん*2023年6月3日撮影
*鼎談は2023年8月29日にリモートで行われました。

元祖・“箱開けはさみ”に携帯タイプ登場!

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2Way携帯ハサミ〈ハコアケ〉」(コクヨ) ダンボール箱等を開梱するためのカッターとしても、ハサミとしても使用できる「2Wayハサミ〈ハコアケ〉」に携帯タイプが登場。開梱モードにより特化し、本体に開梱ガイドをつけ開梱時のカッターとしての使いやすさにこだわったほか、スペースが限られた玄関などにも場所をとらずに置けるコンパクトサイズが特徴。スタンダード刃は税込935円、チタン刃は同1,320円。

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――じゃあ、最後は「ハコアケ」ですね。

【他故】変化球。

――「ハコアケ」は、携帯タイプが新しいですよということなんですけど、はさみタイプの方もリニューアルしたんですよね。

2.jpg【高畑】きだてさんに散々言われた、「刃があんまり出てないから、もうちょっと出てくれないと開けづらいよ」っていうコメントが聞き入れられたということですよね。きだてさんの意見を取り入れたバージョンになりましたよということで。

【きだて】俺の意見が通ったというわけでは無いだろうけど、それはそれとしてさんざん文句は言ったよね(笑)

――2㎜長くなったんですね。従来が1㎜だったのが「3㎜に変更」って書いてあるから。

【きだて】正直まだもうちょっと出てもいいよって気がするんだけど。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】でもこれぐらいでもね、自分で切った切り口の中に沈まないので、まあ使いやすいっちゃ使いやすいんだけどね。

【他故】なるほどね。

――これはもう、安全に使えるように、かなり細心の注意を払って作った感じなので。

【きだて】そこは、さすがコクヨというか。

【高畑】全体の最大公約数をとった上で、より安全な方に振るっていうのがあるので、それはそれでいいかなってことなんだけど。握りやすさとかもちょっと改善してるので、はさみタイプもいいんだけど、今回は携帯用が出たってのが大きいね。

――そうですね。

【高畑】これは「サクサポシェ」と同じやり方だよね。

【きだて】ああ、そうだね。刃がスライドで。

【高畑】構造的には「サクサポシェ」みたいな感じなんだけど、ポイントとしては真ん中で止められるってところだよね。真ん中で止めたらカッターモードなので。はさみの場合って、押しながらとかちょっとややこしかったじゃん。スライドをさせながら握ったらハコアケモードになりますっていうのは、まず説明しないとちょっと使い方が分かりづらかったけど、今度の携帯タイプは真ん中で止めたら刃がちょっと出ててカッターとして使えますっていうのが分かりやすい。それで、前まで出したら勝手にはさみになるので、何か分かりやすいよね。

3.jpg【他故】うん、これは分かりやすいと思う。

【きだて】なんだけど、このカッターモードでロックがかからないのがちょっと不満なんだよね。

【高畑】だから、力を入れたりとかしてうっかり持つと、下がっちゃったりとか。

【他故】ああ、ボタンを持っちゃうということか。

【きだて】下手をすると、カッターモードで箱を開けてるときに、ちょっと力の入れ加減を間違えただけで、ハサミモードに急になっちゃったりとかするのよ。パッと開いて。

【高畑】この黒いところにうっかり触っちゃうと、前へ出たり、後ろへ下がったりするんだね。

【きだて】そうそう。「カコッ」ていうほんのりしたクリックで止まってるだけなので。

【高畑】もうちょっとしっかり止まっててほしいということね。

【きだて】もうちょっと何とかならないのかなという。

【他故】メーカーが言うには、多分親指を「このボタンに乗せるな」っていうことなんだろうけどね。

【きだて】だって、使ってるうちに親指は乗るよ。

【他故】「乗せないで持て」って言いたいんだろうなあ(笑)。

【きだて】いっぱい開けてると、その辺はあいまいになっちゃうよね。実際、今回の「オオイマチ・ブングジャム」のお土産の開梱にこれを使ってたんだけど、10箱とか開けてるうちに勝手にスライドが動いちゃって、「あっ、もう!」ってなるシーンがあった。だから、引っ越しとか、そういう大量開梱だとちょっとイライラするかもよ。

【他故】なるほどね。

――ちょっと使うぐらいだったらいいのかな?

【きだて】そう。これの紹介記事を書いた時に、テスト的に2、3箱開けたときは全然そうならなかったんだけど、何か時間に追われるようにいくつもパコパコ開けてると結構イラついた。

【高畑】そういう意味では、はさみタイプの方もそうなんだけどね。開梱する箱の数が多くなってくると、いちいち刃を出すのはちょっと面倒な感じはするんだ。

――親指がちょっと疲れてきますよね。家庭に届いたダンボールを1個開けるのに使うってことを考えるとも、そこまでヘビーユースにはならないだろうということなんですかね?

【他故】まあ、そういうことですね。

【高畑】そういう意味でいうと、「ちょっと開けたい」っていうのに対して、これはコンパクトでいいじゃん。置いとくことを考えたら、普通のはさみに比べたら全然場所を取らないし。それこそ、バーベキューとかキャンプで、荷物開けますみたいなときとはこれで十分かなっていう。

【きだて】はさみとカッターで使えるっていうので、しかも持ち歩きできるわけでしょ。

【高畑】落とさないようにヒモを付けられるしね。外用という意味では全然いいと思う。あと、玄関とかに置いとくのにも、このコンパクトなのが割といい。

【きだて】うん、そうそう。カバンに引っ付けるか、ヒモで吊すかだからね。

【高畑】これ、デザインフィルだったら磁石付けてるよ。

【きだて】ははは、ありそう。

――ああ、磁石付いてるといいかもしれませんね。

【高畑】外へ持ってったときに、磁石が付いてるのがいいか悪いか分かんないけど、家に置いておくんだったら、これを玄関に貼っておきたい気分にはなるね。あと、ちょっと気が利いていていいなと思ったのは、ここの刃が出るところが凹んでることね。段ボールの角に当てる時に、ちょうどこの角が当たるので。段ボールの真ん中を切るときはこれでいいんだけど、両側切るときにはどうしても角に合わせてビーってやるので、そのときにここの凹みが案外悪くない。

【きだて】このガイドが意外と効く。側面のテープをスムーズに切るのって、結構慣れが要るじゃない。

【他故】いるね。いるいる、うん。

【高畑】この角にちょうどスポッと入るのね。ここの凹みはね、よく考えてある。

【他故】角用ガイドだね。

【きだて】天面を切るときも、底の部分がちょっと斜めに切ってあるので、それがガイドになるしね。

4.jpg【他故】よく考えられてる。

【高畑】角がね案外良いね。

【きだて】本当に何も考えなくても、とりあえずそこはめ込んですっと引けば、側面はきれいに切れるので楽だよね。

【高畑】思ったより良いなあと思って。

【きだて】はさみとしてもね、硬めの結束PPバンドとかも切れるので、荷物関係はまあそれで万能だろうなという。

【高畑】まあ、十分かなって感じだね。

【他故】そうだね。それは分かる。

【きだて】普通のはさみに比べると、やっぱりどうしても携帯用だから落ちるんだけど。

【高畑】これで細かい細工をしようとかっていうのはないから、このぐらい割り切ってもいいかな。

【他故】パッケージの開梱にね。そういうところで普段ちょっと使う程度だったらね。

【高畑】それこそ、キャンプへ行って袋を開けるとかだったら、このはさみでいい。

【他故】そう、全然これでいい。

【高畑】何せコンパクトなはさみで、どっちにも使える。箱開けと袋開けとヒモ切りができるっていうので、外で困ることっていうのが大体これでいけるのかな。このハサミモードは結構使うよね。なんだかんだで。

【他故】あると便利。

【高畑】だから、ナイフよりいいときは全然あって。昔はビクトリノックス持ってたけど、使用頻度が一番高いのははさみだったりするので。

【他故】うん、そうだよね。はさみだよ。

【高畑】そういう意味では、はさみが使えるっていうのはやっぱり重要なので。

【他故】ちょっと出た糸を切るとか、そういうときに使うからね。

【きだて】携帯はさみとしてはやや大きめだけども、まあペンケースに入らないこともないしで。

【高畑】学校でプリントを切るための携帯はさみではないので、むしろこのぐらいの大きさがあった方が軍手してても使えるみたいな感じがあるのでいいかな。これより小っちゃいゃいと小っちゃ過ぎるかな。

【きだて】そうだね。

【高畑】開梱用のはさみとしたら、もうこれでいいんじゃない。一番小っちゃいぐらいだろう。

【きだて】本当にね、真ん中の方のロックさえついてればもう最高だなっていう。

【他故】これをもうちょっと改良してもらって。

【高畑】途中でモードが切り替わっちゃうのは危ないので、しっかり止まるっていうのはあってもいいね。

【きだて】だってさ、はさみモードの厳重なセーフティーから比べるとさ、ちょっとずさんな気がしない?

【高畑】はさみタイプに比べたらね。はさみは過剰な感じがするし、こっちはちょっと足りない感じがするみたいな。

【きだて】同じ設計思想で作ったとはとても思えないぐらいの差があるので。

【高畑】「サクサポシェ」は、逆にはさみで使ってるときに刃が引っ込んで開かなくなることがあるから、はさみとしてはこっちの方が安定してていいよ。

【きだて】「ドットライナー」のキャップが勝手に閉まらないセーフティとかを作ってくれたコクヨですから、簡単な仕組みできっちり効くセーフティができるんじゃない?っていう期待はあるんだよね。

【他故】今後に期待だね。

【高畑】でも、すごくいろんなアイデアをここで試してみた感じがすごいするじゃないですか?

【きだて】ああ、はいはい。

【高畑】箱を開けるためのアイデアをすごく試したんだけど、ここで出たいろんなものが、「これぐらいでいいんじゃない」っていう感じがして。後から出ただけあって、使い勝手としたらこっちの方が割とよくて、「頑張って色々考えました」感が普通になってくれた感じがするので。こっちの方が、道具としてはすごいナチュラルな感じがする。

【きだて】それは分かる。

【高畑】ヘビーに使うってなったら、きだてさんが言うみたいな問題もあるので、まだまだあれかもしれないけど。でもだいぶ収まりが良くなったよね。角の部分を切ろうと思ったら、結構コントロール難しいじゃん。それがこっちの方が楽なところもあって、この携帯タイプの方が割と好きなんだよね。

【他故】うん、そうそう。これはすごくいいですよ。

【高畑】ガツガツ使うんだったら、3Mのはさみぐらいしっかりしていてもいいかもしれないけど、今アウトドアとか流行ってるし、外へ持っていくんだったらこれだよね。

――これは色が完全にアウトドア系の色ですよね。

【きだて】それを意識してるとしか思えないじゃない。

【他故】みんなと認識違ってたら非常に申し訳ないんだけど、何でこの緑色がカーキなの?

【高畑】あ、それはね、色々と問題があるんだよ。ファッション業界とかが間違っちゃった説みたいなのがあって。

【他故】むしろ、黄色っぽい方がカーキなんじゃないの?

【高畑】オリーブとカーキだよね。

【他故】これ、オリーブドラブだよね。

【高畑】カーキの使い方は、何か間違っちゃってるっぽいんだよ。

【他故】そうなの?

【高畑】それはね、色の名前の話では時々出てくる議論で、「これ何色?」みたいな。

【他故】僕の中で、この緑色はカーキじゃないんだけど(苦笑)、そういうのがあるんだね。

【高畑】間違っちゃって、それが定着している感じみたいよ。

【きだて】だって、カーキって元々は「土埃」って意味だから。

【他故】そうそうそう。

【きだて】だから、明らかに緑系の色ではない。キミんとこの土はどんな土なんだという。

【他故】これではないよね。

【高畑】戦車の色を塗ってるときに、「どっち塗る?」みたいな話だったよね。「砂漠仕様の戦車はこっちだよね」みたいな。

【きだて】どっちも迷彩に使われる色だけに、何かややこしいんだよ。

【他故】ややこしい(苦笑)。

【高畑】ファッションでカーキっていうのが間違って使い始めちゃったので。どっちも褐色って言われてるので。緑褐色と黄褐色かな、なのでそんな感じになっちゃうし。浅葱色も、浅いに葱って書くから、緑系の色使われることが多いんだけど、元々はブルーだからね。新撰組のあのギザギザのところがそうだから。水色で。なんだけど、緑色で塗られてる場合が結構あって、浅葱色も間違えられたりするね。

【他故】ほう。

【高畑】確かにあのカーキは困る。やっぱり元のイメージと違うので。

――ミリタリーっぽい色だから間違えちゃいますよね。

【高畑】しかも、どっちもあるからね。こっちは何だっけ?

【他故】サンドベージュ。

【高畑】サンドベージュのことをカーキって言うんじゃないの。

【他故】サンドベージュがカーキだよ(笑)。

【高畑】「ハコアケ」は、はさみタイプが白とグレーみたいなアーバン系のカラーになっていて、携帯はさみはアウトドア系のカラーだから、「こっちは家で使ってください」「こっちはアウトドアで使ってください」みたいなね。

【きだて】分かりやすい色付けだね。

【他故】そうだね。

――まあ1本持っておくと便利そうですよね。

【他故】これは便利だと思いますよ。

【きだて】だけど、これ1本で家庭で何でもできるっていうタイプではないね。正直言うと、2本目以降にこれあるといいよって感じ。

――要は持ち歩き用みたいな感じで。

【きだて】1本なら俺は3Mをおすすめする。

【他故】1本ならね。

【高畑】これはだから、俺的にはキャンプとかの荷物にポイっと放り込む感じかな。リュックに入れとくんだったらこれだし、何でも使いたい、ガッツリ使いたい人は3Mがいいかな。

【きだて】それよりもさらに面倒くさがりの人はクツワを使うっていう、そういう棲み分けになるんじゃないかね。

――分かりやすいという。

【高畑】スコッチのいいところは、箱を開けるっていうモードを使わない人にとったら、ただのはさみなんだよね。これはすごくいいよね。長さが違うでもなく、使い勝手が違うでも全然なくて、ただよく切れるはさみっていうのはね。これって、箱開けモードを使わないは、ちょっと普通のはさみじゃないじゃん。

【他故】まあそうだね。

【高畑】そのモード使わない人にとったらただのはさみっていうのが結構重要な気がするな。

【きだて】そうだね。

【他故】はさみとしての使い勝手がいいってことだからね。

――まあ、三者三様ということで。

【高畑】はさみは、本当いろんなものが出てきている感じですね。

――この携帯はさみは、カバンとかに入れといてロックが外れて刃が出たりとかはないですかね?

【きだて】ゼロではない。意外とズルっと出ちゃうので。

――ちょっと油断してるとあるのかな。カバンの中でブスッと。

【きだて】ブスッとというか、刃が開いているのに気が付かずに触れちゃう可能性はある。カバンの中ではさみモードになっちゃうかもしれないので。

【高畑】スライドしちゃうと危ないは危ないので。

【きだて】だから本当に、あのはさみタイプのセーフティ思想はどこへいった?

【他故】ここにはそれがない。

【きだて】もうちょっと何か力加減あるだろうっていう(笑)。

――はさみとは別の人が作ってるんじゃないですか?

【高畑】まあ、それはあるかもしれないけどね。

【きだて】あまり同じ思想を感じないので、多分別だと思う。

【高畑】なるほど、その可能性はあるよね。まあ、「サクサポシェが途中で止まったらできるんじゃないの」みたいな話だと思うんだよね。確かに、そのカチット感みたいなところで、何かこうもうちょっとしっかり止める方法はあってもいいかなという気がするね。

【きだて】うん。

【高畑】やっぱり使い分けだと思うので、自分の用途と使用頻度とあと置いておく場所とか、そういうのに合わせて選ぶしかないね。

【他故】そうだね。選べる楽しさもあるしね。

――しかし、はさみは次から次と出てきますね。

【きだて】ところで根本的な疑問なんだけど、はさみと開梱用オープナーを一体化してほしい層というのは、本当にいるのかね? どういう人が欲しがっているのかというのが、どうも読めないというか。

【高畑】きだてさんとか僕らみたいに、ある程度道具をいっぱい持っていたりとかする人だと、用途に合わせて道具を選んだ方が、よりそこにちょうどいい道具っていうので、複数それぞれに分けたりとかするけど、1個で全部できる魅力っていうのは、常にどの道具にもよくあるじゃん。「1台で何でもできますよ」っていうのを魅力に感じる人は多いんじゃないかな。商品として「1台でどっちもできますよ」っていううたい文句が今でも効くんじゃないかな。

【きだて】でも、それははさみを1本も持ってない人に向けてなのか、「はさみは別にあるけど」っていう人が買うのかがよく分かんないんだよね。

【高畑】あっても何かこれを選んじゃうんじゃないのかな。

――結構まだはさみで段ボール開けてる人は多いと思いますよ。

【きだて】はさみ開いてガーッと開ける人はね。

【他故】うん、いるいる。

【きだて】俺が書いた「梱包開封シザーズ」の紹介記事が公開されて、Twitter(現X)で告知したら、「そんなの普通のハサミで開けるから要らないんだよ」っていう冷笑系のレスがいくつか付いていて。「キミらみたいな文明を知らない原始人のためにこういう製品があるんだよ」って(笑)。

【高畑】「上手に道具を使いこなしたら、こんな道具は要らない」って言ったら、ほとんどの新商品はなくていいっていう話なんだよ(笑)。そこはそうなんだけどさ。俺の動画にも「そんなのこれだけで十分できる」みたいなこと言ってくる人がいて、そういう人はそれでいいよっていう。何かそういう人がいるけどね。やっぱり、理性的にはこれとはさみを別に持った方がいいよね。

【他故】まあ、そうだね。

【高畑】それが「いろんな使い方ができる」って言うと便利そうな気がしてしまうっていうのはあるんじゃない。インフィニットドレスを本当に100通り着こなしてる人を見たことないけど、みたいな。

――はさみしか使ったことない人がいたら、これを見たら分かりやすいじゃないですか。

【高畑】段ボールしか切れない道具を買うというのが。

【きだて】やっぱりそうなんだな。

【高畑】段ボールを開けるための専用の道具を、段ボールを開けるだけのために買うっていう人はあんまりいないけど、はさみで段ボールも行けるんだったら買ってもいいかなっていう人はいる。

【他故】そっちの方が多いかな。

【高畑】なんかそんな気がします。まあ、多機能のものを単機能にばらした方がいいというのは、よくある話ではあるので。

――この間コクヨがアンケートで、一番長く使ってる文房具ははさみだっていう結果が出たということですけど、何故こんなにいっぱいはさみの新製品が出るのかっていう疑問が…。

【高畑】「何ではさみってこんなに売れるんですかね?」「日本の家には一体何丁はさみがあるんだろう」っていう話は前からあるからね。

――ブング・ジャムのみなさんとも過去に何度かはさみ論争みたいのをしましたけど、結局答えは出ずじまいで。

【他故】ああ、ありましたね。はさみの墓場があるんですよ(笑)。

【高畑】普通の人が引っ越すときに、全部荷物を出してはさみの数を数えたら、「こんなにあるの」っていうぐらいはさみが出てくると思うよ。多分、はさみって普通の家に何丁もあると思うんだよね。1世帯当たりの平均はさみ所有数みたいなのを国政調査したいね。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】でもね、意外とゼロが多いらしいよ。

【他故】持ってないってこと?

【きだて】単身者はね、持ってない人も結構いるみたいよ。

――え~どうしてですかね? だって何か切ったりするでしょ。

【きだて】その度に「はさみ欲しいな」と思いつつ、そのまま忘れるって。

――手で破ってるんですかね(笑)。

【きだて】そらまぁ、手なんでしょうな。

【高畑】洗剤の詰め替えのがどうやっても開かないときあるじゃん。ああいうのはさ。

【きだて】どうしてるんだろうね。実際、俺が「はさみ買いなよ」ってしつこく言って買わせるまで、はさみ持ってなかった人もいたしさ。

【高畑】ああ、そうか。多分、その辺が大きいんじゃない。あと、無駄にいっぱい持ってる人との格差も大きいんじゃないかな?

【他故】格差(笑)。

【きだて】ならすとどこになるのか、その中央値は気になるんだけどね。

【高畑】本当に持ってない人と、「数えたら10丁は軽く持ってます」みたいな人の分布を見てみたい気がするよね。それで、案外ゼロっていう人も全然いっぱいいるというか。

【きだて】他故さんちは何本ぐらいあるの?

【他故】いや、分からない。だって置いとくとなくなるからさ。うちこそ分からないよ。

【きだて】そうか、そうだった。

【他故】目の前にあるのが何本ていうのは知ってるけど、何本あって何本無くなったかは、もう全然分からない。

【きだて】ちょっと他故さんち総ざらいしたいよなあ。

【他故】うちが引っ越すときには、すごい量が出てくるよ(笑)。

【高畑】池の水全部抜くみたいな感じでね。「こんなのが出てくるよ」って。

【他故】うん、出てくる出てくる。

【高畑】昔、何かの本にあったのが、世界中の一般的な家庭の中にあるものを全て出して、体育館みたいな広いところに全部並べたら、国ごとにこんな物を持っていて、このぐらいの物量のものを一般的な中流家庭の人は持ってるみたいなのが表にしてあったんだけど。はさみの所持率みたいなのが、そういう感じで何かを表すバロメーターにはなるかもしれない。

――なるほど。

【高畑】何か人類学的にはなってしまったけど、はさみはあって困るものではないので、まあ持っておけばいいんじゃないですか。

【きだて】ははは(笑)。

【他故】必要があったら買おうよって(笑)。

【高畑】ブング・ジャム的には、「もちろん普通のはさみを広げてもできるし、カッターナイフを持ってていいでしょうけども、こういう専用のはさみがあってもいいんじゃないの?」っていうところではあるよね。

【他故】だと思います。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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