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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.69 ブング・ジャムの2022年ベストバイ文具(その1)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、からブング・ジャムのみなさんが選んだ2022年ベストバイ文具を紹介してもらいました。

第1回目はきだてさんが選んだサンスター文具の「ジョイカバ カウモ 買いまわりトート」です。

(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2021年11月9日撮影
*鼎談は2022年12月5日にリモートで行われました。

私はこれで取材が楽になりました

ジョイカバ カウモ 買いまわりトート」(サンスター文具)

――今回は、みなさんの2022年ベストバイ文具を紹介してもらいます。まずはきだてさんから。

【きだて】俺はサンスター文具の「ジョイカバ カウモ 買いまわりトート」A4サイズ。でもよく考えたら、上半期のベストバイもカバン系だったんだよな…。

【高畑】リュックの中にパカッてはめるやつ。

【他故】ああそうか。

――クツワの「ハサンド」ですね。

【きだて】文房具の鼎談なのに、どっちもそれでいいのかというのが、ちょっと微妙なんですけど(苦笑)。

――全然大丈夫ですよ。

【きだて】とはいっても結局のところ、今年の買い物の「買ってよかった」度でいうと、これが最強だったなと。下手すると、文房具を問わず今年買ったものの中で一番満足度が高かったかもしれない。仕組みとしては、トートバッグの横にジッパーが付いたというのが一番大きいんだけど。これだけで、こんなに展示会の取材が楽になるかという。2.jpg

【他故】はいはい、分かるよ。

【きだて】俺はそもそもすごいなで肩なので、カバンが落ちてこないように、肩に対して肩紐をギチギチに掛けたいんですよ。

【他故】私もそうです、完全になで肩(笑)。

【きだて】ただ、そうなった場合、パンフとか受け取ったものをトートに入れるのが面倒で。肩にギチギチにはまってた肩紐をいったん降ろして、トートに紙を入れて、またグッと戻すとみたいなのが死ぬほど面倒くさいわけですよ。

【他故】うん。

【きだて】これが、サイドジッパーで開けてスパスパ入れると、今までのストレスが何だったの? というぐらい楽になるわけですわ。

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【他故】ねえ。

【きだて】他故さんも買って、文具王も買ったりとか、身近なところだとなおちゃん(ふじいなおみさん)も買ってたし。

【他故】うん、みんな買った。

【きだて】俺が「取材が楽になるよ」と言うのを、みんなちゃんと真に受けて買ってくれた。

【他故】真に受けて(笑)。

【高畑】真に受けて買ってみたけど、確かによかったよ。

【他故】そもそも、これを発売したとき、ISOTに間に合うかと思ったんだよね。それが間に合わなくて、すごい残念だったというところから始まった製品だから(笑)。

【きだて】俺もISOTには間に合わなかったっけか。

【他故】だよね。「文紙メッセ」からかな。

【きだて】そうだね。文紙メッセで初始動だね。だから8月か。

【高畑】文紙メッセでツイートしてたのは見たよ。

【きだて】受け取ったものを、サイドジッパーでスパスパ入れていくというのと、移動のときにキャリーのハンドルに付けられる機能とか、そういう細かいところも充実しているし。あとは、トートの外側にちょうどいいサイズのポケットが付いているものって、今まで探してたけどなかったんだよ。

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【他故】なるほど。

【きだて】名刺入れをここに入れたかったのね。取材中に名刺入れがどこかに行っちゃうことって、めちゃめちゃあって。

【高畑】あ~分かる。

【きだて】取材中って色々とバタつくからさ。先方さんと名刺を交換したあとに名刺入れを戻すんだけど、ズボンのポケットやらカバンの中やら、その時々で手が届くところに放り込んじゃうんだよね。で、次に名刺を出すときに「名刺入れどこ!?」ってなる。なので、「必ずココ」って場所を決めておいた方がよくて。

【高畑】そういうトートバッグって、内側にポケットが付きがちじゃん。

【他故】そうそう。

【きだて】そうなのよ。でも、内側って出し入れしにくいじゃん。

【他故】まあ、結局ベルトでふさがっちゃってるわけだからね。

【きだて】だから、外側に名刺入れにベストなサイズのポケットが欲しかったんだけど、これがまたバッチリと俺が使っている名刺入れがきれいに収まるサイズで。このカバンによって、取材中のいろんなストレスが一気に解消されたという感があるんですわ。

【他故】うん、分かる分かる。

【きだて】他故さん的に、使ってみてどんな感じよ?

【他故】僕の場合は、ISOTに持っていきたかったというのが最初なんだけど、もちろん同人誌即売会も結構行くので、本来の使い方である「買ったらすぐに入れられる」というアクションがすごく良いというのもあるし。同人誌即売会って、人がたくさんいるんですよ。周りにたくさんお客さんがいたり、売っているブースも小っちゃいので、その前に並んで色々とアクションを幅広くすることができない。だから、受け取って「ありがとうございました」と言ったら、すぐにカバンに入れちゃいたい。なんだけど、僕もきだて氏と一緒で超なで肩で、肩から外して入れてなんてやってられないので、やっぱりサイドチャックがいいと。前から、サイドチャックのカバンがあるだろうと探してたんだよ。絶対便利だから、カバンメーカーはどこか考えているだろうと思ってたけど、なかったんだよね。

【きだて】リュックだとたまにサイドチャックがあるんだけど、リュックじゃないんだよ。

【他故】そう、リュックじゃないんだよ。サイドチャックがあっても、背負ってたら放り込めないので。

【きだて】そうそう。

【他故】それをずっと探してて、「ないな、ないな」と思っていたら、これが出てきたので、本当に良かったですよ。

【きだて】「買いまわりトート」の“買いまわり”って、同人誌業界の言葉だから、やっぱり同人誌での使用が基本なんだよね。今、他故さんに言われて、「ああ、そうだった」と思い出したわ(苦笑)。

【他故】そもそも、コンセプトはそこだろ(笑)。

【きだて】あまりにも仕事使いし過ぎてて、そこら辺を忘れてた(笑)。

――そもそもそっちなんですね。

【他故】そもそもそっちです。

【高畑】僕は、同人誌即売会にあんまり行かないので、あのカバンを買ってからも行ってないんだけど、僕が良かったのが、文房具の見本市や展示会ね。A4の紙を折らずに入れられるので、帰ってきたときに紙がきれいなんだよ。そこが重要だったかな。

【他故】うん。

【高畑】カバンに物が入ってるときに、上から突っ込むとストンと入らなくて、クシャッとなることが多い。

【きだて】分かるよ。

【高畑】リュックなんて特にそうなんだけど、リュックにサイドファスナーが付いてても、リュック自体がフニャッとなってるので、紙が真っ直ぐ入らないんだよね。僕は特に、話に気が行きがちなので、「いいや、押し込んじゃえ」ってなるんだよ。だから、家に帰ってくると、クシャッってなってることが多い。せっかくもらった商品のチラシが、大体シワが入ってるんだよね。

【きだて】後からスキャンかけるときに、悲しい気持ちになるやつだよな(笑)。

【高畑】それそれ。それで商品の写真とかがちゃんと分かればそれでいいかなという感じなんだけど、資料として画像がなくて、その紙しかないときがあるんだよ。

【きだて】あー、あるわ。焦るよな、それ。

【高畑】紙がピシッとなってたら。その紙をスキャンして切り抜いちゃえば、とりあえず意味的に伝わるというのはあるんだけど、それがシワシワだったら、人に見せられない情報になっちゃうんだよ。そこの価値の低下が大きくて。平たい書類を平たいままで持ち帰りたいので、僕としてはそこが良かったかな。

【きだて】これ、トートとしても側面が硬いんだよ。だから、1枚紙を守ってくれる率は高い。

【高畑】あと、1枚紙をどっちかの壁に沿って入れられるんだよ。上から開いて入れるのだと、どうしても間に物が入っちゃって、どこかでもらった立体物のサンプルとかが入っちゃうと、紙がもう奥に入らないんだよね。

【きだて】そこからグシャグシャとなっていくからね。

【高畑】横が開くと、紙と紙の間に入れられるので、あんまりシワにならない。

【他故】映画のチラシなんかでも、いつも「折らないで持って帰りたい」と思っているので、リュックにもクリアホルダーを1枚入れておいて、中で折れないようにしているんだけど、この場合は、人と話をしながらチラシをもらったときでも、チャックを開けてクリアホルダーを出して、その中に入れるというアクションができるんだよ。そして、そのまましまえるから、すごく便利。

【高畑】俺も、リュックの中には、キングジムの透明な封筒みたいなのが入ってて、そこに入れてるんだけど。それって大体、会場の隅の方に行って片付けるんだよ。

【他故】ああ、そうそう。すごい分かる(笑)。

【きだて】一遍、サッと抜けてやらないと、どうしようもない状況だからね。

【高畑】そのタイミングで、すでにシワが入ってるから、ダメなんだよね。

【きだて】いや本当にね、他故さんが言ったみたいに、誰かとしゃべりながら書類をきれいにしまえる機能ってすごいよね。

【他故】本当にすごいと思った。

【きだて】この辺は、今までのカバンは何も考えてなかったのかという。

【他故】そういう声を、誰か伝えなかったのかね。

【きだて】要望はきっとあったと思うんだよね。

【他故】うん、思うよ。

【きだて】今、我々全員が「あるある」って言ってたぐらいなんだから。

【他故】しかも、同人誌関係ではなくて、ビジネスライクな話をしてるわけじゃん。ビジネスバッグ界にも、そういう声が流れていてもおかしくないよね。

【高畑】どうなんだろうね。展示会をスムーズに回るみたいなのが、ビジネス界隈なのかというと、ちょっと特殊なんだろうね。取材をする人って、その中では限られるんじゃない。いわゆる「どこかの会社に営業に行きます」という人とはまた別の話かなと思う。

【きだて】そうなのかね。

【高畑】案外偏った需要なんだけど、たまたまこの3人がそういう人たちだから、みんな持ってるという可能性はあるんじゃない。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】でもね、そうじゃなくても通勤カバンとしても有能なんだよ。例えば満員電車の中で本を取り出したいときにもすごい使いやすいから。

【高畑】ああ、なるほどね。

【他故】そうだね。下に沈んでいるものを探しに行く必要がないんだものね。

【きだて】満員電車の中でトートを覗き込んでゴソゴソかき回すのって、どうしても憚られるじゃん。朝の中央線の中なんて絶対にそんな隙間もないし。だから、サイドジッパーで中身にソッとアクセスできるのはすごい便利。これは通勤している人にとっては普通に得があると思うんだけどね。

【他故】行けそうな気がするけどね。

【きだて】ビジネスバッグ寄りのバージョンもサンスター文具が出すと面白いと思うけどね。

【高畑】今だと、すごくライトな紙袋に近い剛性だけど、もうちょっとビジネバッグ寄りのしっかりした感じで。

【きだて】合皮っぽい感じにしてみてとか、色々とできそうじゃん。

【高畑】そうね。

【他故】これはちゃんと売れると思うよ。

――これは、「プレミアムバンダイ」だけでしか販売していないんですかね?

【きだて】そう、プレバンだけなんだよね。

【他故】多分、店頭で売ってるところはないんだね。

【きだて】多分、見たことないよね。

――きだてさんはプレミアムバンダイで買ったわけですものね。

【きだて】プレバンで、発表されてすぐぐらいに予約して買ったやつですね。

――サイズはどっちですか?

【きだて】A4。要は、取材用の書類を入れたいわけだから。

【高畑】基本、A4だよね。

【きだて】でも、同人誌はB5が多いから、B5サイズを作ったんだね。

【他故】そう。同人誌はA4になるとかなり大判で、種類が少なくなっちゃうからね。やっぱりB5が種類多いから。

――みなさんA4なんですか?

【他故】A4を買いました。

――これは、おじさんが持ってても違和感ないですか?

【高畑】黒だったらいいよね。

【他故】大して違和感ないですよ。

【高畑】ただのナイロンのバッグみたい。

【きだて】特に違和感のないナイロントートで。黒はちょっと地味過ぎて嫌だなと思ったのでベージュにしたんだけど、みんな黒を買ったね。

【他故】まあ、黒を買ったね。

【高畑】黒だったら、ただのナイロンのバッグだから、ビジネスバッグとしては貧弱だけど、持ってて違和感はないんじゃない。

【他故】違和感はないよね。

――ここに缶バッジとか付ける人もいるかもしれないから、ベースはシンプルな方がいいかな。

【高畑】やるならそうでしょうね。

――このバッグは、いわゆる“推し活”になるわけですか?

【きだて】推し活にも使えるというだけの話で、これは推し活そのものではないよね。

【他故】これは、どちらかというと、純粋に戦利品のための買い回りトートなので、同人誌即売会用ですね。

【高畑】推しというとまた違うよね。

【他故】推しのシリーズって、また別のがあるじゃん。表面が透明になっていて、たくさんバッジが入れられるやつとか。「ジョイカバ」でも、そういうのがたくさんあるので。ぬいぐるみ入れられるやつとか、イベント玄人のための財布ショルダーとか。

――なるほど(笑)。

【きだて】「イベント玄人」というのが、どういうものを指すのか、さすがに分からないんだけど(苦笑)。

【高畑】例えば、光る棒とかあるじゃん。ああいうのが何本まで入れられてとか、イベントに行くとに必要なものがコンパクトにまとめるにはこれぐらい必要だとか、そういうのがあるみたい。

【他故】ペンライト入れるシリーズが「リライブ」という名前になってて、何かを買うものが「カウモ」っていう名前になってて、フラップとベースの組み合わせで色を替えたりバッジを入れたりするやつが「チョコレ」という名前になってて、それぞれあるんだよね。

【きだて】それぞれ別ブランドなんだね。

【他故】そうだね。その中にいくつかブランドがあるんだよ。

【高畑】ライブ会場とかに入るときは、最小限のものを装備しておかないと、何でも持ち込みは難しかったりとかあるみたい。それで、何をどれくらい持っていけるかで中身が決まっている。

【きだて】すごいね、それぞれのトンマナに合わせてあるというか。

【他故】まあ、そうだね。そこはすごいと思う。

【高畑】何であれ、専門家に向けて作ったものなら、他のジャンルの人にも結構便利だったりするというのは、よくあるじゃない。これは、同人誌即売会のプロが便利なように作られているから。

【他故】買う方のプロがね(笑)。

【高畑】その切実な要望に応えるデザインが、案外色々便利だし、役に立つ。

【きだて】その辺はやっぱり、転用が利くんだよな。ちゃんと考えて作られている部分が多いと。

――よくこの商品を見つけましたよね。

【きだて】確か、サンスターのツイッターを見たのかな。とりあえず、これは来年以降も使うだろうなというぐらいお気に入りなので、今年のベストバイはこれです。

*次回は「1冊でも倒れないブックスタンド」です。

お知らせ
ブング・ジャムのみなさんが「2022年Bun2大賞」ベスト文具に選ばれた文具たちについて激論を繰り広げた「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで有料公開しています(1記事200円)。ぜひ、ご覧いただき、面白くてためになる「文具エンターテインメントショー」を楽しんでください。
https://note.com/bun2_stationer01/

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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