1. 連載企画
  2. 【連載】月刊ブング・ジャム Vol.62 超ユニークな機能系勉強文具(その2)

【連載】月刊ブング・ジャム Vol.62 超ユニークな機能系勉強文具(その2)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、子どもたちが勉強に使う文房具を取り上げました。どれも、他にはないとてもユニークな機能を持ったアイテムばかりです。

第2回目はクツワの「タツール筆入」です。

(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2021年11月9日撮影
*鼎談は2022年4月26日にリモートで行われました。

タブレットをしっかり立てられるマグネット筆入れ

クツワ2.jpgタツール筆入(クツワ) タブレットが立てられるスタンドが付いた、1ドアタイプのマグネット筆入れ(特許出願済)。ベルトのホックをズラして留め、フタを開けて立てられる。タブレットがななめに立つので、正しい姿勢で見やすい。表と裏で色が違うツートンカラー。鉛筆ホルダーは細めから太めの鉛筆に対応している(実用新案出願済)。本体カラーはブラック、ネイビー、ミント、パープルの4色。税込2,530 円。

『タツール筆入』を楽天でチェック

『タツール筆入』をAmazonでチェック


――次は「タツール筆入」です。

【高畑】いや~もう、時代が変わったよ。

【きだて】いきなりどうした(笑)。

【高畑】いや、このハイブリッドすごいね。かたや超絶クラシックな、自分が子どもの頃からあるマグネットペンケースじゃん。これ以上ないっていうぐらいプリミティブなかたちじゃないですか。

【他故】ド定番だよ。

【高畑】そこにタブレットという取り合わせが、何だろうな、生ハムメロンみたいな感じ。

【他故】ええっ!?

【きだて】そこがよく分からんな。

【高畑】アナログとデジタルの融合ってこのことかよっていう。

【他故】あ~。

【高畑】もちろん、タブレットを学校で使うとなったら、ペンケースにその機能を持ってくるのは分かるんだけど、この合体はなかなかだよな。

【きだて】そう来たかー、って感じはすごくある。

【高畑】またこれがさ、そこら辺で売っているタブレットスタンドより全然良いんだよ。

【他故】そうそう(笑)。

【きだて】安定性が高いよね。

【高畑】おかしいぐらいちゃんと立つんだよ、これが。

クツワ0.jpg【他故】うん。

【高畑】いろんなタブレットスタンドを売ってるじゃん。安定感でいくと、これはかなり上位だよ。

【他故】うん、分かる。

【高畑】あと、タブレットスタンドとして開くのが楽。こんなこと言っちゃいけないのかもしれないけど、中に周辺器機を入れたいよね。

【きだて】はいはい、ケーブル類を入れたりな。

【高畑】Appleペンシルは入るのかな?

【きだて】長さ的に入らないかな。

【他故】入るよ。

【きだて】あ、入る?

【高畑】ペンホルダーに挿せるよ。

【きだて】本当だ(笑)。

【高畑】これまた大人の話になるけどさ(笑)。でも、ペンホルダーは鉛筆用だから、ボールペンとかはダメだね。

【他故】入らないからね。

【高畑】タブレットスタンドでも、展開するのが面倒くさいのとか、ちょっと不安定だったりとかあるけど、これのタブレットスタンドとしての優秀加減がすごい。

【きだて】ただ、このスナップボタンが子どもにどうなのかという気がするのよ。スナップボタンって結構力を入れてプチンと押し込まないとはまらないじゃん。小学生、それこそ低学年とかどうなのよという気はちょっとするんだけどね。

【高畑】なるほど。

【きだて】とはいえ、固定力の点ではこれ以外にはできなかったんだろうな、とか色々と思うんだけど。

【高畑】これ外れちゃうと大変だものね。

【他故】かなり力がかかっちゃうとね。

【きだて】本当は、マグネットスナップとかの方がいいと思うんだよ。

【高畑】でも、マグネットだと、重たいタブレットを置いたときに外れちゃったりすると危ない。

【きだて】ズルッといったら、それで事故になっちゃうじゃんっていう。

【他故】そうだろうね。

【高畑】あとこれ仕掛けがさ、上手いよね。このベルトの付け方とかさ。使わなかったら使わなかったで、「こういうデザインです」って言えるじゃん。

クツワ3.jpg【きだて】そうそう。普通におしゃれデザインで通っちゃうよね。

【他故】よくできてるよ、これ。

【高畑】だから、考えた人はなかなかやりよるなって思うよ。

【他故】うん。

【高畑】GIGAスクールで色々と変わるけど、これがまた日本的な変わり方だなと思うね。マグネットペンケースというルールを変えないというところが。

【他故】ベースがね。

【高畑】すごい合理的に考えたら、ペンケースの方はこれでいいのかという問題が出てくるじゃん。でもペンケースは、小学校の学習指導要領や入学のしおりだとか、そういうののレギュレーションをきちんと守ってるわけだよね。

【他故】そうだね。

【高畑】鉛筆5本と消しゴムが入って、あとは赤鉛筆となまえペンが入るというさ。

【他故】そうそう。

【高畑】“立つペンケース”なんかとは別次元の、レギュレーションを守りながらトリッキーなものを作るところがさ。基本性能の部分では、完璧にレギュレーションを守ってるわけじゃない。そこは日本的ですごいと思いますよ。

【他故】学校に持っていっていいものって、決まってるところが多いから。そういう意味でも、徹底的にシンプルにしておいて、さらに機能がありますよというところが本当に面白いし。

【きだて】これって、完全に制約下でのものづくりじゃない。縛りプレイというか(笑)。

【他故】まあ、それがメーカー的には燃えるんだよ。

【高畑】前にあるペンケースが高さがあるじゃん。それが逆にここでタブレットが留まるから、すごくいいんだよね。

【他故】そうそう、めっちゃ効いてる。

【高畑】だって、13インチのiPad Proがびくともしないもの。

【他故】そう、立つんだよ。全く問題ない。

【高畑】それで、設計が上手で浮かないんだよ。

【きだて】後ろで荷重を止めるんだよな。よくできてんな。

――その辺は、子どもが使うから、しっかりとした造りにしたんじゃないですか。

【きだて】それは間違いないね。

【高畑】大人よりも雑に使っても大丈夫のようにできてるよね。

【他故】そう。丈夫に作らなきゃいけないし。

【きだて】だから、下手なデジタルガジェットを買うより、こっちの方が価値があるんだよな。お得。

【高畑】もちろん、ムダに大きいところはあるよ。厚みがあるからさ。

【他故】うん。

【高畑】そりゃそうなんだけど、その中でよくできているなと。最近は色々と出てきてるじゃん。GIGAスクールも含めて、新しい学童文具が出てくる流れの中で、いろんなペンケースが増えてきているじゃん。レイメイだと柔らかいペンケースを作ったりとかするじゃん。これは「GIGAスクール対応です」というのが一番分かりやすいよね。

【他故】そうだよね。でも昔はさ、書見台に変形する筆箱ってなかった?

【高畑】あるよ。ああいうのより全然こっちの方が良いよ。

【他故】全然良いよね。

【高畑】昔は変形ギミックで書見台になるペンケースとかあったけど、これは書見台としてめちゃ優秀。タブレットスタンドもそうだけど、これは普通に書見台として使えるよ。

【他故】おもちゃっぽくならなかったのが、現代風だと思うんだよね。

【高畑】そうだね。本も立てられるし、教科書だって全然いけるよね。

【きだて】そういえば、書見台になるペンケースを中国製で見たんだよな。

【他故】今でも売ってるの?

【きだて】この間、展示会で見たような気がするんだよ。

【他故】まだそういうやつがあるんだね。

【きだて】今ね、ギミック系のペンケースを探すのは、中国が面白いよ。

【他故】まあ、そうだろうね。

【高畑】今は日本だと、ギミック系でそんなに遊べないからね。

【他故】うん。

【高畑】これは安定性がとにかく高いので、安心感が半端ないですよ。

【きだて】安定性もそうだし、これは子ども用だから、「何万回も開閉して大丈夫でした」という数値が多分あるんでしょ。

【高畑】あるんじゃない。そこはすごい強いと思うし。

【きだて】大人向けのタブレットスタンドで、そこまでテストしている商品は、そんなにないと思うよ。

【高畑】あと、その割には軽いんだよね。今は筆箱の軽量化がすごい進んでいるから、クツワは軽量筆れの軽くするという技術がすごいじゃない。「超軽量筆入」って出してるものね。

【他故】うん。

【高畑】ドアが二重になってるからその分重いんだけど、思ったほど重くないというのはあるな。昔のペンケースに比べると随分軽いよ。

【きだて】昔のペンケースに慣れた身からすると、持つと「あれ、こんなに軽い」と思うほど軽量化されてるよ。

【高畑】特に、ギミックのないやつはすごい軽いから。

【他故】そうね。

【高畑】いやでもすごいね。進化するとこうなるんだっていうのが面白いね。

【他故】スタンドとして使わなくても、こうやってホックかけておくだけで、フタがベロンとならなくて良いよね。

【高畑】ギミックが付いているから、その分へんてこりんになっちゃうことがあるじゃない。これは、ギミック付いているから不具合が出るとこがほぼないので。別にスタンドを使わなければ使わないでいいじゃん。

【他故】久しぶりに鉛筆をギッシリ詰めてみると、いいなって思うよね。

【きだて】子どもを持ってないおじちゃん、おばちゃんがビックリするのは、鉛筆を挿す部分だよね。こんなに進化してるのかという。挿しやすいソフト鉛筆立て。

クツワ4.jpg【高畑】何よりも壊れにくいんだよね。

【きだて】昔のは、鉛筆挿しているうちにベロンと切れたりしてたじゃない。

【他故】したね(笑)。

【高畑】割れたりするのがあったものね。

【きだて】それがないし、これは六角でも三角でも丸でもきれいに入るし。

【他故】それで、前のところにスペースがかなりあるから、尖らせた芯が折れないし。

【きだて】これは、ものすごく進化してるよね。このソフトペン立てが出てきたのは、何年前ぐらいかね?

【高畑】どうだろう。

【きだて】もう10年、15年じゃないよね。いつからなんだろう。

【高畑】このタイプは、小学校の中学年以降はあまり触らないじゃない。ある時期の子どもたちだけのものだからな。ということは、タブレットを立てるという目的がありつつも、ターゲットになってるのは小学校の低学年だからね。いや、学校事情は本当に分からん。変わりつつあるから。

【他故】それは間違いないね。

【高畑】昔の感じで言えなくなってきてるよね。この間他故さんが言ってたのかな。今はむしろプリントがないって。

【きだて】俺と文具王の文房具ライターとしての弱点はそこなんだよ。子どもがいないっていう。

【高畑】あーまあそうだね。それはあるよね。

【他故】俺も、触れているところはほんの一面で、全体は分からないんだよね。

【高畑】あと、変わっていくじゃない。一番流行ったペンケースとかシャープペンで年代が分かるとか、そのぐらい変わってるから、なかなかなんだけど。ここしばらくのGIGAスクールっていう話が出はじめてから後の今の学校がどうなってるのかは、周りに色々と聞かないと分からないね。

【きだて】こまめにクツワとかレイメイの人に聞いてるんだけどさ。

【高畑】他故さんのところもお子さんが…。

【他故】もう高校生だからね。

【高畑】小学校の話も、お子さんがいたころとはまた全然違ってきてると思うんだよ。

【他故】違ってきてると思うよ。そこはもう直接見ることはできないと割り切るしかないので。たまたま僕には「たこなお文具堂」というユニットがあって、ふじいなおみさんのお子さんが小学生になるので、彼女は子ども向けの文房具をものすごく研究してるからムックが作れたわけですよ。彼女の知識がなければあれは作れなかったので。

【高畑】自分が関わってるところが一番強いじゃん。

【きだて】まあ、そうだよね。

【高畑】いや、タブレットなんて、小学校のときに俺は考えもしなかったよ。

【きだて】そりゃそうだろうよ。タブレットがないんだから(笑)。

【他故】これで10年経って、今の子どもたちが高校生ぐらいになったら、「筆箱どんなの使ってた?」「俺のはタブレットが立てられたぜ」っていう話になるんだよ(笑)。

【きだて】なるのかね。

【他故】なるでしょう。

【高畑】それを後輩に言ったら、「筆箱って何すか?」って話にもなるんだよ。

【他故】まあ、10年だと分からないね(苦笑)。

【高畑】そういう意味では、ここから先は分からないんだよ。

【他故】そう。

【高畑】これは「ソロカル」みたいな立ち位置になる可能性があるんだよ。

(一同爆笑)

――そろばん付き電卓ですね。

【高畑】文化人類学的にということでね。「あの頃はそんなことをやってたね」という感じになる可能性がすごい高いんだけど。

【きだて】あと10年経つと、「GIGAスクール(笑)」みたいな扱いになってる可能性があるからね。

【高畑】ゆとり教育の失敗みたいなのもあるじゃん。だから、どうなるか分からないけど、少なくともある時代性を反映した商品ではあるよね。

【他故】そうね。うん。

【高畑】これは、良くも悪くも、未来になって見直したときに、いろんなことを思い出せるツールにはなるよね。

【きだて】通過点になるのか、これが頂点になるのか。

【高畑】そう。これがあって、この次の時代に変わってきたのか。だから、これはiモードなのかもしれないし。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】そういう意味では、ものすごく興味深いな。

*次回は「ドクターグリップCL プレイバランス」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


「ブング・ジャムの文具放談 特別編・完全収録版~『ブング・ジャム的Bun2大賞』ベスト文具を決定!~」〈前編・後編〉と「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2020年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう