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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.50 この文具にハマってます!(その2)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。

今回は、ブング・ジャムのみなさんに「現在ハマっています」という文房具を紹介してもらいました。

第2回目は、高畑編集長です。

写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長*2020年11月7日撮影
*鼎談は2021年4月12日にリモートで行われました。

「1日1筆記具」に挑戦中!

――次は高畑編集長です。

【高畑】自分の中でハマっているのは、「1日1筆記具」をずっと毎日やってるんですよ。

【きだて】はいはい。

【高畑】書いているダイアリーが見開きで4日分あるので、1日分が半ページになるんだけど、そのスペースに毎日筆記具を替えて書くというのをやってるのさ。それをYouTubeでアップしてるんだけど。

――はい。

【高畑】そもそも、筆記具いっぱい持っているけど使い切れない。去年、「OKB48の48本のボールペンを、1週間に1本紹介したらほぼ1年もつよね」という話をしていて、それでOKBにエントリーしているボールペンを動画で紹介していったんですよ。

【他故】うん。

【高畑】でも、OKBで紹介しているボールペンって黒ばっかりだし、一応最近のボールペンは網羅しているけど、最新の製品とか昔の名品とかいろんなものもあるし、ボールペンばかりだからシャープペンとか万年筆もあるし。僕ら、言ったら300本ぐらい普通に持ってるじゃないですか。

【他故】まあね。

【高畑】家にあるけど、使ってない後ろめたさってありませんかっていう(笑)。

【他故】うん、分かる。

【高畑】使い切れていない後ろめたさ。もちろん、普段使ってるやつがあるじゃないですか。ヘビーローテションのものがある一方で、全然使ってないものもある。久しぶりに使おうと思っても、インクが涸れているとか、万年筆は洗浄から始めないといけないとか。そういうのが日常茶飯事なんですよ。

【他故】あ~あるある。

【高畑】「文具王」と名乗っているからには、ちゃんと使わねばいけないなということで、今年の1月1日からこれをやり始めちゃったわけさ。1月1日は「謹賀新年」とか「正月」とか書いたりして、非常に楽なところから書き始めたんだけど、やり始めたら地獄が待っていて、大変なことになった(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】辛そうだなと思いながら、ちょいちょい見てるよ。

【高畑】書くのに、早くて30分、かかると45分から50分くらい。

【他故】そのぐらいかかるよね。

【高畑】最初の頃は、普通に文字だけ書いていたんだけど、途中でペンの絵とか商品のロゴを描くようになって。それだけで半分ぐらい時間かかってるんだよね。だから、日課として、平均40分くらい、毎日書いているんですけど。

文具王3.jpg

写真のペンはペリカン「ペリカーノジュニア万年筆」


【他故】すごいな。

【高畑】これで4カ月目に突入したんだけど。

【きだて】だから、書き始めてから100日は超えたということだね。

【高畑】そうだね。だから、今年に入って100本以上書いていることになるんだけど、まだ机の上にあるペンを見ると、絶望的な気分になる。終わりがない。

【他故】終わりがないね(笑)。

【きだて】書き終わった頃には新製品がたまっているわけじゃない。

【高畑】そうそう。新製品が出たら使ってみたくなるし、「どうせ書くなら新製品で」となるし。まあ、ある種、始めてしまった苦行みたいなところがあるんだけど。「ここまでやったからにはちゃんとやるか」というのがあって、毎日書いているのよ。で、ノートとして使っているのは、2021年版のダイアリーなのね。日付入っている方がいいなと思って。日付入ってないと、抜けても分からないじゃないですか。

【他故】ああ~。

【高畑】何やかやで、「抜けても平気」みたいな感じになっちゃうので。本当は、ちょっと息抜きができたりして、それがよかったのかもしれないけど(笑)。

【きだて】日付入りと聞いた瞬間に、「ああ、ダメだ」と思ったもの。「つらい選択しやがった…!」という(笑)。

【他故】本当につらいわ(笑)。

【高畑】自らにそのつらいのを課してしまった、その重たい十字架を背負っているわけだけど。

【きだて】今のところ、抜けナシなの?

【高畑】今のところ抜けナシで、2日ぐらい動画のアップが遅れてます。遅れちゃうのは、動画の変換の問題でその日に公開できないんだよ。それとは別にアップできなかった日が2日ぐらいあるので、それで遅れてますというのがあるんだけど。まあ、そんな感じでやってるよ。

【他故】ははは(笑)。頑張ってるな。

【高畑】でも面白い。一つの筆記具で30分とか考えながら触ると、とりあえずちゃんと触った気がするし、「そうだな、こういう書き心地だったな」というのが思い出せる。前から触ってるのは触ってるけど、しばらく触ってなかったペンとかあるじゃない。

【他故】あるね。

【高畑】「僕はこっちが好き」といってしばらく使ってなかったけど、久しぶりに使うと「これいいじゃん」となって、もう一回マイブームがくるやつがある。

【きだて】一般の人は、OKBでそれを感じてくれているんだよね。

【高畑】あ~そうかもしれない。OKBでも書くと全然違うんだけど、僕もこれで書き始めて「あ~違うわ」と思い始めて。例えば、きだてさんが好きな三菱鉛筆の「シグノRT1」とパイロットの「ジュースアップ」の違いとか、違いは分かっているつもりなんだけど、30分ずつ書いていると、その性格の違いが「あ~なるほど」と、体感として分かるじゃないですか。

【他故】うん。

【高畑】「クルトガ」「オレンズ」「デルガード」と並べてみたら全然違うとか。それはそれで全然面白いなと思って。

【きだて】いま文具王が、「書くのに30分」と言っているのを聞いて、「おおっ」と思ったんだけどさ。俺もペンをレビューするときは、まずⅠ週間それを常用のペンにするんだけど、それに加えて30分連続使用というのも課しているのよ。

【他故】ほう。

【きだて】だいたい30分ぐらい書くと、クセとかその辺が見えてくるなというのがあって。

【高畑】なるほど。

【きだて】面白いのが、5分使うのを6回繰り返しても分からないんだよ。30分連続使用と、5分×6回は全然違うのよ。インクのクセとか、書いているときの疲労感とか、グリップの握りやすさとかも、30分使わないと分からなかったりするし。そういう意味で、それぐらいが基本なのかなと、今の文具王の話を聞いて思ったのよ。

【高畑】てゆうかね、ここに書く前に「今日は何にしようかな」って書いてる時間もあったりするし、本当はもうちょっと書いた方がいいと思ってるんだけど、毎日続けるのは無理(笑)。

【きだて】そらそうだ。

【高畑】でも、30分ぐらい書くと、すごいはっきりしてくるよね。自分の中で考える時間ができるし。それで、今は何を書いているかというと、メーカーのホームページに書いてある商品解説を写すことにしている。何を書くかで迷うと結構長くなっちゃうので、メーカーの書いていることを書ことで、書くことを考える時間を短くしている。

文具王2.jpg【他故】はいはい。

【高畑】書くことに集中すると、ペンの書き心地を忘れちゃうことがあるのね。良いペンほどそうなるんだけど、せっかく30分書いたのに、ペンの書き心地を憶えていないぞということになっちゃうので、むしろ写経みたいに、書くテーマが決まっていると、書く内容を考える部分がないだけ、ペンのことに意識がいくので。そうすることで、毎日写経の気分。ペンのことだけ気にしながら物を書き続けられるのと、その文章を読みながら書いていると、そこにメーカーの言いたいことが書いてあったりするじゃないですか。

【他故】そうだね。

【高畑】廃番になって、ホームページに情報がない場合は、そのメーカーの社史を写したり、社長のモットーみたいなのを写すと、「ああ、こんなこと考えているんだ」とか色々と勉強にはなる。とにかく続けようというのと、1日1本ずつ使っていくと、ペンの個性が見られていいですよ。おすすめですよ、みなさんもやりませんか!

(一同爆笑)

【きだて】嫌だよ、そんな煩悩がたまりそうな写経(笑)。

【高畑】でも、般若心経1回書くよりは楽だよ。

【きだて】まあ、そらそうだろうけどさ(苦笑)。

【高畑】毎日違ったペンで般若心経を書くというのは、歳とったらいいかもしれないけど、今はそれをやっているヒマはないね。これでも充分、自分の中では相当負担が高いというか。

【他故】そうだろうね。

【高畑】かなりしんどい。

――他故さんだったら、これできるんじゃないですか?

【他故】いやいや、自分が思っていることを書くのは好きだけど、何か目的を持って書くというのは、また別の根性が必要になっちゃうから。

【高畑】他故さんだったら、毎日ペンを替えるだけで、普通に普段書いてたらこのぐらいの量になるんじゃない?

【他故】まあそうだね。そういう意味では、そうかもしれない。でも、人に見せられるようなものは書いてないので。

【高畑】そこだよね。せっかくだから、人に見せようとするものを書くから、こういう風になっちゃうんだよ。これとは別に、普段は俺も手帳とかには書いているんだけど、リアルに仕事の話とか書いてあるから、人には見せられないのさ。しかも、録画しながらの一発撮りでやってるので、文字間違えても書き直せないし、下手くそな絵になったとしても、描き直しができない。綴じノートなので、差し替えもできない。これ、結構厳しいっす。

【きだて】色々とつらい要件が重なってるな(笑)。

【高畑】めっちゃつらい。

【他故】それ、本当の修行じゃないか。

【高畑】でもね、書くことそのものがだいぶ安定してきた。上手くなるというか、慣れがあるので、文字が安定して書けるようにはなってくるよ。なので、修行嫌いのきだてさんはどうですか?

【きだて】うん、お断りだね!

【他故】あははは(爆笑)。

【きだて】レビューのときの30分連続使用だって、「面倒くせえな」と思いながらやってるのに。でもね、それによって見えてくることが確かにあるからやめられない。前に言ってた「サラサR」が「サラサドライ」っぽいなと思ったのも、30分書いているうちに「あっ、この書き味はどこかで」となったからで。

【高畑】それは、その前に「サラサドライ」を書いているという経験も必要なんだよ。

【きだて】そうそう。その積み重ねは、ライターとしての財産だと思ってるんだけど、だからといって毎日の積み重ねは嫌だ(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】ハマってるのかハメられたのかよく分からないですが、そんな感じで毎日やってますというのと、それでYouTubeやってるので、「いいね」押してねという(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】でも、たまってくると充実感はありますよ。

【きだて】そりゃそうだよね。50ページ以上になってくると、すごいボリュームじゃん。それは財産になるよね。

【高畑】まあ、頑張ってみようかな。ペンが足りなくなることはないので。

【きだて】まあ、そうだろうよ(苦笑)。

【他故】気力の問題だよね。気力がなくなることはあるかもしれない。

【高畑】まず気力ね。

【きだて】あとは時間だな。

【高畑】それこそ、今コロナで外に出られなくてとか色々あるから、これをやっているようなもので、出張が入ってきたりとか、そういうことがあるとできなくなるよね。だから、そこがちょっとあれなので、最後までできるかどうか。

――今日使うペンは、どうやって決めてるんですか?

【高畑】新製品出たとか、今気になってるからとかもあるし、あるいは片づけて出てきたとか。実は、次に使う候補を置いておく場所があって、そこに用意してあって、そこから選ぶ感じにしてます。

――今まで使ったペンで、「見直した」みたいなペンはあったんですか?

【高畑】「シグノRT1」は、きだてさんが言うだけあって、「やっぱすごい」というのはもう1回思いましたね。それは本当に思いました。

シグノ.jpg

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【他故】ほう。

【高畑】書き心地でいくと、万年筆の「エラボー」なんかも好きですが、あとはゼブラの「F-701」とか超いいなと思って。海外仕様のメタル軸の渋いやつだけど、それが良かったりしますね。

――なるほど。

【高畑】案外、ボールペンで図を描くのが難しいというのが分かってきたので。油性は鉛筆っぽく描けるからまだいいんだけど、ゲルなんかのボールが転がらないとインクが出てこない系のやつは、思ったところに線が引けない。だから、ボールペンでちゃんと絵を描くのは難しいなと思って。そこへいくと、シャープペンって図が超書きやすいので、製図にはやっぱりシャープペンがいいなと思ったりしますね。そんなことを思いながら色々と書いてます。

――使ってるのはボールペンに限らないんですね。

【高畑】それは、ボールペンに限らず、シャープペンも万年筆も使ってるし、ガラスペンだっていいし。それは日によって違うんですけど。

――今年1年はずっとそれでいくということですね。

【高畑】はい、頑張ります。

【他故】頑張ってください(笑)。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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