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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.38 まだまだあります!注目筆記具大集合!!(その2)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、注目筆記具を取り上げました。

第2回目はゼブラの3色ボールペン「ブレン3C」です。

写真右から他故さん、高畑編集長、きだてさん *2019年12月撮影

*今回の鼎談はリモートで行いました。

あの“ブレないボールペン”がスリムな3色ペンに!

3.jpgブレン3C」(ゼブラ) 筆記時に生じる振動を制御することで、ストレスフリーな書き心地を実現したエマルジョンインクのボールペン「ブレン」が3色ボールペンに。筆記振動を防ぐブレンシステムを多色ボールペンに応用。1本で3色使える利便性はそのままに、筆記時の振動を制御しストレスフリーな書き心地を実現している。また、1本で3色使えるのに、従来の単色のブレンと同サイズのスリムボディを実現した。佐藤オオキ氏率いるデザインオフィスnendoと協業し、ストレスフリーな書き心地をボディデザインで表現。税抜400円。

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――じゃあ、次は「ブレン3C」です。3色ボールペンですが、単色と比べてみても軸の太さが変わらないという。

【高畑】同じサイズだっていうね。

【きだて】それは本当によくやったなと思うな。

ブレン.jpg

見た目はほとんど同じ! 3色ペンの「ブレン3C」(左)と単色の「ブレン」(右)。

【高畑】量ってみてびっくりしたんだけどさ、「ブレン」より「ブレン3C」の方が軽いって知ってる?

【きだて】えっ、うそ!

【他故】そうなんだ。

【きだて】重量までチェックしてなかったわ。

【高畑】わずかに軽いの。それは、先端に重りを入れてないからなんだけど。

(一同)あ~。

【きだて】え~ちょっと待って。(重さを量って)いま使ってるのはコンマ以下が量れないはかりなんだけど、それでも単色13gで、3Cは12gって出るわ。

【他故】あ~本当だ。

【高畑】小数点以下の差なんだけど、わずかに3Cの方が軽いんだよ。

【きだて】気付いてなかったわ。

【高畑】全く同じかたちに入れてきたというのは、すごいと思うけどね。宇宙戦艦ヤマトみたいに、内側に新造艦が入ってたみたいなさ(笑)。

――戦艦大和の中からヤマトが現れるみたいな。

【他故】ふふふ(笑)。

【高畑】もちろん、全然違うものなんだよね。3色にしたから、中のつくりは全然違っていて、ノックの仕方も違うじゃない。

【きだて】はいはい。

【高畑】全然違うんだけど、そうやって「見た目同じだよ」とやってきたのは、面白いなと思って。

【きだて】それを再現するためにどれだけ頑張ったんだろうなと思うと、ちょっとゾッとするよ。その苦労を思うと。

【高畑】まあね。「同じかたちにしろ」と言った人は簡単に言ったんだろうけどね。

【他故】ねえ(笑)。

【きだて】nendo側からもそういう要望があったんだろうけど。

【高畑】「やるなら同じかたちがいいね」という話は多分あったんだろうけどね。

【きだて】それを細かくやってったのは、ゼブラの社内なわけじゃない。

【高畑】ゼブラは、前の「デルガード+2C」もギュウギュウに詰め込んでたけどさ、そういうのが好きなんだよ。

【きだて】「デルガード+2C」のときも、出たら面白いよねとは言ってたけど、まさか本当にできるとは思ってなかったじゃない。

【他故】まあね、多色はね。

【きだて】正直「ブレン」も、多色が出るとは思ってなかったのよ。

【高畑】はいはい。

【きだて】それが1年でヒョロッと出ちゃったからさ。

【高畑】単色が発売されたときには開発が始まってたという話だからね。

【きだて】そうしないと間に合わないよね。

【高畑】単色が発売されたときには、ほぼほぼできていたはずだからさ。そう考えるとすごいよな。

【他故】うん。

【高畑】しいて言うなら、外観的な「ブレン」の完成度の高さが、高いがゆえに3Cはちょっと気になるよね。先端の銀色の部分とか。

【きだて】そうそう。デザインいいやつのパチ物感が出ちゃうんだよ。

【高畑】先端が銀色で、その先にちょっとだけ白い輪っかが見えるじゃん。すごく気になるんだよ。

【他故】ここね。

【高畑】惜しい感じがするし、そこ銀色なのかと思うんだけど、その銀色のパーツで先端に重さを持たせているんだと思うんだけど。あとね、その銀色のパーツが回るんだよ。

【他故】そう、回るんだよ。

【高畑】回るんだけど、取れないんだよね。ネジかと思ったら取れないんだよ、これが。

【きだて】ここかなと思って回したら、「あれっ」と思うんだよ。

【高畑】ちょっと気にならない?

――何で回るんですか?

【高畑】留め方の問題として、固定する方法がなかったんじゃない。

――先端が銀色なのは、単色と区別するためという意味もあるんですかね?

【きだて】ただ単に、金属パーツを使いたかったからじゃないの。

【高畑】それで、外側にカバーをかけて、中に金属パーツを入れちゃったら、今度は3色の芯が出てくる出口が作れないから、多分これ以外の方法はないと思うんですよ

【きだて】先端の重みも含めての「ブレン」だものね。やっぱり、ブレないという意味では。

【高畑】だって、違いを見せるんだったら後ろの方でしょ。ペン立てに入れたときとか、売ってるときも後ろしか見えないから。

【他故】はいはい。

【高畑】これ、本当に区別付かないよね。店頭で単色と3色が並んでいても、ほとんど分からない。よく見れば分かるけど。

【きだて】ねえ、ノックの部分も含めてちゃんと楕円に収めるところとかさ、すごい凝ってるよね。

ブレン2.jpg

【高畑】それで、サイドのノックは小っちゃくしたかったんだろうね、という感じがすごいする(笑)。

――なるべくはみ出さないように。

【きだて】その分、ノックパーツをエラストマー入りで摩擦を増やしたりとか、色々と凝ったことやってるじゃない。

【高畑】それで、これがまた値段が400いくらなんでしょ?

【他故】400円(税抜)だよ。

【高畑】単色3本買うより安いんだよね。そこら辺もね。

【きだて】そこら辺の設定も上手いんだよな。で、肝心のブレンシステムの効き具合はどう感じた?

【高畑】どう思います? 構造上、どうやっても先端からまっすぐ芯が出せないじゃん。

【他故】そうだね。

【高畑】どうやってもななめに出てくるのは避けられないところで、どうですかね?という感じなんですけど。

【きだて】他故さん的にはどう?

【他故】どうなのかなぁ。ブレるかと言われると、書いていて気にならないけどね。

【きだて】そうなんだよね。書いていて、それなりにブレない感はあるんだよ。

【他故】それなりに効いてるんだよ。ちゃんと。

【きだて】ということは、単色でもここまでガチガチにやらなくてもよかったんじゃないかという説もあり。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】まあでも、気になるは気になる。先端がななめってるのがちょっと気にはなる。

【きだて】気にし出すとね。

【高畑】やっぱり、単色のブレンの方が、「ブレン」というのを体現しているという意味では、単色の方が完成度は高いよ。完ぺきだと思よ。

【他故】そうだろうね。

【高畑】でも、3色にしたいというところの妥協だな。

【きだて】でも、今までの3色ペンも、どうやったって芯はななめに出るんだけども、そこまでななめを意識したことはなかったわけよ。「このななめ嫌だ」までにはなってないんだけど。

【他故】うん。

【きだて】このブレンシステムとか、単色のデキのよさとかを考えて、この「ブレン3C」を使うと、「う~ん、ななめだな」と言われちゃうというね。

【高畑】そのブレるということに、自ら意識を集中させるようなことをして、自分でハードル上げてるからね。

【きだて】そうそう。仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。

【高畑】何も知らないで「ブレン3C」を見たら、いいなと思うよ。

【きだて】そうだよね。前にブレンの話をしたときに、「言わなくてもいいことを」という話をしたじゃない。わざわざブレるとか言わなくてもよかったのにという。

【他故】あ~、はいはい。

【きだて】3Cも同じ結果になったなという(笑)。

【高畑】まあ、それではあるけどね。でも、3色タイプの中ではカチャカチャいわない方ですかね。いわゆる従来タイプの多色ペンに比べたら、カチャカチャいわないというのはある。

【他故】うん。

【高畑】どのペンを使っても、多色のタイプだとクリアランスがあるので、カチカチいうんだよね。そこがね、他の3色よりも全然いいよ。他の3色よりはブレない。

【きだて】俺みたいに筆圧が強い人間は、押しつけ気味に書くので、多色だと押しつけた後に離すとカチャっていうんだよね。それは感じないもの。そういう意味では、本当によくできてはいるんだよ。

【高畑】そうなんだよね。

【きだて】だから、「ブレン」単色と比べないで、他の3色と比べてあげようよ(笑)。

【他故】ははは、それはそうだろ(笑)。

【高畑】それでいいと思うよ。

【きだて】あとさ、ニュースリリースに書いてあったんだけど、「ノックボタンが戻るときの音が小さい」というのはどう?

【高畑】それはまあ、ほどほどかな。

【他故】ほどほどだよ。

【きだて】言われてみれば、「そっかな~」ぐらいの。

【高畑】まあ、静かという感じはまだしないかな。

【きだて】トンボ鉛筆の「リポーター」を使ったときほどの感動はないというかさ。

【高畑】「リポーター」でも音はするからね。カチッという音はしてるから。まあ、静かといえば静かだと思うけど、ノイズキャンセリングヘッドホンを使ったときみたいな感動はない。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】それは「リポーター」もそうだし、これも気をつけてはいるけど、カチッという音はするな。

【きだて】本当に耳を澄まして聞き比べると、高音域のノイズは少ないのかなという感じはするんだよ。

【高畑】あ~、なるほど。

【きだて】割と、くぐもった低い音に集中しているような気がして。

【他故】う~ん、それは分かる。

【きだて】耳障り感は薄いかもしれない。

【他故】ああ、なるほどね。

【きだて】それも、何遍も聞いての話だからさ。普通はそこまでしないじゃん。

【高畑】そうなんですよ。今回取り上げる筆記具全部がそうなんだけど、今までのボールペンそんなに薄かったんですかという話じゃない。そんなに裏抜けしてましたっけ?という感じで。

【他故】わはは(笑)。

【高畑】でも、言われてみたらやっぱり良いと思うし、その繊細な差がやっぱな、というところではある。「ブレン」に関してはそれがある思うけど、ノイズに関しては、「まあ、う~ん」っていう感じかな。そこまで減らせなかったかなという感じはするけど。

【きだて】う~ん。

【高畑】ただ、こんだけ話題になった商品の続編を、多色タイプで翌年には出してくるというのは、すごい勢いだなと思う。

【他故】それは本当にすごいわ。

【きだて】これを言っちゃあれなんだけど、ゼブラってそんなに基礎体力あるっけ?

【高畑】すごいと思うよ、最近。こんなことやりながら、途中で“光る”とか作ってくるわけじゃん。

【きだて】ははは、そうな (笑)。光ったり、巻いたり(笑)。

【高畑】グルグル巻いてな。それをやりながら、かつこんなド直球を作ってくるのは、やっぱりすごい。

――気のせいかもしれないですけど、前の単色のときより、インクの色が濃くなっているように感じるんですが。

【高畑】どうだろう? 中に入っているリフィルが違うからね。

――もしかしたら、エマルジョンインク自体の改良もしてるんですかね。

【他故】改良してるんじゃないですか。1年前とは違うということもありえますからね。

――それは、他のメーカーもインクの改良は重ねているでしょうから。

【他故】これって、今までのエマルジョンインクのリフィルとは違うんだよね。「ブレン3C」専用だよね?

【高畑】「ブレン3C」専用だね。

【きだて】(書きながら)あれ、言われてみれば濃いような気もするな。いや、どうだろう。

【他故】やっぱり、改良されてるのかもね。

――もしかしたら、今単色も買ったらインクが違うのかもしれない。

【きだて】その可能性はあるかもね。

【高畑】リフィル自体が違うから、何とも言えないけどね。

――これは、ゼブラに聞かないと分からないですね(笑)。

【きだて】「いえ同じですよ」と言われると恥ずかしいから、もうこれ以上は言わない(笑)。

【高畑】「エナージェル」もキャップ式とノック式じゃ書き味が違うというのもさ、メーカーは同じだと言ってるけど、体感的には違うように感じるんだよ。それは、「午後の紅茶」のミルクティーがペットボトルの大きさで味が違う気がするんだけどみたいな、そんな違いを感じるけど。

【きだて】これに関しては何とも言わない。これ以上冒険しない!

【高畑】俺が今書いてみた限りでは、そんなに違わないかなという気がするんだけど。

――この話は、これ以上踏み込まないようにしましょう。とりあえず、3色タイプができてすごいねという話ですね。

【きだて】まとめたらそうです。

【他故】わはは(笑)。

【高畑】まとめたら2行で終わっちゃうじゃん(笑)。

【きだて】2行で終わるようなことを、20分ぐらいかけてグダグダやってんだよ、俺らは(笑)。

*次回は「キュリダス」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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