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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.23 その3

ブング・ジャムの2019年初文具はコレ!

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左からきだてさん、高畑編集長、他故さん
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.23では、ブング・ジャムの3人が今年初めて買った文房具を3日連続で紹介します。

このカッター待ってました!

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――最後は高畑編集長ですね。オルファのカッターですか。

【高畑】オルファのカッターですが、これ超待ってた感じがするんですよ。オルファのカッターのラインアップで、「M厚刃」というのがあるんですが、L刃とS刃の間にM刃があって、普通のM刃は前からあったけど、M厚というのがちょい前に出て、これが厚みはL刃に近くて。

【きだて】L刃が厚さ0.5㎜。

【高畑】それで、これが0.45㎜か。若干薄いけど、ほぼほぼL刃に近くて、それで幅はS刃に近い。M厚はお気に入りだったんですよ。カッターナイフを一丁だけ置いておくとなると、細かい作業もするし、ダンボールぐらいは切ったりするよねって考えたら、Mっていうのはちょうどいいサイズなんだよね。ダンボールでもウニャってならない。

【きだて】厚みがあるから、しならないんだよね。ただ、今までM厚に「鋭角黒刃」がなかったじゃない。

【他故】そういうバリエーションは全然なかったからね。

【高畑】M厚は、どちらかというとL刃に近い分だけ、薄いものとかに繊細に切り込んでいくには、若干厚みがあるけど、万能の中間サイズなので、雑用には向いているわけですよ。それもすごく良かったんだけどね。オルファって、ここ数年、順番に1個ずつリニューアルしていく感じがあるので。

【きだて】そうだね。

【高畑】裏から見るとバッテンにみえるラバーグリップが付いている「ハイパー」っていうシリーズなんだけど、本体が握りやすいように若干曲線になっていて。

【きだて】このシリーズ握りやすくて本当にいいんだよね。

【高畑】多分、これが今の作業用カッターの標準なんだよね。

【他故】そうね。

【きだて】ホームセンターに行くと、作業用カッターナイフのコーナーには、この「ハイパー」がドーンと並んでいる感じだよね。

【高畑】いくつかバリエーションがあって、ツメ付きとかさ。

【きだて】このツメがまたいいんだ。これが便利。

【高畑】というのが大型にはあったんですよ。このツメが付いていることで、開かない箱をあけるとか。

【きだて】あとね、ダンボールに折り線を付けるのにちょうどいいんだ。

【高畑】あ~なるほどね。これ、ダンボールを開けるカートンオープナーとしてもいいよ。こちの刃だと中身が切れちゃうから、ちょうどいいんですよ。

【きだて】先端が丸いからね。

【高畑】丸いし、力が入るからね。

【他故】ペンキ缶開けるときは、絶対これがいいよ。

【きだて】そう、これこれ。

【高畑】あと、フォションの紅茶の缶を開けるときもね。

【他故】苦手なんだよな、ああいうのを開けるの。

【高畑】あれにはね、これがちょうどいいよ。

【他故】そうだね。

【きだて】普通の人は、台所にあるもので開けるから、スプーンとか使うんだよ。

【他故】それだと曲がっちゃうんだよ。

【高畑】傷もつくんだよ。うちのは銀だから。

【きだて】ウソつけ(笑)。

【他故】ステンレスだろ(笑)。

【高畑】すいません、ニッケルでした。

【きだて】本当に、このツメは全然頑丈ですから。

【高畑】あと、電池のフタとか。そういうこじ開けたいときにね。

【きだて】オールマイティに使えるから。

【他故】めっちゃ便利。

【高畑】だから、刃と同じくらい使うんじゃないかと思うくらい。今回、そのツメが付いたんですよ。

【きだて】もうね、待ってた!

【他故】わはは(笑)。

【高畑】カッターの話はやっぱりだてさんだね(笑)。

【きだて】俺の現状を言いますと。

【他故】俺の現状(笑)。

【きだて】ダンボールを切るのに、M厚刃がいいなと思って一時使ってたんだけど、今はL刃で「スピードブレード」という超絶いいやつが出たので。

【高畑】あれ、フッ素加工してるんだっけ?

【きだて】そう。だから切ってるとあっという間にフッ素層が取れてなまっちゃうんだけど、でも切れ味は最高。その「スピードブレード」をツメ付きボディの「ハイパーAL」に入れて使うのが好きなんだけど、やっぱりね、細かい細工切りとかするときは、L刃だと若干取り回しが悪い。

【高畑】幅があるから、小さいアールで切るときに、どうしても自分の刃がジャマなのね。

【きだて】そうそう、小回りが利きづらい。

【高畑】ホイルベースの長いクルマみたいなものなので。

【きだて】普通に安定はするんだけどね、ツメもよく使うし。だから、「M厚で、鋭角黒刃で、ツメが付けばいいのにねえ、オルファさん」というのは、ずっと思ってた。

【高畑】そんなあなたに、今回は特別に替え刃が3枚付いてます!

【きだて】もうね、俺の欲しかったものをオルファは出してくれた。最終的に、M厚でスピードブレードを出してくれないかな(笑)。

【他故】ここまでやってくれれば、いつかは出してくれると思うでしょ。

【高畑】今は特典で、黒刃が3枚付いてます。あとは、替え刃でM厚の黒刃5枚入りと20枚入りが出ます。

【きだて】鋭角黒刃もポキポキ折らないといけないので、20枚入りを買っておけという話です。

【他故】そうね、枚数は要るよね。これと「ポキ」がセットだ。

【高畑】もちろん、鋭角黒刃の方が普通の刃より若干鋭角かなと思うんだけど、刃が鋭くなったことでより繊細な作業に寄せられる。それで、標準の刃を付けるとL刃に近くなるので、どっちもいける。僕だと、雑多な作業をするときは標準でいいかなと思うし、デスクに入れておくんだったら、黒刃がいいなと思うじゃないですか。

【他故】そうね。

【高畑】で、このツメがデスクでも意外と役に立つ。何かと便利なんだよね。

【きだて】本当に、これはあれば使う。

【高畑】これは、かたち的には、「ハイパーL」をそのまま小さくしたような感じなんですよ。

【他故】うん。

【高畑】だから、握り心地はそんなに変わらないんだけど、ペンケースとか引き出しとかにしまうと、かさばる感が全然違う。

【他故】何だかんだいって、これはでかいものな。

【高畑】ガッツリDIYというときは、これでいいと思うんだけど。

【他故】これは工具箱に入れるやつだ。

【高畑】僕らは、用途に合わせて何丁も持つでしょ。それはいいんだけど、家庭用の工具箱に1丁は入れたい。何か入れたいとなったときは、迷わずこれをおすすめする。

【きだて】万能だもん、これが。細かくもいけるし、どっちにもいける。

【高畑】「万能M厚」のさらに万能版が出たので。ちょっとしたことだけど、この握りやすさとツメが付いたことは、すごく大きいなと思うので。きだてさんみたいに、工作をやりたいのであれば、前の万能M厚に黒刃を入れれば、もっとシャープにペンケースに入れて持ち運べると思うけど。

【きだて】まあね。

【高畑】そういう使い方もアリだけどね。

【きだて】前にここで話したけど、持ち歩くのはS刃の黒刃を「DA‐1」に入れるのでいいんだ。でも、家での工作用カッターナイフはスピードブレード+ハイパーALから、黒刃ハイパーM厚に替えようかなと考えていて。

【高畑】そうだね。L刃はこっちに替えてもいいかな。

【きだて】特選黒刃とこれの相性をみてからだけど。スピードブレードは、切れ味が本当に異常なんだよ。だって、コピー用紙10枚重ねたのも撫でるように切れるんだぜ。

【他故】スパッといくからね。

【高畑】超ど真ん中の汎用タイプみたいな。一時期のファントムⅡみたいに、攻撃も戦闘もできるという。

【きだて】マルチロール機だね。

【高畑】よく分からない比喩で申し訳ないんだけど。

【きだて】器用貧乏なんですけど(笑)。いや、これは本当に待っていたものなので。とりあえず、3本買います。

【他故】それと替え刃20本ね。

【高畑】一つだけ注意があるけど、前のは黒いキャップが付いていて、それが刃折り器の役目もしていたけど、今回はないんですよ。「ハイパー」はプロ用なので、後部にキャップが付いてないんですよ。

【きだて】後ろに即出ちゃうんだよね。

【高畑】クッと力を入れるとスライダーが外れるのでそこも注意。それで、刃を折るときは、僕は平気で机の上でベキって折るけど、「ポキ」みたいな刃を折るための容器も売っているので、そういうのを買っていただけると。あとは、替え刃のケースにスリットが付いているタイプのもあるので、そういうので適切に刃を処理して下さい。やっぱり、何においても小まめに刃を折ることが大事なので。

【他故】うん、そうだね。

【高畑】そこがね、今回は折り器が付いていないので、一緒に黒刃も買って、「ポキ」なんかも買うといいです。

【きだて】「ポキステーション」とか便利じゃない。だから、「ポキ」とか「ポキステーション」は、カッターマットの数だけ買っておきなさい。

【他故】カッターマットの数だけって(笑)。

【高畑】カッターマットとセットで買うといいよね。

【きだて】そう、セットです。確実に。

――3本も買ってどうするんですか?

【きだて】PCデスク前に1本、リビングでも工作をするのでそこにも1本、文具部屋の工作机にも1本という構成なので。

【他故】作業する場所が3つあるんじゃしょうがないね。

――とにかく、刃物系を買うと一部屋1本なんですね。

【きだて】そうです。

【高畑】気に入った刃物は1部屋1丁なのね。

【他故】それはしょうがない。

【高畑】さらに場合によっては、持ち運び用にもう1丁要るし。

【他故】それぞれに「ポキステーション」が立ってるんだ。

【きだて】そう。

【高畑】ここまできたんだったら、来年あたりMZのM刃を作ってほしいな。

【他故】MZな~。

【高畑】MZのM刃を作って、6枚入るみたいなことしてほしいな。

【きだて】あ~。

【他故】結構ごつい感じになりそうだけど。

【高畑】6枚が5枚でもいいんだけどさ。

【きだて】マガジン式って、ポキポキ折る鋭角刃と相性がいいんですよ。

【高畑】そうそう。バンバン折るからね。

【きだて】うーん、やっぱりMZのM刃ボディが出たら特専黒刃入れるよね。

【高畑】あれも名作だからね。

【他故】常に予備が入っているとすごくいいよね。

【高畑】オルファは、スクレーパーとかPカッターをリニューアルしているんだよ。これがさ、全部めちゃくちゃ使いやすいんだよ。Pカッターなんて、プラスチックを切る人なんて少ないし、マイナーな商品なんだけど、あれの刃をしまえるようにするとか、「いや~、待ってた」みたいなやつを直してくれてる。

【他故】Pカッターなんて刃が出っぱなしだったものね。

【きだて】昔のやつは刃がしまえないんだよね。

【高畑】刃を外して本体の中に入れないといけなかったけど、ダイヤルを回してスライドすればでしまえるようになったし。スクレーパーも新しくなったし。

【きだて】スクレーパーが新しくなったの全然知らなかった。

【高畑】刃が全然違うんだよ。

【他故】へぇ~。

【高畑】その辺の新型が出るたびに、全部置き換えていく。新しいのを使うと、前のが使えなくなるくらい良いのをどんどん作っている。

【きだて】最近のオルファはすごいいいよ。

【高畑】円切り用のカッターもリニューアルしたじゃん。あれもすごくいいよ。だから、前のでも困ってなかったのに、新しいのを使うと、絶対そっちがいいんだよ。

【他故】やっぱ違うんだよな。

【高畑】設計がこなれてきた。3Dで設計する技術が、昔のよりよくなったと思うんだけど、すごいきれいに作れるようになってきたので、そのソツのない感じがいいですよ。

【他故】「ハイパーM厚」は絶対買うよ。

【高畑】ちょっとした軽作業だったら、これ1丁あればいいからね。

【きだて】本当にね、ハイパーは嬉しい。このツメが。

【高畑】ツメ便利なんだよね。

【きだて】使うって、このツメは。

――ドロップ缶開けるのにいいですよね(笑)。

【高畑】サクマ式ドロップは、これを使えば簡単に開くよ。

【きだて】あとね、孫の手代わりにそこそこ使えるよ(笑)。

【他故】ええ~、それで掻くの?

【高畑】気をつけなよ。

【他故】切れるとはいわないけど、恐くないか?

【きだて】このツメなら大丈夫だよ。刃が付いているわけじゃないし。

――どっちかというと、そのツメが使いたいんですか?

【きだて】いや、どっちも使う。

【高畑】M厚というサイズが絶妙だなと前から思っていて、デスクに置いておく普段使いが、これ1丁あればいい感じになっているので。

【他故】うちもずっとこれですよ。

【きだて】他故さんもM厚好きだものね。

【他故】その後きだて氏に感化されて大きいのも買うようになったけど、そこまでパワーのある作業をうちではしないので(笑)、大体M厚で済む。

【高畑】済むよね。そこまで細かい作業をしなければ。

――一般家庭はそれで充分ですよ。

【他故】工作をするわけではないので。何かを切るという作業で、安心して切れるというときに、この厚さはすごく楽というか、これでギュギュギュっとやっちゃっても折れたという記憶がない。

【高畑】送られてきた荷物のダンボールを切るときに、やはりS刃だと頼りないよ。

【きだて】やっぱり、しなるね。

【他故】S刃はちょっと伸ばせないよね。

【高畑】今、家に入ってくるダンボールの量が増えているんですね。そう考えると、普段使いのカッターは、S刃だとちょっと力不足なので、M厚がいいね。

【きだて】そうだね。

【高畑】普通の人は黒刃じゃなくていいけど、M厚を普段使いにしてもらえれば万能に使えるね。

【他故】目の前にある紙で工作をするときに、ダンボールや牛乳パックとか、割と硬いものになってしまうことがあって。それで、子どもたちにカッターの使い方を教えようとなったときに、どうしてもS刃は恐いと思っちゃうんだよな。

【高畑】いわゆる、文化包丁的な万能感なので。もちろん、中華包丁やペティナイフもありなんだけど、ちょうど中間で。

【他故】そうだよね。

【きだて】だから、最近はM刃の下がS刃じゃなくてデザインカッターになっちゃった。

【他故】S刃を使わなくてね。あ~、分かる分かる。

【高畑】角度が30°で先端が細いやつね。

【きだて】本当に細かい作業はデザインカッターでやるし、そこから上は別にS刃じゃなくてM厚で全然いいんだもの。

【高畑】L刃が普段登場しなくても済んじゃうくらいなので、割とこれで行けちゃうな。

【きだて】スピードブレードはやっぱり大好きなんだけど、M厚で済む話も多いんだよね。

【他故】これは期待大ですね。

【きだて】いや~、待ってました!

――カッターの話でこれだけ盛り上がれるのは、ブング・ジャムだけですよ。

【高畑】「このカッター出たら買う!」っていうのはちょっとあれだけど、今から上京するとか、就職するとか、学校が決まって一人暮らしを始めるという人は、これから引っ越しとかあるわけじゃないですか。そういうときのために、1丁持っていた方がいいね。

【他故】ダンボール切るとなったらこれ。

【高畑】いや、ダンボール切らなくても、何かと切る用事はあるから。

【きだて】何だかんだ言って、カッターは使うからね。

【高畑】新生活に向けて「1丁買っとけ」だよ。

【きだて】新生活じゃなくても「買っとけ」だよ。

【他故】どんな場合でも1丁だ。

【きだて】カッターなんて、何本あったって困りゃしないんだから。

【高畑】むむっ、まあ困らないけどね。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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