【連載】月刊ブング・ジャム Vol.19後編
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.19後編では、ブング・ジャムのみなさんがおすすめする手帳グッズを紹介してもらいました。
超タフに使えるふせんを持ち歩こう!
「Post-it EXTREME」(3M)、ザラザラの壁面にもしっかり貼れる!
――後編は、皆さんお使いの手帳まわりグッズをご紹介いただきます。
【高畑】よく考えたら、去年もやってるんだよね。
【他故】うん、やってるね。
【高畑】テンプレート紹介しようと思ってたよ。
【きだて】それ、去年紹介しただろ。
――デジャブ感が(笑)。
【きだて】誰からにする?ふだん手帳とは関係が薄い人から濃い人に行った方がいいんじゃない?最初は俺で。
【他故】そういうものなのか?
【高畑】じゃあ、きだてさんお願いします。
【きだて】関係が薄いというか、そもそも手帳じゃなくてA5ノート2冊+ノートカバーを持ち歩いているんだけどね。まぁ手帳代わりということで。で、ノートに75×75の正方形のふせんを組み合わせて使うことが最近あるんだけど、ノートを広げた時に貼っておいたふせんがハラッと落ちることがあるのね。それが嫌だなと思って、最近はこれを使ってます。アメリカから買ってる3Mの「Post-it EXTREME」。
【高畑】手帳用に使うって(爆笑)。
【他故】手帳用じゃないだろう(笑)。
【きだて】手帳用とはさすがに強弁しないけど、でも便利なんだよ。まず粘着力が強いし。
【他故】これを紙に貼って、紙が持って行かれたりはしないの?
【きだて】推奨はされてないみたいだけど、わりとちゃんとはがれるよ。
【他故】はがせるんだ。
――これ、日本では売っていないんですか?
【きだて】日本では売ってないし、発売予定もなさそうだし。
【高畑】それは、日本でもこんな需要があるのかと思わなくもないし。
【きだて】でも、文具店にも「はがれないポスト・イットないの?」っていう問い合わせがあったりするみたいだし、意外と需要があったりするんじゃないかな。
【高畑】じゃあ、きだてさんが個人輸入だ。
【きだて】う~ん、やろうかとすら思い始めているんだけど。まあ、Amazon.comで買えるけどね。
【高畑】ああ、でもAmazon.comで調べたら、めちゃくちゃいっぱい入っているやつとか出てくるの。
【きだて】そうそう、お得だよ。
【他故】お得ってさぁ(笑)。
【きだて】君たちにあげたのは、そうやって買ったやつだからな。
【高畑】ていうか、そういう業務用って、本当に徳用パックっていうのがあって。
【きだて】あ~、徳用パックのやつだ。
【高畑】信じられないくらい入ってるのね。アメリカ人って、本当に何でもそうだよね。
【きだて】俺もそういうの好きだけどね。ちなみにちゃんと紹介すると、フラットな面だけじゃなくて、木材やレンガ、あとはザラザラの壁紙だとか、そういうところにもはがれず貼れます。水でびしょびしょに濡れた面にも貼れる。あと、温度は49℃まで耐える。
【他故】49℃!
【きだて】そして、寒いのはマイナス18℃まで。
【高畑】マイナス18℃はこちらの方が耐えられないけどな。
【きだて】とにかく、粘着力が強いので、1週間屋外に貼りっぱなしにしていてもはがれない。それで、さっき49℃まで耐えるっていったけど、1週間貼りっぱなしのところに高温のスチームクリーナーをブシャーッとかけてもはがれなかった。でも、手でペリッと簡単にはがれちゃう。
【他故】はがれるんだ。
【きだて】非常に不思議なふせんで。エクストリームに強くて、簡単にはがせるという結構夢のような商品で。
【他故】風とかにもはがれないの?
【きだて】はがれない。それこそ風速20数メートルとかのそこそこ台風並みの強風の中でもはがれなかったから。
【高畑】じゃあ、「今日は台風のため臨時休業いたします」っていうのも貼れるんだ。
【きだて】だって、雨でもはがれないんだもの。
【高畑】最近は台風とか多いから、何かのときにね。「ここ危険です」とかも貼れるでしょ。
【きだて】そう。「避難所に逃げてます」とか貼ってもいいし。
【高畑】ああ、そういうのを壁に貼ってもいけると。
【きだて】最近、天災続きだから、こういうのもいいかもしれないね。
【他故】防災用品の中に入れておくといいかもしれないね。
【高畑】それを手帳に使うんだよね。
【きだて】こんだけ粘着力のあるものを紙に貼って大丈夫かと思ったんだけど、それこそ勢いよくピッとはがすと持って行かれることはあったけど、普通にペリペリはがす分には大丈夫だよ。
【高畑】手帳に貼って、普通のふせんと同じように使えるよということだね。
――これって、全面のりなんですか?
【きだて】いいえ、端っこだけ。普通のポスト・イットと同じ。
【他故】いわゆる“強粘着”といわれるやつとどのくらい体感で違うの?
【きだて】明らかに差があるとしか言えないんだけど。
【他故】強粘着でも、はがすときに持って行かれちゃうことがたまにあるんだけど。
【きだて】はがす感覚は強粘着と同じくらい。
【他故】同じくらいなんだ。
【きだて】でも、継続して付いているということに関しては、圧倒的にこっち。だって、強粘着は上から水をかけたらはがれるでしょ。
【他故】それはそうでしょ。やったことないけど(笑)。
【きだて】これははがれないので、安心感が違う。
【高畑】紙質もえらい違うよね。
【きだて】そう。デュラペーパーっていう樹脂でできている特殊な紙なんだけど。
【高畑】(触りながら)クレープ紙みたいなちょっと柔らかい感じ。
【他故】本当だ、全然違うんだね。
【きだて】ちょっと伸びるような感じがするんだけど。
――これってペン選びます?
【きだて】鉛筆の乗りがちょっと悪いけど、後はペン類は全然選ばない。
【高畑】ボールペンとかは平気?
【きだて】うん、油性も水性も全然問題なく。
【他故】水性も大丈夫なんだ。
――まあでも、「濡れても大丈夫」なんだから、油性で書くのがいいですよね。
【きだて】油性マーカーあたりが一番相性がいいんだけど。
【他故】確かに、書いた後に濡れて線が消えちゃうということを考えるとね。
【高畑】フリクションボールでも普通に書けちゃうんだ。
【きだて】その辺の不満はないと思うよ。
――水性サインペンでも普通に書けますね。
【高畑】ちょっと弾くけどね。
【他故】まあ、でもちゃんとインクが乗るし、乾けば問題ないんだろうな。
【きだて】それで、でこぼこの壁紙なんかだと大抵は貼れないじゃん。そういうのも普通に貼れて。そのまま貼っておけば、1週間でも2週間でも貼りっぱなしにしておける。
――さすがにずっと貼っておくとどうなんです?
【きだて】糊残りするかな?家の外壁材に貼ってみたけど、とりあえずそれは糊残りがなかった。
【高畑】ゼロかというと、普通のふせんも糊残りするから。
【きだて】ちゃんと見ればしているんだろうなという感じ。
【高畑】そこに関しては気にならないんだ。
【きだて】先日、とあるイベントの建て込みの手伝いをして、「ここにセットを置いて」とか指示をしていたんだけど、そういうときにこれを貼っておくとすごく便利というのが分かった。意外と多用途だなって。
【高畑】引っ越しなんかにもいいし、あと布にも貼れるみたいだから、イベントの名札なんかにもいいね。
【きだて】普通のふせんって、そもそも使い勝手がいいじゃない。それに加えて、普通のふせんだと最初から諦めるようなところにも貼れるから、使ってみると想像以上にいろんなところで使える。
【他故】へぇ~。
【高畑】でも、お高いんでしょう?
【他故】そりゃ、今のところ普通に手に入る方法がないから。
【きだて】日本円でいくらだったかな? そんなにビックリ値段ではなかったよ。え~っと、約5ドルだから、日本円で600円か700円くらい。
【高畑】まあまあだね。言うほど高くはないよね。
――それぐらいだったら買うという人は結構いますよね。
【きだて】いると思うんですけどね。
――何で日本では売らないのかな?
【きだて】何ででしょうね? 便利だと思うんだけどな。
【高畑】普通の小売店の人だと、「いや、いいです」と言っちゃうのかもしれないですね。ホームセンターとかにあったらいいよね。
――「水に強い」とかアピールしたら売れそうな気がするけど。
【高畑】買ったマグロに貼っとくとか。
【きだて】ああ、魚市場でね。濡れた面に貼れるし、若干オイリーなところでもいける。
【高畑】だから、色々使えそうだよね。
【きだて】さっき文具王が引っ越しと言ってたけど、本当に引っ越しのときは便利だと思うよ。引っ越し屋さんに「この荷物をここに運んで下さい」とか。
【高畑】ダンボールに入れたやつはダンボールに書けばいいんだけど、スチールキャビネットとかそういうやつ。書かないといけないんだけど、はがれるんだよね。
【きだて】家具にこれを貼っておいて、「この色のふせんの貼ってあるものは、この部屋へ運んで下さい」とか指示すればあ、全然楽じゃない?
【他故】それはいいな~。
【高畑】引っ越しのときに、キャビネットとか衣装ケースとか、本棚なんかに何か一言書けるのは便利だね。
【きだて】うん。
【高畑】ていうのが、手帳の中に入っているという話ね。
【きだて】手帳って、常に持ち歩くものの代名詞みたいなもんじゃない。そこにこの汎用性がガバガバに広いふせんをセットして持ち歩くと、やたら便利というね。
【高畑】どこにでも貼れるから、外でも使うということね。
【きだて】なんにせよ、万能で貼れるふせんはそれだけでも心強いよ。
【高畑】それは確かにね。
【きだて】割と今、俺の中ではお気に入りの、手帳と持ち歩くグッズということでございました。
――これはいいですよ。全面のりでもいいんじゃないですか。
【きだて】全面だとはがれないかもしれない。
【他故】強くなりすぎちゃうんだ。
――じゃあ、半分とか。
【高畑】のり面がもうちょっとあってもいいね。
【きだて】でもね、これで全然不満はない。
【他故】わはは、確かに(笑)。
【きだて】あとね、他のふせんよりもカールしないというのもありがたい。
【他故】あ~、そうか!
【高畑】ああ、素材が柔らかいしね。
【他故】濡れても貼れるふせんって、これ以外にある?
【きだて】ない!
【他故】そうでしょ。だから、冷蔵庫の中で、「このプリンは自分用」とか貼っておけるわけでしょ。
【きだて】ちなみに、マイナスまで行けるから、冷凍庫でも使えます。
【他故】うちよくあるんだよ、「アイス食べたの誰だ」って(笑)。だから、濡れているところに貼れるっていうのはいいな。
【高畑】使えるところがいっぱいあっていいよね。
【きだて】ということで、これを読んで欲しくなった人は、アメリカのAmazon.comで買おう!
「あったら便利」な極薄印鑑!?
「スマート印鑑」(アンディ)
――次はどなたにしましょうか?
【高畑】私にしましょうか。「スマート印鑑」というやつなんですが、いつもこれを手帳にはさんで持ち運んでいるんですよ。世界最薄の印鑑ということで。
【きだて】「うすうす」ね。
【他故】「うすうす」って言うな(笑)。
【高畑】子どもの頃にさ、キャラメルのおまけで、こすると絵が移るシールがあったでしょ。
【きだて】転写シールな。
【高畑】要はあれに近いもので、名前が転写できるよというわけです。きだてさんも持ってるの?
【きだて】俺は財布に入れて持ち歩いてます。
【高畑】これ、1個のパックの中に12枚入っているのかな。ああ、3個入りというのあるんだ。基本的に、よくある名前のやつはこれでお店で売っているんだけど、あまりない名前だと、ある量がたまったら作ってくれる。
【他故】あっ、そうなんだ。へぇ~。
【高畑】僕の名前は第一水準にはなかったので、頼んで作ってもらったタイプなんですけど。
【きだて】「高畑」はなかったんだ。
【他故】「高畑」がなかったら、俺やきだて氏があるわけがない。
【高畑】「高畑」は、全国ランキングで850位ぐらいなんですけど。まあ、それはともかく、外にいるときに、「ハンコを捺して下さい」ということがたまにあるのよ。そういうときに限って、ハンコを忘れたりするわけですよ。まあ、持ち歩けばいいんだけど。
【きだて】優先順位は低いよね。日常的にハンコを持ち歩くのは。
【高畑】「後で書類を郵送します」というのも、まあ面倒くさいわけですよ。となったときに、このハンコが入っているのは結構便利。もちろん、朱肉をつけて捺すハンコとは違うんだけど、このメーカーの調べだと、「90何パーセントのところで拒否されてません」と言っている。もちろん、相手の気持ちの問題もあるので、絶対大丈夫とは言い切れないけど、基本何も言わないでこれを捺して出したら分からない。要は、丸いシールの上に文字が乗っているわけじゃなくて、文字だけがシール状に転写されてくっつくので。だから、表面が丸くテカテカ光っているわけではないんだよね。
【他故】シールを貼られたら、さすがに分かっちゃうけどね。
【きだて】これは、ほぼほぼ違和感ないんだよね。
【高畑】あと、いわゆる浸透印のタイプだって、別にかたちが変わったりもするし。要は、認めとして自分のハンコが捺されていれば。僕も、「これではダメです」と言われたことは今のところないのね。わざわざ説明していない場合も多いけど、「この書類はダメです」といって返ってくることはないので。
【きだて】契約書とか、役所なんかでも使ってみたけど、特に問題にはならなかったね。
【他故】ああ、そうなんだ。
【高畑】印鑑証明が必要なものとかは、それはもう別の話なので。そうじゃなくて、認め印として必要なところは、これで充分なので。これがほぼ厚みゼロなので、手帳のポケットの中に入れっぱなしなのさ。それで「あっ」と思ったときに用意されている、このありがたさに僕はもうすでに何回も助けられている。
【きだて】「あってよかった」感が半端ないんだ。ハンコって無いと詰む場合が多いじゃない。
【高畑】「出直して下さい」というのもあるじゃん。ハンコがないからその場で契約できなかったということがなくなるので。
――なるほど。
【高畑】使う場面はめったにないので、年にいくつかしか減らないのね。でも、「今だ」っていうタイミングで、これを持ってたというのがさ(笑)。
【きだて】サバイブ感がね。
【高畑】ドヤ顔で使うよね。
【他故】安心感が違うよ。
【きだて】いや、えーとね、安心感ってのとはちょっと違って。
【他故】違うの?
【きだて】持っている事をその時まで忘れてるんだよ。
【高畑】そうそう。
【きだて】「ハンコを捺して下さい」と言われたときに、「あっ、ハンコない。あっ、これがあった!」っていう、この感じなのよ。
【他故】はぁ~!
【きだて】普段はね、存在感ないんだよ。
【高畑】忘れてるんだよね。
【きだて】だから、「あっ、あっ、えっ、あった~!」っていう(笑)。
【高畑】そうそう、その感じすごいある。だからね、これはマジでいいですよ。
――なるほど。
【高畑】それで、これはゴシゴシしないといけないかというと、指でギュッと押さえるぐらいで付いちゃうので。
【他故】そんなもんなんだ!
【高畑】ニュッと押すだけでいけるので。
【きだて】コインでこするとかそんな感じではない。
【他故】そうか、そこら辺は勘違いしてたな。
【高畑】その代わり、ポケットに入れておくときに、できれば硬いものとか凸凹のところに当たらないようにした方がいい。そっちへグイッと押されると、はく離紙からはがれちゃったりすることがあるので、気を付けた方がいい。
【他故】はいはい。
【高畑】これは、僕みたいに印面を作らないといけない場合は面倒くさいけど、佐藤さんとか山田さんとかは普通に売ってるから。
【きだて】いや、でも山田さんとか佐藤さんは、100均でもハンコが買えるからいいんだよ。そうじゃなくて、100均でハンコが買えないタイプの人こそ、これを作っておくと助かります。
【高畑】ああそうだ。
――すぐ買えちゃいますからね。
【きだて】それはね、木建(きだて)が保証する。
(一同爆笑)
――ハンコがないし、100均でも買えない人がということですね。
【高畑】そういうことができない人ほど、わざわざ印面を作ってでも、これを持っておけと。
【他故】そうね。
【きだて】もちろん、コスト的には普通のシヤチハタ作るより高いし、これ作るのに時間もかかるのね。アメリカで印刷してるんだよね。
【高畑】そう。アメリカに印刷工場があるんだよ。
――へぇ~。
【きだて】だから、若干時間かかるけど、いざというときを見越して作っておくと、命を助ける。
――命を助ける(笑)。
【高畑】いや、ホント。冗談抜きで、これがなかったら、「家に帰って封書して郵送して下さい」って言われて、それで書類を持ち帰る面倒くささを考えたらね、その場でできる良さはありますよ。
【きだて】ねえ。
【高畑】それで、入れててかさばらない。
【きだて】そう!
【高畑】だって、1グラムもないから。こんなぐらいで救われるのであれば、これは持っておくべきです。ということで、手帳に忍ばせておくなら、この「スマート印鑑」がおすすめです。
ヌルヌルな書き心地を体感
「NULL REFILL(ヌルリフィル)」
【高畑】最後は他故さんお願いします。
【きだて】手帳といえば他故さんだよね。
【他故】いやいやいや。最近、また久しぶりにシステム手帳を引っ張り出してきて。これ今はなき「ルフト」なんですけどね。
【きだて】ああ、そうだね。「プロッター」になったからね。
【他故】「ルフト」の頃に、ノックスブレインの30周年で作った別製のやつなので。それで、手帳グッズじゃなくて、手帳の紙でもいいですか?
――もちろん、どうぞ。
【他故】システム手帳で好きなのは、このライフの「ノーブルノート」の紙なんですけど。
【高畑】ああ、それ俺も好き。
【他故】だけど、最近はまっているのが、この「ヌルリフィル」というですね、ヌルヌル書けるのでこういういう名前だと聞いているんですが。
【高畑】ダジャレかい!
【きだて】う~ん(苦笑)。
【他故】実はこれ、この世で唯一、ユポなのに万年筆で書けるリフィル。
【高畑】ユポ!
【きだて】ユポなの!?
【高畑】ユポで万年筆で書けるって、どういうことなの?
【他故】要するに、一切インクは染みないんだけど、文字としてちゃんと残る。
【高畑】え~。乾くのを待ってないといけないわけ?
【他故】だから、この商品には、吸取紙が1枚ずつ付いている。
【きだて】あ、あ~!
【高畑】それ大事ね。
【きだて】(万年筆で試し書きをして)うわぁ~、何これ! 何、この感触!
【高畑】まあ、全然、普通にプラスチックの上に書いてますからね。
【他故】そうそう。紙に書いているわけじゃないということも含めて、非常に特殊な。これ自体は染み込まないので、インクが乾くのを待っているか、あるいはパタンと閉じると中が吸取紙になっているので。
【高畑】ヌルっとしているというと、何かヌラヌラ系の太いので書きたくなるけど。
【きだて】あ~、そうな。
【高畑】でも、全然乾かない気が(笑)。
【他故】何一つ乾かない系で(笑)。
――何か、ヌラヌラで細いペンで書いている気がしない。
【きだて】全然しないですね。
【他故】感触が、「沈んでいるのか?」っていう非常に不思議な感じで、割と好きなんだけど。
【きだて】すっごい独特だね、この感触は。
【高畑】普通にボールペンで書いてもいいよね。
【他故】ボールペンでも何でも、変な感じを楽しめるよ。
――さっき他故さんが持っていた、ゲルインクボールペンの「サクラクラフトラボ003」はどうです? ボール径0.8㎜だから太書きだし。
【他故】ああ、これなんか万年筆クラスに乾かないですよ。
【高畑】(サクラクラフトラボ003で試し書きをして)かぁー、これはね(笑)。
【きだて】(同じく試し書きして)うぉぉ~!
【他故】「うぉ~」とか言わないで。伝わらないじゃないか(笑)。
【高畑】この独特の感じは何なんだろうね。何て言えばいいの?
【きだて】「ジェットストリーム」がヌルヌルするのとは全然違う感じがするし。
【他故】それは違う。
【きだて】コントロールが効くヌルヌル感という不思議な感じで。
――吸い付く感じがしますよね。
【他故】吸い付いて、沈み込むのかというレベルまで行くんだけど、チュルっとね。
【きだて】硬質じゃなくて、生物感のある感触というか。
――不思議。
【高畑】あれが近いよな。昔はトレーシングペーパーが2種類あって、パリパリしていない方がこれに近い感じ。
【きだて】もう乾いたかな?
【他故】見ていると、テカテカした字とそうじゃないのが出てくるじゃない。中字以上で書いたやつは、乾くのに相当時間がかかる。
【きだて】でも、これ面白い。
【高畑】これって、万年筆ファンが作ったの?
【他故】そう。ペンサルーンさんていう個人のサークルで、元々印刷会社に勤められていた方で、自分の持つ技術をフルに発揮して、どうしてもユポに万年筆で書きたいという野望があったらしくて(笑)。
【きだて】野望だよな(笑)。
【高畑】何ていうのかな、基本的には間違っているんだけど(笑)。実用的にとか、筆記具の特性を考えたら、完全に無視なので、間違っていると言われてもしょうがないんだけど、まぁ間違えたいときもあるよねっていう。
【きだて】ああ、間違えたいときもあるよ。
【他故】間違えたいとき(笑)。
【高畑】「間違いだ」と言われても、やってみたいときはあるよね。
【きだて】心が求めているんだっていう(笑)。
【高畑】それは分かるよね。
【きだて】分かるよ。正しいことが全てじゃないからね。
【他故】そうそう。
【高畑】「ユポで万年筆用のノートを作りたいんです」と印刷屋さんに言ったら、「いや、それはね」って言われるじゃん(笑)。
【他故】「分かっているけど、やりたいんだよ」っていうね。
【きだて】うん(笑)。
【他故】今出ているのが、バイブルサイズとA5かな。
【きだて】A5もあるんだ。マジか。
――もう、書き放題じゃないですか(笑)。
【他故】それで、店頭販売しているところが、A5はブングボックスだけなのかな。バイブルサイズは他の見せでも買えるみたいですけど。
【高畑】ちゃんと天のりがあって、製本してあるからね。
【きだて】A5のはちゃんと穴あいてるの?
【他故】どうかな。A5買ってないから分からないけど。
【きだて】A5が穴なしで天のりパッドだったら、このノートカバー用に穴あけて使うんだけど。
【高畑】でも、ユポだから気をつけないと、パンチの刃がグニョンって伸びる可能性がある。
【きだて】それはあるな。
【他故】スコンって抜けてくれればいいけど。やったらやったで刃が悪くなっちゃいそうだけど(笑)。
【高畑】切れないで伸びちゃう可能性があるから。
【きだて】それは高いね。
【高畑】1枚もらって試してからの方がいいよ。
【他故】抜きを試したほうがいいよ。
【高畑】これ、書き味以外は何も正しくないので。
(一同爆笑)
【高畑】だって、ユポって何のために使うかというと、「丈夫で保つ」とか「水に濡れても平気」とかなのに、万年筆で書いたら何にもならない。
【きだて】何の役にも立たないよね(笑)。
【他故】そうそう。
――「紙だけ無事」みたいなね。
【きだて】そう、紙だけ無事だ(笑)。
【高畑】筆記具と紙ということを考えたら、何でこの組み合わせ?となるんだけど、それでもこの書き心地をためしたかったという。
【他故】そうなんだよね。
【高畑】全てがそこにあるんだよ。
【他故】本当に書き味だけのための紙。
【高畑】ある意味清々しい。
【きだて】面白いなぁ。
【他故】これは本当に面白い。
【高畑】他故さんのそれはどういう用途なの。普段使いなの?
【他故】基本は普段使い。ここにも何枚か入っているけど、結局いくつか紙を試したいときがあるんですよ。定番の紙は持っているんだけど、それじゃない紙で書きたいときがあって。そういうときの選択肢の一つとして、非常に面白かったので。それはパッドになっているから、そのままはさんでおけるからね。
【きだて】うん。
【他故】人に話すと、大抵の人は「冗談だろ」って言うので、見せるのも面白い(笑)。
【きだて】いや、思ったよ。思ったさ(笑)。
【高畑】多少でも紙の知識があれば、「何で」って思っちゃうよね。
【他故】ユポが何かが分からない人にこれを言っても仕方がないんだけど、知っている人に言わせると「そんなのあるか」っていう話になって面白い(笑)。
――文具に詳しい人だと、余計に楽しいでしょうね。
【高畑】で、さっきみたいに、書くと何だか分からない笑いがこみ上げてくるという。
【他故】わはは(笑)。
【きだて】本当に、面白アイテムだな。これは100%裏抜けしないね。
【他故】ないでしょうよ。裏抜けすることないじゃん。インクが染みないんだから。
――これ、「東京インターナショナルペンショー」で販売したら売れたんじゃないですか。
【他故】売ってましたよ。確か、ブングボックスのブースで販売してましたよ。
【きだて】売ってたんだ。気が付かなかったな。まあ、気が付いてもこれがユポだとは分かんなかっただろうけど。
――ちょっと見ただけじゃ分からないですよ。
【他故】これは、ネット上で知っている人が買っていくという不思議な商品なので。
【高畑】そのくらいじゃないとね。逆に、知らなくて買っちゃったら不幸だよ。
【きだて】まあ、そりゃそうだ。
――それは、売る方も「ユポ紙ですけど、大丈夫ですか?」と念押ししないと。
【他故】「ユポ紙って何ですか」という人には売らないとか。
【きだて】何てリテラシーの要る商品なんだ(笑)。
【高畑】あるいは、ユポ紙に関するウンチクを5分聞いてからじゃないと買えないとかね。
【きだて】わぁ、面倒くせぇ(笑)。
――まあ、マジックインキで書けばいいんですよね。
【他故】これは、マジックインキで書く紙ですか(苦笑)?
【高畑】でもね、インクの溶剤の種類によっては、ユポの表面溶けて目詰まりして書けなくなるの。実は、ユポって油性のマーカーで書くのもそんなに良くはないんだよ。
(一同)ふ~ん。
【他故】まあ、「万年筆の」って限定していれば、そこは問題ないんじゃないの。
【高畑】油性ボールペンで書けば、そこは全然問題ないんですけど。いやあでも、さっき極太のゲルボールペンで書いたときの書き心地は、今までに体感したことのない書き心地で。
【他故】非常に不思議な感じで。
【きだて】それなりに長い間生きてきましたが、これはなかったね。この感触は。
【高畑】しかも、このボールペンの重さも「ええっ」ていうのがあってさ。ダブルできたよ。
――他故さんは「サクラクラフトラボ003」では試してなかったんですか?
【他故】これでは試してなかったです。万年筆で書くと思い込んでいたところもあったので。あと、これは1冊800円ぐらいする、比較的高い商品なので、そんなにいたずらには書けないのです。
【高畑】いや、でも面白いね。
【他故】まだまだ世の中には、変わったものがあるので、それを発見するのは面白いね。
【高畑】これ、全然乾かないかというと、もう大丈夫というくらいにはなってきてるね。
【きだて】本当に、インクが上に乗っているだけなんだな。
【他故】まあそうだね。染みることはないだろうから。万年筆のインクによっては、普通の紙に書いたのと違う色になるという話だし。染みないからね。紙に染み込んだ色は見てるけど、インクの状態で乾いたのは見たことがないから。
――確かに。
【他故】そうやって、違った色を楽しむ人もいるらしいですよ。
――通な人は、そうやってインクの違いを楽しむんですね。
【きだて】本当だ。これキングダムノートの「トウキョウサンショウウオ」っていうインクだけど、紙に書くよりは若干緑っぽさが余計に出る。
【他故】普段、自分が見ている色と違う色になる。
【高畑】あと、表面のきめの細かいマット感がすごいね。紙が反射しないじゃん。全てにおいて感覚を裏切ってくるというか。いろんな意味でね。見た目もそうだし、書き心地もそうだし。不条理を楽しむというか。
【他故】というわけで、変わった紙の紹介でした。
【高畑・きだて】いや、面白い。
――今回は、変わった紙の商品が2つも出てきて。しかも、「水に強い」ところは共通してますね(笑)。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。
弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売。
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