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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.78 段ボールの開梱に便利! 機能性はさみの最新アイテム その1

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、段ボールの開梱に使える、機能性はさみの最新アイテムを取り上げました。

第1回目は、クツワの「二刀派ハサミ」です。

写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん*2023年6月3日撮影
*鼎談は2023年8月29日にリモートで行われました。

刃の長さが異なる異色のはさみ

クツワ二刀派2.jpg二刀派ハサミ」(クツワ) 片刃が長く、刃を閉じたままダンボールを安全にサッと開けることができるオープナー機能刃になっているのが特徴。また、直刃とカーブ刃にすることで、刃を手前に引きながら切れる“引き切り” 効果で切れ味も抜群。フッ素コートのブラック(税込2,178円)と、シルバー(1,980円)の2種類。刃物の町として知られる岐阜県関市の職人が仕上げた。

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ダンボールの開梱もできる、職人仕上げの高品質はさみ
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――今日ははさみです。しかも、ダンボール用というか開梱用のはさみを3つ用意しました。最初はクツワの「二刀派ハサミ」です。

【高畑】「二刀派」って元々ペーパーナイフだったんだよね。

【他故】ほう。

【高畑】「ペーパーナイフ二刀派」というのがあったんだよ。クツワとしては、刃物の使い方が二通りあるやつはこのハサミが初めてじゃないんだよね。

――二刀派のはさみバージョンということなんですね。

【高畑】前の二刀派は何だったかというと、片方がつるっとした普通の刃で、もう片方がギザギザの付いてる刃だったんですよ。なので、普通のペーパーナイフとしても使えるし、ダンボールとかザクザク切ったりするのにも使えるしみたいな感じのペーパーナイフなんですね。

【他故】ああ、本当だ。

【高畑】今回は、同じ二刀派なんだけど、普通のはさみ&ダンボール開ける機能の二刀派なので、全然コンセプトは違うんだけど、どらも2通りの使い方ができる刃物シリーズという感じ。

【きだて】いわゆる開梱機能付きのはさみをコクヨが初めて出したときって、「刃を出し過ぎると危ないから」みたいな感じで、ものすごいちょっとしか刃を出さない仕様にしてたじゃない(こちらの記事を参照)。可変式で刃が収納できるにもかかわらず。なのにクツワは刃を出しっぱなしで、しかもこんなに長く伸びてる。

クツワ二刀派1.jpg【高畑】この思い切りはすごいよね。

【きだて】だから、使う上で若干のリテラシーがいるというか。

【高畑】「気をつけてね」っていうのはもちろんあって。

【他故】だから、キャップが付いてるんだよね。

【高畑】「必ずキャップを閉めてね」っていうのは言わないといけないと思うんだよね。

【きだて】そうなんだけど、正直なところ「いちいちキャップする?」っていうのもあるじゃない。

【他故】まあね。

【きだて】もちろんメーカーがそう言うんだから、それが正解なのは分かるんだけど……言うてもみんなキャップしないじゃん。

【他故】まあこのままになっちゃうよね。ポンとしまっちゃうからね。

【きだて】危険性を思うと万人向けとは思えないんだけど、とはいえ使いこなせたら、刃を出し入れする手間が無いってのは楽なんだよね。

【高畑】簡単で楽ではあるからね。ただ、取り扱いだけは注意してねという感じだね。

【きだて】そうそう。これだけ飛び出してると、危険は危険だからね。

【他故】まあ、当たった時に、ここが引っかかっちゃうからね。

【きだて】切れ味も充分あるし。

【他故】よく切れるしね。

【きだて】そうなると、開ける作業もスムーズだしね。

【高畑】シンプルだからこそ使い方自体は簡単なんだけど、その分安全性っていう意味ではちょっと考える必要があるよね。だから、お子さんとかがいるところとかにお勧めするかどうかっていうのは、ちょっとどうかなっていうのがあるけど、まあトレードオフなので、その分簡単っていうのはあるから。

【他故】それはそうだね。

【きだて】使う人が自分1人みたいな暮らしの人なら、これが一番楽っちゃ楽。

――単身者とかだったらいいんでしょうね。

【他故】まあ、自宅に子どもさんがいらっしゃる場合はちょっとあれですけど、個人で使う分には個人の責任ということでね。これはこれで分かりやすいので、「この先っぽが危ないよ」と覚えておけば。

――小っちゃい子がいる家だと、手の届くところに置いておくとちょっと危険かもしれないですけどもね。キャップはめておけば別ですけど。

【高畑】そこだけ注意すればね。これはフッ素じゃないのかな。

【他故】黒がフッ素。シルバーのやつはフッ素コーティングがない。

【高畑】フッ素がなくても、刃の内側はディンプルになってるので。

クツワ1.jpg――凸凹があるんですね。

【きだて】ディンプル加工だけがね、見た目がちょっと気持ち悪い。

【他故】気持ち悪いって言うな(苦笑)。

【高畑】それ苦手な人は苦手かもしれないね。

【きだて】小さな穴がプツプツと並んでるビジュアルがちょっと苦手でさ。そもそもこれは効くのかね?

【高畑】これの場合は、かなり平らなのであんまりかもしれない。

【きだて】指の腹でなでるとね、そこそこエッジを感じるので。

【高畑】だから、ちょっとは付きにくくはなってる。

【きだて】そうなの?このエッジに粘着が絡みそうに思ったんだけど。

【高畑】本当?

【他故】これはどうかな?

【高畑】エッジが出てることによって低接触するので、のりが付かないっていうことなんだよね。

【他故】そういうことなんだ。

【高畑】どちらかというとエッジが出てる方がいいんだけど。凸凹がはっきりしてる方が本当はいいっていうことにはなるんだけど。まあ、ほどほどにっていうことで。だから、気になる人はフッ素加工の方の刃を買った方がいいかな。

【きだて】そっちの方が確実な気はするよ。

――黒の方は凸凹がないんですね。

【高畑】黒にもあるんですよ。フッ素加工になってるのでこっちの方がより付きにくいかな。コクヨが最初「ハコアケ」で1㎜とかほとんどあってないような出方だったのに対して、こっちはま多分6、7㎜はあるよね。

【他故】どのくらいかね。でも、ホームページを見ると数値で書いてあるわけじゃないのか。

【高畑】まあ、確実に5㎜以上は出てる。

【他故】出てるね。

【高畑】今、実測で6㎜ぐらい出てるよ。なので、普通にダンボール開けるカッターとしては充分ぐらい。

――普通のハサミとして使う場合、左右の刃の長さが違うというのは気にならないんですか?

【高畑】ちょっと気になる。

【きだて】細工切りみたいなことをするときは、刃先だけ使うので気になるけど、日常使用する分にはまあ問題ないと思うよ。

【高畑】パッケージ開けたりとか、紐切ったりとかだとそんなにでもないかなっていう感じ。

――「引き切り」って書いてありますね。

【高畑】引き切りというほど引き切りではないよね。

【きだて】使った印象で言うと、そこはあまり効いてないと思う。

【他故】「引き切り効果」って書いてあるけどね。

【高畑】でも、多分ピボットが1箇所で全然動いてないし、形状的に引き切りといっても左右ほとんど同じかたちなので。片方がストレートでもう片方がカーブ刃とかだったらあれなんだけど、ほとんどカーブしてないので、片方が若干カーブがきついかなっていう感じはするんだよね。片方が比較的ストレートに近い刃で、もう片方がカーブ刃に近いので、言って見れば、片側ストレートでもう片側が「フィットカットカーブ」みたいな感じの組み合わせなので、「カーブ刃の良いところも若干取り入れてますよ」っていうのはあるかな。でも、それも極端にはかかってないから、はさみとしては比較的普通に使えるんじゃないのかな。

【きだて】最近のはさみは、そんな理屈をこねなくても普通によく切れるじゃん。

【他故】ちゃんと切れるのばっかりだからね。

【高畑】使うときは、ストレートだから長い方の刃を下にして使えば、比較的見た目通りに切れるかな。

【他故】あと地味に便利なのがさ、先っぽがマグネットになってるんだよねこれ。

クツワ2.jpg【きだて】そうそう。磁化されてるのが意外と使えるね。

【他故】最近、だいぶ不器用になってきて、クリップが拾えないとか、そういうことがたまにあるのでね。そういうのもあったりすると、ちょいと便利だなっていうのはあるね。

【きだて】小ねじとか、指でつまんでも取りこぼすことあるじゃない。だから手元ツールは磁化されているだけでうれしい。工具はさみだとわりと定番の仕様なんだけど、文具系はさみでは珍しいかな。

【他故】あんまり聞かない気もするけどね。

――今まで取り上げたはさみで磁石入りってなかったかもしれないですね

【高畑】それこそ、「万能分別はさみ」だけじゃない。「万能分別はさみ」は、分別用として付けてるけど。

【他故】鉄かどうかを判断するための機能でもあったわけだからね。実用的ですよ。

【高畑】その刃先がずれてるところをのぞいたら、使い勝手的には割と素直な感じで、あと軽いじゃん。はさみとしては、比較的にコンパクトで軽いので、使い勝手は悪くないかな。

【きだて】ハンドル周りがシンプルなので、ちょっと軽いのかなって気もするしね。

【高畑】そんな感じがするね。全体的には、最近グリップも「グリップ、グリップ」っていって付けてる感じがあるけど、割とそこら辺もシンプルっていうか。

【きだて】分別前提の構造なので、だいぶシンプルというか。だから、本当に「こういうのでいいんだよ」っていう感じだね、物としては。これでもうちょっと安いと、ありがたいんだけど。

【他故】これ、2,000円ぐらいしちゃうんじゃなかったっけ?

――フッ素コートが税込2,178円で、シルバーは1,980円ですね。大体2,000円前後で、まあ色々と機能が付いているので、このぐらいになっちゃうのかな。

【高畑】とはいえ、他のライバルが安いっちゃ安いかな。

【きだて】大体1,000円台とかになっちゃう。

――関市で作ってるから高いのかな?

【他故】いや~どうですかね。

【きだて】どの部分が高いのかな?

【高畑】作ってる数の問題とか、そういう話かもね。

――刃の長さが違うから、なんかそこら辺じゃないですかね。

【高畑】後加工とかあるかもしれないね。刃の研ぎとかがここだけ違う形でやらなきゃいけないのかもしれないけど。でも、単純に鋼材の値段が上がってるみたいな話とかもしれないし。

【他故】ああ、なるほどね。

【高畑】スチールの値段もそうだし、関で作ってるから国内ではあるけど、そういうのもまあ影響はあるのかな。円安だし燃料費も上がって、それで材料費とか上がったりするからね。

――まあ、色々と複合的な要因があるんでしょうね。でも、見た目すごいシンプルだし、実用系はさみとしては良い感じじゃないですか?

【他故】それはそう思いますよ。

【高畑】今回紹介する中では、一番機能がそのまま付いている感じなので、見たまんまの使い勝手というか、迷うところは確かに少ないというか、そのままだよね。

【他故】手馴染みはいいかもしれないよね。

【高畑】造りとしてはシンプルなので、まあ普通に便利かなという感じかな。

*次回はスリーエム ジャパンの「スコッチ™梱包開封シザーズ」です。

プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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