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【連載】パイロット指輪物語/第8話「硬すぎ、ボテボテ、内部の気泡...次から次へと難題が」

文・イラスト/ヨシムラマリ

※この記事は、横浜YAMATOのウェブサイトに掲載されたものを再掲載しました。

第8話「硬すぎ、ボテボテ、内部の気泡…次から次へと難題が」

 硬度を下げるにあたって、まず試されたのが「焼きなまし」という方法だ。金属を一定の温度にしたあと、冷ますと軟らかくなる…はずなのだが、ならなかった。これは予想以上の難敵だ。
 Ptauのコンセプトであるプラチナと金で1対1という配合率は変えられないため、それ以外の温度や時間、材料を混ぜ合わせるタイミングなど、通常であれば管理しないような項目まで細かく条件を変え試行錯誤を繰り返すことで、なんとか道筋が見えてきた。
 しかし、それでもまだ「ボテボテ」の素材である。普通は溶解することで「サラサラ」「トロトロ」、そうでなくとも「ドロドロ」ぐらいにはなるのだが、溶けが悪く、流れが悪いため、内部に巣(気泡)ができやすい。
 さらに、ここでも硬さもジャマをする。鍛造製法で後から力を加えて巣を潰そうにも、硬いので完全には潰れない。圧延中にバックリ割れてしまうようなことは少なくなったものの、指輪にするために削り出すと次々に巣が出てきて、良品になるのは1~2割。これではとても商品にはならない。
 だが、ここであきらめるわけにはいかない。何度も何度も何度も、ありとあらゆる条件を変えながら溶解試験を繰り返し、なんとか製品化に耐えうるだけの良品が取れるようになってきた。ここまでくればもうひと息、だといいのだが。

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プロフィール

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ヨシムラマリ

神奈川県横浜市出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手がける。

著書『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)

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