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【連載】『小粋な手紙箱』 #97・「手紙室」

田丸有子

(社)手紙文化振興協会認定・手紙の書き方コンサルタントの田丸有子さんは、子どもの頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの手紙好き。コンサルタントとして手紙文化を広めるために活動している田丸さんに、手紙の書き方のコツや手紙に関するトピックなどを毎月紹介してもらいます。

手紙で気持ちを伝えよう!

つやつやした若葉の緑がまぶしい季節になりました。みなさまいかがお過ごしですか?

今回もまた最近読んだ本の話をしましょう。友人が「あなたにぜひ読んでほしい本がある」と言って手渡してくれたのは、ほしおさなえ著『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日』でした。
南軽井沢にあるイギリス風の洋館『銀河ホテル』には「手紙室」があり、ミステリアスで風変わりな室長が手紙のワークショップを行なっています。そこに集まってくる人々が手紙のワークショップを受けることによって自分の中に抱えこんでいた気持ちに気がついていく、とまぁそんなお話です。友人からストーリーをかいつまんで聞いた私はすでにワクワクして期待で胸がいっぱいになりました。

「手紙室」…なんて魅惑的な響きでしょう! そこには千種類を超えるカラーインクが壁にずらりと並べられていて、好きな色を選んで手紙が書けるのです。1話完結の短編が連なる形式でストーリーは進んでいきますが、それぞれの章の主人公が自分にフィットするインクに辿り着くまでの心模様を追い、マッチしたインクの色が読者の頭に浮かんだ瞬間、主人公が抱いている世界が色づいてはっきり見えるような錯覚を覚えます。

FABER-CASTELLの『Midnight Blue』
パイロットの『月夜』
MONTBLAMCの『MIDNIGHT BLUE』

このように登場するインクは実在のものです。名前を聞いただけでどんな色かわかってしまう私はやはりインク沼に足を突っ込んでいるなぁと笑ってしまいました。知らないインクが出てくると悔しい気持ちになって調べたりして、そんな楽しみもあります。また、章のタイトルがインクの名前になっていることに後から気がつき、なんて洒落た小説なのだろうと感嘆しました。

けれど、最終的には「手紙」の魅力そのものに惹きつけられます。「手紙室」では発送できない手紙を書いても良いという決まりがあります。誰に書いても良い。出しても出さなくても良い。そういうものなら手紙を書くハードルも下がりそうです。この小説に描かれている手紙を書いた後の主人公の変化に注目すれば、きっと手紙の本質を理解できるでしょう。

手紙を書いてみたいけれど、勇気が出ない方や、昔は手紙を書くのが好きだったなぁという方にぜひ読んでいただきたい一冊です。

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手紙トピック

4月11日に浅草で開催された『切手とはがき ミニフリマ』に「なでしこ切手倶楽部」として出店しました。各ブースに、他では買えないマニアックでかわいい手紙アイテムや切手がずらりと並びます。手紙愛、切手愛、郵便愛にあふれたお客さまがたくさん訪れてくださって、その場にいるだけで幸せな気持ちになりました。

この出店メンバーで行う次のイベントは、5月23日(金)と24日(土)に目白の『切手の博物館』で行われる「Otegamiフリマ 2025 Summerコレクション」です。ぜひ、こちらにもお運びいただけましたら幸いです。

今月のマキシマムカード

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テーマ: いちご
ポストカード: 7 days card
フレーム切手: カスクギャラリー
小型印:切手の博物館 Otegamiフリマ 2025 Spring コレクション

お知らせ

★手紙やメールの書き方の基本について通信講座があります。
忙しい人でも自分のペースで学べます。
楽しく学んで手紙上手になりましょう!

入門講座 /通信講座「手紙の書き方講座」
ビジネスメール講座 /通信講座「仕事で差がつく!メール・文章の書き方講座」
美文字講座 /通信講座「仕事で差がつく!実用美字・美手紙講座」

プロフィール

田丸有子(たまるゆうこ)

(社)手紙文化振興協会認定・手紙の書き方コンサルタント

子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。でも手紙の何がそこまで自分を魅了するのか、深く考えたことはありませんでした。講座を受けて一番良かったことは、手紙が私の憧れを実現する手段であると気付いたことです。自分を表現することで人に喜んでもらいたい。叶えるために出来ることは何かずっと探してきました。その表現方法こそ私にとっての手紙であり、魅かれる理由なのだと気付いた瞬間、「やっと見つけた!」そんな気持ちになりました。

また、郵趣のコミュニティに参加したことで、手紙にも色々な楽しみ方が有ることを知りました。私が今夢中になっているのは、葉書と切手、消印をコーディネートするマキシマムカード。いかにセンス良く仕上げて個性を出すか、考えるだけでワクワクします。

奥深い手紙文化を通して自分の世界が広がっていく面白さを沢山の人たちと共有し、心を豊かにしていきたいです。

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