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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.67 ブング・ジャムが愛用する手帳&手帳グッズ(その2)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんが愛用する手帳や手帳グッズを紹介してもらいました。

第2回目はきだてさんが紹介する「ブルーバックス科学手帳」です。

(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2021年11月9日撮影
*鼎談は2022年9月26日にリモートで行われました。

これを使えば科学が好きになる!?

――次はきだてさん行きましょうか。

【きだて】俺は、紙の手帳をほぼほぼ付けない男なんですよ。

【他故】そうだよね。

【きだて】そんな感じで、スマホに頼りっぱなしなんですけど。去年の正月にこれを見つけて、「何これ、面白そう」って買っちゃって。なので実はいま、ちょこちょことこの手帳を付けてるんですよ。「ブルーバックス科学手帳」(講談社)。

【高畑】これはどういう手帳なんですか?

【きだて】基本的にはレフト式で、毎日の日付の下にサイエンス的な出来事が書いてある。それでこっち側に、その1週間に出てくるトピックスが上の方に書いてあったりとか。

科学手帳1.jpg

【他故】うん。

【きだて】例えば、6月28日は「完全数の日」で、完全数とは何かということが右ページに書いてある。面白いから、完全数を書き出してみたりして。そういう使い方をしてるんですよ。完全に、読み物として手帳を読んでいる感じ。

科学手帳2.jpg【高畑】それは、糸井重里のありがたい言葉ではなくて。

【きだて】そうね、あれよりはもうちょっと実があるほうがいいじゃない。例えば「そうか、7月1日にダーウィンが進化論を発表したのか」みたいなトピックを見て、スマホで調べて満足するというのが、1日のルーティンとしてある。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】なるほど。

【きだて】昼メシを食いながらスケジュールを確認して、ついでにサイエンストピックを見てスマホで調べて、というのをほぼ毎日やってるかな。それが今のところ続いてます。

【高畑】面白い。でもそれって、例えば来年版を買ったら、ダーウィンが進化論を発表した日は、同じように載らないの?

【きだて】そこは多分一緒だろうね。だから来年分はもう買わないかな。今年いっぱい楽しめたら良しとするよ。

【他故】ああ、そうなの!?

【高畑】来年は科学手帳じゃなくて、違う手帳を。

【きだて】そう、次は「天文手帳」とか面白そうだなと思ってて。

【他故】ああ、いいね。

【きだて】そういった感じで、自分の詳しくないジャンルの情報系手帳を毎年変えていくのは楽しそうでしょ。

【高畑】なるほど。

【きだて】あとね、さすがブルーバックスだけあって、後半ページは資料集になってて。元素記号とか、宇宙の歴史とか、海洋構造はどうなってるとか、世界のプレート分布とか、日本列島の活火山と火山フロントとか。理科年表の簡易版みたいなもんなんだけど、これも空き時間を潰すのになかなかいい。もちろん内容の大半はちんぷんかんぷんなんだけど、そこからワード検索して分かりやすそうな解説サイトを見るのもいいよ。

【高畑】きっかけとしては、毎日お題が降ってくるわけだから、それはいいね。

【きだて】あと、資料ページで意外と役に立ったのが、人体の筋骨図。これを見ながら、整骨医院で「先生、梨状筋が張っちゃって痛いんです」とか具体的に説明できる。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】使い途としてはそれぐらいなんだけど、延々と円周率を見ていくとか、ネイピア数とは何ぞやとか、そういう知らない言葉を色々と見ていくのがとにかく楽しい。

【他故】へぇ、ちょっと面白いな。

【高畑】要は、「今日は何の日」の科学に偏ったやつだね。

【他故】そうだね。

【高畑】80年代に子ども時代を過ごした僕らにとっては、「科学すごい」時代をすごしたわけじゃないですか。

【きだて】小学校高学年から中学の頃に、つくば万博があったわけですよ。科学万博で燃えた世代なので。

【他故】そうだよね。

【きだて】で、これをやってて気付いたのが、俺は手帳に記録性を求めてないな、と。文具王や他故さんは、あとから手帳をパラパラと見返したりするんでしょ。

【他故】まあ、そうだね。見るね。

【きだて】俺はそう言うのがあまりなくて。性格が刹那的なのかな。10年前に何をしてたか知るより、今日はなんの日だろう?みたいなののほうが興味がある。

【他故】お~なるほどね。

【きだて】記録を残すこと自体にモチベーションがないから、手帳をつけるのが苦手だったんだな、と。その日にもらえるログインボーナスがないとダメなんだわ。

【高畑】そのログインボーナスが糸井さんのありがたいお言葉の場合もあるし、それは色々だと思うんだけど。

【他故】人によって色々と違うんだね。

【高畑】今はスマホ持ってるから、その1行を見たときに「何だろう?」って調べられるじゃん。だから、今こそじゃない。昔だったら、「ダーウィンが進化論を発表した日です」「へぇ~」で、そこからダーウィンを調べるのにハードルが高かったじゃん。

【きだて】そうなんだよね。

【高畑】今だったら、ダーウィンを調べたら、ウィキペディアとかに結構詳しめの情報が載ってたりして。ダーウィンつながりで検索しているだけでも、1日分つぶせるぐらいのものは出てくるじゃん。一つのトピックでも、掘り下げたら深い話ばかりだものね。それはすごいな。

【他故】そうね。これって、今年初めて出たのかな? もっと前からあるの?

【きだて】2017年からだと思う。

【他故】あっ、結構前からあるんだね。

【きだて】俺は去年の年末に見つけたので、その前のことは知らないんだけど、調べたら2017年が一番古そうだなという感じ。

【高畑】それを毎年やっていると、「去年も見たな」になってしまうので、きだてさん的には次は天文に行ったりとか。

【きだて】ちょっと渡り歩こうかと思ってる。見ていると、この手の業界手帳はいっぱいあるんだよね。

【他故】まあそうだね。あるよね、きっと。

【きだて】前は「キャバ嬢手帳」とかを付けようかと思ってたんだけどね。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】あれも色々と書いてあって、面白そうだった。何かそういうのをやっていこうかということで。

【高畑】日めくりで、めくると色々出てくるみたいのもいっぱいあるじゃない。

【きだて】なんだけど、日めくりカレンダーは家に吊しておくので、空き時間にそれを見ることができないんだよね。

【他故】ああ、そうか。

【きだて】外出中の空き時間に見て、「へぇ」っていうのが楽しい。だから、そういう意味では、手帳はいい媒体だなと。

【高畑】ちなみに、今日(*9月26日)は何が書いてあるんですか?

【きだて】え~っとね。今日は、生理学者イワン・パブロフの誕生日でした。

【高畑】「パブロフの犬」のあのパブロフ?

【きだて】そうそう。ということになってます。

――毎日何かしら書いてあるんですか?

【きだて】そうそう。今週の右ページは、第一宇宙速度を求める式だね。

【他故】へぇ! 本当だ、書いてあるね。

【高畑】第一宇宙速度って、地球の周りを落ち続ける速度だっけ?

【きだて】そうそう、秒速7.9㎞っていう。「そういえば、高校のときにこういう式あったな」というのを改めて解いてみるのも、ちょっと頭の運動になったりして。

【他故】うん。

【きだて】こういうので、思い出し数学やったりするよ。

【他故】ほぉ、いいね。

【きだて】なかなか面白いよ。

――きだてさんは理系人間なんですか?

【きだて】僕は、理系が好きな文系です。

――憧れてるんですか。

【きだて】理系憧れの文系。

【他故】憧れね(笑)。

【きだて】友だちに理系の人間が多いんだけど、彼らの前で知ったかぶりをしてギリ会話が続けられるぐらいの理系知識が欲しい。

【他故】なるほどね。

【きだて】そうすることで、さらに相手から知識を引き出したい。

【他故】うん。

【きだて】こっちのせいで話を止めたくないんですよ。向こうから降ってくる科学的な知識を。

【高畑】インタビューするための最低限のベースとしてということだね。

【きだて】そんな感じ。だから、普通の文系の人よりは知ってるけど、じゃあちゃんとした理系の知識があるかというと、グッと詰まる。という感じ。

――でも、その歳で知的好奇心を失ってないというのはすごいですよ。

【きだて】う~ん…。それが俺にとって普通のことなので、全然特殊なことじゃないですけども。これは、そういう性質ですね。

【他故】素晴らしい。

【きだて】これは多分、ライター体質なんだよ。

【高畑】一つのことをずっとできるということとはまた別に、色んな面白いことを横につなげていくというか、「いっぱい知ってる」という話だね。

【きだて】専門家同士の通訳ができるというか。専門知識ある人同士の話をつなげるというか。そういうことをしたい人でもあるので、そういうのもあるのかな。

【他故】いい話だな。

【きだて】何か、変な自分語りになったな。ここはナシで(苦笑)。

【高畑】まあ、毎日調べるネタというかきっかけみたいなものが出てくると、超面白いよね。

【他故】そうだね。

――手帳には何か書いてるんですか?

【きだて】何でさっきのページぐらいしか見せられないかというと、結構人の悪口が書いてあるからですよ。

【他故】ああ、そうなんだ。ははは(笑)。

【きだて】いらだったこととかを書き出すので、大半のページが見せられない。

【高畑】面白い(笑)。「日記は書かない」とか言ってたけど、結構エモいこと書いてるじゃん。

【きだて】これ、エモって言うのか?

【高畑】いや、「充分日記じゃん」って思ったけどね。

【他故】その代わり、読み返さない日記だよな。

【きだて】そうそう。読み返しても嫌な気分になるだけだから。

――アウトプットのみだ。

【高畑】書いて発散するということで、そういう使い方をしてるから、割と書くこと自体は機能してるんだよね。

【きだて】そうなのか。書いて発散してるのかね。

【他故】発散してるでしょ。

【きだて】書くことで記憶が根付いているような気もするんだけど(笑)。

【他故】ええっ!? いやでも、そういうのは一旦外に出すのがいいんだって。

【きだて】あとは、使った文房具のロードテスト中にいらだったこととかも書いているので、それは後々に使うよね。

【他故】ああ、なるほどね。

【きだて】うわー、こんなに悪口ばっかり書いてたか。ネガティブの佃煮みたいな手帳だな。我ながら驚いた。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】俺的には、それが意外な発見だな。「そういうのを書くんだ、そうかそうか」って。全然いいと思うんだけど。

【他故】意外性がある。

――そういう使い方はアリっちゃアリですよね。

【他故】全然アリですよ。

【高畑】インスタで見せられるのだけが手帳じゃないよ。

【他故】そりゃそうだよ。

【きだて】この手帳を紛失すると、俺が今まで築きあげてきたものがいろいろと終わりそう。

【高畑】紛失するだけならいいけど、「きだてさん、これ落ちてましたよ」って返されるのがまずい。知らない人のところでなくすのはいいけど、知ってる人の前で落として「きだてさんのですね」って返ってくるという。

――絶対外に出しちゃダメですよ。

【きだて】ダメだね。

――どちらかというと、書いていることはほやきに近いのかな?

【きだて】そうだね、仕事のグチだね。

【高畑】まあ、それはあるよ。書くね。

【きだて】そういうのを書いた方がすっきりするなということで。

【他故】良いことですよ。

【きだて】良いことなのかなぁ(苦笑)。

【高畑】きだてさんが「手帳書かない」と言ってた割に、ちゃんとした手帳だったというのが、俺的には良かった(笑)。それはそれでアリだよね。

【きだて】ただ、書いてみると、手帳を書くのって、それなりに時間を取られるね。こんなレフト式のちょちょっとしたやつでも。

【他故】ああ、まあそうだよね。

【きだて】やってみると、やっぱり面倒くさいってのはあるわ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】だから、手帳を書くことが忙しすぎて、一年中手帳を書いている人もいるんだよ。ある意味では時間つぶしになるけど、逆に忙しいという人には書いている暇がないよね。

【他故】あると思う。

【きだて】やってみると、発見もあって面白いし。

【高畑】じゃあ、来年は天文手帳で。

【きだて】天文手帳でなくても、何か面白いのがあったらやってみるかな。

【他故】いいですね。また面白いのがあったら、ぜひ。

【きだて】来年も続くかどうかは分からないけどね。

【高畑】いや、書きたくなることはいっぱいあるよ。これから先の人生で。

【きだて】いや~ぼやきばっかりだからね(苦笑)。

――まあ、来年も期待してますので(笑)。

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プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


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