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【連載】他故となおみのブンボーグ大作戦!Bootleg  #012 相馬「ホントの紙ねんどつくるキット」

ふじいなおみ

30分間、文房具の話題だけをお送りするラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ「なおちゃん」こと、ふじいなおみです。

番組では毎週たくさんの文房具が登場します。その中から、他故さんとなおちゃん2人で選んだ商品をピックアップ。より掘り下げてご紹介していきます。

photo1.jpg相馬「ホントの紙ねんどつくるキット」

今回は、2022年03月20日・27日On Airの「文房具のすごいゲストコーナー」でご紹介した、相馬「ホントの紙ねんどつくるキット」をピックアップします。

紙問屋が作ったオリジナルの文具

「ホントの紙ねんどつくるキット」という商品があります。第29回日本文具大賞で機能部門グランプリを受賞したほか、2021年には「子どもや子どもの産み育てに配慮したすべての製品・サービス・空間・活動・研究を対象とする顕彰制度」であるキッズデザイン賞を受賞。子どもに関するメディアで取り上げられることも多く、子育て世代を中心に注目されている商品です。この商品を開発したのは紙問屋である相馬という会社です。オリジナルブランドの商品の一つとして販売しています。

photo2.jpgホントの紙ねんどつくるキットの内容物


作るために必要な材料すべてが1つのパッケージにまとめて入れられていて、使う道具はバケツ二つとタオル、水のみ。材料が入れられている個包装はトイレットペーパーの様に水に濡れると溶けて材料の一部となります。ここからも紙の専門家としてのこだわりが伝わってきます。デンプン糊のパッケージは唯一紙ではありませんがリサイクルできる素材を選んでいて、環境に配慮しています。また、パッケージは作品の持ち運び用のケースとなり、組み立てると作品の展示台となるなど、商品の隅々までしっかり作り込まれています。

photo3.jpgこのように作品展示台になります(作品は防波ブロック)

実際に作ってみる

以前、番組で紹介するために「ホントの紙ねんど」を作ったことがあります。作成にかかる時間は30〜50分ほど。材料を細かくちぎるなど力が必要な工程もあるので、力の弱い小さなお子さんが作る時には大人も一緒に楽しんで完成を目指してください。

紙ねんどのもとを水に入れます。そこに重曹・クエン酸を混ぜるとブクブクと化学反応が起きます。柔らかくなった紙ねんどのもとを細かくちぎったり、水分を絞ったりする工程を経て、最後にデンプンのりを混ぜて出来上がりです。

photo4.jpg紙・重曹・クエン酸を入れて、ブクブクと反応が起きています


キットには詳しい説明書が入っていますし、ホームページにはより詳しく解説が掲載されています。夏休みの自由研究と自由工作が一度にできる商品でもあります。

photo5.jpg作り方がわかりやすく書かれている説明書付き


一緒に作った娘は最後の工程「デンプン糊を混ぜ込む作業」が楽しかったようで、いつまでもこねていました。

photo6.jpg100%紙製の紙ねんどがたくさんできました

相馬紙業から相馬へ。紙問屋の改革

株式会社相馬は、紙問屋です。私たちは放送では恥ずかしながら「紙問屋」の役割や仕事内容といった基本的なことから、ゲストにお迎えした久保田社長に教えていただきました。

紙問屋は紙を作る製紙会社と消費者である印刷会社や個人の間に入る仕事をしています。製紙会社で作られた紙はサイズや単位が大きく、そのまま消費者が使おうとすると大変です。そこで、使いやすい大きさに断裁を行い納めます。また、消費者が実現したい事項に合った紙を提案して卸すことも行っています。紙というフィールドで生産者と消費者との橋渡しをする紙のプロなのです。

創業時の社名は「相馬紙業株式会社」。2013年に50周年を迎えたのを節目に社名を「株式会社相馬」に変更しました。「紙業」が外れたことにより「紙のプロ」としての従来の業務はもちろん、「紙」という固定観念に縛られることがなくなったため、新規事業にも取り組みやすくなったそうです。

この頃には「オリジナルブランドとその商品」を持ちたいと考え始め、今から4年前に実際にアクションを起こしました。

紙ねんどへの道

オリジナルブランドの商品案は「紙で作る」という条件で集められました。十数名の社員全員から集めた200〜300のアイディアの中には「紙コップ」「紙石鹸」「紙飛行機」などもあったそうです。その中で選び出されたのが「紙ねんど」でした。

紙ねんどは、特に現在流通しているもののほとんどが炭酸カルシウムを主原料につくられています。「『紙』とついているのに『紙』で作られていない。ならば、本物の『紙』を使った紙ねんどを作ろう」。そこには紙のプロとしてのプライドもありました。業務終了後に有志が集まり、様々な種類の紙を試し添加する材料を試すこと1年半。主原料は「紙」、そして水、重曹、クエン酸、デンプン糊を使うことで本当に「『紙』で作る紙ねんど」制作キットが出来上がったのです。

商品名に「ホントの」とつけたのは、主原料に紙を使っていることを強調するため。パッケージの「紙」の文字も大きく目立つようにデザインされました。見た目、そして言葉のインパクトが子どもたちやその保護者の方々の商品への好奇心を掻き立てます。

日本文具大賞グランプリの受賞と今後

ホントの紙ねんどつくるキットが一躍有名になったのは2020年。第29回日本文具大賞で機能部門グランプリを受賞した事ではないでしょうか?

受賞をきっかけに社内でも変化が起きました。商品を多くの人へ知ってもらおうと社内でSNSの活用を図ったところ、その影響力と宣伝効果の大きさに気付かされ、同時に運用のノウハウも得ることが出来たそうです。これが2021年4月に立ち上げた事業である「企業のSNSアカウント運用サービス」にも繋がります。また、「紙」以外の事業を始めたことにより、文具店・雑貨店など顧客の幅が広がったそうです。

最近は「紙沼」という言葉があるそうです。女性を中心にさまざまな紙製品を集め、使用していく。そんな文具ファンが増えているとのこと。しかし紙を消費するのは個人だけではありません。DX(デジタルトランスフォーメーション)により社会にあるものが電子媒体に置き換えられています。すると印刷物が徐々に減少していくことが想像できます。印刷物が減ると紙の需要が下がることとなり、この社会の流れは無視できないところまで近づいてきています。これから「紙をどう扱っていくか」は紙業界全体の課題でもあるのかもしれません。

一方、相馬のオリジナルブランド商品の開発は続いています。2021年末には裏面にスタンドになる仕組みがついていて、組み立てると自立する小さめの色紙「かざれるミニシキシ」をリリースしました。

photo7.jpgかざれるミニシキシに今年の目標を描いて飾ってあります


photo8.jpg裏面には立てるための工夫が付加されています


最後に、今後の目標を伺うととても大きな夢を教えていただきました。「大人も子どもも楽しめて、スマートフォンのように毎日使えるアイテムが開発できたら最高です!」。紙の知識を武器に、文具にとどまらず開発を続けていくと答えてくださった相馬。この先、生み出される商品や会社の活躍に私は目が離せなくなりました。

商品情報

ブンボーグ大作戦!こぼれ話

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今年もゴールデンウィークがやってきます。4月30日土曜日の予定はお決まりですか?もしよければこの日の夕方はラジオで楽しんでみませんか?

ブンボーグ大作戦!初の生放送特番を行います。
その名も「他故となおみときだてと文具王の生でブンボーグ大作戦!」。普段の他故さんなおちゃんコンビに、きだてたくさん、文具王・高畑正幸さんが合流。4人の冠番組が実現しました。

放送は4月30日土曜日 16:00〜18:00の2時間生放送。
放送局は「他故となおみのブンボーグ大作戦!」を放送している「ナナコライブリーエフエム」です。

現在メッセージ募集中です。

生放送のメッセージテーマは「お子さんに教えてあげたい文房具」。

「自分の子どもに使わせてみたい」「親戚や近所のお子さんにプレゼントしたい」「とにかくこれ、すごくいいから教えたい!」などなど。学童文具に限らず、お子さんに教えたい、存在を知ってほしい、推したい文房具を教えてください!!
メッセージフォームはこちら
コーナー名は【4月30日生放送】を選んでください。

メッセージが採用された方にはいつもお送りしているステッカーの他に、生放送限定のオリジナルアイテムもプレゼント! 加えて、メッセージをお送りいただいたすべての方から抽選で、素敵なプレゼントもご用意しています。

情報は随時、番組ホームページやSNSで発信していきます。お楽しみに!

プロフィール

ふじいなおみ
1979年北海道札幌市生まれ。ラジオパーソナリティ/文房具プレゼンター
ナナコライブリーエフエムで放送中のラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ及び制作・技術を担当。
他故壁氏さんとユニット「たこなお文具堂」として、文房具の楽しさを伝える活動を開始。
万年筆インク(中でもご当地インク)コレクターであり、2015年生まれの娘とともに学童文具の観察を行う。
そして、きだてたくさんと色物文具をひたすら紹介する動画コンテンツ「イロブンの引き出し開けていこう」も配信スタート。

【他故となおみのブンボーグ大作戦!】
埼玉県朝霞市のコミュニティFM「ナナコライブリーエフエム」にて放送中の30分間文房具の話題だけをお送りするラジオ番組。
パーソナリティーは他故壁氏&ふじいなおみ。
放送時間は毎週日曜日19:30~20:00/毎週水曜日 11:30~12:00(再放送)
FMラジオ77.5MHz(埼玉県朝霞市・志木市・新座市・和光市とその周辺地域)の他、パソコンやスマートフォンではListenRadioのサービスを利用すると気軽に聴くことができます。

詳しい聴き方は番組Webページへ
https://daisakusen.net/howto/

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