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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.55 芸術の秋に使いたいおすすめアイテム(その1)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。

今回は、“芸術の秋”にぴったりのおすすめアイテムをブング・ジャムのみなさんに紹介してもらいました。

第1回目は、きだてさんおすすめの接着剤「UHU マックスリペア」(ステッドラー日本)です。

写真左からきだてさん、他故さん、高畑編集長*2021年6月30日撮影
*鼎談は2021年9月27日にリモートで行われました。

工作におすすめの接着剤

きだて1.jpgUHU マックスリペア」(ステッドラー日本)

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――今回は、芸術の秋ということで、それに相応しい文房具を紹介してもらいたいと思います。

【きだて】実は「芸術」と「文房具」って意外と難しいんだよね。画材とは微妙に別枠だし(苦笑)。

――まあまあ(苦笑)。では、まずきだてさんからお願いします。

【きだて】芸術の秋というと、どうしても絵を描くとかそっち側に行きがちだけど、立体物もあるじゃん。

【他故】アリだね。

【きだて】芸術とまでは言わなくても、工作をするにはいいシーズンなんですよ、秋って。湿気で紙が湿らないし、手汗もかかないし。

【高畑】うん。

【きだて】で、そんな工作用に最近気に入ってるのが、UHUの「マックスリペア」という接着剤ですね。

【他故】はいはい。

【きだて】接着剤は、僕は割とセメダイン派だったんですよ。ボンドの「SU」じゃなくて、セメダインの「スーパーX」派なんですけど、「デイリーポータル」の記事のためにレンガ積みの燻製用のスモーカーを作るにあたって、食品に触れる可能性があって、しかも熱が加わるので、あんまり溶剤を使っているやつは嫌だなと。

【高畑】はいはい。

【きだて】安全性があって良さげな接着剤で調べていくと、「マックスリペア」が思った以上に優秀だったのよ。

【他故】へぇ~。

【きだて】まず溶剤不使用だし、メインの原料がシリコン樹脂と二酸化ケイ素。これはどっちも食品添加物に使われているものだし、安全性という点ではすごくいいじゃない、と。

【他故】うむ。

【きだて】それで使ってみたんだけど、他にも良いポイントがいくつもあって、これはなかなか優秀だぞって思ったの。

きだて2.jpg【高畑】その特性はどうなの?

【他故】ホームページには、「超強力、超柔軟」って書いてあるよ。

【高畑】何系接着剤なのかとかは書いてないんだね。

【きだて】そうそう。あと、基本的に接着剤って「食器の補修に使える」って謳えないじゃないですか。食品衛生法的に。

【他故】ああ、そういうことね。

【きだて】なんだけど、これはアメリカの医薬食品局?えーと、FDAか。その認証は取れてて。だから、アメリカでは食器もOKなんだよね。ホームページに書いてあったのかな、食洗機はOKなんだよ。

【他故】本当だ、書いてあるね。

【高畑】熱に強いということ?

【きだて】耐熱・耐水だね。日本では、食器の補修に使っちゃダメだけど、でも食洗機はOKなんですよ、というこの微妙な感じ(笑)。

【高畑】食洗機で日用品を洗ってもいいっちゃいいけどね。

【他故】食洗機で洗うから食器に普通に使っていいんじゃないのという話だね。このUHUのパッケージにも、マグカップを修理する絵が描いてあるじゃん。

【きだて】マグの取っ手ならまぁ口に触れないからいいのか。なんにせよ法律がからむといろいろ面倒くせえなという話で(苦笑)。

【高畑】食品はともかくだけど、他に使いやすいとかあるの?

【きだて】俺は、基本的に弾性接着タイプのものが使いやすいと思ってて。カチカチに硬化するんじゃなくて、ある程度弾力が残るやつね。「マックスリペア」もそういうやつ。あとは、硬化スピードが程よく早すぎないのもいい。

【他故】早過ぎない?

【きだて】両面に塗ってまぁ5分ぐらい乾かしてから貼り合わせるんだけど、そこからも、もうちょっとだけ貼り直す余裕が残ってるぐらいなの。

【高畑】くっつけたあとにグニュグニュってやるのじゃなくて?

【きだて】もちろん、グニュグニュなんだけど。

【高畑】瞬間接着剤だと貼り替えができないからということ?

【きだて】瞬着じゃなくても、乾かしてから貼り合わせるともう動かしづらい接着剤ってのがわりとあって。そのあたりの程よさがいいな、と。あとはさっきも言ったように食洗機にも使える耐水性と耐熱性。120℃まで大丈夫。

【高畑】ホームページにも120℃って書いてあるね。なるほど。

【きだて】接着剤で120℃は高い方だよ。

【他故】そうだね。

【きだて】耐熱性があるという「スーパーX」でも90℃くらいの話ですよ。それこそ、食洗機のスチームは80℃くらいなので、まあまあ全然大丈夫だよね。

【高畑】なるほどね。

【きだて】そういう点で、俺の好みにピタッと合うのよ。非常に使いやすい。

【高畑】ある程度弾性が必要でくっつけるということで、割と高温タイプのグルーガンを使ってるんだけど、グルーガンは元々熱で溶かしてくっつけて、また熱をかけると溶けちゃうやつだから、熱が加わるところでは使えないね。

【きだて】グルーガンもよく使うけど、それはそうね。あ、「マックスリペア」はすき間埋めにも使えるよ。結構グリッと盛る必要はあるんだけど、ちょっとしたすき間だったらパテ代わりにも使えます。肉やせしにくい。

【高畑】そういうことでいうと、きだてさんの工作的には便利ということだね。

【他故】そういうことだね。

【きだて】ただね、チューブが昔懐かしの金属チューブなのがちょっといただけない。一度チューブ押して液を出すと、しばらくは惰性でニュルーッと出続けちゃうんだよね。

【他故】出る出る。

【高畑】ちょっと遅れて出てくるよね。

【きだて】最近の樹脂チューブだとそんなことないんだけど、昔懐かしい金属チューブはそうなるので、そこだけちょっと使いづらい。

――金属チューブは破けたりしますよね。

【きだて】ああ、ぐいぐい押し出していると、疲労で破けたりしますね。そういうのもあるね。

【高畑】何度もグリグリしなければ大丈夫だけどね。

【きだて】なので、こういうのを使うときはグルーアプリケーターを使うんですよ。

【高畑】それはどういうやつなの?

【きだて】ポリエチレンでできた小さなお皿なんだけど。

【高畑】それは、俺はクリアフォルダーでやっちゃう。

【きだて】ペットボトルのキャップでもいける。

【高畑】あーやるやる。1回そこに出して、そこから拾って使うんでしょ。

【きだて】そうそう。模型作る人だと、ミスターホビーのグルーアプリケーターが定番であるんだけど。接着剤が残りにくいポリエチレンの小皿とヘラのセット。それこそペットボトルのキャップでもクリアフォルダーでも間に合うんだけど。まあ、そういうのが便利ですよという話で。

【他故】これ、臭いはないの?

【きだて】ない。溶剤使ってないから。UHUの接着剤って、溶剤不使用のがちょいちょいあって。

【高畑】ヨーロッパは結構、基準が厳しかったりするから。

【きだて】そうだね。

【高畑】有機溶剤って、日本は基準がゆるいんだよね。

【きだて】やっぱりそうなんだね。

【高畑】ラッカー系の塗料をあんなに売っているのは日本ぐらいらしいよ。ラッカーの塗料はくいつきがいいんだけど、揮発性が高いやつが入っていて、ヨーロッパでは制限があるような塗料なんだって。

【きだて】そうなんだ、へぇ~。

【高畑】だから、日本のプラモデル作りは、ラッカー系塗料が使えるのがウリというか強みらしいよ。

【きだて】いい話なのか何なのかよく分からないけど(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】水性の塗料だと結構弱いからね。まあ、そういう意味では安全性は高いのかもしれないね。

【他故】そうだろうね。

【高畑】で、何を作ったのかという話はしておかなくていいの?

【きだて】あ、それを話し忘れてたな(笑)。燻製が趣味なので、でっかい燻製ロッカーを作りたい、と。なんだけど置き場所がないので、ミニレンガを接着剤で貼って、ミニロッカーを作りましたよ、という工作をしました(こちらを参照)。

きだて3.jpg【高畑】熱に強いというのを強調してたけど、それが必要だからだね。

【他故】すき間埋められるじゃない、というのも全部そこなんだね。

【きだて】そう。

【高畑】ソーセージ1本分というのは、本当に小さいね。

【きだて】レンガってこんなに匂いを吸うんだ、というのが初めて分かった。煙の匂いが染みついちゃって、部屋がずっと燻製臭いわ(苦笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】なるほどね、食品安全性や耐熱性やすき間も埋められるということで、使ってみたら良かったということだね。

――でも、食品安全性は日本では謳えないんですね。

【きだて】そう。なので、その辺はしんどいところなんですけどね。

【高畑】きだてさんのは、食品を盛って食べるわけじゃないから大丈夫だと思うけどな。

【きだて】色々と気にする人がいるから。

――まあ、自己責任でということですかね。

【きだて】これでUHU良いなと思い始めて、今色々と試してるんだけどね。

【高畑】全てに使える接着剤ってなかなかないから、それぞれだと思うけど、選択肢として高温に強いとか、食洗機に使えるとかというのは。

【きだて】あんまりないなと思う。

【高畑】そうだよね。そこは、知らないと選べないと思う。

【きだて】そもそも、UHUが知られてなさ過ぎるじゃん。

【他故】まあ、そうだね。

【高畑】会社的には、歴史がめちゃ長いんだけどね。

【きだて】でも、日本に入ってきたのは一昨年か。

【高畑】この接着剤が入ってきたのは最近だけどさ、UHUのスティックのりって、日本に初めてスティックのりが入ってきた頃からという話じゃない。スティックのりでトンボ鉛筆のライバルであったわけでしょ。だから、結構昔からあるんだよね。

【きだて】そうだね。実際、海外だと超メジャーな接着剤ではあるわけじゃない。アメリカのタイトボンドかドイツのUHUぐらいの感じでしょ。

――文とびの記事を見ると、「『ウフ多用途接着剤』は、1932年に世界で初めて開発された多用途の接着剤」って書いてありますよ。

【きだて】へぇー、すげえな。

【他故】歴史は長いね。

【高畑】それこそ、セメダインが作るのよりも早かったのかもしれないね。

【きだて】「セメダインC」よりは確実に早いね。

【他故】うん、Cよりは早いね。

【高畑】「セメダインC」は1938年だ。

【きだて】UHUは瞬間接着剤も良いんだよね。

【他故】ああ、そうなんだ。

【きだて】瞬着も液量コントロールがしやすい。チューブを離すと、キュッと液が引っ込むやつがあって。

【高畑】「瞬間接着剤 コントロール」というやつだね。チューブの部分が戻ろうとするのか。

ステッドラー3.jpg

【きだて】そうそう。チューブにメッシュが入ってて、その弾性で復元することで陰圧がかかる構造なのかな。

【高畑】はあ、なるほど。それは知らんかった。

【他故】これは面白そうだね。

【きだて】これも食器いけそうな感じ。もちろん食品衛生法はクリアしてないけど、もともとは歯科技工士が使うようなものらしいので。

【他故】へぇ。

【きだて】瞬着でも、工業用でもない限り、食器OKなんて絶対にないので。そういう意味では、ちょっと面白いなと。

【高畑】なるほど。

【きだて】接着剤選ぶ選択肢に、UHUを入れてもいいなという感じです。

【他故】使ったことないから、使ってみないと分からないな。

【きだて】これはぜひ試してみて。

【高畑】UHUは、スティックのりのキャップがやたらに浅いという印象が、俺の中では強い。

【きだて】どういうこと?

【高畑】日本の、例えばトンボ鉛筆のスティックのりなんかは、キャップがすごい深くズボッとはまってるじゃない。15㎜から20㎜ぐらい。あの部分が、UHUだと5㎜から7㎜ぐらいしかないんだよ。

【他故】あっ、本当だ。キャップがすごい小さい。

【高畑】小っちゃいんだけど、実はネジ切ってあるんだよ。

【きだて】ええっ!

【他故】本当だ、ネジ切ってある。

【高畑】スティックのキャップがネジ切ってあるというのが、UHUの面白いところなんですよ。何か、容器が面白そうだな。

【きだて】代理店やってるステッドラー日本ももうちょっと広報しなきゃ。

【高畑】いやでも、接着剤市場は難しいんじゃないの。ボンドやセメダインの安定した知名度の高さがあるからさ。

【きだて】ホームセンターでもなかなかUHUは売ってないからね。

【他故】売ってないね。見たことないよ。ああでも、スーパーマリオとか絵が付いているのがあるんだね(こちらを参照)。

【きだて】ああ、スティックのりはそうだね。金かけるのはそこじゃねえだろうという気がするんだけどね。

【他故】いやでも、手に取ってもらう手段の一つでしょう(苦笑)。

――まあでも、知らないことをいっぱい教えていただいて(笑)。

【他故】本当に知らないことだらけだったので、勉強になりました。

――私も今度試してみます。

*次回は、他故さんおすすめのファーバーカステル「アルブレヒト・デューラー水彩色鉛筆」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が群馬県沼田市のコミュニティFM「FM OZE」で好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

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