1. 連載企画
  2. 【連載】他故となおみのブンボーグ大作戦!Bootleg #003 「inkstand POST(インクスタンド ポスト)」

【連載】他故となおみのブンボーグ大作戦!Bootleg #003 「inkstand POST(インクスタンド ポスト)」

ふじいなおみ

30分間、文房具の話題だけをお送りするラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ「なおちゃん」こと、ふじいなおみです。

番組では毎週たくさんの文房具の話題が登場します。その中から、他故さんとなおちゃんが注目した1点をピックアップ。より掘り下げてご紹介していきます。

0.jpg

今回は、2021年6月13日On Airのコーナー「なおちゃんの使ってみた」でご紹介した東京・蔵前にあるカキモリの新しいサービス「inkstand POST(インクスタンド ポスト)」をピックアップします。

インクとなおちゃんと

万年筆インクに夢中になっている人を「インク沼の住人」と呼び始めたのはいつ頃からなのでしょうか?

「ご当地インクコレクター」として知っていただいている方も多い私のインク沼人生は2018年、文具店の店頭でパイロットコーポレーションの「色彩雫」を見かけたところから始まります。瓶に入ったインクが存在することすら知らず、カートリッジも「黒」「青」「ブルーブラック」くらいしか認識していなかったので(今ではカートリッジのバリエーションも増えましたね……)、ド定番の「黒」ではなく「ブルーブラック」のカートリッジを初めて万年筆に差し込んだときには、大人の階段を登った気分にさえなりました。なので、色彩雫を知った時の衝撃は想像がつくと思います。「これってどうやって使うの?」「私の万年筆でも使えるの?」「コンバーターって何?」「結局のところ何をどうすれば使えるの?え?え?」と大騒ぎしたのを今でも覚えています(私にもこんな時代があったのですよ、恥ずかしい)。

さて、色彩雫によって万年筆人生がパーっと華やかになった私がその後に知ったのは「自分でインクを調合し、好きな色を作ることができる場所が東京にある」ということでした。そのサービスを行なっているのは「inkstand by kakimori(インクスタンド バイ カキモリ/以下 inkstand)」です。

東京・蔵前にある「書くもの」「書かれるもの」に関する商品を取り扱うお店「カキモリ」。このお店では2つの「オーダーメイド」を提供しています。1つ目は表紙やリング・中紙などを選んで自分だけのノートを作ることができる「オーダーノート」、2つ目はinkstandが提供するオーダーメイドでインクを作るサービスです。

inkstandでできること

前述の通り、inkstandが提供するのは「万年筆インクのオーダーサービス」。2014年のオープンから続く「ワークショップ(予約制)」では「17色のベースカラーからなる混色キット」を使って自ら調合し、オリジナルの色の万年筆インクを作ることができます。

私は2018年10月と2020年2月に伺って写真にあるインクを作りました。

1.jpginkstandで過去に作成したインク

また、スタッフの方々がお勧めする色のインクを量り売りするInk on Tapというサービスもあります。

加えて、2021年2月に始まったサービスが今回ご紹介する「inkstand POST」です。

inkstand POSTとは

今までinkstandでオーダーインクを作るには、予約を取った上で東京にあるお店に足を運ぶ必要がありました。遠方にお住まいの方はもちろん、子育てや介護などでなかなか出かけることができない方は悔しい思いをされていたのではないでしょうか?加えて昨今の感染症の影響もあり外出もままならないですよね。それを解決するのが「inkstand POST」です。自宅からインクをオーダーすることが出来るようになったのです。

手順は以下の通りです(カキモリWebページ「オーダーインク『inkstand POST』がはじまります。」より引用)
1.「色のカケラ」を送る
2.インクの提案色が届く
3.色を選んだらご注文
4.ボトルインクが届く

今回は、実際になおちゃんがインクを作ってみたので時系列に沿って説明をしていきます。

2021年4月19日 「色のカケラ」を送る

inkstand POSTでは「色のカケラ」をお店に送り、それを元にオーダーインクを作り上げていきます。

「色のカケラ」とは、カキモリWebページではこのように定義されています。

あなたの欲しい色を「色のカケラ」で教えてください。封筒に入る物でしたら、どんなものでもお送りいただけます。お手紙のようにイメージを文字でお送りいただいても結構です。

例えば…
• プリント写真、雑誌の切り抜き
• 紙や布の端切れ、ボタン
• 大切な記憶や、思い出の映画のワンシーン、小説の一節

大きなものやナマモノ・危険物など、郵送できない物に関しては、写真に撮って同封することで注文することが可能です。ちなみに、これまでに送られてきた「色のカケラ」として変わったものを伺ったところ「ご自身が作られている洋服ブランドのタグ」という答えが返ってきました。自分のブランドのオリジナルオーダーインクができるって素敵!!

なおちゃんは「カケラ」というキーワードからたくさんの人の思い出が詰まった「カケラ」を思い出しました。それは私が通っていた「高校の校舎に使われていたレンガのカケラ」です。

2.jpgなおちゃんの「色のカケラ」こと校舎のレンガ

私が通っていた高校は、1年生の時に新しい校舎に移転し古い校舎が取り壊されました。この古い校舎の特徴は「レンガ造り」だったことです。

早速、レンガのカケラの写真を撮影しプリントアウトしました。

3.jpg実際に送付した「LETTER SHEET」

注文をする際には、Webページにある「LETTER SHEET」を印刷し、必要事項を記入します。「色のカケラ」の欄には先ほどプリントアウトした「レンガのカケラ」の写真を貼り付け、補足として「このインクを入れた万年筆でお手紙を書きたい」と綴りました。

筆記に使う道具はインクを作成する上でとても重要な情報になるそうです。万年筆で書くのかつけぺんを使うのかで同じインクを使っても色味が変わることはご存知の方も多いはず。

記入の終わった「LETTER SHEET」を封筒に入れ、住所を書き、切手を貼ってポストへ投函。文通相手にお手紙をお送りするような感覚が気持ちよく、ワクワクしました。

2021年4月26日インクの提案色が届く&注文

郵便屋さんのバイクの音が徐々に大きくなり、コトンと物音をたて、そしてバイクの音が遠ざかっていく……。数日間バイクの音に敏感になっていた私は、郵便受けを開けてお目当ての封筒を見つけるや否や笑みがこぼれます。

4.jpg5.jpg実際に届いた封筒


素敵な封筒に入っていたのはメッセージ入りの「インクの提案色」が書かれた「COLOUR SHEET」です。

6.jpg実際に届いた「COLOUR SHEET」

送付した「色のカケラ」を元に調合された、A・B・Cのインク3種が書かれた色見本とそれぞれの配合レシピが記載されています。

レンガといえば赤茶色を思い浮かべる方が多いと思います。茶色を作るには通常いくつかの色を混ぜる必要があるのですが、提案された3色それぞれに使われているベースカラーが異なるのが興味深かったです。色の世界って奥深い!

しかも「手紙を書くために使いたい」という私の要望を受けて、手紙にも使いやすい色味に仕上げてくださったとのこと。機械的に「色のカケラ」の色を再現するのではなく、お店の方の思いも一緒に込められている感じが大好きです。

今回は、Cの色に決めました。

インクのオーダーは、「COLOUR SHEET」の右下にあるQRコードを読み込み、表示された注文用Webページから行います。入力フォームに「COLOUR SHEET」に記載された10桁のオーダーナンバーを入力し、希望する色(A・B・C)を選択。あとはフォームに沿って進めば完了です。

なお、お支払いの方法は2021年7月現在クレジットカード、Amazon Pay、Apple Pay、Google Payと代金引換払いです。

2021年5月2日ボトルインクが届く

待ちに待ったインクの到着です。

7.jpg


この日のために洗浄しておいた万年筆に入れて書いてみます。

8.jpg

今回作成したインク(上:OKマットポスト180kg / 下:ヌルリフィル)



この感動を一番分かち合える人はどこにいるのだろう?と考えを巡らせたところ、たどり着いたのはFacebookにある母校の同窓会グループでした。

「色のカケラ」のレンガと完成したインクで手書きしたメッセージを投稿したところ、130以上の「いいね」をいただくことができました。

お手紙のやりとりから生まれるオリジナルのオーダーインク。「inkstand POST」をあなたも試してみませんか?

染料インクと顔料インク

inkstandで作られたインクは顔料インクです。

多く流通している染料インクとは異なる性質を持っていますので、取り扱い方も変わります。

顔料インクの特徴を挙げると、
1.水濡れに強い
2.長期間の保管に向いている(色褪せづらい)
3.にじみが少ない
といったところでしょうか?

それゆえ、万年筆内部で顔料インクが乾燥してしまうと洗浄がとても大変になります。毎日少しずつでも筆記するような、例えば毎日のスケジュール管理や日記などを書くために使用すると良いでしょう。

商品情報

カキモリ 「inkstand POST」(2021年2月25日サービススタート)
【制作期間】最短で1週間
【料金】色の提案までは無料/インク注文時に1瓶あたり税込3,000円(送料別)
【インク容量】33ml
【インクの種類】万年筆用水性顔料インク

ブンボーグ大作戦!こぼれ話

今回ご紹介したサービス、番組放送中にTwitter上にて「このサービス気になっていた」という反応をいただきまして、とても嬉しかったです。

今まで、作成したインクをプレゼントとして送ることができましたが、新たに「inkstand POST」の体験自体をプレゼントすることもできるようになりました。気になったあなたは、ぜひカキモリWebページをご覧ください。

さて、あなたは茶色系のインクは好きですか?

先日、なおちゃんの「誕生日色」を調べたところ【セピア色】でした。

セピアといえば「写真」。私は大学時代、写真部に所属していました。当時はフィルムカメラ・印画紙へのプリントの時代でしたので、セピア加工なども楽しんでいました(薬品を使うと白黒写真をセピアに変えることができたのですよ)。セピアの語源となっているのは「イカ墨」。大学の卒業研究の対象がスルメイカでした。連想するすべてが自分の今まで歩んできた道に繋がっていて「セピア色」に運命を感じています。

プロフィール

ふじいなおみ
1979年北海道札幌市生まれ。ラジオパーソナリティ/文房具プレゼンター
FM OZEで放送中のラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ及び制作・技術を担当。
他故壁氏さんとユニット「たこなお文具堂」として、文房具の楽しさを伝える活動を開始。
万年筆インク(中でもご当地インク)コレクターであり、2015年生まれの娘とともに学童文具の観察を行う。

【他故となおみのブンボーグ大作戦!】
群馬県沼田市のコミュニティFM「FM OZE」にて放送中の30分間文房具の話題だけをお送りするラジオ番組。
パーソナリティーは他故壁氏&ふじいなおみ。
放送時間は毎週日曜日19:30~20:00/毎週水曜日 14:00~14:30(再放送)
ラジオ(群馬県沼田市周辺のみ)の他、パソコンやスマートフォンでも局のホームページに設置されたプレイヤーやラジオ聴取用ソフト・アプリで聴くことができる。

詳しい聴き方は番組Webページへ
https://daisakusen.net/howto/

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう