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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.46 新春スペシャル ブング・ジャムの2021年文具大予測!?(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は「新春スペシャル」として3日連続で、ブング・ジャムのみなさんに「2021年の文具はこうなる!」という予測を語ってもらいました。

第3回目はきだてさんの2021年予測です。

写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長*2020年11月7日撮影
*鼎談は2020年12月14日にリモートで行われました。

イベントいっぱいやる!!

3.jpg――最後はきだてさんですね。

【きだて】えー、予想とかじゃなくて自分の話なんすけどね。とりあえずね、去年は本当にしんどかったんですよ。

(一同)ほう!

【きだて】何がキツイって、トークイベントをできないことが、俺にとってこんなにキツイことだったのかと。

【他故】あ~。

【きだて】人前でしゃべれなかったことによって、メンタル的にも結構落ちたのよ。なので、こりゃダメだ、今年はオン・オフに限らず「イベントをいっぱいやる」と。

【他故】なるほど。

【きだて】これは希望ではなく、決めた。「やる」っていう。

【高畑】なるほど。うん。

【きだて】本当に今、話勘がすごく落ちてるのね。先日も、他故さんのラジオ(他故となおみのブンボーグ大作戦!)にゲストでお呼ばれしたじゃない。

【他故】あ~はいはい。ありがとうございました。

【きだて】あの時もとっさにちゃんとした答えが返せなかったり、微妙にワンテンポずれたりね。で、今やってるリモートでの鼎談はというと、これは通信速度のせいか俺の方の画面でリップシンクが上手くいってないのね。なので、さっきから文具王の話に割り込むタイミングが測れなくて、さっきから何回もしゃべるタイミングを損なったり。これはちょっといかんな、と。

【高畑】きだてさんは、割とリアルな方の空気感を読むところに自分のセンサーがすごいチューニングされてるから、多分それがなくなったのが大きいのかな。

【きだて】そこは間違いないところなので、できればオフラインであるリアルのイベントをもっとやりたいんだけど、ちょっとできるかどうか分からないじゃない。

【高畑】去年は、俺らがやっているブング・ジャムのイベントがリアルでできなかったじゃん。それでリモートにしたんだけど、それ以外だとどんな感じだったの?

2019年8月に開催した「カンダ・ブングジャム#13」。2020年はリモートで開催した。

【きだて】春先に、愛知県のイベントに呼ばれてたけどそれもなくなったし、「ダメな文房具ナイト」もオンラインになっちゃったりとかしてたんだけど。あとは、ブング・ジャム結成前からやってた「生イロブン」を復活させようと年頭に考えてたんだけど。それこそ、20人ぐらいの規模で、スライドじゃなくて生の文房具を触らせるイベントを考えてたのよ。当然、そんなのもできるわけないじゃない。

【他故】うん。

【きだて】って感じで、色々と予定していたものがポシャったわけで。当然ながら精神的に落ちるし、俺の中で割と大事にしていた話勘すらも衰えていることが分かっちゃったりで。

【高畑】オンラインでの打合せって増えた?

【きだて】もちろん。

【高畑】そこら辺はどうなんですか?

【きだて】初対面の人との打ち合わせで、まずZoomでしゃべった後に、改めてメールで質問することが増えたのね。打合せのときに、聞きたいことを完璧に聞けてなかったりとか、詰めるべきところが詰められなかったりしてるのよ。

【高畑】なるほど。

【きだて】今までリアルで打合せしてたときは、そんなことなかったので。

【高畑】う~ん。

【きだて】リアルで話をしていたら、ちょっとした話題の隙間に「そういえば、ここのポイントも詰めとかなきゃ」みたいなのを思いつくんだけど、Zoomの画面越しで会話が途切れた時って、気まずさしかないの。そこで何かを思い出すというふうに頭が働かなくて、なんでもいいから話の接ぎ穂を作んなきゃ、空白を埋めなきゃ、と慌てちゃう。

【他故】ほお~。

【きだて】それが、どういう作用でそうなるのか分からないんだけど、明確にそれは感じてるのね。

【高畑】リアルにあった方が、それは全然上手くいけるんだね。それはでもあるけどね。

【きだて】もちろん、いまリアルでガッツリ打ち合わせをするってのは「そりゃ話が違うだろ」ってことなんだけど。ただ、俺の感覚はずっとそういうふうにチューニングされているので、なかなか難しいな。

【他故】はいはい。

【きだて】この感じが今後も続いていくようだったら、オンラインの方にチューニングを合わせていくしかないんだけど。それもどうなるか分からないじゃない。

【他故】まあね。

【きだて】それこそワクチンができて、前の普通が戻ってくるかもしれないじゃない。だから、どっちにも対応できるようにしておくべきだし、遠隔地の人にもオンラインイベントで楽しんでもらいたいってのもあるし。

【高畑】きだてさんが他にやっている仕事って、原稿を書いて出すとか、キチンと作って出すとか、そんなことだったりしてるじゃない。そうじゃなくて、今ライブと言っているのは、リアルタイムにお客さんがいて、録画配信みたいなのじゃなくて、お客さんがいてこっちもいてというのをやりたいんだ。

【きだて】俺は、リアクションのとっぱらいが欲しいんだよ。

【高畑】ほめて欲しいのね。

【きだて】ほめて欲しいというか、こちらが笑わせようと狙ってるところで、リニアな反応がないと、さびしい。

【高畑】すぐ反応欲しいよね。それはあるよ。

【きだて】だから、オンラインイベントでも、ニコニコ動画みたいにコメントが画面に流れるようにしたりとか。

【他故】ああ、せめてね。あれがあるとね。

【きだて】そう。チャット画面見るとかまどろっこしいからさ。

【高畑】そういうのは、オンラインでも選べばできるのかな?

【きだて】できると思うんだ。そういうのも含めて検討していきたいというのもあり。

【他故】はいはい。そうだよな。

【きだて】せっかく、文房具でトークをするということを十何年やって、まあ俺ら以外にもやる人が出てきたでしょ。根付いたとまでは言わないけど、そういうのやっていいんだという雰囲気は作れたと思う。それが、こんなコロナごときで停滞しちゃうのもつまんないじゃない。

【他故】うーん。

【きだて】この業界で始めた人間の責任として、というほどの話ではないんだ。単に、まだ文房具トークのトップランナー集団から落ちたくないってだけで。

【他故】ふふふ(笑)。

【高畑】まあ、大事だよね。現役でいるのは大事だよ。

【他故】そうだね。

【きだて】話勘が衰えたという実感、二人はない?

【他故】話勘ねぇ。

【高畑】何だかんだいいながら、僕は接触する会社があったりするじゃない。減ったとはいえ、会社へ行って人と話をしているし。あとね、きだてさんと比べると僕の方が鈍感なんだよ。向こうの反応に対して鈍感で、相手がいなくてもしゃべれるんだよ。

【きだて】君はジャイアンだからな(笑)。

【他故】わはは(笑)。

【高畑】相手が聞いてなくてもしゃべれるんだよ。それは、ある意味鈍感さだと思うんだけど。だから、YouTubeに1時間もかかる動画をアップして、相手がいなくてもしゃべれるという(笑)。

【きだて】強いなぁ(笑)。

【高畑】そこはある種の図太さがあるから、「聞いてようが聞いてまいが、とにかく出すんだ」というのができちゃっているんだけど、きだてさんはそこでリアクションが欲しいから。

【きだて】要は、コールアンドレスポンスが楽しいんだよね。俺の脳内の報酬系って、即金とっぱらいが一番ドーパミン出すっぽくて。

【高畑】僕の場合は、動画を上げてから、見られてる数とかコメントが入ってくるのって、半日以上経ってからくるわけじゃん。僕はそれを気にしないでできているんだけど、きだてさんのその気持ちは分かる。俺らもブング・ジャムのイベントをリアルにやってたから分かるけど、リアルタイムの良さってあるじゃん。

【他故】あるね。あるある。

【高畑】それは別物だから、替えられないじゃん。今はYouTubeできてるけど、だからYouTubeでいいとはあんまり思ってなくて、イベントはイベントでやりたいんだよね。

【他故】うん、やりたいね。

【きだて】さらに言えば、この中で唯一、話す機会が増えているのは他故さんじゃん。

――ラジオで番組が始まりましたからね。

【他故】ははは(笑)。俺は今たまたま、前にいる人(ラジオのパートナーのふじいなおみさん)に向かって話すという形態をとっているわけで。

【高畑】ああ、確かに。

【他故】実は、僕もどっちかというと文具王みたいなやり方はできないんですよ。多分ね、一人だとラジオはやってない。電波の先を想像できないから。そういう能力はないので、もし僕がラジオをやるんだったら、目の前にパートナーなりアシスタントなりがいて、しゃべるやり方だとずっと思ってたの。それが今は上手くできているなと思っているけど。

【きだて】そうだね。

【他故】目の前にいる人が反応してくれなかったら、俺もしゃべれないよ。

【きだて】他故さんにとっては、そういう機会がバッチリのかたちでできて、よかったわけじゃん。

【他故】今年は、それで救われたところはあるね。

【きだて】本当にいいなぁと思って。

【高畑】ラジオを聞いていると楽しそうなんだよね。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】いつも「悔しー」と思いながら聞いてるんだよ(笑)。

【高畑】またさ、パートナーのふじいなおみさんが、楽しそうに聞いてくれるんですよ。

【きだて】そうそうそう。

【高畑】僕らは音声で聞いているけど、楽しそうなかわいい声でしゃべっているわけじゃないですか。あれが聞こえてくるのはうらやましいよね。

【きだて】俺は、あと30年ぐらい経ったら、介護の人に話を聞いてもらうというサービスをしてもらいたいよ。

【他故】あ~、そういうサービスね。

【高畑】話を聞いてくれる介護ね。

【きだて】ただ話を聞いてくれるんじゃなくて、レスポンスを返してくれる介護。相づちじゃなくて、トークパートナーになってくれる介護。

【他故】ああ、なるほどね(笑)。

【きだて】番組アシスタント介護だよ。

【高畑】結構、レベルの高い何かを要求するかもしれない。

【きだて】言ってると、相当に面倒な話をしてる気がしてきたな。

【高畑】きだてさんの話に合わそうと思うと、基礎知識の幅がさ。文房具から映画とか宇宙とかまで話が広がるからさ。「昔BOXYが流行りましたよね」というような話ができる人でしょ?

【他故】急に振られてもな(笑)。

【高畑】「あれのバネを改造したらすごい飛ぶんだよ」と言ったら、「え~」って話を聞いてくれる人でしょ(笑)。

【他故】ハードル高いわ(笑)。

【きだて】でも、そういう職業は今後ウケる気がするな。

【高畑】趣味に特化した老人ホームはあってもいいと思うね。

【きだて】おたくウケ老人ホームなんて、昔から言われてることじゃない。そこの介護士さんたちは、聞き上手であり、返し上手でないとダメだと思うんだよ。だから、大変だと思うけどね。

【高畑】ミニ四駆が好きなおじいちゃんたちが集まっている老人ホームだと、一緒に走らせる腕がないといけないわけだ。

【きだて】レブチューンモーターって聞いて、それがどのくらいのランクでどういう効果のあるモーターなのかというのが、最低限でも分からないといけない。

【高畑】それで、おじいちゃんのクルマを見て、「これはもうちょい重心が後ろめの方がよくないですか?」って言えるんだよ。

【他故】わはは(笑)。

【高畑】なるほどね。「良いボールペン持ってますね」と言ってくれないとね。

【きだて】そうそうそう。で、「いやいや、実はもっと書き味がいいのもあるんだよ」みたいな話を引き出してくれる。

【他故】はいはい。

【きだて】でも基本的に、イベントにおいてお客さんにそういうところは要求してないじゃない

【他故】それはね。

【高畑】でも、こだわりどころで、自分が面白いと思っているところは、分かってもらってほしいよね。

【きだて】まあ、できればね。そこで分かってもらないんだったら、そこで説明するのは、俺はやぶさかではないんだよ。レスポンスが欲しいんだから。

【他故】うん。

【きだて】レスポンスしてくれるまでは、相手を導きたいし。

【高畑】なるほど。

【きだて】そういうのができる、小規模イベントはやりたいなと思ってる。

【他故】はいはい、そうね。

――何か具体的に考えてるんですか?

【きだて】それこそ、コロナが落ち着くようであれば、さっきも言っていた「生イロブン」を復活させるのはやりたいなと思ってるし。ブング・ジャムお断りで。

【他故】え~ダメなの?

【高畑】俺らはお断りなのか。

【きだて】君たちはなしで(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】行くと面倒くさいからね。

【きだて】そう。君たちが来ると、君たちに向かって話しちゃうからダメ。

【高畑】あ~そうか!

【きだて】基本的に、分かってる人に向かって話したいじゃん。

【高畑】せめて、オンラインでも配信しろよ。俺も外から見ているから。

【きだて】ははは(笑)。でもさ、生イロブンをやると、カメラワークが要るんだよね。実際に、直で文具を見せるとなると。

【他故】ああ、配信という意味ではね。カメラマンがいないと。

【きだて】そうそう。だから、多分配信は無理だね。

【高畑】でも、そういうのが得意そうな人もいそうじゃん。きだてさんの話を聞きながら、撮って出すのが好きという人。

【きだて】そういう人に手伝ってもらればいいけどね。

【他故】ねえ。

【きだて】それこそ、夏のブング・ジャムイベントでも、「配信してください」という要望があったわけじゃん。

【高畑】あったね。

【きだて】「遠隔地に住んでて、これでようやく参加できました」という人が結構いたから。

【高畑】そういう意味では、ちょっと広がった部分はないではないね。

【他故】まあ、そうだね。

【きだて】スライドと固定画面だけが映っているのは、ちょっとしんどいので。

【高畑】だから、そこのやり方を上手くね。

【きだて】ちゃんとカメラをスイッチングしてくれる人が要るなとか、色々と考えているわけじゃない。そういうのを考えると、コストもかかるし、頭が痛い部分ではあるんだけど。まあでも、今年はイベントをちゃんとやると決めたので、そこら辺も考えていきたいと思ってます。

――今年は、色々とイベントができるようになるといいですね。

【他故】そうですね。

【きだて】何とかしたいね。

――期待してますので。

【きだて】頑張ります!

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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