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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.31 "芸術の秋"に使いたい! ブング・ジャムおすすめの文房具(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.31では、“芸術の秋”におすすめの文房具を紹介してもらいました。

第3回目は、きだてさんがおすすめする呉竹のカラーペン「ZIG クリーンカラードット」です。

写真右から他故さん、高畑編集長、きだてさん

その1はこちら

ドットが描けるカラーペンはアートのバリアフリーだ!

きだて1.jpgZIG クリーンカラードット」(呉竹)

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――じゃあ、最後はきだてさんですね。

【きだて】今回、2人が敷居をいかに下げるかという話をしていたわけですが、描けないと思い込んで過ごしてきた人間にとっては、まだ高いんだよ。

【高畑】まだ高いんだ。

【きだて】もっと下げなさいよと。地面から段差が見えているじゃないか。

【他故】ハードルがあると。

【きだて】ハードルを埋めなさいよ。

【他故】ハードルなしという話か。

【きだて】「ハードルっぽいのがあるな」という、境界線だけ残ってるのがベスト。

【高畑】なるほど。

【きだて】線なら僕らは越えられる。でも、ちょっとでも高さがあったら、つまずくかもしれないじゃない。

――段差は恐いですよね。

【きだて】そう。歳とってくると余計にそうなってくるんだから。自意識のハードルは足が上がらなくて越えられなくなってくるんだから。

【他故】はいはい。

【きだて】そこで、最近みた中ではこれが一番、ハードルではなく線だなと思ったのが、呉竹の「ZIG クリーンカラードット」なわけですよ。

【高畑】分かる~。

【きだて】ドットって、絵を構成する単位にもなり得るし、ドット単体でも模様として成立するし、すごく楽なものだというのはこれを使っていて思ったのね。本当に、点々と打っているだけで、それっぽくなるじゃん。

【高畑】なる。

【きだて】一つ面白いのは、ドットの大小が変えられるのが大きくて。

きだて2.jpg【高畑】そうなんだよ。分かる、分かる。

【きだて】他社にも同様のドットペンはあるんだけど、それはペン芯がフラットな円筒形になっているから、ちょっと先端が傾くと失敗するし、ドットは一定の大きさに限定される。

【他故】円にならないんだ。

【きだて】円がちょっと欠けちゃったりね。だから、最初にその他社のドットペンを入手したときは、きれいに捺す練習をすごいしたのよ。だけど、これは練習しなくてもいけるんだよね。

【高畑】ああ、分かる。

【きだて】逆に、一定の大きさのドットは押しづらいんだ。

【他故】ああ、同じ大きさにしたい場合はね。

【きだて】一定の大きさのドットというのは難しいんだけど。でも、押していて気が付いたのは、同じ大きさのドットが並ぶより、微妙にサイズが違うドットが並んでいる方が、上手く見える、というかそれっぽく見える。なにか意図して大小をつけたんだな、みたいな雰囲気になるんだよね。だから、上手く見えちゃう。

【他故】確かに、こうやって点々としているだけでも、何か意味があるように見えるものね。

きだて3.jpg

*他故さんが描いたものです


【きだて】例えば、近い系統色のドットを混ぜて適当に捺してるだけで、それっぽい作品になっちゃうんだよね。

【他故】「ここが点滅していたら、ボタンを押してください」というやつ(笑)。

【きだて】もしくは、「この中に数字は見えますか」みたいな(笑)。

【高畑】いや、それできるものね。

――このデザインで包装紙にできそうですよ。

【他故】〇〇先生が作ったやつみたいに見えますものね。全く深い意味はないのに。

【きだて】ただ単にドットが打てるだけだと、意外と飽きがくるのが早いけど、実はこのペンはそっから先があるんだよね。

【他故】ほう。

【きだて】細ペンが付いているのでラインが描けるのと、ドットの方も先が柔らかいので…。

【高畑】丸ゴシック体の文字が書けるんだ。

【きだて】そう。先端が丸い線が引ける。そしてさらに、ちょっと押してキュッと抜いてやると、葉っぱ型とかティアドロップみたいなのが描けるんだよね。

きだて4.jpg【他故】あ~、はい。

【きだて】それをちょいとひねってやれば、勾玉みたいな形も描ける。しばらく遊んでるだけで、どんどんアート風のなにかが描けるようになるのがほんとに面白い。絵が描けないという人でも、自分が上達してさらに先へ進める気がするの。

【他故】なるほどね。そのインクが抜けた感じが、水彩っぽくていいよね。

【きだて】そうそう。ちょっとね、グラデっぽくなって、意外と面白いというか。

【他故】それを筆で描こうとすると、意外と難しいんだよ。

【きだて】だから、絵の下手な人は、これを使えばいいじゃん。

【他故】ねぇ。

【きだて】こういう雰囲気アートの需要ってさ、最近だと、手帳にちょちょっと飾りを入れたりとかするでしょ。

――しますね。

【きだて】日本のバレットジャーナルって、飾ってなんぼのもんでしょ。そういうののすごい飾りまくった作例って、インスタとかSNSでいくらでも目に入るんだけど、いざそれを自分でやってみようかとなったら、できないわけさ。

【他故】「そこまでは」っていうね。

【きだて】結局、トライした残骸だけ残って、自分の自意識がダメージを負って、「もう要らない」ってなる訳じゃない。

――バレットジャーナルを始めた人は、黒ペン1本しか使ってないみたいですけどね。

【きだて】日本では、そういう発達の仕方をするんですよ。

――みんなそんなにカラーペンを使いたいのかな。

【きだて】そうじゃなくて、人より見栄えのするものを作りたいんですよ。

――インスタ映えね。

【きだて】本来、手帳は自分だけで見るものじゃない。

【他故】だけど、「かわいい」って言ってもらいたいんだよね。

【きだて】それはね、否定しない。それは正しいんですよ。だって、人より上手く描けたら、うれしいって思うのは当然じゃないですか。

【他故】もちろん、それはそうでしょう。

【きだて】アートにしろ何にしろ、誰だって他人より優れたいというのは当然であって、そういう欲望は否定できないもんね。

【他故】そりゃそうだ。

【きだて】そんな中で、下手なりに上に行きたいという(笑)。

【他故】下手なりに(笑)。

【高畑】そりゃそうでしょ。本当にそう思うよ。苦労せずにほめられたいわけですよ。

【きだて】そう。それが、さっきから言っている「近道」 (笑)。そこで簡単にリターンを得るためにシールを貼ったりとか技術の問われにくいことをするんだけど、でも、シール貼るだけよりは手描きの方が高い位置でマウント取れるでしょ。

【他故】まあ、そうだね(笑)。

【きだて】シール→スタンプ→手描きじゃん。で、これってスタンプと手描きの中間で、手描き寄りになるわけだよ。

【他故】スタンプといっても、特定のかたちになるわけじゃないからね。

【きだて】かかる労力と必要な技術はスタンプに近いんだけど、得られるリターンが手描きに近い。

【高畑】費用対効果が高いってこと?

【きだて】高いんですよ。手間に対してのリターンが非常にでかい。ということで、これはみんな「使えよ」という意味で、すごくおすすめしている。

【他故】やっていて無心になれるからいいね。

【きだて】そうそう。ポンポンとドットを打っているだけで、トリップしてくるのね。

【高畑】そう、なるね。

【他故】何かのかたちにしようって思ってないから気楽にできるんだけど、何となくかたちっぽくなってくれると嬉しい。

【きだて】あとね、「こう押すとどうなるのかな」というのも、そんなに心理的障壁が少ない。

【他故】うん、ないね。

【きだて】失敗しても、描き直すのが楽なんだもん。

【他故】たいしたことないものね。

【きだて】そういう意味でも、すごく楽。

【他故】一般的に思うドットとちょっと違うんだよね。ドットを敷き詰めて何かのかたちにしなくちゃいけない、というわけではない。

【きだて】そうそう。だから、感覚的には積み木を積み上げるのと似てるなと思う。かたちの決まったものを積み上げていって、何となく違うかたちのものができるみたいな、そういう感覚に近い。

【他故】うん。

【きだて】文具王がさっきから、延々とドットを打ってトリップしているんだけど…、何かしゃべれよ!

【高畑】いやいや(苦笑)、本当に楽しいし、僕はわりと実用品として使っているんですよ。チェックリストにチェックを入れるのに、これはめっちゃ見やすいし、ギュッて押すと丸がつけられるので、これの赤と緑はチェック用に使ってるの。

(一同)あ~。

【高畑】リストチェックするのに、押すだけってすごくいいよ。

【きだて】そうだね。ピッて線ではねるんじゃなくて、ポンと。

【高畑】よく蛍光ペンだと横に引いたりするけど、それよりこの方が楽なんだよ。あとね、ギュッて押すとチェックした感があるのよ。

【他故】分かる。

【高畑】前に「済」スタンプを使ってたけど、こっちの方が結構よくて。あと、Mac使っている人なら分かるけど、フォルダにドットみたいなマークが付くんだよ。あんな感じ。

【他故】あ~なるほど。

【高畑】絵を描くような使い方だけじゃなくて、実用品として普段から使えるので。で、実用品として使いながら、会議がつまらなくなったら、点々とやりはじめるとかね。

【きだて】あとね、太字のマーカーとして使っても楽なんだよね。

【高畑】かわいい文字が書けるのよ。丸ゴシックが書けるのがね。どっちから書いても丸ゴシックなんだよ。

【きだて】線の両端がちゃんと丸まるから。

――細字の方は普通のペンですか?

【他故】そう、プラペンです。

【きだて】0.4㎜〜0.5㎜ぐらいのプラチップ。

【他故】慣れ親しんだ硬さというか、細い字が書けますよ。

【きだて】ねえ。

【他故】これ12色なんだっけ?

【きだて】そう。

【高畑】メタリック色も出たんだよ。

【きだて】色もね、変に原色、原色したところがないのがちょっと面白くて。ここにメタリックが加わるの、楽しみだね。

【高畑】このニュアンスカラーがいいよね。

【他故】すごいいい感じ。

【きだて】ファンシー系とニュアンスカラーに集中してて。何がいいかっていうと、ドットを打ったときに、自動的に決まった感じになる。これがシンプルな原色だと「うーん、こんなもんかな」ぐらいの感じだけど、それが微妙なニュアンスカラーになるだけで「お、なんか工夫されてるな」みたいな雰囲気になるんだよね。

【他故】すごく上手い感じになるよね。

【きだて】色を選んでこれになったんだな、という感じになるけど、実は12色しかないからコレなんですというね。

【他故】葉っぱ描くのはコレなんですって(笑)。

【高畑】ファミリーコンピューターの16色は最高だった、みたいな話だね。

【きだて】そういう意味で「楽・近道・ハードルが低い」というのが全て揃っている。

【高畑】きだてさんが今日ずっと主張しているその条件を全て満たしているんだ。

【きだて】そう、コレだなと。他故さんや文具王ではまだハードルが高いという話ですよ。

――ふふふ (笑)。

【きだて】誰が一番共感を得られるかというと、俺に違いない。

【他故】今日は低見を狙っているという(笑)。

【きだて】低見じゃないよ。みんながいる高さ。

【他故】あ~、そうか。そういうことね。

【きだて】みんなが立ってる地面のお話だよ。

――わずかな段差もダメという。

【きだて】そう、許さない!

【高畑】バリアフリーか。

【きだて】そう、アートのバリアフリー大事よ。

【高畑】まあたしかにバリアフリーは大事だね。

【他故】そうだね。

【きだて】そういう意味で、これはとてもいいです。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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