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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.28 その1

「ブング・ジャム的文具大賞」を発表!

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左から他故さん、高畑編集長、きだてさん


本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.28では、ISOTで行われたブング・ジャムのトークショーで発表した「ブング・ジャム的文具大賞」について詳しく掲載します。

第1回目は、高畑編集長が選んだカシオ計算機の「軽減税率電卓」です。

やっぱり電卓は頼もしいぞ!

カシオ1.jpg軽減税率電卓JF-200RC(写真左)/DF-200RC(同右)」(カシオ計算機) 2019年10月から導入予定の軽減税率に対応し、10%と8%の2つの税率計算が簡単に行える電卓。本体に2つの税率キーと「税計算合計」機能の採用によって、10%と8%の税率が混在する計算でも、税込総額・税抜総額・税総額の算出が可能。また、それぞれの税率による税込総額・税抜総額・税総額もワンタッチで表示することができる。さらに、2023年から導入予定の適格請求書等保存方式(インボイス制度)にも対応しており、請求書や納品書の記載必要項目である総合計・消費税合計・税率ごとの総額/税総額を一度に算出できる。オープン価格。

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――先日、「ISOT」が行われて、「日本文具大賞」も発表されたました。ブング・ジャムのみなさんは、ISOTでトークショーをされて、そのときにISOTに出品していた文具の中から、「ブング・ジャム的文具大賞」も決定されていたわけですが、本日はそれについて詳しくお話いただきます。まずは高畑編集長お願いします。

【高畑】カシオの「軽減税率電卓」を選びました。今回ISOTでは、単純に「新しく出ました」というものもあるし、「世の中に動かされて出ました」というものもあるし、色々と出てましたけど、世の中に対応する的なものを1個入れておくかなということで、このカシオの電卓なんですけど。

【きだて】この秋以降いちばんの経済トピックだからね。

【他故】ねえ。

【高畑】税率ボタン付きっていうのは、消費税が導入されてから3%、5%、8%とあって、これまでは珍しくないんですよ。で、税率が切り替え時期でボタンが2つあるというのも、これも前からあったんだよね。他社からも出ていたし。それで、今回の軽減税率の一番の問題は、1回のお買いもので、8%の消費税と10%の消費税がレシートに混在することだと思うんですよ。それで、伝票の書き方は色々あると思うけど、合計で税金だけ書いてあると、内訳が分からなくなってしまうんだよね。

【きだて】だからインボイス制度になるとか言っているんだけど。

【高畑】そのインボイスを書かなければならなくなったときに、何をしなくてはいけないかというと、1項目ごとに8%なのか10%なのかを書かなければいけないことと、今までは最終の商品代金・税金・合計金額が分かればよかったんだけど、それが8%の分と10%の分をそれぞれ書いたうえで、全体のを書かないといけない。だから、今までの3項目から、いきなり9項目に増えるんだよ。

【きだて】本当に異常な手間だよね。大分つらそうだよな。

【高畑】もちろん、レジがちゃんとしている大手のお店とかだと、それが組み込まれた状態だと思うんだけど、それが困るのは中小のお店だったりとか、買い物するだけじゃなくて、例えば見積もりを出したりするようなときに、そういうのが絡んできたりすることは充分に考えられるわけですよ。

【きだて】あとは、個人でやっている飲食店なんかでも、店内で飲食するのと、お持ち帰りでこれを追加となるとまた違ってくるし。

【他故】そうそう。

――持ち帰りが8%で、店内が10%でしたっけ?

【他故】店内で食べると10%ですね。

【きだて】コンビニでも、イートインスペースで食べると10%だよ。

【高畑】コンビニはちゃんとやってくれるからいいよ。個人の商店だと難しいよね。

【きだて】POSレジならともかく、個人商店はつらいと思う。

【高畑】雑貨と食品を両方扱っているところだと、完全に混ざっちゃうので。それをどうするかの問題で、なんやかんやで必要な人はきっと出てくるから。10%と8%それぞれを計算して横にメモっておくというのをやりたくないとなったときに、今のところこれが唯一、その計算を後から見られる電卓だと思う。

【きだて】そうだよね。ISOT会場でも、10%のボタンと8%のボタンが両方付いている電卓は他にもあったんだけどね。でも、計算式中の10%と8%を分けて表示とかはできない。

【高畑】そう。このカシオの電卓は、計算するときには、商品本体の値段や税率のボタンを押すと加算されていくわけですよ。それで最後に、「税計算合計」というボタンがあるんだけど、それを押すと一旦フィックスされて、今まで計算した全部の代金・税金・合計というのが、押すたびに入れ替わるんですよね。

【他故】はい。

【高畑】それと、「税1」と「税2」のボタンがあって、それぞれを押すと、それぞれの税率の内訳が出てくるんですよ。

【きだて】デフォルトで、「税1」が10%で、「税2」が8%だったと思う。

【高畑】「税1」を押すと、10%で押したやつだけの合計と税金が出てくるんだよね。それが、どの順番で押してもこの3つがリセットされないのよ。

【他故】ほぉ~!

【高畑】何にも考えずに「これは10%」「これは8%」というのをずっとやっていって、最後に10%だけの合計や8%だけの合計を出せる。

カシオ2.jpg
【きだて】そういう計算って、どう考えてもややこしい操作が必要だろうと思うじゃない。

【他故】思うよね。

【きだて】だけど、すごく直感的に使えるんだよね。

【他故】すごいよね。

【きだて】これは非常によくできてる。びっくりしたよ。

【高畑】簡単なんだよね。基本的に、金額を押して、税率ボタンを押したというのは、そういう計算をしているんだよねというのが前提だから。その税込ボタンを押した時点で、メモリーに加算されていくようになっていて、それがまた便利なんだよね。

【他故】すごい楽ちんじゃない、それ。

【きだて】俺は今後、8%の商品を扱うことはないんだろうけど。

【高畑】まあ、大体が贅沢品だからな。

【きだて】でも、ちょっと欲しいな (笑)。この機能の面白さに、結構グラグラきていて。

――これは、個人で持っていても便利なものですか?

【きだて】だって、個人商店でそういう計算をすることがあり得るわけだから、個人ユースは全然アリでしょ。

【高畑】あとは確定申告とか。でも、確定申告で8%を使うことはないのかな。

【きだて】現状はないと思うんだけどね。

【高畑】でも、そういう計算をするのに必要な人にはいいんじゃないの。

【きだて】俺の望みとしては、10%で仕事を受けて、納税は8%でしたいなっていう(笑)。

【他故】わはは(爆笑)。

【きだて】2%の差額が欲しい(笑)。

【高畑】う~ん、まあね。そのうち、自宅で仕事をしたのか、カフェで仕事をしたのかで税率が違うとかね。贅沢な仕事の仕方をしているやつからは取るみたいな(笑)。

【きだて】もうね、…つらい。ただでさえ確定申告が毎年つらくてたまらないのに。

【高畑】まあ手間がね。それはあるよね。専用電卓っていろいろあるんだけど、例えば保険の人が持っている電卓は、複利計算ができるとか、いろいろあるんだけど。僕、専用電卓が好きなんですけど、この電卓はなかなかね。

【きだて】ちょっと前だと、割り算で余りが出る電卓なんかが出て話題になったじゃん。

【他故】ああ、あったね。

【きだて】あとカシオの電卓だと、水洗いができる電卓があったじゃない。

――ありましたね、Gショックっぽい電卓。

【高畑】サランラップで巻かなくても大丈夫というやつね。

【きだて】基本、飲食店で使う電卓だから、「√」とかそういう変な計算ボタンがないという。

【他故】足す・引く・かけるとか。

【きだて】その代わり、原価計算ボタンとか、わりと特殊なボタンがあったりしてね。使う場所にマッチした機能になってる。

【高畑】もちろん、こんな計算なんてエクセル使えばできるし、スマホでも「そのうちこういう計算ができるアプリがきっと出ますよ」と言われたらそう思うけど、でもこういう金額の計算みたいなのは圧倒的に電卓が速いんだよ。楽なんだよね。

【きだて】何だかんだ言って、専用機だからね。

【高畑】ただの引き算・足し算と、ちょっとした税率のかけ算しかしてないわけでしょ。言ってみれば、これより小さいスマホでもできるわけですよ。なのに、何でこんな大きい電卓が必要なのかといったときに、圧倒的に電卓の方が速くて確実だから、未だにみんな使っているわけで。

【きだて】だって、スマホで計算しようと思ったら、まずスマホのロックを解除して、そして計算機アプリのある画面まで移動してタップして起動して…って使う前から面倒な操作があるわけなんだけど、電卓って手に取ればすぐじゃん。

【他故】そうね。しかも指が大体の位置を覚えているものじゃん。

【高畑】そう、ハードウェアのボタンが付いているというのも結構重要で、タッチパネルの押し間違えとかあるから。特に、計算や表示が複雑になればなるほどボタンが小さくなるから。

【きだて】これは俺の恐怖症的な話なんだけど、とにかく自分の目が見えなくなるのがすごく怖いのね。なんせ仕事も趣味もほとんど視覚だのみなところがあって、それが失われたらどうしよう!って日頃から結構ビクビクしてるのね。

【他故】はいはい。

【きだて】老眼になるのも早かったから、目に対するケアというのも大事に思っているんだけど。それで、目が見えなくなったら、スマホって完全に板じゃん。

――確かに、ツルツルしてて何だか分からないですよね。

【きだて】だから、こういう物理キーの道具はできるだけ手放さないようにずっと心がけていて。電卓も音声読み上げ式のをちゃんとキープしてるし。

――キーは触れば分かりますからね。

【高畑】計算結果がでかいのもいいよね。圧倒的にでかい文字で数字が出るというのも。すごい簡単なことなんだけど、数を数えるのを間違えないとか、足し算間違えないというのは、結構重要なことなんだけど、そういうときは案外こういうような道具の方が、はっきりしていて結構よかったりするよね。

【きだて】信頼性高いよね。

【他故】そう。分かる、分かる。

【高畑】押せたか押せないかを画面でしか確認できないのがスマホの弱いところで、これは圧倒的に電卓が楽だと思うよ。

【きだて】おそらく、これも程なく全部10%になるじゃん。

【高畑】まあね。程なくというか、そのうち10%と12%ということになるかもしれないし。

【きだて】それもありえるか。

――まあ、消費税が上がらないのが一番ですけどね。ISOTのカシオのブースに行ったら、「上がらない方がいいです」と言ってましたよ(笑)。

【きだて】それが正直なところだよ(笑)。

【高畑】この電卓がムダになっても上がらない方がいいんだ。

【他故】偉いなぁ(笑)。

【きだて】そういうことを言う人が作るものなら信用できるよ。俺は信じよう!

【高畑】でも、これを作ったカシオさんにしたら、世の中の面倒くさいことに対して、何とかしてあげようというのはあるじゃないですか。まあ、税率までは下げられないけど、その煩わしさは何とかなりますよということで。

【きだて】専用電卓って、そういう寄り添い感があってかわいいよね。

【他故】「便利になりますよ」っていうのを用意してくれるというのはね。

【高畑】アプリだったら、低いリスクで交換できるけど、こういうハードウェアで積極的にやってくれるというのはすごいよね。

【他故】うん。

【高畑】20年ぐらい経ったときに、「ああ、こういう電卓もあったな。8%と10%の時代があったな、今は20%だけど」っていう可能性があるじゃないですか(笑)。

【きだて】そういう時代が来るまでに死んでおきたいな。もう無理だ、俺は(苦笑)。

【高畑】20年後には、この機能は要らなくなっているかもしれないけど、令和元年の新モデルとしていいんじゃないのかな。今年賞をあげないといけない商品かな。

【他故】ああ、なるほど。

――今しかないですものね。

【高畑】軽減税率が導入される前に間に合わせているというのも含めて、やっぱりすごいと思いますよ。開発だって、すぐにはできないでしょ。

【きだて】だと思うよ。だいぶ前から準備はしてただろうなぁ。

【高畑】それに間に合わせて、市場に投入できているというところがさすがだなと思う。

【きだて】その辺は、さすがに「電卓のカシオ」というだけのことはあるわけですよ。

【他故】さすが日本一。

【高畑】デジタル派の人からしてみたら、「その電卓、本当に要るのか」みたいな話になるのかもしれないけど、でも「要るんじゃい」って(笑)。

【他故】まだまだ要るんじゃい(笑)。

【きだて】8%、10%でわざわざエクセルでマクロ組みたくないんじゃい、というのもあるしね。

――スマホにも電卓機能があるけど、わざわざ引き出し開けて電卓出しますよね。

【他故】使いますよね。1個は必ずあるもの。

【高畑】価格交渉しているときとかに、チャチャチャって計算するのにはやっぱりスマホだとあれなんだよね。画面を相手に見せて、「これでどう」とかやったりするよね。そういうときとかにもさ。あと、海外とかに行くと特にそうだよね。レジで、言葉は通じないんだけど、ガーって数字打って「はい」って見せて話ができちゃうというのもね。誰が見ても、お金の話をしているというのが、この機械を見れば分かるから。

――これ、いくらでしたっけ?

【他故】これオープン価格だからね。

【高畑】結構するやつなんですよ。

――某家電量販店だと、デスクタイプで税込3,970円(*)ですよ。

【他故】デスクタイプでその値段なんだ。ジャストタイプはどうなんだろう?

【高畑】Amazonだと、ジャストタイプは2,890円(*)で、しかもスコッチのスティックのりが付いてくるよ。

【きだて】何じゃそれは(笑)。

【高畑】だから、スティックのりでレシートを貼れということだよ。

【他故】3,000円、4,000円クラスか、安いじゃん。

【高畑】思ったより安かったね。

――消費税が10%になる前に買っておいた方がいいですよね。

【高畑】それだよ! それ大事なことだよ。

*2019年7月2日現在の情報です。

〈明日は北星鉛筆の鉛筆削り「634」を紹介します〉

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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