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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.05前編

“グッジョブ”なファイル・収納アイテム
ジャム.jpg
右からきだてさん、高畑編集長、他故さん
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vo.05前編では、最近注目の機能的なファイル・収納アイテムを取り上げました。「日本文具大賞」で受賞したあの商品も登場します!

会社だけじゃなくて家庭でも使いたい!

コクヨ.jpgモバイルバッグ<mo・baco>(コクヨ、税抜7,700円) PCなど仕事時に必要なものを持ち運んだり、デスク上に省スペースで置く事ができる、社内移動用バッグ。卓上では中身が見やすく取り出しやすいように前部分が開く仕様。また、ファイルボックスサイズを基準とした、ロッカー内に収めやすいサイズなので、収納時にはデッドスペースができにくい。収納時に見える側面には、持ち主を判別するためのネームカードホルダーと、引き出しやすくするためのハンドル付き。商品の表地にはフェルトを使用しており、オフィスインテリアのトレンドを取り入れたデザインの4色を展開。

――「日本文具大賞」が発表になったので、今回はその受賞商品を含めて、ファイル・収納関連の商品を取り上げたいと思います。まずはコクヨのモバイルバッグ「mo・baco」。社内移動用バッグですが、最近はこういうタイプの商品が増えましたよね。

【きだて】こういう商品が増えつつあるのと同時に、フリーアドレス制がちょっと減ってるという話も聞いてて。

【高畑】そうなの?

【他故】減りつつあるの?

【きだて】実際「フリーアドレス、やめました」みたいな話をいくつか聞いた。

【高畑】やってみたけどしんどかったというね。

【きだて】そう、そう。

【他故】そういうことね。

【きだて】ヤフーの本社とかすごいんだ。6,000人が広いビルの20フロアぐらい使ってフリーアドレスやってるから、誰がどこに居るか専用のアプリで分かるんだよ。ドラゴンレーダーみたいなやつ。

【高畑】何か、「ウォーリーを探せ」のような新しいゲームみたいだね。

【きだて】もう、ゲーム感覚だなと思って。

――「ポケモンGO」だね(笑)。

【高畑】「課長ゲット」みたいな(笑)。

【他故】レアものだから、なかなか見つからないんだよ(笑)。

【きだて】そのレーダー使わないと、課長の決裁もらうのに一日ずっと探す羽目になったりして(笑)。

【他故】工場なんかで、担当者が見つからないのでPHSで呼び出すとかあるけど、その進化版だね。

【高畑】大きい会社だとそうなるけど、そこまで大きい会社の方が希だからね。数10人規模のフリーアドレスとかが大半なんだよね。

【きだて】実際は、そのくらいの規模がフリーアドレスの限界なんじゃないかな。

【高畑】それをやっているところには、何かしら欲しいというところだよね。実際に、フリーアドレスをやっている事業所が増えているのか、減っているのかはその数字がリアルに分からないんだけど。でも、フリーアドレスになったら、物入れに困るのは絶対に間違いない。

【他故】そうだよね。だって、置いておけないんだもの。こういう箱は、自分のものをとりあえず詰めておいて、帰りにロッカーに入れる。翌日にまた出して、自分の仕事場所にというイメージなんだけど。

【高畑】物が少ないといっても、バラバラしているとあれなので、何かに入れないといけないけど。この「mo・baco」のウリは、サイズがほぼファイルボックスと同じなので、社員に与えられたロッカーの大きさが、ファイルボックスベースで大きさが決まっているところが多いから、収納がしやすいよと。ロッカーなりキャビネットに入れやすいというのはよく分かる話で。コクヨはそれ以前から、通販の「カウネット」なんかでこういう商品をやっていたし、それより前にパソコンバッグでナイロンのやつが出ていたんだよ。俺はそれをずっと使ってたんだよ。それが一度なくなったあとに、カウネットの方でポリエステルのものが出て、そして一般用に出てきたのがこれなんだよ。それがフェルトになって出てきた。

【きだて】本当にね、フェルトを触ってみると、当たりがよくていいなというのがまず一つあって。ビジネスアイテムってどうしても素材的に重くて硬くなりがちじゃない。

【高畑】前に使っていたのは、ナイロン製なので。ナイロンとかポリエステルの方が、丈夫で、汚れにくくて、値段的にも安いじゃないですか。それを今回、あえてフェルトにして。これ7,500円くらいするんだよ。結構するんだけど、でもね、使ってみるとこれを使いたくなるんだよ。で、何人もの知り合いが、僕の使っているのを見て買っていくという。

【きだて】この口がぱっくり開くオープン機構が、何気に利いているんだよね。中の物を取り出しやすいとか、ちょっと捜し物しやすいぐらいの感じで。

【高畑】あとは、パソコン対応のポケットが付いているので。パソコンと充電アダプターを入れられるのがね。会議が長引くと、パソコンアダプターが必要だから。あとはペンとノートという感じで、会議室へ移動するだけで結構ものが要るんだよね。

【他故】ああ、そうだよね。

【高畑】だから、フリーアドレスじゃなくても、結構そんくらいセットで持っていないとダメだよね。

【きだて】会議で頻繁に移動するときに、軽い方がいいというのがあるんだけど、フェルトというのはその点あんまり有利ではない?

【高畑】そんなにめちゃくちゃ軽くはないけど、重たい印象もそんなにないんだよね。一つにまとめて、ざっくり入っている方が便利なので、気になるほど重くはないんだよね。フェルトだけど、芯材が入っているから、そこそこしっかりはしていて、普通に便利だし。これ家でも使っていて、僕はマックのパソコンを使っているけど、ウィンドウズのパソコンも必要に応じて使うために持っているんだけど、それっていつもは開いてないのね。だから、ウィンドウズのパソコンと、充電アダプターとかそういう一式をこれに入れている。これ主婦とかにおすすめしていたら、意外と主婦とか女性の購入率が高くて、もう5、6個買わせている気がするんだけど。

【他故】それはすごいな(笑)。

【高畑】ダイニングなんかでお仕事している人が多いので、そういう人は本当にパソコンとマウスと電源とを入れて、中には小さなスキャナーぐらいだったら入ったりするし。それをどこかに置いておけば、それなりに見栄えがする。

【きだて】これ一つを仕事用コンテナと考えれば、これにストンと収めちゃえばそれで済むんだよ。

【他故】なるほどね。

【高畑】これが今までのファイルボックスだったら、部屋のインテリア性とバッティングするんだけど、これ意外といいよね。

【きだて】家に置いておいて全く違和感がない。

【高畑】そこがいいから、むしろ会社よりお母さんにずっと良いんじゃないのとずっと思っているんだけど。

【きだて】これのB5サイズ版が出たら、「リビ学セット」として十分だよねというのもあるしさ。

――これ「リビング学習」みたいですよね。

【高畑】ナカバヤシの「ライフスタイルツール 収納カバン」と割と近い感じで、これはこれで使えるよね。

【他故】ノートパソコンって、使ってないときに机を占有しちゃうから、どけたいと思っていて。

【きだて】平置きにしちゃうからね。

【他故】立てると、今度は「どこに置くんだよ」という話になるから。

【きだて】出た、他故さんのこだわり、「立てる」(笑)。

【高畑】ノートパソコンでは、アダプターがジャマなんだよ。

【他故】うちはいつも「MackBook Air」をどうしようといって、机の横とかに立てかけてあるんだけど、これだとスポンと入れられるしな。

【高畑】パソコン本体だけだと本立てとかに立てかけておけばいいんだけど、アダプターとマウスなんかをどうするかというね。

【他故】一緒に入れておきたいよね。

【きだて】MacBook入れて、アダプター入れて、外付けのDVDドライブなんかを入れて、ケーブル何本か入れてというね。

【高畑】買ったときのフルセットがそのまま入るし、マニュアルとかインストール用のCDなんかも全部放り込んでおけば、「この中に全部入っているよ」というセットができるので。これがね、すごい便利なのよ。

【他故】これ、ちょっといいなぁ。

――家で使っても便利なものですかね。

【きだて】さっき文具王も言っていたけど、見た目はオフィス寄りだけど、家でかなりイケるというデザインなので。そこは大きいと思うね。

【高畑】そこは全然いいよ。

【きだて】ビジネス、ビジネスしていないところは大きいよ。

【高畑】ビジネス系の収納って「便利でしょ」というものが今までにもいっぱいあったんだけど、女性の人に紹介すると、仕事寄りの印象が強いから嫌だという人が多かったんだけど、これは意外とね、抵抗が少ない。

【きだて】色もグレーだけどちょっと明るめで、いわゆるビジネスグレーじゃないんだよね。

【他故】そうだよね。これって、この色だけ?

【高畑】内張りがグレーの他に3色ある。赤と青と緑かな。外側はグレーだけなんだよ。で、側面に名刺入れみたいなのが付いていて、会社だったらここに名前を書いたものを入れておいて区別できるんだけど、家でこれが邪魔だったら、ホックになっていて外せるから。

【きだて】これ、外せるんだっけ?

【高畑】そう。

【他故】ああ、ホックがあるよ。

【高畑】これを外しちゃうとかなり収まりがいいし、例えばそれこそ「ママのパソコン」みたいに書いておくのも全然いいし。

【他故】そうだよね、中身を書いておくのはアリだよね。

【きだて】「ママのセット」と「パパの書斎セット」みたいにね、そこで名札みたいなので分けちゃってもいいし。

【高畑】難点は値段だけなんだけど。値段が7000円以上するので、思い切りが要るんだよ。これを5個揃えてというのはちょっとしんどいので。しっかり入れて、持ち運びできるというのはノートパソコン系になると思うんだけど。

【他故】そうか、そういう使い方ができるのか。

【高畑】あとは会社だと、会議室や面談室は別にあるオフィスが多いから。フリーアドレスじゃなくても、打ち合わせとかであちこちに行く人は多いからね。

【他故】ああ、いいな。現物を触ってみると使いたくなってきますよ。

――他故さんの場合は、会社というよりは家で使いたいということですね。

【他故】自分のパソコンがある部屋にはエアコンがないので、いつもノートパソコン抱えて、涼しい部屋に移動しているんですけど。そういうときに、一通り揃っている箱があるとめっちゃ便利ですよね。

【高畑】「ご飯だからどいて」って言われたときに、全部入れられるし。

【他故】そうそう、それでパッと行けるし。

【きだて】他故さんだったら、パソコンと今必要な資料とかまとめられるじゃん。

【他故】筆入れとかノートとかもね。

【きだて】そうやって、お父さんの居場所がどんどんコンパクトになっていくんだよ(笑)。

【他故】しかも立てられるし(笑)。

【高畑・きだて】出た(笑)。

【高畑】俺が作った「モバイラーズバッグ」と一緒なんだよ。楽なんだよね。あとね、フリーアドレスで向かい合わせに座ったときに、前に何もないと不安な気分になるから、そういう時にこれを立てて置く。

【きだて】臨時のパーティションだ。

【高畑】これを前に置いておくと、何となく自分のエリアの区切りになる。仕事してるぞというのが分かるし、そういう使い方もできるっぽいよ。とにかく使い勝手がいいので、僕も愛用しております。

エグゼクティブな人に相応しい「ミーティングボックス」

レイメイ.jpg

zeit Vektor ミーティングボックスA4(レイメイ藤井、3,500円) フリーアドレスなど、近年のオフィススタイルに対応した持ち運びに便利なミーティングボックス。持ち手付きなので、書類やモバイルツールを入れたまま社内での移動に最適。そして、A4書類をクリアファイルに入れたまま収納でき、オフィスの引き出しや ロッカーにも収納しやすいサイズ。また、机の上に立てて使用することも可能。素材は、クロスペーパー素材を使用し軽量化を実現した。ブラック、ダークブラウン、ネイビー、レッド、オレンジの5色。「第26回日本文具大賞」機能部門優秀賞を受賞。

――では、次は「zeit Vektorミーティングボックス」です。「mo・baco」と同じようなコンセプトの商品ですが。

【高畑】これはやっぱり男性向け?

【他故】女性向けっぽく見えるけどね。

【きだて】男性向けなんだよ。この質感はどう見てもね。

【高畑】これもまた異色だよね。

――これ、革じゃなくて紙なんですよね。

【高畑】紙にフェイクで革の押しが入っている。これ、押しを入れたことで随分個性が出たじゃないですか。

――「日本文具大賞」の機能部門で優秀賞を取ったんですよね。

【高畑】「mo・baco」がフェルトで柔らかくいったのに対して、こっちはかなりハードな印象。

【きだて】しかも、角はスチールで打ってあるというカッチカチな感じ。重いんだ、これがまた。

【他故】(持ってみて)あっ、本当だ。

――これで3,500円です。

【高畑】どちらかというと、年配の人がしっかりと持つ感じがするよね。

【きだて】50歳以上でないとつらいよ。

【高畑】結構大人向けです、これは。このサイズ感だと、このまま引き出しに入るんだよ。

【他故】あー、はいはい。

【高畑】「mo・baco」は、ファイルボックスなのでそのままキャビネットに入るんだけど、自分の机の袖引き出しに入るのはこれなんだよ。

【他故】引き出し用のボックスというイメージなんだね。

【きだて】あと、タテに立てても使えるんだよね。それでこんだけ硬いんだけど。

【他故】イメージとしては完全に箱なんだな。

【きだて】一応、角を丸めてあるんだけど、金属のものが机の上でゴリゴリとこするのでちょっと嫌なんだよ。

【他故】これは、机の上に載せるものではないんじゃない?

【高畑】商品カタログに机の上に載せているイメージ写真があるのは、「こうも使えるよ」という提案なんじゃない?

【きだて】「立てて使えます」と言っている以上は、そうじゃん。

【高畑】「立てて使えますよ」提案で考えたんだけど、実際はそうは使わないでしょ、あんまり。

【きだて】立てて使う意味があんまりないしね。

――非常事態のときでしょ。

【他故】横から出すときとか。

【高畑】引き出しに入れておいて、ガサッと出して、そのまま打ち合わせに行ってという使い方だよ。

――探し物が見つからないときに机の上に立てて探すとか。

【他故】そうやって探して、見つかったら机の上から下ろしますよね。

――これ、日本文具大賞で優秀賞を取ったので、引き合いが多いみたいですね。

【他故】そうなんですか、へぇ~。

【高畑】結構売れているっぽいよ。

――どの層が使っているんでしょうね。「mo・baco」だと家庭で使えるという話でしたけど、これは家庭でというデザインではないですね。

【高畑】家庭じゃないよね。

【他故】会社でもこれを持っている人が一人だけだったら、浮くような気がするんだけど(笑)。数人でやっているオフィスだったら、トータルでこれを持つとかっこいいとかあるかもしれないけど。

――さっき、きだてさんが「重い」って言っていたけど、その分丈夫な感じはありますね。

【他故】丈夫は丈夫ですね。

【きだて】丈夫なんだけど、ここまで丈夫な必要もねえなというのもあり。

【他故】やっぱり、「zeit Vektor」のイメージなんじゃない?

【高畑】それはあるね。「zeit Vektor」のシリーズのイメージがそれだよね。

【他故】どっちかというと、硬い板でできているというイメージがない?

【高畑】そうね。

【きだて】防弾性能でも求めているのかというくらいの硬さなので。

――それが意外と命を救う場合がある。

【きだて】胸ポケットに入れてたZippoライターが弾を受け止めて命を救われた、みたいな(笑)。

【他故】イギリス軍将校が、胸にファイロファックスの手帳を入れていて生き残ったという(笑)。

【きだて】いろいろ助かってるな(笑)。

――まあ、でも平社員が使う感じではないですね。

【高畑】それはそうだよね。

【きだて】使ってたら「君、君」って言われるよこれは。

【高畑】(商品カタログの)写真だと、持っている人はこんな感じだもん。

【きだて】そこそこエグゼクティブな感じになってるじゃん。

【高畑】百貨店がやっているスーツフェアの中吊り広告あるじゃん。あの印象なんだよ。やっぱり、カチッとしたスーツを着こなしているおじさん向けだよね。

【他故】そうね。こういうのがカッコいいという人たちがいるんだろうな。

――まあ、社内移動用ですよね。

【高畑】社内で移動したりという需要に対して、やっぱりある程度市場があると踏んだんだろうね。いろんなところが出しているし。

【きだて】もちろん、需要があるはずだし、それで一つのレイメイの答えがこれなんだというのも分かるんだけど。

【高畑】一方の極にこれがあって、その真ん中にいろんなところで出しているナイロン製のがあって、でもう一方の極にコクヨで出しているフェルトのがあって。ここら辺は素材感とか大きさで自分たちの立ち位置をつくっていくなかで、レイメイさんは革のシステムバインダーを作っているし、革関係ものに対してこだわりがあるんだよね。

【他故】そうね。

【高畑】そして、この素材がレザーじゃないのね。

【きだて】これが革だったら、重くて大変なことになるけど。

【高畑】値段的にそうだしね。

【他故】値段が合わないよ。

【きだて】そうか、エグゼクティブが「mo・baco」だと、ファニー過ぎるというのもあるのか。

【高畑】それはそれで、イメージ的に柔らかすぎるんだよ。

【きだて】確かに、これが要る人もいるな。

――「mo・baco」は、若い人向けなんですよ。

【高畑】今現役で、実際に作業していますという人。

【他故】バリバリ働いていますという人だよね。

【高畑】それに対して、「ミーティングボックス」はそれを管理している人たち向けなんだよ。

【他故】課長会、部長会に集まる人たちが「これでどうよ」という感じで。

――管理職会議に持っていく感じですね。きだてさんのようなラフな服装の人は、「mo・baco」でという。

【きだて】俺が「ミーティングボックス」持っていてもどうしようもないからね。

【高畑】だから、このイメージ写真のビジネスマンみたいな人だよ。こういう人たちがフェルトを持っていたら柔らかいよ。それで、ナイロンも何だしとなったら、確かに革っぽい雰囲気もほしいよね。

【きだて】これを持ち歩けるのは、広いフロアにいる人なんだよ。人でギュウギュウなフロアでこれを振り回していたら、当たると本当に痛いから。

(一同爆笑)

【高畑】自分の後ろを通る人がいると、イスを引くようなところね。

【きだて】そうそう。でも、納得いった。

【他故】そういう人もいるだろうと。

【きだて】この写真を見て納得がいったので、それでいいです。

【高畑】やっぱりイメージなんだよ。そういうイメージがあるんだよね。

【きだて】そうだね。

【高畑】それで、文具大賞の機能部門で賞をとって、評判がいいらしいのよ。それで、今度はこれにフロントポケットが付いたパターンと、あともう1個大型のが出る(*10月発売予定)。これ、ベースが書類入れなんだよね。「mo・baco」に比べると、どっちかというと細かいものは入れづらいので。

【きだて】展示会だと、ペン類を立てて見せてたね。

【高畑】だから、「mo・baco」がパカッと開く代わりに、こっちは手前にポケット付けた。

【他故】これは、普段から立てて入れておいて、それを移動するというかたちなのかな。

――これは金具付いてないです?

【きだて】これは金具付いてないです。ナイロン製だから、もっと雰囲気は柔らかい。

【高畑】これは、携帯とか電卓を持っていないといけない現場寄りになっているから、この人の部下が持つんだよ。

【きだて】そんな感じ。

――上司は従来品で十分なんですね。

【他故】課長から上はあっち(笑)。

【高畑】ここに入っているのは、大事な書類で、あとは胸ポケットに万年筆とかボールペンが入っている。

【他故】そのぐらいでいいんだよ。

【高畑】それが上司で、部下はそれだけだとちょっと足りないから、電卓とかいくつか入れるのにこのポケットが付いている。

【きだて】部長、課長はあっちで、こっちはヒラというイメージ。

【高畑】こっちは企画系、営業系みたいな感じ。

【他故】そうそう、その感じ分かる。

【きだて】まさに店舗回りする営業みたいな感じだよ。

【他故】営業はね、どうしても電卓がいるからね。

【高畑】それと、ファイルボックスとかもう少し分厚いものが入るように、ラージサイズが出るんだけど、これがまた重厚感があるんだ。

【他故】お~(笑)。

【高畑】本当に重厚感があるの。

【きだて】実際に重厚だしね。

【高畑】やっぱり、革カバンの雰囲気を持っているんだよね。

【他故】従来品のが400gで、ラージサイズは600gぐらいあるんだね。

【高畑】かなりしっかりしているんだよ。こういうのに役員会の資料を入れていくんですよ。

――これ、金具は?

【他故】コーナーパーツはスチールになっていますね。黒だから分からないですね。

【高畑】これは、綴じてあるファイルバインダーが入るので。まあ、分からなくはないラインナップだよね。

【他故】それぞれのニーズを考えているよね。

【高畑】最近のデザイン文具ってクリエーター寄りじゃん。ここ営業寄りだよね。

【きだて】その辺はブレないよね。

【高畑】そうかもしれない。みんなクリエーターの方に寄り過ぎているから。おじさん的にはこっちの方がいいっていう。

【きだて】実際に売れているとしたら、その辺は評価されているはずだから。

【他故】これなら買おうかっていうね。

【きだて】俺らもクリエーター寄りの方ばかり見ているのもあるけど。

【高畑】僕もきだてさんも、どっちかというとそっち寄りじゃん。仕事も。それに対して、営業やっていた他故さんもそうだし、普通に仕事している方からすると。

【きだて】そうなんだよね。こういう市場もちゃんとあるということを忘れがちなんだよね。

【高畑】最近のデザイン〇〇って、デザイナーが入ってくるときに、そのデザイナーがクリエイターだから、そういうおしゃれに寄るじゃん。でも、そうじゃないおしゃれっていうか、未だにスチールバンドの時計をしててみたいな人はね。

【きだて】だから、我々の目からみると「おしゃれか?」となるんだけど、これを持っていないと格好がつかないという。

【他故】「おじさんはこれでいい」という、ちょうどいいところが多分あるはずなんだよね。

【高畑】もちろん、働き方が変わったりとかイメージが変わったりはしていると思うけど、未だにこっちの方が信用される社会もありそうだよね。

【きだて】そうだよね。

【高畑】高額な保険の勧誘とか、法律相談とかしている弁護士さんが来たときに、ナイロンのリュックで来られるよりはね。

【きだて】せめてビジネスバッグで来いという。

【高畑】「会社の大きな訴訟案件について」というので来たときに、背中に大きくスポーツ系ロゴのリュックにスニーカーで来られるよりは、やっぱりこういうのに革靴を履いてきてくれた方がいいのかな。

【他故】「mo・baco」はたたみようがないけど、これはたたんでおけるでしょ。

【きだて】フェルトはたたみようがないよね。

【高畑】底を外したら、少しは小さくなるけど、こんなにフラットにはならない。

【他故】僕だけかもしれないけど、この大きさで「広がりますよ」とお店に吊ってあったら、買って帰ろうかと思うかな。

【きだて】店頭で見たらそうかもね。

【高畑】店頭で見ると、「mo・baco」はボリューム感があるからね。

【他故】通販で買うとか、物を知っていて買うんだったら別だけど、お店にこれが吊ってあって「これ買おう」と思うおじさんがいてもおかしくないよ。持って帰れる大きさだから。

【高畑】店頭で広げてこれが置いてあるよ。見た感じきれいに置いてあるので。

【きだて】まあ、そういうことだな。

――それで納得していただければ。

【きだて】最初はディスったけど、納得いった。レイメイにあやまるよ。

【高畑】さすが「ダ・ヴィンチ」の会社だよ。

「私はこれに助けられました」

リヒト.jpgAQUA DROPs クリップファイル(LIHIT LAB.、560円) 360°折り返して使えてノートリーフの携帯に最適な「クリップファイル」。その日に必要な枚数のノートリーフだけを持ち運ぶことができ、360°折り返して使えるので立ったままでも記入しやすく、外出先で省スペースしかない場合でも便利に使用できる。表紙には、とじ具が開く「AQUA DROPsツイストノート」と同じポリプロピレンの生地を使用し、ボード面はしっかりとしたABS樹脂製。また、クリップはスリムタイプなのでカバンの中に入れてもかさ張らない。さらに表紙と同色の紙押さえは、クリップを開閉すると同時に開くのでスムーズにノートリーフの出し入れができる。適正収容枚数はノートリーフ20枚で、本体を開いた左側には名刺やメモ、ハガキなどが収納できる透明ポケット付き。サイズはA5(A4サイズを8月下旬に発売予定)。「第26回日本文具大賞」機能部門優秀賞を受賞。

――次は「AQUA DROPs クリップファイル」です。これも文具大賞で優秀賞ですね。

【他故】これは愛用してます。

【きだて】これはね、骨折したときに助けられた~。

【高畑】何? それ聞きたい。

【きだて】立ち取材をするときに、今まではリングノートにメモ取ってたんだけど、右腕に本当に力が入らないから、リングノートの上に手を乗せると上手く書けないんだよ。

【高畑】びょーんと手が曲がっちゃうんだ。

【きだて】それで、クリップボードの良いやつを探していたんだけど、これが一番軽いのよ。紙抜きだと、それこそリングノート1冊分と同じ、100gくらいなのよ。それで、この軽さで、手を乗せても全然しならない頑丈さがあるので、これはとてもよかった。

――書けました?

【きだて】ヒジから先は動くので大丈夫。

【他故】乗っけられさえすれば書けるんだね。

【きだて】腕に力が入らないから、乗せたかったんだよ。これのおかげで書けたというのがあるから。

――なんか、そのまま広告になりそう。「私はこれで助かりました」って(笑)。

【高畑】それを現場で使ってみて、どうなの? クリップボードって色々あるけど、これは留め方が独特だったりするじゃん。きだてさんとしては、その辺はどうなの?

【きだて】よくできているのが、このフチのところのガイド。これに紙の端をカンと当てて綴じちゃえば、真っ直ぐに留められるのね。クリップボードってバネではさんでいるから、ななめになっていてもはさんじゃったりするじゃん。

【他故】あるある。

【きだて】あれが気持ち悪いというのがあるから、それを出さないという姿勢がいいというか、留めたときに美しいというのがあるから。

【他故】そうね。

【きだて】他にも、紙の端っこを巻き込まないようにまずフラップで押さえてから綴じるとか、本当に工夫がされてる。なんだけど、A5ピッタリに作ってあるせいで、表紙のポケットに用紙のストックを入れられないんだよ。

【他故】そうだよね。それは俺もそう思う。

――あー、なるほどね。

【他故】入れると、閉じたときに曲がっちゃうんですよ。

【高畑】クリップに引っかかっちゃうんだ。

【きだて】そう、そこに干渉しちゃうんだよね。

【他故】それならば、ストック場所は裏側に作ってほしい。

――それはありますね。

【きだて】表紙がグルッと折り返せて使いやすいんだけど、そこだけ。

【高畑】なるほど。

【きだて】もうちょっと天地の長さを伸ばしてでも紙のストック場所は欲しかった。

【高畑】何か、成形品の硬さっていうのがあるよね。やたら頑丈なんだよね、これ。

【他故】めっちゃ頑丈だね。

【きだて】軽いは、硬いはですごくいいよ、これ。助けられたので、熱く語ってしまいましたが。

【高畑】いやいや、実際に使ってみてどう?っていうのが大きいからさ。留め具も、他のパチンと留めるやつに比べたら、引っかかりは少ないしね。

【他故】あと、外れにくいんだよね。バネのやつって、何だか知らないけど気がついたら外れていたりすることがあるけど、これの場合は外れようがないというか、絶対に外れないんだよね。

【きだて】外れないし、それこそズレないというか、押さえが強いので。

【高畑】このとじ具が開いた内側に付いているファイルがあったりするけど、クリップボード上に付いているのはいいよね。

【他故】あとはね、クリップボードの表紙がどうしても欲しいので。どうしても表紙は付いていてもらわないと困る。

【高畑】でもあれでしょ、表紙を裏に回したときにボコボコするのが嫌なんでしょ?

【きだて】そう。そこが比較的きれいに曲がってくれるので、手に持ったときに、手の中で膨らまないんだよ。

【他故】あと、回して書いたときに、そこまで段差ができないので。

【きだて】そうそう。置いて書くのも楽。

【高畑】クリップボードを使って書きたいというくらいなんで、やっぱりカチッと平らであってほしいよね。

【他故】それは思う。

【高畑】それで、適度なシボがあっていい感じがするんだよね。

【他故】いつも紙5枚くらいはさんでおいて、常に持ち歩いて使っているんだけどさ。本当にいいし。A4はこれから?

【きだて】うん、新しく出るやつ。

【高畑】大きいのがまだなかったから、別のクリップボードを使っているけど、やっぱりフラットじゃないと嫌なんだよね。だから、これの硬いところがいい。

【きだて】ポケット裏面に付けてほしかったな。

【他故】まあ、色々難しいんだろうけどな。

【高畑】でも、今後期待できるよね。

【きだて】そう、まだ改良の余地はあるので。クリップボードに関しては、A4の要望は多かっただろうしね。

【高畑】絶対に欲しいよ。

【きだて】それこそ、プリントとか挟んでチェックしたりとかさ。色々あるじゃん。

【高畑】イベントなんかのアンケートで使うときに、クリップボードを何10枚も用意するんだよ。その時に箱に入れると、あのクリップが邪魔で扇形になるんだよ。どうやっても引っかかって気持ち悪いんだけど、これ比較的きれいに収まると思うんだ。これは、アンケートなんかで「ちょっと書いて下さい」と渡すのにはちょうどいいんじゃない。それでいくと、どこかにペンを引っかけたくなるね。

【きだて】ああ、それもある。

【他故】ペンクリップは工夫したいところだよね。

【高畑】大げさなのは要らないんだよ。邪魔なのは要らないんだけど、ペンをちょっと差して渡せれば助かる。

【きだて】スプリングのクリップだと、そのスプリングに差してというのがあったじゃん。

【他故】そういうすき間がないんだよ。

【きだて】確かにペンホルダーも欲しかったわ。

【高畑】自分で使うときはいいんだけど、誰かに書かすときって、ペンを1本セットにして渡すじゃん。これね、ずれないし、人に書かせるのにちょうどいいと思うんだよ。病院でも、初診のときに書かされるじゃん。そういうのにもこれを使ってほしい。

【きだて】病院これすごくいいわ。この軽さは、弱ってる人に優しいよ。あと、印象として清潔じゃん。この白基調のカラーリングが。

【高畑】そうだね、グレーの紙でバネが付いているやつよりいいし。片腕骨折して来院する人もいるわけじゃん(笑)。

【きだて】そうよ(笑)。

【高畑】そういう人に、とりあえず「今どうですか」と書いてもらうのに、こういうのがいい。

【きだて】実際に、おばあちゃんとかが、あのグレーのボードを重そうに持ってるので。

【他故】あれ、重たいんだよね。丈夫にできているからさ。

【高畑】だからこれ、半分公共的なところで使えそうな気がするんだけど。

【きだて】いいよ、これは。

【他故】リヒトは、ちゃんと医療用のブランドを持っているんだから、あのカラーリングで出せばいいんだよ。

【高畑】あと、大学のオープンキャンパスに行くと色々書かせられるから、そういう用途でここに大学のロゴを入れてやればいいし。色々とできそうだよね。

【他故】そうだよね。

【高畑】すっきりしてて使いやすそうなので、いいなと思う。

【きだて】俺もこれはすごく好きです。

【高畑】A4が出るのは大賛成。

【きだて】何で、先にA5を出したんだろう。

【他故】それが分からんのだよ。A4の方が売れ線でしょう(笑)。

【きだて】A5愛用の人間からいうと「ありがとう」なんだけど、普通に考えれば順序が逆(笑)。

【他故】こっちでしょ。

【きだて】A4が出てからA5。何でだろう?

【高畑】邪推をすると、同時に出すつもりだったんだけど、成形が上手くいかなかったとか。

【きだて】あー、はいはい。

【高畑】やっぱりこれ、成形品でこの大きさだからさ、フラットに作るのもなかなか大変だったりするんだよ。これインジェクションだものね。

【他故】でもこれ、書いた用紙を入れろとは一言も書いてないんだよね。

【きだて】書いてないよ。でも、そう使うじゃん(笑)。

【高畑】20枚はさめるから、後ろに回せということなんだろうけど。

【他故】A5は「ツイストノート」を入れろという風になっているから、母艦は「ツイストノート」というイメージだったんですよ。

【高畑】最初の広告にそう書いてあったよ。「ツイストノート」のリフィル入れで…。

【きだて】いや、違うよ。「ツイストノート」に入れるのは、書いた後。家に帰ってから。

【高畑】いや、だから帰る前の話だよね。書いて、とりあえず後ろに回して一緒に留めておけなんだよ。

【きだて】めくるときにクリップが邪魔なんだよ。だから、そういうときは外してとなるじゃん。また差し直してだと、面倒くさいんだよ。だから、どこかに逃がしたい。そこだけ。

――でも、その辺りはメーカーに要望を出せば、また改良したものを出してくる可能性がありますよ。

【他故】A4だと「ツイストノート」がないから、入れてないんだ。

【きだて】そうだね。

――「ツイストノート」ありきで、先にA5を出したんですかね?

【高畑】その可能性はありますよね。「ルーズリーフケース」ってあるじゃないですか。ルーズリーフを入れておく袋から、ルーズリーフケースをそのままノートとして使っちゃうという流れはずっとあったから、その流れで考えると、これだったのかもしれないね。

【他故】そうだね。

【高畑】だったら、B5出せよと思うけど。

【他故】そうだよ、B5の方がマストだろう。

【きだて】とにかくこれは、(骨折していた)5月、6月は助かりましたということで(笑)。

【高畑】そして、今度A4が出るので、俺的には大期待。

――きだてさんの感謝の一言に、メーカーの人も感動するんじゃないですか。

近年まれに見る偉大な発明

キング.jpgコンパック(キングジム、5ポケット税抜500円/10ポケット同600円) A4サイズの書類を、持ち運ぶ時や収納する時は半分に折ってコンパクトにでき、開くと通常のクリアーファイルと同様にポケットに入った書類をめくって閲覧できる二つ折りクリアーファイル。ファイルの開閉に合わせてポケットがスライドする「二つ折り機構」を採用したことで、折りたたむ際に書類がシワになりにくく、スッキリと収納できる。また、背表紙は折りたたみやすくフラットにもしやすい、やわらかい素材を使用し、書類に折り目が付きにくい。ポケット枚数は5ポケットと10ポケットの2種類で、カラーは6色展開。

【きだて】次は「コンパック」。

【高畑】これはね、近年まれに見る偉大な発明だと思っているんだけど。これはね、よくやったなと思っている。A4半分折りファイルは他にもあったじゃん。でも、ページめくれるんだというのがすごい。このタテからのヨコというのがいいのと、それを実現するためにシワが寄らないように、このスライドがさ「あ、そうするんだ」みたいな。

【他故】これは面白いよ。

【きだて】本当に、細かいところに気が利いている感があって、「やるな~」と思っている。

【高畑】タテとヨコを両方回すというのは、完全にフラットに開かないと開きにくいんだよ。だから、わざわざ背中がね、他のファイルにも使われているんだけど、柔らかい樹脂を使っているんだよ。

【他故】そうそう。

【高畑】普通のPPだと、への字になるとどうしても開きにくくなっちゃうので。この場合、それが致命的になっちゃうから。

【きだて】この柔らかい樹脂って、普通は360°開くファイルバインダーの背とかに使われるんだけど、フラットにするために使われるというのがちょっと面白いよね。

【高畑】その技術もすでにあったからできた感じ。イベントに行ったときにもらった資料を折りたくないとか、チラシがくしゃくしゃになるというのが嫌だなと思っていたから、これは本当にありがたい。

【きだて】人に資料を渡すときにはちょっと使いづらいかもだけど、自分で資料を持ち歩くときだと、これで完璧だと思う。

【高畑】あとね、大きなファイルで開いて見るより案外楽で、ここに地図を入れておくとか、よく参照する資料を入れておくと、パカッと開いたときの開きやすさがすごいいいんだよ。

【他故】出しやすい、開きやすいだね。

【高畑】それこそ、視察とか見学に行くときに必要なものを入れておくとか、あとはシフト表の類いだったりとか。イベントやるときに、配置図とかタイムテーブルとかがまとまってくれたらね。やっぱりでかいファイルだと邪魔になるんだよ。

【きだて】これで持ち歩ければ超楽だよ。

【他故】持ち歩くと考えたら、A4は本当にでかいからね。

【高畑】前回の鼎談で話した測量野帳」に地図を折りたためば小さくなるけど、それこそイベントみたいに絶対に必要なのが分かっているときに、パッと見られれてパッと綴じれれるものがあるのはね。A4でプリントされたものを持って、その日1日動かなくてはいけないというのは意外とある。次のイベントのときには、これを持っていこうと思うよ。

――これ、家庭でよく使われていると聞きましたよ。

【高畑】えっ、マジですか。でも、確かにこれめっちゃ売れているらしいから。

【きだて】ご家庭で何に使うの? 学校からのプリントを入れるとか?

――出前のチラシを入れておくとか。

【他故】うちでもしやるとしたら、クラスの連絡表がA4で1枚で来るのね。あれって、貼っておくとなくしちゃうし、貼ったところ見ながらだとやりにくいから、紙のまま手元に置いてあるの。そういうときに、これが電話の横にポンと置いてあったら楽だと思う。

【きだて】そうか、小さいからいいよな。A4が立っているよりはいいよな。

【他故】パッと見られるし。

――学校のプリント入れるのにいいかもしれませんね。

【きだて】学校のプリント入れるのに、5枚とか少なくないか? 連絡表ならいいのか。

【他故】参照するものは決まっていて、全部入れるのではなくて、連絡表とか時間割とか、夏休みのやらなくてはいけないこととか、そのぐらいの量で1冊作っておけば、プリントをなくさないでしょ。

【きだて】なるほど、いいかも。

【高畑】参照するときに、一番見るやつを一番表に入れておけば、それはすぐに見られるじゃん。これが意外と大きなファイルより、むしろこの方がアクセスがいいんだよ。大きなファイルだと、めくって「どこだっけ」になるんだけど。

【きだて】開いちゃえば、普通のファイルと同じように見られるわけで。「よっこいしょ」と開かなくていいから、サイズ感的にいい。

【高畑】絶対にここが開くんだよ。ファイルの場合だと、いろんなページが同じように開けるようになっているから、「一番最初のページを開くぞ」となるんだけど、これって開くしかできないから。絶対開くとここになる。

【他故】ああそうか、パラパラとならないからね。ここがとにかく開くから。

【高畑】そう、だから一番見るもの、電話番号のリストとか、今日絶対見るものが決まっている場合は、これいいですよ。

――なるほど。

【高畑】あと、このタテからヨコへの連携というのは、思いつく人はいたのかもしれないけど、ちゃんと作ってあるし、不自由なく使えるので。

【きだて】いや、このタテ・ヨコは発明だなと思ったよ。

【他故】最初に聞いたときに、2つ折りにして折り目がつかないなんて前からあったじゃんと思っていたけど、開いてみたときに全然違うものが出てきて「えっ、こっち」って驚いた(笑)。

――折り目がつかないものは前からありましたよね。

【他故】いろんなところがやっているので、折り目がつかないのは分かるんですよ。

【高畑】「折り目がつきません、使うときはそこから取り出して下さい」なんだけど、これはこのまま見られるから。最大20ページまで見られるわけだから、これがね~。

【他故】思った以上にいいですよ。

【高畑】前からあった折りたためるやつは、「折りたたんで、傷をつけずに持ち運べますよ」なんだけど、これは「参照できますよ」だから、大分違うよね。

【他故】違う。見る方だからね、これは。

――3つ折りの「オレッタ」があって、折れないで持てますよというのがあって、さらにステップアップで「コンパック」があるという感じですかね。

【高畑】そうそう。例えばこれだと、旅行にいくときに行程表をバーンと入れておいて、もちろんチケットとか入れておいてもいいし。「オレッタ」に比べたら紙の出し入れがしづらいけど、これはこれでアリだよな。

――一々出さなくても、そのまま見られますからね。

【きだて】閲覧性ということに関しては、飛び抜けていい。

【他故】最高ですよ。見たいものは前に入れておいて、後ろはポケットとして何でも入れちゃうという発想もアリだから。

【きだて】それでもいいよね。

――もうちょっと進んだ発想をしたわけですね。

【高畑】思ったよりストレスが少ない。使うときに気になるポイントがあるかなと思ったんだけど、そんなにない。

【他故】ないんだよね。

【高畑】強いて言うと、タテとヨコの折り目のところが、ずっと使っていると傷んできそうだけどね。でもね、この力の逃がし方がね、このレールが憎いよね~。

【きだて】でもね、俺最初よく読まずにね、このレールのところが外れるのかと思って、力を入れちゃったよ。後で、「NO」って書いてあるのを見つけて(笑)。

【高畑】「ここ開くな」って。

【他故】「動きません」って書いてある。

【きだて】まさに言われる前にやっちゃった(笑)。

――クリップみたいに見えるから。

【きだて】パカッと開くのかと思って。

【他故】これ、折れない防止だと思ったんだよ。折り目がつかないためのガイドかと思っていたんだけど、実際に開いてみたら「ここ動くじゃん」っていう(笑)。

【高畑】でも、この厚みがここで固定されているから、これ以上ギュッてやらないというのはある。

【きだて】そこは大きいよね。

【高畑】あと、全体的にPP製品の割には質感がいいなと思って。この背の軟質のところとか、ゴムバンドの選び方とか、そういうのもあると思うんだけど、PP製品によくある安っぽさはあんまりない。

【きだて】ないね。この軟質の部分の質感がそれに貢献しているよね。

【他故】持ち歩くって考えたときに、そこを持つからね。

【高畑】手に当たるのここでしょ。

【きだて】そこがいいんだよね。背の部分が。

【高畑】普通は、PP特有の「安い素材です」という感じが手に伝わるんだよね。

【きだて】そういうのは角がカチッとしてて、「ああ、硬いもの持ってんな」ってなるんだけど。

【高畑】そこの柔らかさが、高級感というか、落ち着いたしっくり感があるんだよ。

【他故】安いやつだと、ここから割れていくからね。

【きだて】ああ、そうそう。

――ここの背のところが、バリバリになっちゃうんですよね。

【高畑】製品としての完成度が高い。これ600円くらい?

【他故】5枚タイプで500円だね。10枚で600円。

【高畑】500円、600円でやっている割には安っぽさがないし、実用性が十分にあって。これはね、お買い得商品なんだよね。

【きだて】最近のキングジムは、これといい、引き出しの前につける収納(デスクポケット)といい、いいところを突いてくるなと思って。

――こういう商品って、ファイルメーカーならではという感じがするじゃないですか。

【高畑】キングジムは、こういう便利なファイル系をすごい模索してるじゃん。それで、いろんなものを出してるじゃん。もちろん、全部が全部生き残るわけじゃないとは思うけど、その中ではこれは突出した面白さがあるし、実際に使ってみて便利なので。

【きだて】ただね、使ってみないと「便利」ってなりにくいと思うんだよ。

【高畑】それがね、店頭でめちゃ売れてるんだって。

【きだて】あっ、そう。じゃあ、ちゃんと伝わってはいるのか。

【高畑】他のファイルに比べて、店頭での伝わり率が高いってこの間言ってたよ。

【きだて】ああ、そうなんだ。ちょっと意外。

【高畑】店頭で間に合わないぐらい売れているって。

【きだて】それじゃあ、よかったよ。

――多分、A4を2つ折りにできるところでまず「おっ」て思うんですよ。

【きだて】やっぱそこはキャッチーか。

【高畑】あとね、これ小さいから、売場的に他のファイルと一緒にされないんだよ。これだけ手に取りやすいところにあるんだよ。

【他故】単体什器なんだよ。

【きだて】あ~、大体分かった。なるほど。

【他故】他のファイルって、みんな同じじゃん。棚に入れられちゃうと全然個性が分からない。

【きだて】背だけ見えるという状況ではないのね。

――東急ハンズで見たら、ファイルとは全く別のところで、これだけで売っていましたよ。

【他故】それで、「これなんだろう」と手に取るという。

【高畑】1回、パッと開いただけで「わあっ、なるほど」というのがあるからさ。

――開いたら驚くと思うな。

【きだて】これ、中紙のデザインもよくできているんだわ。開いたときに、向きが分かるからね。

【高畑】それ大事。

【きだて】縦書きのアラートがほとんどないんだよ。横書きばっかりで書いてあるから、「ああこうだ」って持ち直すんだよ。その辺のデザインは、ちゃんと考えてあると思うよ。

――そうか、それで横書きか。

【きだて】そして、この「NO」ね(笑)。

キング2.jpg

【他故】しかも、最後まで読んで、「ここ何だろう?」と思ったら「NO」ね(笑)。

【きだて】だから、俺みたいに読まずに触っちゃう人間はダメなんだけど(笑)。

【高畑】欲を言えば、ここだけ赤か黄色で書きたいところだけど。

【きだて】そうね。エマージェンシーだからね、これ。

【高畑】きだてさんが言うように、この紙自体も上手に誘導しているんだよね。

【きだて】この中紙のデザインも相当考えただろうなと思って、ちょっとほっこりした。「いい仕事」と思って。

――リヒトもそうですけど、いい仕事してますね。

【きだて】この辺のファイル系は、最近満足できているよ。

――女子向けのかわいいものを出す一方で、ファイルでもいい商品出してますね。

【高畑】ちょっと停滞感のあるジャンルが、こうやって盛り上がっていくのはいいじゃないですか。

【きだて】かわいいのは文具レディに任せて、俺らはこれをほめよう。

【高畑】「いいぞ、もっとやれ」っていうことで。

【他故】本当にそうだよね。

文具ドリームを実現したグランプリ商品

ぷんぷく堂.jpgあなたの小道具箱(ぷんぷく堂、2,400円) 千葉県市川市にある文具店・ぷんぷく堂のオリジナル商品。“あなたの小道具”を入れるちいさなお道具箱で、50年は持つと言われている硬質パルプパスコで一つひとつ職人が製造している。ぷんぷく堂初のロングライフ文具。 「第26回 日本文具大賞」デザイン部門グランプリを受賞。

――そして、今年の文具大賞のグランプリに輝いた「あなたの小道具箱」です。

【きだて】最初は「ただの箱だろう」と思っていたけど、手にして物を入れてみると、この薄さがすげーいいなと思って。

【高畑】ちょうどいい感じだね。これね、何かお弁当箱なんだよね。

【きだて】この薄さはね、中に入れたものが踊らないんだよ。それこそ工具とか、チューブの接着剤とかを放り込んだときに、中で縦にガッシャガシャ揺れない。

――そうか、工具を使うきだてさんにはちょうどいいですね。

【きだて】長尺のドライバーとかは入らないけど、ちょっとしたレンチぐらいなら普通に入るので。それで、この丈夫さでしょ。それこそ、カラーボックスなんかに使われている紙でしょ、これ。

【高畑】昔から決済箱とかでこういう造りのものがあって、そのサイズを変えただけなんだけど、このサイズの変え方が「ちょうどいいよね」ということなんだよ。

【きだて】そうね。

【他故】ハガキ入るかな?

【きだて】入るよ。

――ほぼハガキサイズですか。

【高畑】このハガキサイズというのが大体筆記具が入る大きさ。これだけあれば、はさみとのりと15㎝定規とペンなんかが一通り入るだろうね。

【他故】そうね。

【高畑】まあ、いい大きさ感にしたという感じだよね。

――このフタを開け閉めしたときの音にこだわりがあるんですよね。「カポッ」ていう。

【きだて】いい音だよね。

【他故】このメタルの打ってあるところもカッコいいし。

【高畑】ちょっと贅沢感があって。あれだよね、ぷんぷく堂へ入って、時を忘れるほど話し込んでたら、帰りにこれをお土産で渡されて「絶対に開けないで下さい」と言われるやつだよね。そして、開けてみると300年経っていたという。

【きだて】じゃあ、櫻井さん(ぷんぷく堂店主)は乙姫様か?

【高畑】う~ん…。

【きだて】お願い、なんかコメントして(笑)。

【高畑】ていうか、それくらい大事な物入れっぽい感じがする。

【他故】まあ、それはあるよね。

【高畑】道具箱なので入れる物は何でもいいんだけど、入れる物に大事さ加減を追加するような雰囲気があるよね。

【きだて】そうね。

【他故】うちは今、使っていない万年筆を休ませるために使っているよ。

【きだて】そういうので全然いいよ。

【他故】普段使っているやつじゃないんだけど、ちょっと休ませている。

【高畑】家庭だと、大事な印鑑セットを入れておくとか、そういう系にはちょうどいいよ。

【きだて】あと、この厚さだから、重ねて置いておいてもそんなにボコッとかさばらないというかね。

【他故】しかも、こういう箱だから、多少厚みのあるものが入っても、邪魔な感じもしないし。

【きだて】一応ゴムバンドが付いているから、多少フタが浮いても留められるし。

【他故】持ち運ぶことも一応考えながら。

【高畑】何を入れようかと考えるのが楽しいのかな。

【きだて】サイズ的に、中に入れるものもイメージしやすいし。

【高畑】これを入れなきゃいけない何かがあるわけじゃなくて、これを見て色々詰めたくなるのが、この箱の良さかな。

【きだて】いいこと言った。そのイメージだ。

【高畑】先にこの箱を買っちゃうんだよね。それで、「何を入れようかしら」と考えるのが楽しい。それにちょうどいい大きさなんだよね。「私だったらこれを入れる」を色々想像できるいいサイズなんだよ。

【他故】そうそう。

【きだて】半分は白米詰めてとかね。

【他故】白米(爆笑)。

【高畑】箱全部に白米と梅干しが入っていて、それを見た岩鬼が「ガーン!」って言うんだよ。

(一同爆笑)

【きだて】そっちか~。

――サンマを入れておかないと(笑)。

【他故】そうか、ドカベンだったのか。

【高畑】昔のお道具箱とか弁当箱の記憶がパァーッとくるんだけど、大人が使えるこの感じが上手だな。これ、ちょっと大事な物を入れたくなるよね。

【他故】なるね~。

【高畑】これ2,000いくらだっけ?

【他故】2,400円かな。

【高畑】この商品自体が安くないけど、ちょっと気合い入っている入学祝いとか。この中に、何かを詰めて贈ると最高にいいよ。

【他故】あ~、いいね~。

【高畑】これ、何でも合うじゃん。学童系を入れても合うんだけど、大学生の合格祝いとかでも、ハサミとか定規とか「ちゃんと選んだの入れたよ」みたいなのもできるし。

【きだて】まあね。

【高畑】ギフトボックスとして使うにはちょっと高いので、普段は使わないんだけど、これだけ良い物感があるので、こんなのを袖の下から渡されるとね。

【きだて】尖っている角が1個もないから、良い物感があるんだよね。

【他故】うん、分かる、分かる。

【高畑】ミニチュアって、シャレだけで終わる場合が多いじゃん。そこをギリギリ上手く突いたなと思う。これ以上小さいと、単なるミニチュアのおもちゃなんだよ。で、実際に使わないし。そう考えたときに、ギリギリ小さくて、普段使いできるミニチュアなんだよ。

【きだて】その感覚は分かる。伝わるよ。

【高畑】これ、明らかにミニチュアなんだよ。僕らがどこかで見たことのある箱の小っちゃい版だから。なんだけど、ミニチュアのおもちゃにならないところがね。

【きだて】ギリ実用のコンパクトさが、いい方向に出ているという。

【高畑】そうなんだよね、いいよね。だから、ぷんぷく堂やるなぁという(笑)。

【きだて】このサイズ感に決めたのは「やるなぁ」だよ。

――どういう感じでサイズを決めたんでしょうね?

【高畑】やっぱり、ハガキなんじゃないかな。

【きだて】削っていない鉛筆とかが入るんじゃないかな。

【他故】削ってないのだと入らないよ。

【きだて】入らないか。

――試しに入れてみましょうか。

【他故】18mmあれば入るよ。

【きだて】(鉛筆を入れてみて)入らないか。

【高畑】ななめにすれば入るけどね。そんな感じだよね。

【他故】キャップ式のボールペンが入るくらいだよ。

【きだて】そんなくらいかな。

【高畑】「オ・レーヌプラス」がギリギリくらいかな。

【きだて】前回「長い」って言っていたシャープペンね。

【高畑】これ、鉛筆が入る大きさにすると、また大分印象が変わるんだろうね。

【他故】そうだね。

【高畑】本当にね、いい線見つけたんだろうな。しっくりくる。

【きだて】ね。

【高畑】手触りも柔らかいし。

【きだて】非常に良い商品だ。これ紙なんだよね。

【高畑】そうだよ。旅行カバンでこれを使っているのがあるくらいなので、それこそ「ゾウが踏んでも壊れない」系の丈夫さだよ。

【きだて】頑丈だよね。

【高畑】もちろん、このサイズなので軽くはないけど、丈夫な素材だよ。もちろん、重すぎないけど。

【きだて】50年保つ素材だと言っていたね。

【他故】そう言ってたね。

【高畑】まあ、保つよ。50年前の決済箱が、普通に大学とかに置いてあるもの。

【他故】意外と長く使えるんだ。

【きだて】俺も1個買っただけだから、もう2、3個欲しいなというのはあるんだよ。

【高畑】重ねたくなるよね。色違いでね。

【他故】そう、俺も1個買っただけだから。

――4色重ねたくなりますよね。

【きだて】あ~、いいね~。赤以外のやつください。赤はうちにあるから(笑)。

【他故】俺は青があるから。

【高畑】俺は緑持っているから。

――じゃあ、みんなで持ち寄って重ねればいいのでは(笑)。

【きだて】それじゃあ意味ないです(笑)。いや、とてもいいものなので、グランプリも当然という感じで。

【高畑】一人で始めていろいろやってきた人が、これだけ成功してくるというのは、ステーショナリードリームな感じがあるじゃないですか。


*Vol.5後編「ブング・ジャムの逸品編」は近日公開

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。

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