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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.80 今、このペンが面白い! 超個性的な最新筆記具をチェック! その2

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、超個性的な筆記具3本を取り上げました。

第2回目は、ゼブラの「ピタン」です。

写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長*2023年11月11日撮影
*鼎談は2023年10月24日にリモートで行われました。

ノートや手帳に“ピタン”とくっつく!

ピタン1.jpg「ピタン」(ゼブラ) ノートに装着する専用ホルダーに磁力で固定できるボールペン。まるでノートの一部のように持ち運びができ、すぐに書き出すことができる。ノートの裏表紙や厚紙に、クリップがついた磁石内蔵の専用ホルダーを装着し、そこに磁力でペンを固定する。使う時は、ホルダーから取り外しノックするだけで使い始められる。アイデアが浮かんだ時など、少ない動作ですぐに書くことができる。ボール径0.5㎜、税込1,320円。

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【高畑】この流れでいくと、次は「ピタン」ですかね? ちょっと大人な感じにまとめました的な「ピタン」なんですけど、どうすか?

【きだて】面白いものかなと思ったら、すげえ手堅くまとめてんじゃんっていう。

【高畑】だから、そこだよそこ。

【他故】何を期待してたの?

【きだて】ぶっちゃけ、もうちょっとダメなやつだと思ってた。

【他故】ダメなやつ!?

【きだて】だってさ、あの平たい板に磁石でくっつけるだけなんて、「そんなの落ちるに決まってんじゃん、わはは」って笑おうとしたら、意外と安定感よくくっついて。

【高畑】そうそう。ウケがちゃんと受けてるもんね。

【他故】全然問題ないものね。

【きだて】カバンの中に放り込んどいても、それなりにちゃんとくっついてるんだよね。だから、実用性で言うと全然悪くないわけさ。それで、リフィルは「サラサ」の多色用のやつか。

【他故】そうだね。短いやつ。

【きだて】入手もそこそこは簡単で。

【高畑】別に困らないでしょ。

【きだて】それで、見た目がシンプルでおしゃれじゃん。そつなくまとまり過ぎて、こんだけほめたら、もうそれ以上言うことなくなっちゃったっていう感じです。

【高畑】きだてさんは気難しいなあ(笑)。ちょっと面白いところへ行くところの入り口はそうだけど、その後を丁寧に詰めるとこうなるという話だよね。

【きだて】そうなのよ。ものすごくちゃんと真面目に作ってんなっていう。それはそうなんだけど。

【他故】それはそうなんだけど、そうだよね(笑)。

――筆記具専門メーカーですからね。そこはちゃんとやらないと。

【高畑】真面目に作ったら作ったで、やっぱり思うところあるっていう。強いて言うならば、クリップのところに傷をつけないようにフィルムが最初に入っていて、それを挟んでから挟むというのが、何かもうちょっと気軽にパチって留めて、他のノートにまたパチって留めるかなみたいな感じにならないかな。ちょっと気合がいる感じがある。

ピタン3.jpg【きだて】言うてもあの保護シールはあんまり効かなかった印象なんで、どちらかというと、雑なノートに使ってガンガン付け外せるような運用がいいと思う。

【高畑】表紙が分厚くなるとクリップが心配になるところがちょっとある。抜き差しをあんまりするとクリップがゆるくならないっていう気がしていて、そこが気にはなるんだけど。あとは、可愛いんだけれども、紐が付いてるというか、後ろの部分が普通にノックとかじゃないから、ペンの出し入れ的にはちょっと気になるけど。まあでも、普通に使いやすいので。

【きだて】紐の部分っていうのは、紐付いてるからノックしにくいとかそういう話?

【高畑】そう。マグネットがあるから、別に紐要らないじゃんみたいな気はちょっとする。

【きだて】一応、紐の意味はあるんだよね?

【他故】取り出しやすだよね。他に引っかけるとこがないから。

【高畑】紐をつまんで出せってこと?

【他故】そうそう。このハウトゥユースの絵にそうやって書いてある。ホルダーにペンを取り付けて、出す時に紐のところを持って出すみたいな。

ピタン2.jpg【きだて】なんだけど、横方向に転がせば普通に取れるので、実はあんまり意味ないかな。

【高畑】ノックのところに紐が付いてるのが、ちょっと気にはなる。

【他故】押したときにね。

【高畑】あれはつまみなのね。

【きだて】何かそういうことだよね。

――ゼブラの人もつまみだって言ってましたよ。

【きだて】今のところ、あれをつままないと取り出しにくいとかそういうシーンには出合ってないので。

【高畑】それに、横に張り出してるからね。

【他故】うん、そうだね。普通に取れるね。

【きだて】よくは分かんないんだけども、でも見た目可愛いしぐらいの感じで。

――これは、価格が1,320円ですね。

【きだて】うーん、使って得られる効果から考えると、ちょっと高いのかな。

――クリップが付いてるからっていうのもあるのかな。

【他故】クリップが高いんだね。

【きだて】それなら、外付け式のペンホルダーを付けた方が安くね? とか色々と思うところがあるんだけどさ。

――何か、ゼブラにしては意外に高いなっていう。

【高畑】そうだね、ゼブラにしては高い気がするね。ゼブラいつも安いからね。

【他故】板が高いっすよ。

【高畑】「トプル」が3本か4本買えるよ。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】その換算はいかがなものか(笑)。安いメーカー2大巨頭が争うのはよくない。

【高畑】そういう意味では、1,200は別に出してもいいかな。いやだけど、手帳ブームにどう乗せるかだよって話なんだよね。多分ね。今の手帳ブームの中で、筆記具を持たせるかたちとして出てきたんだろうなという気がするので、やっぱ手帳がちゃんとブームっぽくなってくれてるからってのはあるけれども。まあ、どうなのかね。普通に便利ではあるけども、やっぱりこれも特殊な感じはするので。どの手帳に付けるかとかがはっきり決まっていて、ぴったり合ってる人にとってはすごくいいんだろうけど、そこを選ぶのがちょっと気にはなるかもしれないね。

【他故】まあ、メインの手帳が決まってる人だったらね。常に持ち歩きたいっていう人には。俺も今、こうやってライフの「ノーブルブック」にこれをずっと付けっぱなしにして使ってるけど、定位置があった方がいいっていう人には良いかなっていう気がするけどね。必ず1本ペンを持ってるというのは安心感があるし。

――それを付けた状態でカバンに入れていて、ペンが外れることはないんですか?

【他故】カバンに入れてても、「ノーブルブック」の角にゴムバンドが付いていて、ペンもそこに挟まるので、絶対に落ちないですよ。

――なるほど。

【他故】意外だったのが、これゲルインクだって知らなくて買ったのね。ゼブラの新製品だから、エマルジョンインクが入ってると思い込んでたんだけど。どっちかっていうと、想定は社会人の女性みたいな雰囲気なんだけど、ゲルなんだみたいな。

ピタン4.jpg【高畑】もうゲルなんじゃないの。社会人の女性はゲルなんだよ。

【他故】今はゲルなの?本来使ってほしいのはエマルジョンだったんじゃないの?っていう風に俺はちょっと思っちゃったんだけど。

【高畑】逆じゃないの。あれだけ散々「サラサ」を売ってきたんだから。これからは、エマルジョンよりゲルなんじゃない。

【きだて】俺も、「サラサ」の回収シークエンスだと思ってるんだけど。

【他故】そういうことか。

【高畑】年配の人を狙ってるんだったら、油性とかエマルジョンもありだと思うんだけど、今の若い人狙ってるんだったら、そのために散々畑を耕してきたんだから、ゲルを入れるのが当然かなという気がする。

【他故】なるほどね。

【高畑】むしろ逆に、極細とか入れてきてもよかったかなという気はするんだけどね。

【きだて】それはそうだね。

【高畑】もっと全然細い、「サラサナノ」みたいな細のを入れてきてもいいよねって思うんだよね。イメージとしては。

【きだて】「サラサ」の多色で0.3ってあったっけ?

【高畑】あるんじゃないの。

【他故】あった気がする。

【きだて】あるよね、多分。

――0.3はありますね。0. 4も。

【高畑】だから、交換はできるんじゃない。

【高畑】とは言いつつも、最初に入れておく芯としたら、もちろんそれでいいのかもしれないけど。感じとしては、細めの芯でゲルを入れるっていうのは、全然アリだと思う。それこそ、こういうところでニュアンスカラーの芯とか作ってもいいのかなと思うけどね。

――まあ、ノートにいろんな色で書きたい人もいるでしょうしね。

【高畑】まあ、単色ペンだから、ニュアンスブラックみたいな感じのを1本だけ選ぶとか、ブルーブラック系にするとか。

【きだて】「サラサ」だから、ヴィンテージ色とかその辺だっていくらでも作れるわけでしょ。

【高畑】選ばせ方のところでビンテージもそうだし、「ユニボールワンF」みたいにさ、そのボディのカラーによって芯径が違うとか、ボディのカラーによってなんかリフィルの色が若干違うとか、それがあるぐらいの遊びがあってもいいかなと思って。だって、「サラサ」はあんなに色作ってるんだからさ。そこに「サラサ」系の芯を入れるんだったら、もうちょっと遊んでもいいじゃんとは思う。手帳専用だしさ。おしゃれな人の手帳用って考えるんだったら、「0.38を入れたやつも用意してますよ」ぐらいの感じで、スタートで「この色は細いです」とかやってもいい気もするけどね。

――ヴィンテージカラーとかいいかもしれないですね。黒じゃない色を使いたい人は結構いそうですものね。

【高畑】ユーザーが勝手に遊ぶのはいいけど、せっかくだから、「そういうことができるんだよ」みたいな感じとか、「最初からそういうの狙ってるんだよ」みたいな感じで打ち出してくれればいいんじゃないのという気がするけどね。

――まあ、とっかかりとして、とりあえず黒でやってみたっていうのがあるのかもしれないですけどね。

【高畑】真面目だなぁ。

【他故】ははは(笑)。

――まあ、何にしても初めて出すものなので。でも、大人がゲルを使うって話は、前にも言ってたじゃないですか?。「油性に取って代わってゲルが来てる」みたいなね。「畑を耕してた」ってまさにそういうことなんですね。

【高畑】ゼブラが今後出してくる、社会人でも若者向けのものは、どんどんゲルになっていいんじゃないのかなって気はする。「サラサグランド」みたいな立ち位置で、いろんなものを作っていけばいいのかなと思って。

【他故】うん。

【高畑】そこで、サクラクレパスとかパイロットがやってるみたいな、「黒だけど色が違うぜ」みたいな、おしゃれな攻め方もしてこないところが、ゼブラはなんか真面目だなっていう感じがする。基本の黒・赤・青から押さえていって、だんだん色を広げて、「50色ができました」みたいな感じの流れは真面目だなって。

【きだて】何か、順番を遵守するよね。

【高畑】不用意に、高いものはあんまり作らないし(笑)、なんかいろんな意味でゼブラは真面目だなって思ってます。

――確かに。ゼブラも、純粋な新製品っていうことになると、久しぶりだったんですよね。

【高畑】そうだよね。

――「ブレン」の透明軸で限定ものとか、そういうのはちょくちょくやってましたけど。

【他故】ほら、「バイオチューブ搭載ジムノック」があるじゃないですか。

――あれの開発に結構時間がかかったみたい。

【高畑】まあ、環境とかに真面目に対応していくのはいいと思うけど。でも僕ら的にはさ、もうちょっと楽しくいきたいわけじゃん。

【きだて】まあでも、「バイオチューブ」って名前がかっこいいから。

【他故】90年代の感覚だよ。心臓がドクドクいってるみたいな。

【高畑】別に、それはそれでなんだけど、使ってるとさ、環境の意識を持って選ぶっていうのも大事だけれども、使ってる人の使い勝手が大きく変わるものっていうのを、やっぱり出してほしいんじゃない。そういう意味では、「ピタン」とかも最近あんまりメーカーが出さない系のものなので、これもやっぱりサンスターと同じ視点でありがたいというか、面白い。

【きだて】やっぱり、こういうトライはしてくんないと困るじゃん。俺らとしても。

【他故】まあ、そうだよね。

【高畑】そこは素直に喜んでいきたいよね。しかも「ピタン」に関しては、文句なしで普通に使いやすいじゃん。特に欠点があるわけじゃなくて、こういう目的で使うってことを考えたら、まあ妥当な作り方だし、なんかすごいちゃんとしてるから。まあ、きだてさん的には、そつがなさ過ぎて突っ込めないっていう、若干それはあると思うので。

【きだて】やっぱり、ゼブラらしさというのがあるわけじゃない。きちんと隅々まで、突っ込まれないように頑張ってる感。

【高畑】それはあるな。

【きだて】そういうのが見えてくるし、「マジメに頑張ってるなぁ」と。

【高畑】だから真面目にちゃんと収まっていて、普通に使い勝手がいいので。まああとは、さっきも言ったように、楽しみたい人はリフィル交換して遊ぶとといいよって感じかな。何か、こういう新しいアイテムが出てきたのはいいんじゃない。

――新しいものがまた出てくる傾向なんですかね?

【高畑】まあそれは、ある意味サンスター文具の功績ではあるような気がする。こういうのが結構売れてるっていうのに対してのショックは、多分あるんだろうなという気はするからさ。

【他故】かき混ぜてほしいよね。

【高畑】「ああいうのも売れてんじゃん」みたいなので、他のメーカーが色めき立つみたいなところはあると思います。

*次回は「マットホップ」です。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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