東京・御茶ノ水にある、画材のセレクトショップ「トゥールズお茶の水店」。ひと言に「画材」と聞くと、何だかハードルが高そうなイメージもするけれど、同店では「ものづくりの楽しさ」を感じられるアイテムをそろえているそう。今回は「文具とびら」編集部員が、トゥールズお茶の水店に取材し、話を伺った。

トゥールズお茶の水店は、JR御茶ノ水駅から徒歩約1分。1階では文具雑貨、コミック用品、アルコールマーカー「コピック」などを、2階では絵の具や鉛筆、キャンバスなど本格画材を多数そろえている。今回、お話をしてくれたのは、1階担当の遠藤さん。文具雑貨の商品選定やディスプレーなどを担っている。

店内入ってすぐに目を引くのは、棚一面に並んだ多くのマスキングテープ。シンプルなもの、柄のあるもの、箔押しがされたもの、さらには幅が太いものから細いものまで、ありとあらゆるマスキングテープが並んでいる。「特定のメーカーに偏ることなく幅広い種類をそろえるようにしています。正確な数は分かりませんが、100種類以上はあると思います」と遠藤さん。

「たくさんの種類の中から宝探しをしているような気分で選んでいただけるよう、商品をそろえています」と話すその言葉通り、カラフルな棚を前に「どんなデザインのテープに出会えるのだろう」とワクワクした気持ちになる。

なかでも遠藤さんがおすすめしたいというアイテムが、カモ井加工紙の「mt Art Tape」と「mtちぎはり」シリーズ。どちらも、色鉛筆や水彩タッチのデザインが特徴のマスキングテープで、特に「mtちぎはり」はテープが薄くちぎりやすいのが特徴。ちぎって貼って、まるで絵を描くように楽しめる。

「使ってみると、まるで画材で描いたようなテクスチャーになるのが面白いです。透け感もあるので、重ね貼りをして混色をするような感覚も楽しめます」（遠藤さん）。店内のPOPや見本には、遠藤さんが作成した「マスキングテープアート」が多数。まるで水彩絵の具やクレヨンなどで描いたかのように見える作品をよく見てみると、淡い色合いのテープが重なり合っているのが分かる。テープの柔らかさや色づかいから、やさしい雰囲気に仕上がっている。


マスキングテープなら、手も汚れずに済むし、準備や掃除の手間も少なくて済みそう！とはいえ、いざ何かを「作ろう！」と思っても、何をモチーフにしたらいいか分からずなかなか一歩を踏み出せないことも。
すると遠藤さんは「作家の方は風景などを描かれますが、いきなりそれだとハードルが高いので、やり始めはお花とか、カラフルで分かりやすいモチーフが簡単かと思います」とのこと。
「あとは、何かを描こうとしなくても、ちぎったテープをカードとかに散らすように貼るだけで華やかに仕上がりますよ。クリスマスには赤と緑、春ならピンクなど、季節やシーンに合わせて色を選んで貼ったりして」。

それを聞くと、不器用な自分でもアレンジができそうに思えてくる。しかもマスキングテープなら、たとえ途中で間違えても貼りなおせるので、絵の具などを使った作品づくりよりもチャレンジしやすそう。

さらに編集部員が気になったのは、店内奥に並んだ、キラキラと輝く画材と、棚に飾られた見本の数々。こちらは「ものづくり」が楽しくなるアイテムを集めたコーナーだそう。

中でも目を引くのは、簡単に箔押し加工ができる画材「ホイルフレーク」。加工したいところに専用のグルーをつけた後、キラキラとしたホイルフレークを振りかけ、そのあと余分なフレークを払えば、まるで箔押しをしたような仕上がりになる。

およそ10分から15分程度で完成するので、手軽に挑戦ができる。さらに遠藤さんによれば「グルーを付けたスタンプを押して、その上からフレークをかければ、細かい部分も箔加工ができちゃいます」といったアレンジも。手帳やスケッチブックの表紙などに施せば、手持ちのアイテムに簡単にオリジナリティが出せる。

マスキングテープコーナーをはじめ、こうした売り場のほとんどの見本を作っているという遠藤さん。聞くと、自身でもマスキングテープを200個程度持っているのだとか。
遠藤さんは「ものづくりは時間を忘れて没頭できるので、つくることそれ自体も楽しいです。でも、できたときの楽しみや、自分で作ったものを飾ったり、誰かに贈ったりすることでも喜びを感じられますよ」とその醍醐味を教えてくれた。
さらには「デジタルにはない手触りや‟手仕事感‟も感じてもらえたら」とも。今後もまだまだ続きそうなおうち時間。デジタルですぐに誰かとつながるのもいいけれど、手軽にできる「ものづくり」に挑戦してみるのもよさそう。