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【文具プレイバック】1987年の文具パレード

北澤孝之(Bun2編集長)

先日、ある文具メーカーのベテラン社員の方から、「自分が若い頃に、文具業界をあげて都内で仮装パレードをしたことがある」という話を伺った。

「それで、パレードは何時やったんですか?」と尋ねたら、「確か、昭和60年代で、文具の日でしたよ」という。「文具の日」については後述するが、毎年11月3日がその日にあたる。昭和60年~63年(つまり1985年~88年)のどれかの11月3日に文具パレードを行ったわけだ。

弊社は、70年にわたり文具業界新聞を発行している。古きが故に尊からずではあるが、昔の業界の出来事がすぐに調べられるのはありがたい。というわけで、その当時の新聞をあたってみたところ、確かに1987年(昭和62年)11月3日に「文具仮装パレード」を行ったという記事が載っていたのを見つけた。

文具業界人800人が参加した大パレード!

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「旬刊ステイショナー」1987年11月15日号のトップ面にその記事が掲載されていたのだが、それによると、パレードは上野公園で行われたようだ。11月3日午前10時20分に上野・東天紅前から、警視庁のブラスバンドを先頭に仮装パレードを開始、池之端をめぐって上野の森へ向かったと書いてある。「三匹の子豚」「七福神」「西遊記」など思い思いの仮装をした22メーカー、約800人が参加する大パレードになったそうだ。

載っていたパレードの写真を拡大してみた。モノクロでしかも不鮮明な写真なので恐縮だが、当時の様子が少しでも分かるだろうか。写真は1枚のみで、記事中で「主催5団体幹部がミス東京らと並んで行進」と説明している部分のところだと思われる。仮装した人たちがパレードをしている写真が載っていなかったのが残念ではあるが…。

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「文具の日」制定記念の大パレード

文具パレードは、どうやらこの年限りの催しだったようだ。念のため、この翌年の新聞も確認してみたが、パレードの記事は見当たらなかった。
では、何故この年に限り大規模なパレードを行ったのであろうか?

それを解くカギは、前掲の記事の見出しにある。地紋をかけた見出しに「高らかに『文具の日』を宣言」と書いてあるのがそれだ。実は、「文具の日」はこの年に制定されたのであり、その記念に文具パレードが行われたのだ。

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ここに掲載した記事は、同年6月15日号のもので、「11月3日は『文具の日』」と定められたとある。記事のリード部分には、「東京の文具・紙製品メーカー、卸、小売五団体は都の援助を受け、今秋から都内全域で『文具の日』キャンペーンを実施することになった。同キャンペーンは11月3日の文化の日を『文具の日』と定め、10月23日から同日まで文具週間として様々なイベントを盛り込んで文具の需要喚起を図っていこうというもの」と書いてある。

高い文化を育てる文具

そしてその後、10月5日号の紙面には、文具パレードの実施が正式に決定したとの記事を載せている。

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「文具の日」のキャンペーンは、10月22日~23日に行われた「東京国際文具フェア」(今のISOTとは違い、一般ユーザーも来場できるイベントだったようだ)を皮切りに都内全域で展開されたが、その最後を飾るイベントとして文具パレードを行ったのだ。

当日は、文具パレードの後に「文具の日」制定記念式典が行われた。冒頭に掲載した本紙の記事によると、東京文具工業連盟堀江会長が、「有史以来、文化と文具は常に交わりつつ、長い歴史をつくってきた。また、今日のわが国を一流国に押しあげた原動力は教育であり、その教育を支えてきたのは文具である。いつの時代にあっても“高い文化を育てる文具”を標ぼう決意し、きょう11月3日を『文具の日』と定め、ここに宣言する」と述べて、「文具の日」を高らかに宣言したとある。文具は“高い文化を育てる”ものなので、文化の日に「文具の日」を制定したのだ。

パレードはその年限りだったが、その後も「文具の日」キャンペーンは続けられ、筆者がまだ駆け出しの文具記者だった頃には、海外旅行が当たるキャンペーンも行われ、その抽選会に立ち会ったこともあった。だが現在は、残念ながら大々的なキャンペーンは行われなくなってしまった。時代の変化もあってやむを得ない事情もあるのだが、今は文具がブームになっているので、何かもったいない気がしないでもない。文具パレードは無理かもしれないが、再びこの日が注目を浴びるような仕掛けができないものだろうか?
33回目の文具の日を迎えるにあたり、そんなことを考えた次第である。

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