三菱鉛筆は、2010年にキャップ式の消せるボールペン「ファントム」を発売しているが、ノック式は今回が初めて。

「なんとかノック式を出したかったのですが、ノック式の開発には技術的に難しい問題が多々ありました。“どこで消すんだ”というのは色々と考えましたが、やはり消し具は後部にあるのが便利です。だからといって、ノック機構を他に移すと操作性に問題があります。ボールペンのノック部はいわば“一等地”ですが、“ノック・書く・消す”の３つをここでどう並列させるのか。この部分がまず壁となりました」と話すのは横浜開発センターの並木義春課長代理。

並木さんが、その課題を解決するために考案したのが「ロック機構」。従来のボールペンと同様にノックできるが、ペンを逆さにするとロック機構が作動して消し具を固定するので、しっかりと消すことができる。このアイデアが出てからおよそ３年かかって開発したそうだ。パーツの部分で試行錯誤が続き、その間に試作品もかなり作ったという。
内部機構が見えるデモンストレーション用のペン。ペンを逆さにすると赤い部分のロック機構が作動して、消し具を固定する。

ちなみに、このアイデアの元となったのが、同社が1980年に発売した「フリッカー」というシャープペンシル。１本1,000円の高級品で、“念力シャープ”というニックネームも付いていたという。このフリッカーに付いている消しゴムは、筆記時には引っ込んでいるが、ペンを逆さにすると消しゴムが現れ、使用時には固定されるという仕組み。昨年11月に発売されたゼブラのシャープペンシル「デルガード　タイプＥＲ」も同様のコンセプトの商品だが、構造的には全く異なるそうだ。この商品を見て、「自分たちの方向性は間違ってなかったと確信しました」という。
1980年に三菱鉛筆から発売されたシャープペンシル「フリッカー」。逆さにすると内蔵された消しゴムが現れ、使用時には固定される。

インクもバージョンアップしたものを開発。「インクの発色はもちろん、ノック式なのでドライ性能を高めています。特殊なインクなので、なめらかさを出しにくいですが、『ジェットストリーム』を出している会社なので、そこはこだわりました」と並木さん。

また、インクの粒子が大きいので、どうしても開口部が広くなるが、ペン先のチップの精度を高めて、インクを漏れにくくしている。

デザイン的には、クリップなどペンの顔となる部分をなだらかなフォルムにして、全体的に優しい感じにしている。

ちなみに、ノック部にあえてカバーを付けたのは、ペンケースに入れていると消し具に汚れが付きやすいから。「シャープペンをかなり意識しました」と並木さんは言う。もちろん、キャップを外したままでも問題なく使えるし、「指の脂が付きにくい素材なので、キャップを外したままノックしても大丈夫です」という。

「アールイーここにあり！」という存在感を出すためにも、初回からバリエーションも多彩に展開。インク色はオフブラック、ローズレッド、コバルトブルー、バイオレット、 グリーン、サンオレンジ、チェリーピンク、スカイブルー全８色。ブラックではなくあえてオフブラックとしたのは、「ブラックとすると、当社が発売している濃い描線が特徴のジェットストリーム等のブラックの色味をイメージするお客様もいるかもしれないので」というのがその理由。

オフブラックはスタンダード軸のほかに、パステルカラー軸と上質感のあるビジネス向け、ディズニー柄をラインアップしている。中でもディズニー柄が女性に大人気で、ビジネス向けもデザイン的な評価が高いそうだ。

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