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大ヒット油性ボールペン「ジェットストリーム」 そのなめらかな書き味の秘密に迫る

シリーズ累計で年間の販売本数が世界で1億本以上という三菱鉛筆の油性ボールペン「ジェットストリーム」。最大の特徴は、軽くなめらかな書き心地と、濃くはっきりとした筆跡だ。その書き心地の秘けつは、同社従来品と比較して筆記摩擦を30~40%も低減した低粘度油性インク「ジェットストリームインク」にある。2006年に日本で発売されると、そのなめらかさに驚愕する人が続出し、その口コミもあって大ヒット。たちまち人気No.1ボールペンの座を獲得し、筆記具の世界に“低粘度油性ボールペン”ブームを巻き起こした。

試作品数は1万超! かつてないなめらかさを実現したインクを新開発

三菱鉛筆によると、かつてないほどのなめらかさを実現した「ジェットストリームインク」の開発者は、実は油性ボールペンのインクが苦手だったという。もともと筆圧が弱く、油性ボールペンの書き味が苦手だったそうで、「ならば、自分に合う油性ボールペンインクを開発しよう」と思い立って開発したというのだ。

これまでの油性ボールペンには使われていなかった、低粘度で潤滑性の高い溶剤を新たに採用することで、かつてないなめらかさを実現。それに伴い、色材、添加剤などインク配合成分を全面的に見直しした。そのインクの試作品の数は、1万を優に超えるほどだという。

また、その開発の過程で、摩擦係数をコントロールする技術も確立したそうだ。油性インクの摩擦係数は、かなり低い数値までするのは可能なのだが、それでは滑りすぎるので、従来品の半分に。摩擦係数を下げても、書き味がガリガリしてはいけないので、「やわらかさを持ったインクにしよう」と決めたという。そして、濃く書ける色味と、従来のボールペンと比べてインクの出る量も多いので、速乾性を重視した。

インク開発に着手してから、およそ4年後となる2003年にまず海外で発売。その時に、「インクのほとばしるようなイメージ」から「ジェットストリーム」と名付けられた。ただし、この時発売したものは、日本では発売されていないキャップ式のボールペン。日本ではノック式のボールペンしか受け入れられないだろうと考え、ノック式が開発できるまでは日本で発売しないという方針だったという。

キャップ式とノック式は同時進行で開発されたそうで、「ノック式を絶対開発するんだという強い決意のもと、リフィルも共通で開発を進めました。通常リフィルは、部品点数も違うため別々に開発するものですが、これは異例のことでした」と話すのは広報担当の飯野尋子さん。

そのリフィルに関しては、インクの粘度を下げるとインク漏れが起こりやすくなるので、従来の油性ボールペンのものから一新。インクの逆流とペン先からの漏れ出しを防ぐ、「スプリングチップ&ツインボール機構」を採用している。

ジェットストリーム4.jpg

濃くはっきりとしたジェットストリームの筆跡(上)と同社従来品の油性ボールペンの筆跡

ジェットストリームの登場で“なめらか油性”ブームに

そして、キャップ式の発売からおよそ3年後の2006年に日本でノック式の「ジェットストリーム」が発売された(海外では2005年末に発売)。そして日本での反響は冒頭に述べたとおり。ジェットストリームの大ヒットにより、筆記具メーカー各社から相次いで低粘度油性ボールペンが登場し、さながら“なめらかボールペン戦争”の様相を呈している。

ジェットストリームは、スタンダードタイプを皮切りに、カラーインクバージョン、多色・多機能タイプなどなど次第にラインアップを充実させていった。やわらかな「アルファゲル」のグリップを採用したものもあれば、多色ペンの中には同社が独自開発したタッチペンを付けた「ジェットストリーム スタイラス」もラインアップ。ディズニー柄などの限定品もこれまでに多数発売している。

ジェットストリーム1.jpg 下から「ジェットストリーム スタンダード」「ジェットストリーム ラバーボディ」「ジェットストリーム アルファゲルグリップ」

三菱鉛筆 油性ボールペン ジェットストリーム SXN-150-07 黒 24

ジェットストリーム2.jpg 3月1日から数量限定で新発売した「ジェットストリーム/ディズニー」の新商品(税抜180円)

三菱鉛筆 ジェットストリーム ディズニー 限定 油性ボールペン 0.5mm ホワイトMリボン

書き味も機能もデザインも“プライム”

そして、筆記具の世界でまたまたエポックメイキングな出来事となったのが、2013年に発売された「ジェットストリーム プライム」。日本ではこれまで弱いとされてきたミドルクラスのボールペンだが、これが異例の大ヒットとなった。それだけ、「ジェットストリームをかっこよく使いたい!」というユーザーが多かったのだろう。なめらかな書き味は変わらず、さらに紙に吸い付くようにも感じられる。

税抜3,000円のノック式の3色タイプと、同5,000円の3色+シャープペンの多機能ペン(回転繰り出し式)を発売したが、5,000円の多機能ペンの方が売れているというのだから驚きだ。現在は、税抜2,200円の単色タイプと、2色ボールペン+シャープペンの多機能ペン(同3,000円)もラインアップ。

シンプルかつスタイリッシュなデザインで、男女どちらでも選びやすいように、カラーバリエーションも充実させた。多色&多機能タイプは、スリムなボディも実現している。特に、回転式の多機能ペンでは、先軸を後軸にオーバーラップさせた、従来品には見られない流線型のデザインを採用している。

回転式は、軸が左右両方向へ360°回転するので、スムーズに芯の切り替えができるが、これも他ではあまりみられない機構だ。そして、ノック式多色ペンでは、新開発の「スライドノック機構」を採用。ノック時の感触が非常になめらかで、「書き味もノックもなめらかです」という。単色タイプも、静音ノックになる機構を採用。うるさすぎず、なおかつノックの感触は残したという絶妙なバランスのノック音だ。普及版のジェットストリームと使い比べてみると、その違いにすぐに気がつくだろう。

「クセになる書き味」がジェットストリームのキャッチコピーだが、このノックの感触もクセになりそうだ。

ジェットストリーム3.jpg今年1月に発売された3色ボールペン/2色ボールペン+シャープペンの新色ボディ「ダークネイビー」「ダークボルドー」

ジェットストリーム プライム 3色ボールペン 0.5mm ダークネイビー

5.jpg「スライドノック機構」を採用したジェットストリームプライム3色ボールペンのノックボタン。ノック時にノック棒が軸の中に落ち込まないので、ノックの感触がなめらか。

ジェットストリーム表.jpg

三菱鉛筆ホームページ
 http://www.mpuni.co.jp/


高畑編集長のひとこと

bunguou.jpg私が主催しているOKB48選抜総選挙(日本のボールペンシーンを代表する48種のボールペンの中から3000人近くの投票により決定される人気投票企画)において6年連続でダントツの1位を獲得しているのがこのジェットストリーム(スタンダード)です。http://sugobun.com/

2006年の登場以来、その人気は圧倒的。誰もが使うボールペンの中でも最もベーシックな油性ボールペンに、誰もが感じられるほどのインパクトを与えただけでなく、その書き心地は、単に粘度を下げただけではない絶妙なバランスで、文房具にあまり興味の無い人ですらその違いに気づくほど。その後のボールペン開発に与えた影響は計り知れず、昨今の文房具ブームの立役者と言っても過言ではありません。

ちなみに私は多機能タイプの4&1を愛用しています。

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