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【連載】パイロット指輪物語/第7話「作ってみたら硬かった!から始まる、『逆』の苦労」

文・イラスト/ヨシムラマリ

※この記事は、横浜YAMATOのウェブサイトに掲載されたものを再掲載しました。

第7話「作ってみたら硬かった!から始まる、『逆』の苦労」

 プラチナと金を1対1で配合する、というこだわりの元に開発が始まったPtau。しかし、スタートしてすぐに、なぜ今まで世の中にこの素材が存在しなかったのか、開発者たちは身をもって知ることになる。
 材料のプラチナと金を溶かして塊を作り、加工のために圧延してみたら…あろうことか、真っ二つに割れてしまったのだ!ブライダルジュエリーとして、なんと縁起でもないことか…。
 原因は、想定以上の「硬さ」。ん?ちょっと待って。「硬い=丈夫」だから「割れにくい」んじゃないの?と思われるかもしれない。たしかに硬い金属は、ひっかき傷などには強い。その点では「丈夫」だ。だが、「硬い」とは同時に「粘りがない」ということ。粘りがない金属は、力が加わっても柔軟に変形することができず、パックリと割れてしまうのだ。単純に硬ければ硬いほど良い、というものではないのである。
 それに変形しにくいということは、加工が難しいということ。これも、ジュエリーの素材としては致命的な欠点だ。そこでPtauでは「硬さを下げる」ことが最初の命題となった。これまでの素材開発においてはいかに「硬さを上げる」かに苦心していたのというのに、今度は真逆の苦労である。
 しかも素材は「1対1」と決まっているので、配合率を調整する手段も封じられている。いったい、どうすれば…。

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プロフィール

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ヨシムラマリ

神奈川県横浜市出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手がける。

著書『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)

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