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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #39「細かなコントロール不要の段ボール箱オープナー」

波子

昨年から自宅にいる時間が増え、外に出かけて買い物するよりもネット通販を利用する機会が増えました。
そうなると、届いた荷物を開封することも当然ながら増えることになります。

かつての私は、段ボール箱の開封時にカッターナイフの刃を少しだけ出して使うことが多かったのですが、ものによっては箱の内側ギリギリまで商品が詰まっている場合があり、刃先で傷つけてしまわないかドキドキしていました。
また、「少しだけ刃先が出せる」タイプの小型オープナーは薄い形状のものが多く、つまんで持つのが苦手な私には使いにくく感じてきたのです。

今回は、今の私が段ボール箱を開けるときに愛用しているカッターをご紹介します。

オルファ「カイコーン」

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202105namiko2.jpgオルファの「カイコーン」。武骨な形が頼もしい




オルファの「カイコーン」は、その名の通り開梱に特化したカッター。公式サイトでは「刃に指が触れにくい、安心設計の開梱用カッター」と説明されています。
本体はガラス繊維入りナイロンでできており、山型に尖った先端の両端にさびにくい高硬度ステンレス刃が突き出ています。柄の部分には適度な凹凸があって武骨な印象ですが、滑らず握りやすいです。

山型の先端(完全に尖っているのではなくほんのり丸みを帯びているので触れても安全)は、テープスリッター。箱の上面に貼られたガムテープの中央、段ボールの合わせ目に沿うように突き刺して引くと、刃を使わなくても楽に切り裂けます。

202105namiko3.jpg尖った先端はテープスリッター。ガムテープの上から段ボールの合わせ目に沿って楽に切り裂ける(使用品のため汚れや傷がありますご容赦)



202105namiko4.jpg高硬度ステンレス刃のカバーは、尖った先端でビニールひもなどをすくいあげて引くだけで切れるような形状になっている



この「突き刺す」というのがミソ。
柄の部分を逆手に握って使うこの方法は、例えばカッターナイフを持つときのような握り方よりも、自分の握力をそのまま先端に伝えやすいのです。
指先のコントロールはほぼ不要。ただしっかり握って、突き刺して、引く。それだけ。握力15kgの私でも問題なく開梱できました(握る動作は必要なので、もっと握力が弱くなると難しくなるかも知れません)。


202105namiko5.jpg本体を逆手に握るだけで切れるテープスリッターは、細やかな指先のコントロールが要らず力が伝わりやすい




段ボールの合わせ目に一度突き刺してしまえば、切り裂くのはテープのみなので、意外と楽に引くことができます。ただ、ビニールコーティングされたテープで封がされている場合、突き刺すのに力が要ります。でもこのカイコーンの先端はとても薄く加工されているので、何度か前後に揺らしながらぐいぐい押しつけると刺さってくれます。

202105namiko6.jpgビニールテープに突き刺すときはやや力が要るが、ぐいぐいと揺らしながら差し込めば大丈夫。あとは引くだけ




202105namiko7.jpgテープスリッターは先端に向かって薄くなっている。ガラス繊維入りナイロン製で頑丈




もしうまく切り裂けなければ、先端の左右に突き出たステンレス刃を使って開けられます。

202105namiko8.jpgステンレス刃は段ボール箱側面のガムテープを切るのに楽



ステンレス刃のカバーは刃先の方が尖った形をしていて、切りたいものを「すくい切り」できるため、ピンと張ったビニールひもや平たくてかたいPPバンドに当てて引けば簡単に切れる優れもの。
商品をぴっちり覆ったストレッチフィルムや、段ボール箱の側面に貼られたガムテープを切るのにも便利です。
段ボール箱の上面に使うとき、合わせ目からずれるとガムテープ下の段ボール自体も切れることがありますが(このときかなり抵抗を感じるので力が要ります)、中身に接するのはカバーであって刃ではないので、誤って切ってしまう心配はありません。

開梱の際に意外と厄介なのが、空気で膨らませた緩衝材。
大きな箱に小さな商品が詰められている場合は特に、あのふくらんだ袋の連なりをひとつずつ潰していくのは大変です(たまに握力トレーニングのつもりで爪を立てて握ることもありますが、量が多いと疲れます)。
カイコーンを使うようになってからは、ステンレス刃のカバー部分を使って破裂させています。
袋に当てて引っかけるような仕草で手前に動かすだけで、尖った先端が袋を裂き、容易に空気が抜けるので楽なのです。

202105namiko9.jpg緩衝材をつぶすのにはステンレス刃のカバー先端が便利。袋をパンと張って当て、軽く手前に動かせば切り裂いてくれる




柄の端には、落下防止用のコードなどを付けられるように大きめの穴が開いています。
我が家ではリビングの棚にそのまま寝かせて置いてあるので、手に取るときはこの穴に指を引っかけることもあります。つまむだけじゃないアプローチができるのは便利です。

202105namiko10.jpg本体の穴はコード用だが、手に取るときに指を引っ掛けられるので便利




単品で購入できるカラーはイエローのみですが、業務用パック(10個入り)はブルーとホワイトを加えた3色。
汚れたら水洗いも可能です。ただし使いきりのカッターなので、切れ味が落ちたら買い換えましょう。

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」http://nam-kid.hatenablog.com/

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