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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #38「筆ペンタイプの油性ペン」

波子

油性ペンはペン先がフェルトで紙にインクが浸透しやすいため、筆圧が弱くても書ける筆記具のひとつです。
太いものはキャップがかたくて開けにくいですが、それについては過去に解決策を見つけてご紹介しました。

#3「軽い力で使えるノック式油性ペン」
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/namiko/007616/

私はクレジットカードなどのプラスチック製カードに署名をするとき、細い油性ペンを必ず使います。これが意外とうまく書けなかったりするんですよね。
一発勝負で緊張するからなのか、長く使うカードなのに納得いかない文字になってしまうことも多いんです。

2年前の文具イベントで、藤村阿智さん(「文具のとびら」にてマンガ『お楽しみは文房具』連載中)の講演を聴いていた私は、その中で紹介された油性ペンに衝撃を受けました。

なんと、筆ペン型の油性ペンがあるというのです。
帰宅して早速ネットで購入したそのペンは、今やなくてはならぬ頼もしい味方となりました。

呉竹「くれ竹 油性筆ぺん ツイン」

呉竹の「くれ竹 油性筆ぺん ツイン」は、2018年発売。前年に発売された油性筆ぺんのツインタイプとして登場しました。

202104namiko1.jpgくれ竹 油性筆ぺん ツイン




一般的な筆ペンのインクはそもそも耐水性があり、封書やはがきの宛名書きにも問題なく使えるため、私は今まで「油性の筆ペン」というものに考えが至りませんでした。
前述の講演で、阿智さんは他にもたくさんの文具をご紹介くださっていたので、この油性筆ぺんについて多くの時間を割かれていた訳ではありません。でも、私などはそれまで知らなかったわけですから、もう目から鱗でメモしたのでした。

油性筆ぺん最大の特長は、やはり「何にでも書ける」ということ。プラスチックやガラスにも筆タッチの文字が書けるのは何だか不思議な感覚です。
共有の冷蔵庫に入れたプリンなどの容器に名前を書くシーンをドラマなどで見かけますが、油性筆ぺんツインの軟筆芯で書いたなら、きっとその線の強弱や躍動感あるタッチによって、かなり目立つのではないでしょうか。

公式サイトによると、写真入り年賀状にメッセージを添えるのにおすすめだと紹介されています。軟筆芯で筆文字やブラッシュレタリングができ、硬筆芯はメッセージや宛名書きに。

202104namiko2.jpg軟筆芯は太め。つるつるした面にも強弱つけた線が書ける



202104namiko3.jpg硬筆芯はしなやかなタッチで文字が書ける




私が一番重宝するのは、前述の「カードへの署名」です。
硬筆芯はつるつる滑りやすいプラスチック面をしなやかに捉え、落ち着いた気持ちで署名することができます。とめやはらいが表現できるので、心なしか文字もきれいに見えるんですよね。
ちなみに、一度だけ軟筆芯でカード裏に署名したことがあるんですが、さすがに太すぎました。

ノートの表紙にも書けてすぐ乾きます。
私は湿布をよく使うのですが、開封した日にちを書くのにも重宝します。筆文字が気分を上げてくれる気がするんです。
(つるつるした面に軟筆芯で書くと「キュキュッ」という音が鳴ります。苦手な方はご注意ください)

202104namiko4.jpg


筆ペンは、書いた文字がさほど整っていなくても、すべて「味」にしてくれる心強い味方です。
そして、筆圧が弱くペンを握る力が不安定な私にとっては、どう持っても文字を書かせてくれる頼もしさがあります。
そんな味方が油性ペンというジャンルに現れてくれたことが、とても嬉しいです。

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」http://nam-kid.hatenablog.com/

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