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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #30「指先を使わずに留められるゼムクリップ」

波子

この連載を始めてから、私はそれまで以上に、文具メーカーさんの飽くなき創意工夫を感じるようになりました。
そのままでも充分に使えている文具を、さらに使いやすく、もっと使いやすく、と新商品が生み出されていくのです。しかも、そのほとんどが手に取りやすい価格で。
すばらしい。

使いやすい工夫というのは、私のように手の力が弱めでも扱いやすくなっていることが多いんです。
そして、文具店や文具売り場、ネットショップで普通に購入できるものが扱いやすいというのは、とてもありがたいことなんです。

今回ご紹介するのは、その中でもまさに「目から鱗」な文具。
まさかこの文具に、こういう工夫の仕方があったのか! とめちゃくちゃ感動したので、その感動をそのままにお伝えしようと思います。

その文具とは、ゼムクリップ。
かつて事務員として就職した私が、学生時代と比較して圧倒的に数を使うようになった文具です。
デスクの引き出し内のトレイにザラザラと入れたゼムクリップは、あっという間にその数を減らし、共用の事務用品置き場から頻繁に補充していたものです。

当時は難なくゼムクリップを使えていたので、毎日のように何度も書類を留めたり外したりすることが全く苦になりませんでした。というか、そんなことを意識したこともありません。
でも、指先に力が入りにくくなった今、ゼムクリップでちょっと厚めの紙束を留めようと思ったら。
この動作、意外にも繊細で複雑な指の動きを必要とするぞ、と気づいたんです。

・ケースや机上からゼムクリップをつまみ上げる
(これがそもそもちょっと難しいときがある)

・左手で紙束を持ち、右手指先でクリップの長い方を紙束の表に当て、紙束の裏側を左手の指先で補助的に押さえ、クリップの短い方を押し広げながら紙束に差し込んでいく
(両手を使う、指先の繊細なコントロールが必要)

・紙束の裏にクリップの短い方をかませたら、左手で紙束をしっかり持ちつつ裏側からクリップに指先を添え、右手指先でクリップの頂点を押し下げてさらに差し込む
(両手を使う、指先にそれなりの力とコントロールが必要)

でも、だからといって、ゼムクリップとはそういうものですから、それはもう仕方ないと思っていたんですよね。
それに、今の私は事務仕事に就いていないので、たまに使う分にはさほど気にしていなかったんです。厚い紙束を留める機会もそうそうありませんし。

そのゼムクリップをですよ。
手指で直接つまんで留めるのではなく、ステープラーのように道具を使って留めよう、と思いついてくださったメーカーさんがあるのです!

LIHIT LAB.「速技(はやわざ)ゼムクリップとめ機 クリラーク」

202008namiko1.jpgLIHIT LAB.のクリラーク。本体に専用カートリッジ1個が付属している



LIHIT LAB.の「速技(はやわざ)ゼムクリップとめ機 クリラーク」は、今年の2月に発売されました。
「速技」と謳っていることから、そもそもこの機能は事務作業をスムーズに速く行うことを目的とされていることが解ります。
公式サイトへ1月末に掲載された新商品情報にも、「資料を大量に作成する際、1個ずつクリップの向きを揃えて紙に取り付ける煩わしさが解消されて作業の効率化が図れます」と書かれています。

202008namiko2.jpg

パッケージの台紙には取扱説明が解りやすく書かれている



しかしその工夫は、私にとっては、あの指先の(時には繊細な、時にはある程度の力が必要な)コントロールを不要としてくれる、頼もしさでありました。
なんとすばらしい!
もう、厚い紙束を留めるとき、プルプルと指先を震わせて頑張って紙束に挟もうとしなくていいんです。
もう、指先からゼムクリップをポーンと飛ばしてしまう心配はいらないのです。
(コントロールがうまくできないと、ゼムクリップは簡単に手を離れるんですよ…)

まずは、本体からカートリッジホルダーを取り出します。つまみ上げる必要はありますが、さほど力は要りません。
次に、カートリッジホルダーに付属の専用カートリッジを挿入します。バネで押さえる機構になっているので、挿し入れるときに少し力が要ります。
カートリッジホルダーを本体に戻し、カチッと音がするまで押し込んだら、準備はOKです。

202008namiko3.jpg専用カートリッジにはゼムクリップ40本が整然と詰め込まれている



202008namiko4.jpg本体からカートリッジホルダーを抜き取り、専用カートリッジを挿入



202008namiko5.jpg本体にカートリッジホルダーを戻し入れ、カチッと音がするまで押し込む



あとは、机上に置いた「クリラーク」のはさみぐちに紙束を差し込んで、ハンドルをしっかりと押し下げるだけ。
たったそれだけで、ゼムクリップが紙束をちゃんと留めてくれるんです。
スルッという何とも気持ちのいい感触。これは…連続して書類を留めたくなりますね…!

202008namiko6.jpg紙束をはさみぐちに差し入れて、ハンドルを押し下げるだけ


紙束を押さえておくと確実にゼムクリップが紙束を奥まで挟んで留めてくれますが、押さえなくても(つまり片手でハンドルを下げるだけでも)留められました。その場合、少しゼムクリップの頭が紙束から飛び出た状態でとどまることがありますが、あとからちょっと指で押し下げれば問題ありません。
なので、「片手でもゼムクリップが使える」と言ってもさほど過言ではないわけです。
これって、ものすごいことじゃありませんか?

202008namiko7.jpg手に持って使う場合も、握力15㎏で楽にハンドルを握って押し下げられた



クリラークは手に持っても使えるので、机上にスペースが足りない場合なども安心。
本体を逆手に持って紙束を差し入れ、ハンドルを握るだけ。にゅっと飛び出してくるゼムクリップの感触がクセになりそうです。
この場合は紙束を持つ必要があるので、両手を使うことになります。

おもしろくなってしまって、意味もなくゼムクリップを紙束にどんどんと留めてしまい、ハッと気づいたら10個以上使ってしまってました…。
クリラークで使うゼムクリップは、専用カートリッジ(40本入り)でのみ補充できます。クリラークで留めたクリップを外して戻すこともできません。
外したゼムクリップは一般的なものと同じなので、2回目以降は数枚の書類用に手で使おうと思います。

202008namiko8.jpg一度使ったゼムクリップはカートリッジに戻せないため、二度目以降は手で使おう



コピー用紙を最大20枚留められます。
カラーは水色のほか、白、桃、黒の計4色です。

クリラークがどのようにしてゼムクリップを紙束に留めているのか、そのしくみを編集長 文具王が解説している動画がございますので、ぜひこちらもご覧ください。
めちゃくちゃ感動します。なるほど!

【連載】文具王の動画解説 #196「クリラーク」LIHIT LAB.
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/04/011410/

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」http://nam-kid.hatenablog.com/

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