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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #29「100円ショップで出会った指示棒と電動字消し」

波子

3月半ば以降、外出自粛期間が明けてからも、出かける頻度をかなり低くしている私です。
もともと出不精なところがあり、これまではよくそれを自責していたのですが、コロナ禍の「外出しないことも感染予防対策のひとつ」という風潮によって、自宅にいることにも意義があると前向きに捉えられるようになりました。
体力低下が心配ではありますが、今のところそれなりに元気に過ごせています。

さて、そんな風にあまり出かけない日々なのですが、先日久し振りに100円ショップ「ダイソー」に立ち寄ったところ、いくつか「これは便利なのでは」という文具に出会いました。
今まで目を向けていなかったものだったので、やはりこういう「ふらりと立ち寄った先での出会い」は大事なことだなと改めて感じた次第です。
いつもと違い、カテゴリーの異なる(つまり脈絡のない)ものとなりますが、今回は2つご紹介します。

「握りやすい指示棒」

まずひとつめは、「握りやすい指示棒」。


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ダイソーの「握りやすい指示棒」。これが100円で購入できるのに驚いた



私は上腕の筋力が弱く、腕を上げることが苦手です。
思い返せば子供の頃から、黒板の高い位置にチョークで書くのが難しかったのでした。
今は黒板とは無縁の生活ですが、腕を上げるシーンは日常の中で時々発生します。

そのひとつが、回転寿司屋さんでのタッチパネル注文。
私が家族と行く近所の回転寿司屋さんは、注文パネルがレーンの上部に設置されています。
ボックス席の車椅子対応座席がパネルに近い位置にあると、向かい側の家族と私が操作するのがスムーズなのですが、腕が上がらないのでパネルに手が届かないのです。
家族と、こういうときに使えるマジックハンドみたいなものがあればいいね、と笑っていたんですが。

「握りやすい指示棒」は、グリップ部分が指の形に添うよう波状の形をしています。
棚にあるのを見つけた瞬間、「これだ」と思い嬉しくなりました。
滑りにくい素材ですが、表面はザラザラしていて、鞄の内ポケットへ無造作に入れて持ち運んでもホコリまみれになることはなさそうです。
長く伸ばすときに「つまんで引く」力を必要としますが、日常の中でこの指示棒を伸ばしきって使うことはほとんどないでしょう、少し引き出すだけならさほど強い力は要りません。

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「握りやすい指示棒」のグリップは滑りにくい素材。波型である程度指にフィットする



202007namiko3.jpgグリップが波状で滑りにくいので、あまり力を入れなくても持てる



車椅子からは手が届かない高い棚の上にある商品を、周囲の方に手伝っていただいて取ってもらうときも、腕が伸ばせず「その商品です」と明確にお知らせできなくてもどかしいことがよくありましたが、この指示棒があればきっと確実に示せるでしょう。
ただもちろん、その場合には、相手の方に失礼にならない態度で使うことが大切ですね。

202007namiko4.jpg目一杯伸ばすと約59.5cmになる

「電動字消し」

もうひとつは、「電動字消し」。

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ダイソーの「電動字消し」。単4形アルカリ乾電池2本(別売り)で動く



消しゴムを使うとき、実はそれなりに手の力が必要です。
私は今のところまだ消せない状態までは行っていませんが、筋力が弱くなってくると、意外といろんな筋肉を総動員して消しゴムを使っているのだなと気づきます。

電動の消しゴムは、これまで使ったことがありませんでした。
なので、まずはこれが100円で売られていることに驚きました。これならば普通に消しゴムを買うのとあまり変わらない値段で手にすることができます。
どんなもんなのかな、と購入してみることに。

太めの本体は、軽く握った手にすっぽり収まるので案外持ちやすいです。
単4形アルカリ乾電池を2本入れて、本体のスイッチを指で押さえれば、先端の消しゴムが回転します。
親指の腹で押さえるのが一般的だと思いますが、私は親指の関節辺りで本体を挟むようにして力を加えるのが使いやすく感じました。
回転する消しゴムを文字に当てると、ウィィィン…というモーター音に加えてゴムが紙に当たるゴリゴリとした感触が手に伝わってきます。
本体をしっかりと保持していないと暴れてしまう感覚があり、ちょっと緊張しながら消していきました。

202007namiko6.jpg「電動字消し」はシンプルな形だが、手に握りやすい大きさ



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シャープペンシル(0.2mm)と鉛筆で5mm方眼ノートに書いた文字を消してみた



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ゴムが回転して文字を消す。最初は角があるからかゴリゴリとした感触が。消しかすは手で消すよりも細かい



202007namiko10.jpg

軽く握れる太さ。親指の関節部分でスイッチを押すのが私には使いやすい



第一印象としては、ちゃんときれいに消せるのだな、ということでした。
いや、侮っていた訳ではないんですけれども、電動消しゴムを使うのは初めてだったのと、100円ショップの商品ということでお試し感覚だったんですよ。
最初のうちは慣れるのに時間がかかるかもしれませんが、コツを掴めばある程度は思った場所をほぼピンポイントで消せます。…不器用な私には完全にピンポイントで(たとえば文字から飛び出してしまった線だけを)消すのはまだ難しくて、だから一文字まるっと消して書き直すつもりで使う感覚です。写真にあるような、5mm方眼に書いた文字ひとつであれば問題なく消すことができました。
しかも、消すのがちょっと楽しいんですよ。
使えるなら普通に消しゴムを使った方が早いような気もしますが、とにかく楽しいんです。

202007namiko11.jpg「し」の文字を消したあと。シャープペンシルも鉛筆もきれいに消せた


5mm方眼に書いた文字を2つ連続で消すと、親指を当てているスイッチ部分が熱を持ってきます。このすぐ内側にモーターがあるからですね。
ちょっとした間違いを消す用途に向いているのだなと感じました。
そもそも、スイッチを押し続けながらしっかりと本体を保持するのにある程度の力が要るのです。長時間、つまりたくさんの範囲を消すのは、私には少し難しいでしょうね。

ゴシゴシと消しゴムを手で擦り付けるのと、この電動字消しをしっかりと保持するのとでは、使う筋肉や必要な動作が異なるので、「消しゴムより力が要らない」と明確に宣言できるほどではありません。
でも「小さな消しゴムを摘まみ持ち、何度も擦り付けるのは苦手」で「手の中に持った電動字消しのスイッチを押しながら動きをキープするのが楽」な人にとっては、かなり使いやすいのではないかと感じました。

電動消しゴムは、様々なメーカーから発売されています。
今のところまだ普通の消しゴムで事足りていた私は、これまで選択肢に入れてこなかったんですが(なので今回確認してたくさん発売されていると知り感動しました)、ひとまず今回で使いやすさは感じられたのと、同時に少し物足りなさも感じたので、次はメーカー製品のお手頃価格のものを試してみたいです。
購入したときは、またご紹介しますね。

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細かい消しかすはミドリの「ミニクリーナー」できれいに掃き清めた



※「ミニクリーナー」を紹介した記事はこちら
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/namiko/009176/

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」http://nam-kid.hatenablog.com/

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