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【連載】他故となおみのブンボーグ大作戦!Bootleg  #019 第一精工舎「地産廃材が価値を生んだシリーズ」

ふじいなおみ

30分間、文房具の話題だけをお送りするラジオ番組他故となおみのブンボーグ大作戦!のパーソナリティ「なおちゃん」こと、ふじいなおみです。

番組では毎週たくさんの文房具が登場します。その中から、他故さんとなおちゃん2人で選んだ商品をピックアップ。より掘り下げてご紹介していきます。

photo1.jpg今回は、10月23日・30日放送の「文房具のすごいゲストコーナー」で登場した、第一精工舎の「地産廃材が価値を生んだシリーズ」に対する私の思いを書き綴りました。

大学で学んだ中で衝撃的であったこと

私は20余年前、地元の大学にある水産学部で資源化学を学んでいました。卒論ではホタテ貝の中腸腺(貝柱の横にある黒い部分)から「頭が良くなる」で有名な脂質「DHA」や「EPA」をどのようにすると効率的に取り出せるか、という研究に取り組んでいました。

同じホタテ繋がりということで印象に残っていた講義での話です。北海道で養殖が盛んなホタテ貝は貝ごと出荷されることもありますが、大半は中にある貝柱だけを取り出して出荷。それ以外の部分は産業廃棄物となっていて、その処分に多額の費用がかかっているという話でした。大学3年生だった当時の私は「廃棄物を資源に変える研究がしたい」と、4年生で所属する研究室選択をしたのです。

しかし、卒論程度の研究では問題を解決に導くことも実用化される技術を発見することもできませんでした。そして私は、卒業と同時に化学とは違う分野へ進みました。

第一精工舎のボールペンと出会った

時は過ぎて2022年夏。
Twitterでフォローをしている方のTweetで興味深いボールペンの存在を知ります。それが2022年10月の番組ゲストとしてご出演いただいた石田社長の会社、第一精工舎の製品「地産廃材が価値を生んだシリーズ」です。

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地産廃材とは何か? 日本各地に名物があります。米どころならばお米を精米する際に出てくる食べられない「もみがら」が加工時に必ず出てきます。牡蠣貝なら身を剥いた後の貝殻が残ります。そんな特産物の加工をする上で出てくる廃材を地産廃材と呼んでいます。これらを処分するためには多額の費用がかかるということは前述のホタテ貝の処分の講義で頭に入っていました。

当時、同社のホームページからリンクされていたロフトのネット通販で購入できたのは広島の「牡蠣殻」、愛知の「卵殻」、和歌山の「紙屑」、沖縄の「噴石」を材料に作られたボールペンとスタンドのセットでした。

「あれ?」
私の記憶の奥底で眠っていた想いに再び火が灯った気がしました。

「あ! 牡蠣殻があるのならば、私が大学時代に気にしていたホタテの貝殻を生かすこともできるのではないか?」

すでにそのプロジェクトは動いていて、製品の第5弾として発売されたのがホタテの貝殻を使って作られたペン&スタンドでした。

photo3.jpg心の中で思わずガッツポーズをしました。

20年で進化していたホタテ貝殻の活用法

気付けば研究室に所属していた時から20年以上の月日が経過していました。現在「ホタテの貝殻」をキーワードとして短時間調べただけでも
・ホタテ貝殻を石灰肥料にする(北海道農政事務所ホームページより)
・ホタテ貝殻を混ぜ込んで建設資材として使用する(国土交通省ホームページより)
・ホタテ貝殻を使って黒板に使うチョークを作成(地方独立行政法人 北海道立総合研究機構ホームページより)
といくつもの技術が誕生していました。

これらと並ぶ活用法の一つとなっているのが「地産廃材が価値を生んだシリーズ」のホタテ貝殻でできたペン&スタンドだと考えています。製造をしている第一精工舎はプラスチック製品を作るメーカーです。他と異なるのは、「フリーブレンド工法」という独自の技術を持っていることです。プラスチックに別の素材を混ぜ、プラスチックの使用比率を下げることを可能としています。プラスチックは熱で溶けた時に接着剤のように周りのものをくっつける性質があり、プラスチックに別の素材を混ぜ込み製品化する技術で新素材がどんどん生まれているのです。

photo4.jpgボールペンの他にもスプーンやフォークなどのカトラリー、企業から依頼を受けた製品も多く作っているそうです。また、小中学校・高校に出向いての講義や未来を生きる世代との商品開発も行っているとのことでした。

今は「あの頃の未来」

「廃棄物を資源にするための研究をしたい」。21歳の自分は大学の研究室を選択する時にこう言いました。結果的に卒業後には他の道に進みましたが、私の願っていたことが実際に一つの技術として確立され、しかも大好きな文房具として生まれました。それを、ラジオを通じてご紹介できてとても嬉しかったです。

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第一精工舎の目標の1つは47都道府県すべての地産廃材で製品を作ることと石田社長は語っていらっしゃいました。「自分にとって身近なものが形を変えて生まれ変わって活躍している」そう思うと愛着も湧いてきます。
近年ではSDGsの観点からもプラスチックの量を減らそうという動きが強くなっています。私はこれからもホタテ貝殻はもちろん、別の地産廃材となっているであろうものが形を変えて活躍していく動きを応援していきます。

写真提供:第一精工舎

商品情報

地産廃材が価値を生んだ文具シリーズ(第一精工舎ホームページより)
https://www.f-b-i.co.jp/pen-and-stand

ブンボーグ大作戦!こぼれ話

この10月で2周年を突破しました「他故となおみのブンボーグ大作戦!」。
もちろん放送2周年記念のトークライブを開催します!
2022年11月26日土曜日、13時から15時30分頃までツイキャスにて2時間半の生配信ライブです。

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チケットはこちらのページで好評発売中
一般観覧チケット 1,000円
応援チケット 1,500円
トークライブ本とご一緒にチケット 2,400円
※「トークライブ本とご一緒にチケット」をご購入された方には昨年のトークライブを書き起こした本をお送りいたします
※それぞれ別途ツイキャスの手数料がかかります

「見てくださる方はどのくらいいるのだろう……」心配性のなおちゃんなので、早めにチケットを買っていただけたら嬉しいです。

第1部では他故さん・なおちゃんそれぞれのメインプレゼン(今回は万年筆インクのお話ではありません)。

第2部は神戸のナガサワ文具センターへ取材に行ってきました。
レジェンドご当地インク「Kobe INK物語」の現在・過去・未来を開発者の竹内室長に伺ってきたのです。昨年のトークライブでお話を伺った、セーラー万年筆のインクブレンダー石丸治さんへのインタビューと繋がるところもありますので、ぜひ昨年のトークライブを復習してからご覧ください。

リアルタイム配信ではコメントもどんどん拾っていきます!双方向コミュニケーションをしながらの楽しい時間をお送りします!

なお、リアルタイムでみられなくても、開催日から2週間は録画で観られますよ。

プロフィール

ふじいなおみ
1979年北海道札幌市生まれ。ラジオパーソナリティ/文房具プレゼンター
ナナコライブリーエフエムで放送中のラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ及び制作・技術を担当。
他故壁氏さんとユニット「たこなお文具堂」として、文房具の楽しさを伝える活動を開始。
万年筆インク(中でもご当地インク)コレクターであり、2015年生まれの娘とともに学童文具の観察を行う。
そして、きだてたくさんと色物文具をひたすら紹介する動画コンテンツ「イロブンの引き出し開けていこう」も配信スタート。

【他故となおみのブンボーグ大作戦!】
埼玉県朝霞市のコミュニティFM「ナナコライブリーエフエム」にて放送中の30分間文房具の話題だけをお送りするラジオ番組。
パーソナリティーは他故壁氏&ふじいなおみ。
放送時間は毎週日曜日19:30~20:00/毎週水曜日 11:30~12:00(再放送)
FMラジオ77.5MHz(埼玉県朝霞市・志木市・新座市・和光市とその周辺地域)の他、パソコンやスマートフォンではListenRadioのサービスを利用すると気軽に聴くことができます。

詳しい聴き方は番組Webページへ
https://daisakusen.net/howto/

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