1. 連載企画
  2. 【連載】月刊ブング・ジャム Vol.57 ブング・ジャムの2021年ベストバイ文具はコレだ!(その3)

【連載】月刊ブング・ジャム Vol.57 ブング・ジャムの2021年ベストバイ文具はコレだ!(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。

今回は、ブング・ジャムのみなさんに2021年のベストバイ文具を紹介してもらいました。

第3回目は、他故さんのベストバイ文具「ジュースアップ3/同4」(パイロットコーポレーション)です。

写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長*2021年11月9日撮影
*鼎談は2021年12月5日にリモートで行われました。

超スリムボディのゲルインク多色ボールペン


ジュースアップ3/ジュースアップ4」(パイロットコーポレーション)

『ジュースアップ3・4』を楽天でチェック

――最後は他故さんです。ベストバイは「ジュースアップ3」と「ジュースアップ4」ですか。

【他故】そもそも、「ベストバイ」というものが、12月に出たばかりのものでいいのかというのがあるけど(苦笑)。

【高畑】だって、俺はまだ触れてないもの。

【他故】ただ、買って使ってみて、「とうとう出た」というのが本当に嬉しくて。ゲルインクボールペンが好きなんだけども、ゲルインクボールペンの多色ってすごく少ないじゃないですか。

【きだて】無くはないけど、本流ではないね。

【他故】カラーが選べるタイプはたくさんあるんだけども。もちろん、それでもよかったんだけども、ただ「ジュースアップ」という製品に出会ってしまって、この書き味がとても大好きなんですね。

【高畑】うん。

【他故】あの書き味で多色が出たら絶対に良いだろうとずっと夢見ていたやつが、ついに出てきてしまったわけですよ。これは、万人にすごいと言われるものかどうかわ分からないんだけど、「ジュースアップ」という製品を知っている人にとっては、やはり一度は使ってみたいと思わせる製品になっていると思うし、実際に喜んでもらえるんじゃないかなと思うわけですよ。

【きだて】ほう。

【他故】まず、出てきてビックリしたのが、「ジュースアップ」の単色と3色タイプがほぼ同じサイズという。

【きだて】そうなんだよね。この細さは結構いいね。

【他故】ぼんやり見てたら区別がつかないぐらいのレベルで、ほぼ同じ(笑)。それで、4色も結構細いんですよ。「スーパーグリップG」という油性ボールペンのシリーズがあって、あれの多色で同じようにスリムなのがあるんですけども、あれとほぼ同じ技術なんかじゃないかなと。

【高畑】あれも、そんな感じではあるね。

【きだて】確かに「スーパーグリップG」が出たときは驚いたね。

【他故】細さというのも「ジュースアップ」らしさに多少は関わってるんだなと思って。見た感じこの3色が完全に単色と同じ太さだと4色が太く見えるんですけど、日常の筆記具と比べても全然太くないんですわ。黒・赤・青・緑と入っていて。

【きだて】いま測ってみたけど、4色で最大径11.8㎜か。

【他故】持ったときに「ジュースアップ」のまま、というのが大好きなんですよ。持った感覚が違う製品じゃない、「ジュースアップ」だというのがすごくうれしい。

ジュースアップ.jpg(左から)ジュースアップ単色、ジュースアップ3、ジュースアップ4


【高畑】へぇ~。

【他故】あと今回、色目が変わっているのが、吉と出るか凶と出るかなんだけど、グリップのところが半透明なのね。

【きだて】そうなんだよ。グリップが半透明で中のリフィルが透けてみえるの。これ面白いよね。

【他故】そう、透けるんだよ。黒軸だけが透けない黒なんだけど、他のやつはラバー加工をしている透明の樹脂だと思うんだよね。

【高畑】まあ、多重成型しているのかもしれないし。

【他故】クリップもわずかに半透明になっていて、クリップとグリップが同系色になってる。あんまりない色遣いだなと思って。

【高畑】なるほど。

【きだて】ただ、クリップまわりはちょっとチープだなと思うけどね。

【他故】これって、ちゃんと検証してないけど、衝撃緩衝になってるんじゃないのかな。尾栓の輪っかみたいなのまで同じ素材になっているので、ちょっと柔らかいんじゃないのかな。

【きだて】でも、エラストマーでもないし…。

【高畑】クッソー、俺も触りてえ!

(一同爆笑)

【きだて】何かガチ当たり感があるので、あんまり衝撃吸収にはなってないような気がするんだけどな。どうだろう?

【他故】そこまでではないのかな。

【高畑】なるほどね。

【他故】でも、今までのパイロットの色遣いとは違うところも入ってるのが、今までの「ジュースアップ」にはなかったところだね。

――3色も4色も軸のカラーバリエーションは一緒なんですか?

【他故】バリエーション的には一緒です。それで、黒以外はグリップとクリップが透けてるんですよ。

【高畑】それで肝心の書き心地はどうなの? 単色と比較して。

【他故】1日、2日試した限りでは、全く同じ。

【高畑】あっ本当? 例えば、中のリフィルの細さの差でフローが違うとかはないの?

【他故】感じたことはない。

【きだて】フローは単色に近いと思うよ。

【他故】単色に近いから、このリフィルの細さでこのフローということは、どんだけインクが早く減るんだというのはちょっとある(苦笑)。

【きだて】それはそうね。

【他故】めっちゃ細いからね(笑)。ゲルインクのリフィルとしては、相当細いんじゃないかな。「ハイテックCコレト」と同じ径のリフィルの筒を使っているので、フローの良い「ジュースアップ」多色の方がコレトより減りが早いんじゃないかな。

【高畑】それはもちろんそうだと思う。インクの色とかは一緒?

【他故】僕の印象は変わらないんだけど、手元に単色のカラーがないので、ちゃんと比べたわけじゃないけどね。「青ってこんな色だっけ?」とか「緑はこんなにきれいだったかな?」とか思いながら使ってるので、正確なところは今確かめられないんだけど。

【きだて】単色の青と緑は書いたことないから、ちょっと分からないな。

【他故】「この色だったかな?」というのはちょっとある。後で確認したい。緑は、パイロットの油性の緑は明るいんだけど、これもすごく明るくて良い色です。あれでしょ、文具王だとこの緑が入っているやつがいいんでしょ?

【高畑】そうそう、俺は4色ないと困るタイプなので、緑のリフィルがあるのは重要なんだよね。

【他故】これは、待ち望んでいたものだし、ゲルインクの多色というのでずっと悩みながら使い続けていたものだったので、本当に出会って良かったなと思うし、恐らくこれは一生使っていくだろうとはっきりと思えるし。

【きだて】それぐらいなんだ。

【他故】ペンケースからいなくなることはないだろうと思う。

【高畑】一生か、すごいな。俺まだ触ってないところで一生かぁ。それは触りたいなあ。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】ちょっと前に、「コレト」でシナジーチップ搭載のリフィルが出てたじゃん。

【他故】出てたね。

【きだて】あれのおかげで、「ジュースアップ」の多色は出ないんだろうと思ってたよ。だから、ある意味「へぇ出るんだ!」っていう意外さがあったんだけどね。

【高畑】むしろ、あれが出たときに「それってジュースアップじゃないの」っていう感じだったじゃない。

【きだて】そうそう(笑)。

【他故】どうなんだろうね。そこら辺の切り分けは俺にもよく分からないけど、ここから先も「コレト」のインクのままで「ジュースアップ」のシナジーチップを付けるということはありえると思うけどね。ただこれは、「ジュースアップ」のインクでシナジーチップだから、「ジュースアップ」の書き味になっているんだけどね。「コレト」のシナジーチップは、「ジュースアップ」の書き味じゃないからね。インクが違うから。

ジュースアップ クラシックグロッシーカラー3.jpg

【きだて】そうだね。

【高畑】「ハイテックCコレト」用のジュースアップリフィルが出るんじゃないの?

【他故】それは分からない。

【高畑】そこら辺が期待されるところだし、シナジーチップができるんだからこの先はフリクションもその細さにも対応できるはずだし、「ハイテックCコレトフリクション」が出てもよさそうだしとか、パイロット的には順番に全部の組み合わせを作ってるじゃない。

【他故】ああそうね。

【きだて】マトリックス埋め方式だな(笑)。

【高畑】そうそう。マスを埋める方式で順番に埋めているじゃない。毎年いやらしく1個ずつ出していく感じじゃない。

【他故】ははは(苦笑)。

【高畑】そういうある技術のマトリックスでできているところは、ちゃんとしているという感じはするよね。

【他故】ここから先に期待するのは、0.3㎜のシナジーチップをいつ積んでくるかということだし、0.3のシナジーチップで多色のリフィルに入れられますよというのがはっきりすれば、そうなると当然フリクションにも積んでくるという話になるし、今のマトリックスがさらにもう一歩先に行くんだよなということだよね。

【きだて】たださー、多色の0.3って、死ぬほど書きづらいじゃん。

【他故】まあね。

【きだて】リフィルがななめに出る問題でさ。0.3ぐらいまで細くなると、角度つくだけで相当きついよね。それを解決するメソッドがパイロットにはないのかな、というのが気になるんだけどね。

【他故】メソッドね。どうなのかな。本体の機構とかじゃなくて、インクがなめらかとかそういう方向に行っちゃうのかな。

【高畑】ローテーションで出てくるリボルバーみたいなやつ(笑)。

【きだて】三菱じゃねぇか(笑)。そこまでの力技じゃなくてもいいんだけど、でも、驚くような解決法を見せてほしいという気がするんだけどね。

【高畑】「ジュースアップ」はファンが多いからね。それが多色化したというのは大きいな。

【他故】コレトのリフィルと同じ筒を使ってるので、コレトのノックノブさえ手に入れば、コレトの中に入れられるんだよね。

【高畑】手に入るというか、分解して入れ替えればいい。

【他故】現状では、入れ替えて使うことはできる。

【高畑】俺が高校生だったら、絶対に入れ替えてるよね。今は、そこまで多色ペンに入れあげてないけど。

【きだて】素直に、「ハイテックCコレト」の軸よりも、「ジュースアップ」の軸の方が質感がいいから、わざわざ改造するまでもなくこっちでいいよ。

【他故】俺も実はそう思う。

【高畑】色数が増えてきたら多分そういうやり方をしたくなるんだろうけど、今は4色ペンが出ているからそれでいいか。

【きだて】この半透けのグリップは全然いいよ。赤リフィルと青リフィルが透けてみえるところが「キカイダー01」っぽい。

【他故】動脈と静脈だよね。血が通ってるみたいなイメージはあるよね。

【きだて】ちょっと生物感が出るよね。

【他故】あんまりないよ。こういうタイプの演出って。

【高畑】そこもやっぱり、最近の見せ方なんだろうなって思う。素材の透け感みたいなところだと思うんだよね。あえてのトリッキーな使い方というのが、大分増えてきた感じはするな。

【他故】昔ならば、芯があるかどうかが分かるぐらいののぞき窓がほんの数ミリ空いているとかはあったけどね。

――ニュースリリースでは、このグリップのことを謳ってませんね。

【きだて】買ってから初めて気付いたぐらいだよ。

【他故】写真見たときに「透けてるな」とは思ったんですよ。ただ、これが印影なのか芯なのかがはっきりしなかったので。見てみたら「結構透けてるじゃん」って(笑)。

――「ジュースアップ」は、3色・4色タイプと同時に、「クラシックグロッシーカラー」が出ましたよね。これは、普通の黒インクではないんですか?

【他故】確か、ラメっぽい何かが入ってるんですよね。

【きだて】しかし、どこも後追いするな(笑)。

【高畑】そうなんだよね。黒6色でしょ。これは手元にあるんだけど(笑)、ラメ入ってるよね。キラキラしている。

【他故】そんな感じだよね。

【高畑】フリクションのラメみたいな印象はある。

【他故】「ケセラメ」みたいな。

【高畑】書いた感じは「ケセラメ」みたい。これは単にダークな色にすると差別化ができないから、グロッシーにしたんじゃない。

――なるほど。

【高畑】「ジュースアップ」も、メーカーが自信を持っている低価格商品なので、これもアップグレードしてもいいやつだよね。

【他故】そうだろうね。

【高畑】でも、今回の多色はそんな感じだよね。

――とりあえず、今回の多色は他故さんの“推し”なわけですよね。

【他故】この製品がなくなるまで使いたいです。何かに代わるというのが想像できないので、使い続けることになるんじゃないかと思います。

【きだて】強いなぁ(笑)。

【高畑】一目惚れでいきなり「結婚しよう」と言っている人みたいだよ(笑)。

【他故】いや本当に「困るな」というぐらい大好き。

【高畑】すごいな(笑)。これは絶対に手に入れて触ってみます。その感動を俺も体験したいわ(笑)。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2020年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう