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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.14 GWスペシャル・その1

春の総決算特大号 “すご過ぎる”文房具が続々登場!!


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左からきだてさん、高畑編集長、他故さん


本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.14は、ゴールデンウイークスペシャルとして、この春に発売された文具の中から「これはスゴイ!」という文具を5日連続で紹介します。

シリコンがすご過ぎるペンケース

2.jpg「Bloominシリーズ トレーペンケース」(LIHIT LAB.) LIHIT LAB.は、働く女性がパッと花が咲くような華やかな毎日を過ごせるように、という思いを込めて開発した「Bloominシリーズ」のシリコン製小物を多数ラインアップしているが、その一つであるポーチ型の「トレーペンケース」は、ファスナーを全部開けるとペントレーのように使えるので目的の収容物がスグに取り出せる。さらに、ファスナーをストッパー部分で止めると、移動中や狭い机の上など、広げて置くことができないシーンでも使いやすい大きさで開くことができ、ファスナーのスライダーにはシリコン製のヒモが付いているのでスムーズに開閉できる。ペンが約7本入るスタンダートサイズ(税抜1,100円)と、約12本入るLサイズ(同1,300円)の2種類。


――今回は、「ゴールデンウィークスペシャル」ということで、この春に発売された文具の中から、みなさんが「これはすごい!」と思ったものをご紹介いただきます。その前に、編集部が選んだ文具を取り上げたいと思います。2点ありますが、まずは「Bloominシリーズ」のトレーペンケースです。「Bloominシリーズ」は、いろんなアイテムを出してますよね。

【高畑】クリアファイルなんかもいろんなアイテム出してますけど、「Bloomin」としてトータルで立ち上げたんだね。

【他故】手触りいいですよね。

【きだて】シリコンのぷにぷに系で。最近のリヒトはシリコン素材好きだねー。

【高畑】自分たちが使える技術はとことん使い尽くすというのが、リヒトの中にはあるっぽく見えるんだよ。この間までは「PPをどう使う」というのをさんざんやってたじゃない。ちょっとしたずらしを入れてみるとか、いろんな使い方でPPを使う。ちょっとした溶着の工夫とか、折り曲げを入れてみるとか、PPを使いこなすことをずっとやってきている気がする。それで、ここへ来て「スタンドペンケース」などをラインナップしている「スマートフィット」シリーズなんかでシリコンを使い始めてから、何か「シリコン使うぞ」欲の強さをすごく感じるんだけど。この間は、閉じた形状を作っておいて、それをペコッと開けてという…。

【きだて】そうだね、シリコンの弾性をうまいこと使ってる。

【高畑】今回は、平たいのを布ファスナーで閉じておいて、その弾性を使って開くというのをやってきた。

【きだて】弾性があるから、ベラッと開いてもかたちを保っているんだけど、しかしこうやってフルオープンにすると、「なんじゃこりゃ」というぐらいシンプルだな(笑)。

【他故】すごいね。持ち手とか外に出ているところがすべてシリコンなのね。そういうところは普通は布とか革で作るじゃん。どこまでシリコンなのっていう(笑)。

【高畑】すごい面白いなと思うのは、この持ち手のところ結んであるじゃん。結んであるように見せかけて、それが外れないように成型で形が作られてて、キッチリその形に留まるようにカエシとかも成型されてるんだよね。

【きだて】普通に結んであるだけだと、シリコンの弾性で戻っちゃう。

【他故】そう、力で戻っちゃうよね。

【きだて】結び目っぽくするためだけに、そこまで作るという。

【高畑】これは、こういう結び方になるように成型されているわけじゃないですか。「なんじゃこりゃ」と思うよ。(小声で)変なところ凝ってるよね(笑)。この持ち手のところって、ほどいた状態にしてもただの棒じゃないし、本体も閉じた状態がどうなるかは最初の設計段階では分からないじゃん。この素材で1回作ってみないと分からないんだよ。開いた状態で設計しておいて、閉じたときに上手くいくように作るという、弾性のあるものを設計するのって、独特のセンスというか先見性が必要なんだよ。「こう変形するよ」っていうのが、自分の中で分かってないとちょっとできない。

【他故】何かあるんだろうね。ここがファスナー側へ出っ張っているのも、何か意味があってやっているんだろうね。

【高畑】あるんじゃない。何でだろうね?

【きだて】それは、いきなりオープンにならないように、ファスナーが引っ掛かるようになっているんだよ。

【高畑】そうか、そこで止められるんだね。

――中身がベロッと出ちゃいますものね。

【きだて】ペンを取り出すだけだったらここで一旦止めて、オープンにさせたいときはそこからグイッといくという。

【他故】そうか、そこで引っ掛かるんだ。

【きだて】そういう細かいところも面白いのよ。

【他故】試作品ができたときに、「いいのできたな」といいながらファスナーを開けたら、「あ~、出ちゃった!」ってなったんだよ(笑)。

【きだて】そういうことがあったかもしれないよね。

【高畑】シリコンの型は、硬いプラスチックと比べると比較的安いとは言われているけど、それにしたってさ、変形後を意識して作るというのは面白いよね。それで、仕上げには縫製で作っているし。素材の使い方がリヒトらしいというか、ギミックがシリーズ全体で割とシンプルじゃん。

【他故】そうね。

――ここ(スタンダードサイズ)にはペンが7本入るようですね。

【きだて】それくらいは普通に入るよ。

【他故】入れようと思ったら、もっと入るかもしれないですよ。

【高畑】そんなに無理はきかないけど、割と柔らかくて、ぞれでいて形状的には硬いので、布ペンケースに比べると、意外と中に入れる物があまりガチャガチャ言わない。

【他故】これ、フルオープンで中を見せるとなると、ちょっといいペンを入れたくなったりしないかな。

――そうでしょうね。

【高畑】これ、あんまり丁寧に使わなくても、とりあえず中のものをガッと取れるし、きだてさんの使っている「どや文ペンケース」に近いよね。バッと開けて、選んで、取ってという。発想としては「シェルブロ」とかもそうだし。これファスナーも入れて2パーツで作るという。

【きだて】一時、ペンスタンド型もザーっと出たけど、最近はペントレー型にちょっとシフトしつつあるね。

【他故】ちょっとバリエーションが変わりつつあるよね。

【高畑】シフトというか、どっちもアリになって増えてる。

【きだて】もちろん。

【高畑】あり方のバリエーションを広げてはきているよね。

【他故】そうだね。

【きだて】最近だと、カミオジャパンがペントレー型で面白いの出してて。ポーチの中が3分割ポケットになってるんだけど、フルオープンにすると真ん中のポケットだけが浮き上がったトレーになるの。シンプルなだけじゃなくて、色々と工夫したのが出てきてるなと思ったよ。

【高畑】これは、素材の特徴を上手く使うことで、パーツ数としては極限まで少ないという感じじゃないですか。そこら辺は、各社使い方が違うよね。あり方としては面白いよ。

【他故】いい素材だよね。布とか革とかとは違って、多少荒っぽく使っても汚れたりしないだろうし。簡単に汚れも落ちるだろうし。

【きだて】水洗いも普通にできるしね。

【高畑】ギミックも何もないけど、自然にフルオープンに開くし。

【きだて】何だかんだで、完全フルフラットの1枚状態は使いやすいんだよね。

【他故】まあね。全体が見えるからね。

【高畑】取りやすいというのはある。

――これは、女子向けなんですよね?

【高畑】まあ、「ブルーミン」というのが、“お花が咲いてる”という意味なので。これ、PPの方のラインナップもすごいかわいい色で、割とかわいい系を上手いことやってきているし。

【きだて】このシリーズのシリコンの黄色が、ほんわりしたいい黄色で結構好きなんだよ。

【他故】へぇ~、そんなにいい色なの?

【高畑】いい色だよね。

【きだて】そういう色も含めて、かたちもミニマムだし。

【高畑】シリコンのいいところは、これ引き手と本体にロゴが入っているんだけど、そういうのが金型でできるから。これ、展開的にはもっとボコボコにとか質感を付けられるから。

【きだて】ワニ皮風とかやる?

【高畑】昔そういうのあったな。

【きだて】リヒトとレイメイ藤井のコラボでどう? おっさん文具として(笑)。

【他故】おっさん文具(笑)。

【きだて】いやね、女子文具はもういいじゃん。

【他故】え?

【きだて】「俺には関係ない」ってみんな思ってるでしょ。

【他故】どんなに女子文具が出ていても、「俺には関係ない」という。

【きだて】俺はいいよ、乙女だから。でも君たちおじさんは、女子文具ってほめているけど、そんなには思ってないだろ。

【他故】直接には使わないからな。

【高畑】だから、もうちょっとカチッとしたデザインで作ってほしいとかはあるじゃん。この紺色はまだいけるけどさ。

【他故】この色は全然いけるよ。

【高畑】カラーラインナップが、俺が買えるものが一つもないという場合があったりするじゃん。

【きだて】な、そうだろ(笑)。

【高畑】「Bloomin」のは買えるよ。だから、いいなと思うけど。

【きだて】だけどせいぜいネイビー止まりでしょ?でも「Bloomin」は明るい色の方がいいじゃん。

【高畑】そりゃそうだ。だから、昔みたいに「男性は青、女性はピンク」という時代じゃないので、設計当初から女の子向けということでちゃんと作るようになってきたじゃん。それが段々シフトしてきて、男の子置いてけぼり感は最近あるけど(笑)。実際、活発に買ってくれる人たちが、女子の方に多いからなんだけど。

【きだて】そう。だから、君たちおっさんは、マーケットに含まれてないんだよ(笑)。

【高畑】いやだから、俺たちはもっと消費しないとダメなんだよ。

【きだて】そういうこと。

――そうですよ。おっさんたちも、いっぱい文房具を買えば、ちゃんとこっちを向いてくれますよ。

【他故】それは、もちろんそうですよね。

【高畑】そうだよ。「文具男子博」とかやってほしいよね。

【他故】男子博…(苦笑)。

【きだて】それだと、エロ面白い文具とか出てきそうだからな(笑)。

――「漫画エロトピア」とかの世界ですか(笑)。

【きだて】そう、そっち系の文具とかさ。「任侠手帳」とかもあったじゃん。

【高畑】でも、それ入りにくいな(苦笑)。

【きだて】男子系でも特殊だからな。

【他故】まあね。パワーはあるけど、みんな買わないよな(笑)。

【高畑】確かにそう思うよ。

【きだて】あれ!? 今、俺はどういう論で展開しようとしていたんだっけ? 話が面白くなって忘れちゃったな(笑)。

【高畑】まあ、男子向けも出してほしいところはありつつ。

【他故】その気持ちも分かるよね。おっさんシフトもしてほしいな。

【高畑】世の中的に、カワイイものが本当に上手にかわいくなってきたよね。みんなコツを掴みはじめた気がするよね。

【きだて】色もさ、普通の赤じゃないんだよね。

【高畑】朱色っぽいね。あとさ、重なり合いの色なんかも上手に使うようになってきたじゃん。

【きだて】ああそうね、透明素材のね。

【高畑】プラスの「パスティ」もそうだけどね。それで、「Bloomin」のPPもすごいきれいになったけど、PPってさ原反のシートの製造ロットが大きいんだよ。

【きだて】ああ。

【高畑】だから、昔は特色を作るのがすごく難しいと言われていたの。

【きだて】コスト的に?

【高畑】コスト的にもそうだけど、要は量をかかえていないと作れなかったんだよ。いっぱい売る覚悟で原反を作らないとPPができないから、「在り色の中で作りましょう」となってしまうと、みんな同じ色見本帳から選ぶから、どうしても似通った色になっちゃうというのがあったんだけど。最近はどうなんだろうね? そのロットが少さくなったのか、それとも素材メーカーが定番色として用意してくれているのか。

【きだて】どうなんだろうね。ただ、メーカーとしてもある程度の覚悟はしてやっているような気はする。それで、こんだけ揃えれば、女子は買ってくれるというマーケットの大きさを見ているんでしょ?

【高畑】それで、ちゃんと女子向けに動いているということなんだろうな。昔、商品を作っていた経験があると、それぞれが違う色で、重ね合わせの色も自分たちで決めて、それを横にすごいいっぱい展開してくると、「わぁ、すげえ」って思っちゃう。

【きだて】純粋にパワーだよな、これは。

【高畑】ファイル買う人の層も、ある程度は女性だというのは当たり前なんだけど、要はその量が無視できないという。

【他故】そういうことだね。

【高畑】今までの「無難ブルー」じゃないものが出てきたし、こういうのは女性が牽引しているのは間違いないよね。

【他故】これいくらだっけ?

【きだて】税抜1,100円だね。大きいので税抜1,300円。

【他故】そのぐらいだよね。

【きだて】「Bloominシリーズ」で、ブックバンドに付けられるペンケースがあるけど、あれなんかは、ジッパーも何も付いていなくて、シリコンの弾性だけで口を閉じてるから。

【他故】曲線で切り込みが入っているやつだよね。

【きだて】そう。面白いよね、こういうやつ。

――メーカー的には、シリコンを極めようということなんですかね。

【他故】私も、花粉症の時期には、シリコン製の「ACTACT スリットポーチ」に助けられていますから。

【高畑】それは、ちり紙捨てとして使ってるの?

【他故】そう、もう鼻をかんだら捨てるようにしている。

【きだて】「ちり紙捨て」という名称でいいのか、これ?

【他故】でも、「飴の包み紙を捨てる」とか書いてあったよね。だから、これも「携帯ゴミ箱」でいいと思うんだけど。こういうかわいいのも出ていいかと思うんだけど。

【高畑】シリコン使いのエキスパートとして、リヒトにもっと色々と出してほしいよね。「どんどんやれ」って感じで(笑)。

【きだて】ここからどういうところへ行くのかね?

【他故】いや~、どうなのかね。何を出したら便利なのかな。今までにないもの?

【きだて】シリコン製のクリアホルダーは?

【他故】クリアホルダー?

【きだて】クリアじゃないじゃん(苦笑)。

【高畑】何かね、色々とできそうな気がするし。ペンケースだって、他のかたちがありそうじゃん。

――ペンのグリップがシリコンとかは?

【高畑】それはありますね。その場合、カスタマイズペンがいいのかどうか。

――シリコンで、おっさんが使えるものを出してほしいということですかね。

【きだて】いや、普通にこの色を使えばいいんだよ。赤とかミントグリーンとか。

【他故】いや、そういうやつは使うと思うよ。この紺はいい色だと思うし、ミントグリーンも使うと思うよ。

【きだて】おっさんが恥ずかしがらずに、そういう色を使えばいいと思うんだけどね。妙にビジネス、ビジネスしちゃうのもさ。

【他故】恥ずかしいというよりは、単純に似合わないと思っているんじゃないの。

【きだて】う~ん、堂々としてれば意外と似合うんだけどね。

【他故】言い訳っぽく言っているのは、「みんなと同じ色だと分からなくなるから」って赤やピンクのペンを買ったりしているけど、同じような感覚で買ってもいいよね。

【きだて】さらに言えば、これはペントレーだから、明るい色の方が使いやすいんだよ。物を上に並べたときにペンとかがよく見えるから。だから、黄色とか赤は全然いいんだよ。

【他故】そうだよ。

【きだて】その辺堂々と使って、女子の市場を侵食していけばいいんじゃないの。

【他故】それでいいんじゃない。

――じゃあ、頑張ろうということで。

【きだて】そんなまとめか!

【他故】おっさんは頑張ります(笑)。


*次回(5月3日)は「アクロ1000」「アクロ300」を紹介します。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。

弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談5』も発売された。

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