【連載】月刊ブング・ジャム Vol.06後編

*Vol.6前編はこちら
電卓の最高峰がここに!!
S100(カシオ計算機)
――後編のブング・ジャムの逸品編です。まずは高畑編集長から。
【高畑】こればっかりは、包んで持ってきましたよ。カシオの電卓…。
(一同)おー。
――これは3千円、…じゃなかった3万円の電卓ですね。
【高畑】3万円の「カシオS100」という電卓です。値段がやたら高いんですが、これ「カシオミニ」50周年だっけ?
【他故】そうじゃないかな。…いや、電卓50周年だね。
【高畑】「カシオミニ」じゃなくて、その前だね。
【きだて】初代電卓から50周年だ。
――計算機じゃなくて電卓ですね。
【高畑】そう。卓上型になってから50周年で作ったやつ。カシオとしては、節目になるところで出したアニバーサリーモデルなんだけど、こういう時はガワだけゴージャスで中は既存のモジュール、というパターンが多いんだけど、これは「実務電卓に関して、できる技術を全部つぎ込んだらこうなる、というのを作ってみました」というモデルなので。
【きだて・他故】そうだよね。
【高畑】そこが、他と全然違う作り込みで、僕は好きなんですよね。本格的実務電卓に関しては、カシオとキヤノンが日本ではツートップなわけですよ。本気で事務作業をしている人たちにとっては、そのどちらかになっていて、やっぱりデキがいいのね。デザイン電卓とかいろいろあるんだけど、本気でたたく人には表示が追いつかなかったりとか、キーの反応が悪かったりとかいろいろで、正直見向きもされてない。この電卓に関しては見てくれだけじゃなくて、そこら辺の気合いの入り方が全然違っているのね。
【他故】うん。
【高畑】アルミの削り出しで、脚も4本足じゃなくて、これ、全面ラバーになっていて滑らなくて、押したときのガタツキが全くないんだよね。キーも、今考えられる最高のパンタグラフが入っていて、もちろん金太郎飴方式のすり減らないキーで。あと、液晶の画面がものすごい見やすいんだよね。ガラスの両面に反射防止コートがしてあって、かつ若干ブルーがかった液晶が入っているみたいな。
【きだて】どの角度から見ても見えるんだよね、この液晶。真横からのぞき込んでも見えるんだよ。
【他故】反対側からでも見えるもんな。
【高畑】また、蛍光灯なんかを反射しなくて見やすいというのもある。もちろん、関数電卓とか特殊電卓はいくらでもあるんだけど、それはまた別なので。普通の実務用電卓として考えたら、これ以上のものはないというのが出てきた。3万円は高そうだけど、「カシオミニ」が出たときは、月給分ぐらいはしたわけですよね。
【きだて】そこまで金銭価値をさかのぼるな(笑)。
【高畑】いや、だってスマホを買ったら7、8万はするじゃないですか。それを考えたらね。もちろん、今となっては四則演算なんてスマホのおまけ機能でもできるけど。でもさ、計算機だけは、電卓の方がよくね?
【きだて】明らかにね、タッチ液晶では太刀打ちできない専用機ならではの使い心地ってあるんだよ。
【高畑】タブレットの画面でポチポチやってて、それで計算になるかというと、現実問題として圧倒的に電卓の方が有利なんだよ。
――それはそうでしょうね。飲み屋で割り勘の計算するのはスマホで十分でしょうけどね。
【高畑】それはスマホで十分なんだけど、経理や事務の人にとっては、もちろんエクセルなんかもあるけれど、目の前のものをチャチャッと計算するのには計算機はやっぱり要るじゃん。
【他故】それは要るよ。
【高畑】だから、専用機として未だに電卓は必要というのもあるし、専用のハードキーがあるのは全然違うねというのがあるので。しかも、電卓にお金と技術をつぎ込むとこうなるんだというのが見えるので、記念モデルを作るときはこういう方向で作ってほしいって思うよね。
【他故】はいはい。
【高畑】ガワに金メッキしましたとか、有名デザイナーに作ってもらいましたと言われてもね。これ、中の計算機構も違っていて、タタタタタッと押したときに、押したやつが離れる前に次のやつを押しちゃうと、ダメな計算機だと同時に押されるとアウトなんだけど、押された順番を3手だか4手先まで記憶していて…。
【きだて】(タタタ…と同時押しして)3手先まで記憶しているよ。
【高畑】それも従来の実務電卓より一つ多いんだよね。
【きだて】そう。
【高畑】記念だから本気で作るというときは、そっち方面にやってくれるのがすごくいい。使い勝手も最高峰なんだよね。もちろん、僕は電卓が追い付いてこれないほどのスピードでは使えないんだけど、使い心地が全然違うわと思う。
【きだて】これが出たときに、カシオの人に「サンプルないですかね」とおねだりしたけど、最後まで出てこなかったね(笑)。
【高畑】だって、全部シリアルナンバー入ってるもの。
【きだて】そうなんだよ。これはね、ちゃんと使ってみたかったんだよ。
【高畑】これは、性能と関係ない高さではなくて、モロに性能にぶっ込まれた値段なので、この3万円が高いか安いかでいったら、記念モデルじゃなかったら、この性能で3万円で済んでないんじゃないの。
【きだて】むしろ作れてないんだよ。おそらく、そんな高級電卓の企画が通らないから。
【高畑】3万円もする電卓は、そもそもの需要の問題で作らないかもしれないけど、作ったとしても元がとれてないんじゃないのっていうモデルなんだよ。
【他故】そうだろうね。
【高畑】これは、メーカーの威信をかけて作っているモデルなので、商売っ気で作っていない感がちょっとあって。3万円が高いかというと、もちろん自分のサイフに対して高いか安いかでいったら、やっぱり高いなというのはあるけど。
【きだて】価値対価格でいうと、ということだろ?
【高畑】それで考えると、「持ちたい3万円」というのがあって。なので、いいの出したなぁと思って。1個1個のキーも、数字キーは縦に移動しやすいように凹んでいるけど、こっちのゼロキーは盛り上がっているから、若干の凹凸のかたちが違っていたりとかさ。パチパチたたいている打鍵感が気持ちいい。あとね、人はビジネスの話をするときに、たぶん95%は四則演算なんだよね。
【他故】はいはい、そうだね。
【高畑】それが最高にできるマシンだから。
【きだて】そうだね。
――何台作ったんでしょうね?
【他故】そこは特にオープンになっていないみたいですね。
【きだて】発売当時に取材したときは、「予定何台」と話を聞いた記憶があるけど。
【高畑】あったよね。何台なのかは言ってた。
【他故】そこは現状では、検索で引っかからなかったですね。
【高畑】俺のは、シリアルナンバーが32番だよ。
【きだて】早いな(笑)。
【高畑】多分、一ケタはカシオにしかないんだよ。
――これ、いつ発売でしたっけ?
【他故】2015年が電卓50周年なので、その前後じゃないですか。
【きだて】2015年だっけ? もうちょい前じゃなかった?
【他故】1965年に初めて電卓を作ったんだよ。
【きだて】じゃあ、その年か。
【高畑】今度は、そろそろ「カシオミニ」50周年なのかな。
【他故】ああ、そうね。
【高畑】いやでも、こういう道具として洗練の極みみたいなものって、持つとやはり嬉しくなっちゃいますね。ほら、この間の他故さんの「カスタムURUSHI」も、「いやー、これは。8万円もするけど買いたい」みたいな。
【他故】そういうのはあるね。必ず記憶の中に残っていて、「いつかは」っていうのが。たまたまこれは、店頭でそう見つからないから我慢してるけど(笑)。
【きだて】それはそうだろうけどね。
――これは、店頭でいじれないでしょうね。
【きだて】まあ、ガラスケースに入ってるんだろうね。
――触ったり、キーをたたかしてはくれないじゃないですか。
【高畑】させてくれないかな?
【他故】以前、伊東屋で年末にデモンストレーションやってたんですよ。これを触らしてくれるというキャンペーンで、もうすぐ自分の番というギリギリのところまで行ったんだけど、会社の忘年会で行かなくてはいけない時間になっちゃったので。「今日までです」と言われて、残念ながら買わなかったんだけど、今でも後悔している。
【高畑】でも、今ネットで検索してみたら、まだ在庫のあるお店があるね。
【他故】ネットで買えるというのが恐ろしいんですけど。
【高畑】触っていいよ~♪
【きだて】いやらしいな、おい(笑)。
【他故】僕もそんなにバリバリ打てる方ではないんですけど、電卓は仕事で普段から使っているものなので。そうなると、これはすごい欲しいって思う。
【きだて】善し悪しが分かるよね。
――この中では、他故さんが一番使いそうですからね。
【きだて】仕事的には他故さんが一番使うはずだよ。
――(他故さんがいじっているのを見て)さすが、他故さんはキーを打つのが早いですね。
【他故】これって、ちょうどいい感じのキャリングケースってないの?
【高畑】キャリングケースはないんじゃないかな。最初に箱を開けたときに、不織布のやつに入っていたとは思うけど。
【きだて】何かパタンと閉じられるような。
【他故】パタンと閉じなくてもいいんだけど、さすがに会社に置きっぱなしというわけにもいかないので、持ち歩けるものが欲しい。
【高畑】持ち歩くとしたら、タブレット用の耐衝撃のソフトケースあるじゃん。ああいうケースがいいと思うんだけど。
【他故】それだと、「iPad mini」くらい?
【きだて】この重さ、持ち歩くの嫌だなあ(笑)。
【高畑】俺は今日、風呂敷に包んで持ってきたけど、持ち歩くんだったら、「iPad mini」くらいのケースがちょうどいいよ。これ、使うときフタとか付けられないんだよ。裏は全面グリップだし。これがピッタリくっついているのが打ちやすさになっているから。ここに入れられないし、上も触れないから。これって、ケースに入れるものじゃないんだよね。
【きだて】裏に「他故専用」ってマジックで書いとけば?
【他故】なんじゃそりゃ(笑)。
【高畑】白いやつでね。
【きだて】そうそう。
【他故】何で、高級なものにそんなことをダイレクトに書かなくちゃいけないんだよ。
【きだて】だって、持って行かれたら嫌じゃん。
――「テプラ」で貼っておけばいいのでは。
【他故】いきなり備品感が出ちゃうから(笑)。
――じゃあ、貼ってはがせるマステなら。
【他故】もっと嫌だ(笑)。これは、本体に何もくっつけたくないんですよ。
――それは確かにそうですね。
【高畑】じゃあ、ここにレーザー刻印だな。
【他故】それならまだいい。
――これを会社で使っている人がいるということですよね。
【きだて】そりゃいるでしょう。俺、買ったら、間違いなく嬉しがって使うよ。これは明らかにコレクターアイテムじゃないよね。ハイエンドのプロユースモデルとして扱いたい。
――それは、しまっておいてもしょうがないですからね。
【他故】使うために買うんですもの。
――そういう人たちはどうしているんですか。机の引き出しにしまっているんですかね?
【高畑】盗まれるとかなければ、デスクに出しっぱなしでもいいんじゃないですか。
――これの価値が分からなければね。
【きだて】ただ、電卓って持って行かれるじゃないですか。悪気なしに。
【他故】あー、そうだ。そこにあるから持って行っちゃってね。
【高畑】それでいけば、引き出しじゃない?
――鍵をかけられる引き出しにしまっておけばいいんですね。
【高畑】まあ、そんなとこかな。
――離席するときは、机の上に置きっぱなしにしないことですね。
【きだて】ね。
【高畑】盗むような悪い人はそんなにいないとしても、「ちょっと貸して」みたいな。
【きだて】物の価値を分からずに、ただ電卓だから持っていくというね。
【他故】「おっ」て言いながら持って行っちゃうやつがいるから(笑)。
――「ここにあったぞ」という感じでね。
【きだて】逆に、3万円だと分かると、使う人はいないよ。
【高畑】3万円って書いておけばいいよ。
【きだて】そう、3万円の値札を付けておくのが正しい。
――いやらしい感じ(笑)。外装をキンキラにすれば分かりやすいですかね。
【きだて】じゃあ、メッキ加工しようか。
【他故】ゴールドバージョンとシルバーバージョンで(笑)。
【高畑】これはね、打っているだけで気持ちいいから。いつもしょうもない、ただのお小遣い帳みたいな計算しているだけなのに、こんなのを使って(笑)。
【きだて】いい仕事をしている気にはなるよ。
――確定申告とかいいんじゃないですか。
【高畑】それはもちろんですね。
【きだて】でも、お金の計算も、最近はずっとエクセルとか経理ソフトでするようになっているからさ、だいぶ機会は減ったけどね。
【他故】入力しちゃえばいいやつはそうだよね。
【高畑】でも、これだけ歴史が長くて、未だにこの機能がスタンダードというのは、やっぱりこれはこれで変わんないじゃないのかな。
【きだて】単機能機械としては、ほぼほぼこれで進化の極限なんだろうね。
【高畑】電卓というジャンルでは、ほぼこれでとどめを刺している可能性があるよね。これよりいいものはもう作らないだろうと。
【きだて】これよりいいものが出ても、もうしょうがないというレベルじゃん。
【高畑】そう。これだけ頑張っちゃったから、カシオはもう50年作らないでしょ。そう考えると、僕が生きている間に出会える電卓としては、もうこれ以上のものはないだろうと。
――100歳以上生きないとね。
【きだて】まあ、そうね。
【他故】他社の50周年はどうなのか調べてたんですけど、シャープの50周年モデルは3,950円で安いですね。
【きだて】キヤノンも50周年モデル出していたはずだよ。
【他故】キヤノンは50周年モデルで、プロ仕様というのがあるんだよ。でも、ガワだけというイメージなんだけど。
【きだて】あれも3キー記憶だし、機能はそれなりにちゃんとしているよ。
【高畑】悪くはないと思うよ。
――でも、カシオは電卓に対するプライドが違いますよ。
【高畑】気合いの入り方が全然違うね。
【他故】電卓を作ってなんぼのメーカーだから、気合いが違いますよね。
――社名に「計算機」って付くぐらいだから、ここで金をかけないでどうするよってことですよね。
【高畑】どの道具もそうなんだけど、その道具で世の中で一番いいやつが買えるってすごくない?
【きだて】そうね。
【高畑】電卓というジャンルだと、多分世界一いいやつが3万円で買えちゃうんだよね。万年筆だとなかなかないじゃん。青天井だし。
【他故】まあね。
【高畑】電卓の歴史を通して最高峰というものが、個人で買えるというのはね。こういうのができてしまうのは、ある意味すごいなと。だから、これは無理して手に入れる価値がある人もいるんじゃないということで。
【きだて】ちぇっ、いいな~。
消し心地の良さが決め手!?
ジブン手帳Biz(コクヨ)と他故さん特注の専用革カバー
――次は、他故さんお願いします。
【他故】普段から使っているものがいいだろうということで、今回は「ジブン手帳」を持ってきました。
――おーっ。
【他故】私が語らなくてもみなさんご存じで、もう随分有名になってしまいましたが。「ジブン手帳2011」が発売されて、そこから次第に進化していったんですが、2016年に「ジブン手帳Biz2017」が出てまいりました。その前のシリーズは、トモエリバーという薄くて丈夫な紙をずっと使っていたんですけど、「Biz」になってミオペーパーというコクヨさんが本来持っている紙で作られているんです。ミオペーパーそのものはいい紙で、非常になめらかでゲルインキのボールペンで書くと非常に気持ちよく書けるので、最高の紙だというのは分かるんですけど、トモエリバーに比べると厚くて重くなっちゃうんですね。だから、「ジブン手帳」は本体とメモである「IDEA」、自分の一生を記入する「LIFE」と本来3冊がデフォルトだったんですけど、「Biz」は本体と「IDEA」の2冊でいきましょうと(*「IDEA」は別売り)
――はい。
【他故】それで、トモエリバーって、フリクションのラバー熱に弱いんですよ。
(一同)あ~。
【高畑】紙がうねっちゃうんだよね。
【他故】こすると、中の繊維がいかれるのかな、全部シワシワになっちゃうんですよね。
【きだて】すごい波打っちゃうよね。
【他故】いい紙で、好きなんだけど、フリクションで使うにはつらいところがあった。そこへいけばミオペーパーというのは、元々ゲルインキで気持ちよく書ける紙で、ツルツルしていてコシも強い。薄い割には強くできている紙でもあり、書き味でいえばトモエリバーは「いい」と言われるかもしれないんですけど、とにかくフリクションでうねらないのにはこれ以上の紙はないだろうというくらい相性が抜群なので。僕はずっと「ジブン手帳」を使ってきたんですけど、「Biz」が出たお陰で、この紙じゃないとダメだなと思って。トモエリバーが好きで「ジブン手帳」が好きになった人には申し訳ないけど、トモエリバー版に戻る気は一切ないので(笑)。これだけ自分が求めていたものが違っていたんだ、というところがすごいあるんですよ。とにかく、書いたあとの消し味がこれだけ違うのかという。
【高畑】消し味は大事。
【他故】すごく大事。フリクションを使っている理由って、いろんなものを書いて、消すからですよね。消さない人はフリクションを使う理由がないですからね。意味がないから。手帳で、まったく消さない人もいるとは思うけど、スケジュールに書いたものを消したいから、これだけフリクションが売れたんだと思うと、それに合った紙が必要なんではなかろうか。もちろん、各手帳メーカーは頑張っていろんな紙を使っているんですけど、今のところ僕にとって、これが一生変わらぬベストになりつつある。
【高畑】一生!
(一同)ほぉ~。
【他故】あとは、このバーチカルに飽きるとかがないかぎりは(笑)、おそらく一生これなんじゃないかというぐらい、完全に相棒になってしまっているところがありますね。まあ、細かく書くところも相変わらず好きですから。
【高畑】そこまで言われたら、佐久間君(*この手帳を制作した佐久間英彰氏)は嬉しいだろうね。
【他故】この3.3㎜方眼の中に字を入れるのが。
【高畑】また、他故さんに向いているよね~。この文字がね(笑)。
【きだて】基本、方眼に文字を書く人だから、これがいいんだよなぁ。
【他故】方眼の中に文字を書くのが大好きで、文字がグリッドに沿っているのが大好きで。縦方向にスケジュールを書くのが好きだというよりかは、埋まる感じが好きなんですよね。何かをしていて埋まったというのがうれしくって。今の仕事だと、昼間も夜も埋まるので、予定があれば書き込むし。まあ、ゆるゆると使っている割には、何だかんだでぎっしり書いているなと思うよ。
【高畑】すげーなぁ~(笑)。
【きだて】バーチカルにこれだけきっちり書いている人はそういないよ。
【他故】そうかな~?
【高畑】そういうのが好きな人に向いているのは全然そうだと思うけど、これは予定書いてるの? それとも結果を書いているの?
【他故】まず、第一段階として、予定を月間に書くのね。来月、再来月でも決まっているものは全部書き込んで、あとは仕事の関係上相手のスケジュールを決めてから埋める必要があるで、それも全部ここに集約する。ここに入っている日は入れないというのが一発で分かるので、ここでまずは計画を立てて、8月の終わり頃に、9月の埋まっている予定を全部ウィークリーに書き込んでいく。その後に、日々起こったことを段々と追記して埋めていくかたちになっている。
【高畑】予定が変更になったり、その通りに行かなかったときは、消して書き換えるの?
【他故】消して結果が書いてある。だから、予定がどうなっていたかというのは、実は後では分からないということもある。
【高畑】フリクションで書いているからね。なるほど。
【他故】で、時間が決まっていない予定のときだけは、ふせんに書いているんですね。これが、去年出たのかな。ジブン手帳のスケジュール欄の幅に合うふせんがグッズとして出たので。「〇〇をやりたい」みたいな時間では書けないことを、ふせんに書いておいて、後ではがして実際に起こったことを書く。
【高畑】その日が過ぎたら、ふせんはないんだよね?
【他故】ふせんが残ることはない。
【きだて】こんなふせんがあるんだね。
【他故】こういうグッズが出るくらい、充実してきたということですよ。
【高畑】その革カバーも自分用に作ったんでしょ。
【他故】ああそう、これは革カバーがまだ存在しなかった頃に、私が設計して中野の「旅屋」さんで作ってもらったもので、今でもまだ「旅屋」さんで売ってます。これも2012年から使っているから、5年も使ってだいぶツヤツヤになってきましたが。
――エイジングが効いてますね。
【高畑】いや~、いいっすね。
【他故】かなりラフに使っているんだけど、どこも悪くなってないんですよね。
【きだて】エイジングが効いてきて、傷が入ってもいい感じになっているよね。
【他故】で、全くほつれもないし。恐ろしいくらい頑丈なので。
【きだて】しっかりした革を使っているものな。
【他故】これ、バッファローカーフなんだけどさ。手なじみがめっちゃよくて。自分が設計したこともあって、非常に愛着があるんですわ。あの頃はまだ「フリクション3」しかなかったけど、それが入るスリーブというのがなかなか他の手帳になくて。
【きだて】まあ、太いしね。
【他故】通常の3色ボールペンよりも圧倒的に太かったので。で、これを最初から型紙に巻き付けて、「これが入るやつを作ってほしい」とお願いして。それも、ただ革で作ると硬くなっちゃうので、中をすいて手が乗ったら曲がるくらい柔らかくしてもらって。そういう話を突き詰めながら、だんだんとできていったのがこのカバーなので、今でもロングセラーで「旅屋」さんで扱っていただいて、それなり売れているという話を聞いているので、大変ありがたいなと思っていますけど。
【高畑】いや~、分かる。「フリクション3」とジェットストリーム「4&1」が入る太さ。
【他故】手帳が厚くなっちゃった関係で、カバーにメモが入らなくなってしまったので、そこはもう省略ということで、もう1冊の「LIFE」という自分の一生が書けるという別冊だけを入れている。これも色々書けるんですけど、ぐちゃぐちゃ書かないで、とりあえず自分史を書いている。
【高畑】これ、一度濡れて書き直したんだっけ?
【きだて】そういえば、そんなこと言ってたね。
【他故】雨にやられて。その時は「コレト」で書いていたけど、「コレト」は耐水性がないので、全部死んじゃった(苦笑)。その後に「RT1」に変えて、今は「ジュースアップ」が出たのでそれを使っているけど、どっちも耐水性があるから。
【きだて】これ、老眼につらいものをよく書けるなと思って(笑)。
【他故】いやいやいや(笑)。
【きだて】他故さんこれ自分で読めるの?
【他故】自分の字は見えるんだよ。印刷物はきついけど、自分の字は見えるんだよ。
【きだて】そういうもんか?
【他故】こっちが会社での動き。だから人生の動きか。小学校に入ったとか、中学校、高校に入ったとかを書いていく。それで、ここは基本的に趣味の動きなので、ブング・ジャムの活動になってから異常に量が増えたけど(笑)。
【きだて】我々は、ここに頼るところが大きいわな。
【高畑】そうだよ、すぐに記録が出てくるから、すごく助かる。
【他故】3人で何かしたというのは、ここにすべて書いてあるから。そして、ここが家族の話で、こっちが戦隊スケール。
【きだて】他故さんの手帳と言えばこれだよ(笑)。
【他故】大抵の男子は、幼稚園くらいには「戦隊シリーズ」を観ているので、「何観てた」って言ってそれで話題にできるから。
【高畑】「41」とあるのは、戦隊シリーズの41作目ということ?
【他故】ああそう。
【高畑】ちゃんと「ウルトラマンジード」や「キュウレンジャー」まで入っているよ。
【他故】戦隊シリーズと仮面ライダーとウルトラマンは入れてる。他のスケールも作りたいんだけど、どれを入れようか今迷っている。
――今も続いているシリーズものは、それくらいですかね。
【他故】できれば、全体を俯瞰できるものが作りたいんだけど。
【きだて】ぜひ作って欲しいねー。
【高畑】しかし、この文字の大きさと詰め方はすごいね。
【きだて】X-Yプロッタか、あんたは(笑)。
【高畑】だって、3.3㎜の方眼に、2文字ぐらい入っているよ。
【他故】高さは合わせるけど、横は圧縮するからね。
【きだて】どんな性能の手をしてるんだろう。
【他故】いやいや(笑)。
【高畑】これはアナログの強さの一つでもあるよね。
【他故】見て、パッと分かるし、自分の手で書かないと憶えてないということがあるから。キーボードで打ったことって、意外なほど憶えていないので(笑)。
【きだて】憶えてないね~。
【他故】「書いたはずだよな」といって探すのは見つかるんですが、キーボードで打ったことって、どんなこと打ったのかすら曖昧だったりするから。
――分かんないですよね。キーを打つアクションはみんな同じですからね。
【他故】ワードも思い出せないから、検索のしようがないというのもあって。
【きだて】脳内に書いた文章のインデックス的な断片記憶でも残ってると、検索できるんだけどね。
【高畑】今日、リアルにそれが見つからなくって、ファイル探したよ(笑)。
【他故】そういうのがあって、まだ手書きの力みたいなのを信じているところがすごくあるから。これを始めてから、特にそう思う。
【きだて】すさまじいな~。
【高畑】他故さんは、手で文字を書くというところがすごいよね。
【きだて】他故さん、死んだらその手をくれ!
【他故】何だよ、それ(笑)。
【きだて】移植するから。
【高畑】ブラックジャックみたいな(笑)。
【きだて】そうそう、それ。
【他故】夜な夜な漫画を描き始める手になったらどうするんだよ。シャープペンシルを持ったら、何でも「フレフレ」だと思って振ってしまう手になったらどうする(笑)。
【きだて】もういいよ、ガマンするから~。そのマスに文字を書ける手なら、他のことはガマンするから(爆笑)。
――とりあえず、ボールペン持っても手汗で滑らないからいいんですよね?
【きだて】そう。汗でビチャビチャにならないだけでも十分いいから(笑)。
【高畑】でも、これで7冊目?
【他故】6冊目かな。最初の年は買ってないから。
【高畑】「Biz」になって本当に見やすくなったよね。
【他故】カラーが減ったから分かりやすくなったというかね、目がチカチカしないというのはすごくあるし。最初は「寂しいかな」と思ったけど、自分で書き込んじゃえばそんなことはないというのが分かったので(笑)。とにかく紙だよね。紙の信者って多いので、トモエリバーを腐すわけじゃないんだけど。
【きだて】個人的な向き不向きレベルの問題だよね。
【高畑】万年筆を使っていると、あの薄さで裏抜けしないのはすごいなとは思うけど。
――薄いから、手帳として携帯しやすいという人もいるでしょうし。
【他故】それも間違いなくあると思うんですよ。やっぱり軽さって重要で、「Biz」もオリジナルだと意外な重さがあって、ミニサイズの方がいいという人も出てくると思うけど。
【高畑】そのサイズだと、持ちたくない人には持ちたくないサイズだから。
【他故】自宅置きみたいなイメージがね。
【高畑】それはあるよ。で、他故さんはそれを毎日カバンに入れて、家から会社へ行って、会社から帰ってみたいに。
【他故】これは確実に持ち歩いている。だから、自分のカバンの中で恒常的に重いのがコレだよね。
【高畑】結構ずっしりするよね。
【きだて】忘れたら明らかに分かる重さだよね。
【他故】分かるね。
【高畑】あと、革のカバーの重さもあるんだよね。
【きだて】それはあると思うよ。こんだけの厚い革だから、そりゃ重いよ。
【他故】いわゆる、システム手帳の重さになっちゃってるから。
【高畑】でも、買ったときに付いているオレフィンのカバーに比べたら、全然質感がいいよ。
【きだて】そりゃそうだよ。
【高畑】で、丈夫だしね。
【きだて】やっぱり、それだけの価値はあると思うよ。
【他故】本当にそう思う。革カバーになったことで、本当に持ち歩くようになったからね。仕事でよその部署へ行って打ち合わせなんかをするときに、手帳を見ながらするというのが多いんですよ。そういうときに、このレベルのやつって、すごくしっくり来るんですよ。まぁ、中味を見せることはないですけど、手帳を見ながらやりとりすると、相手が安心してくれるんですよ。これがスマホだと、イメージがよろしくないところがまだあるみたいで(笑)。
【きだて】そうなんだろうなぁ。俺はもうスマホ見ちゃうんだけど。
【他故】上の人たちと話をするので、まだまだどうしてもそうなっちゃう。
【高畑】会議中に手帳を開いて、思い付いたいい加減なことを書いていても怒られないんだけど、キーボードをたたいていると、何やってんだろうなってなっちゃうんだよね。
【他故】スマホを見ていると、遊んでいると思われちゃう。未だにそういう風潮ありますよね。
【きだて】「遊んでると思われてもいい。スマホの方が便利だから」と開き直って堂々とやっちゃう。
【高畑】それは構わないんだけど、相手様が先にあってという場合があるからね。見た目でね。安心感という意味では、他故さんの立ち位置では、それが効いている部分があるんだろうね。そりゃ、ブタ柄のシャツで行けない場所もあるじゃない(笑)。
【きだて】そこら辺のTPOはわきまえているよ。俺だってネクタイ締めるときは、そりゃあるよ。3年に1回くらい(笑)。
――これ、フリクションですか?
【他故】本体はフリクションで。本体のガントチャートには、体重と体温と歩数を毎日つけているんですよ。
【高畑】女子か(笑)。
【他故】これをつけていると、「何故この時から体重が変わったんだろう」っていうのが一目で分かるので。
【きだて】俺、何でこの人と友達やれているんだろう?
【他故】別に、これを何か押しつけたことは一度もないじゃないか(笑)。
【きだて】分かっているよ。分かっているけどさ(笑)。
【高畑】すごいよね、記録するっていうのはこういうことなんだね。
【他故】目で見て分かるっていうのが好きなのよ。
――「記録とは何ぞや」ですね。
【高畑】俺も、ここまでは続かないな~。
【きだて】すげーなー。
【他故】この話は、「ジブン手帳」のオフ会で話しても、大抵気持ち悪がられるから。「女子か」って言われるから(笑)。
【きだて】そりゃ、言われるよ。
――体温も計ってるんですね。
【他故】体温は、医者から低体温症を疑われてから計るようになったんですよ。今は何ともないですが、惰性で計ってます。
【きだて】惰性で続かないよ。普通はやめるんだよ、そこで
【他故】手帳をつけること自体は、別にみなさんが好きなようにつければいいんですけど、私はこれを書くのが楽しくてやっているので、まあこういう感じですということで。
――楽しさが伝わってきますよ。
【他故】人様におすすめするかたちではないかもしれませんが、こういう楽しみもあるということで。
【高畑】一つの、文房具を楽しむというところのね。
【きだて】まあね。
――こういう楽しみ方もあるのか、と膝を打つ人もいるんじゃないですか。
【高畑】いるはず。これ大好きで共感する人はいっぱいいると思いますよ。
【きだて】それと同じくらい、「気持ち悪っ」て言う人もいると思うけどね(笑)。
【他故】それはもう、慣れたよ。
(一同爆笑)
【他故】10年やってれば慣れるだろ。
【きだて】そりゃそうだ。言われ慣れるよな(笑)。
――「月刊ブング・ジャム」をやり始めてから、他故さんのキャラが見えてきましたね。
【きだて】でしょ。ブング・ジャムの中で、何だかんだいっておかしいのは他故さんなんだから。
【他故】いやいやいや(笑)。
【高畑】いやいや、ほんまそうだよ。
【きだて】この人、「自分は普通だ」って常々と言っているけど、異常性を秘めているんですよ。俺らは狂人を演じているだけだから(笑)。
【他故】俺は本物か(笑)。
ザラッと出して、ザラッと収納!!
どや文ペンケース(ベアハウス)
――では、常識人のきだてさんに、最後を締めていただきましょう。
【きだて】今回は、「どや文ペンケース」です。
【他故】来ましたね~。
【きだて】これは、発売になったのが2012年かな? それ以来、5年間抜けなくずっとレギュラーペンケースですね。
【高畑】これは発売当時のやつ?
【きだて】途中で限定色の黒が出たので、それに変えました。だけど、「どや文ペンケース」としてはずっと使い続けている。
――これは2代目なんですか?
【きだて】そう、2代目。黒が出たので、黒の方がいいなと思って。
【他故】前はネイビーだったよね。
【高畑】かたちは一緒?
【他故】どこか改良されたんだっけ?
【きだて】えーっとね、細部のどこか変わったんだっけ?
【高畑】俺、これができるツイッター見てたからね。
【きだて】そうだよね、アイデア出しから完成までをリアルタイムでツイッターで見てたんだよ。ただ、「ツイッター発・文房具好きのみんなで考えて作りました」というドラマ部分はこの際置いといて、俺はとにかくこの筆箱の機能が好きなの。
――なるほど。
【きだて】他故さんをあれだけ攻撃した以上分かってると思うけど、俺は雑なわけですよ。
(一同爆笑)
【きだて】例えば、文具王のように「デルデ」にペンを隙間無く1本1本きっちりと詰めていくとか、そういうことですら煩わしい。とにかく瞬時にザラッと出して、雑にザラッとしまいたい。使った道具をいちいち筆箱に戻すのすら面倒くさい。であれば、このトレー上にザラッと出して、要るものをここから取って、戻すときはトレーに置いて流し込めばいい。この素早さが本当に最高。ノマドワークってほどでもないけど、ちょっと外で仕事をするときにも、仕事環境を整えるのがまず早い。トレーにしていちいちペン並べて…とかじゃなくて、ザラッと出しゃいいんだよ。あとはもうそこから使うものをつまみ取るだけだし。
――立ててペンスタンドに変形させるのも煩わしいんですね。
【きだて】俺は縦のものを横にするのも嫌な人間なので、というぐらい無精になると、選択の幅がこれぐらいしかなかったというところもある。
【他故】はいはい(笑)。
【きだて】あとは、仕事的にペンとかペン型のものだけでは持ち歩く道具が揃えられないのよ。とにかく、いろんなかたちの道具を入れなきゃいけない。例えば、テープのりを持ち歩かないと仕事に支障出るし、はさみもカッターも各2種類ぐらい欲しい。そんな感じになっているんですよ。
【高畑】それで、このロボットに変形するやつも必要なわけですね。
【きだて】それは名刺代わりだよ。「私こういうものです」と言って変形させるという。
【高畑】「そういうものだ」的なね。
【きだて】イロモノ文具を説明するのも面倒くさいわけですよ。
【高畑】まあ、そうでしょ。
【他故】むしろ「イロモノ文具が入ってないのか」と言われるのも悔しいでしょ。
【きだて】そうそう。そういうこともあってね、名刺代わりの「ロボットペン」も必要なのよ。
【高畑】これが楽っていうのが大きいんだね。
【きだて】「どや文ペンケース」を作ったのはベアハウスの阿部ダイキさんなんだけど、僕は彼のこと天才だなと思ってて。彼はいつも、文房具の入れ物ばっかり作っているクリエーターとしても有名なんだよね。封筒作ったりとか、筆箱作ったりとか、ノートカバー作ったりとか。
【高畑】独立して自分で文具メーカーを立ち上げて、一人で頑張っている人なので。
【きだて】そのどれもに、従来の品とは違う価値観というか視点がちゃんと盛り込まれてる。そのアイデアの量も半端ないんですけど、何と言ってもこの「どや文ペンケース」に、彼の才能が集約されているなと。ここまで人にラクをさせることに特化した筆箱って、無かったと思うんだ。で、まとめちゃうと、こんなに入ってるとは思えないくらい、コンパクトになるんだよね。グッと締めちゃうから、巻きペンケースとしては十分なくらい。
【他故】これだったら、普通のロールペンケースと変わんないよね。
【きだて】余分なパーツがないので、重量もそんなにいうほどないし。「筆箱の使い比べ」的な記事を今まで何度も書いてきているけど、結局のところ、これを超えるペンケースにまだ出会ってない。
【高畑】結局、自分が使うペンケースはこれだということだね。結構使い込んでいるよね。
【他故】いい感じになってるよね。
【きだて】2代目になってからで3年目かな。
【他故】革も丈夫な革を使ってるんだよね。
【きだて】いい革使ってるんだよね。
【他故】栃木レザーだよね?
【きだて】そう。
【他故】すごい丈夫なやつを使っているから。
【高畑】間違いなく、彼の代表作ではあるよね。ここのポケットは使うの?
【きだて】使わない。
【高畑】ここのメインのところだけなんだ。
【きだて】ポケットにも一時期物を入れていたんだけど、入れていることを忘れる。
(一同)あ~。
【高畑】あるね。
【他故】分かるよ。
【きだて】ポケットじゃなくて、二重で頑丈になっているだけと思うようにしています。
【他故】なるほど。
【高畑】これ1個でいいんだ。
【きだて】これ1個で十分だし、収納力もこれで不満は何もないわけよ。
【他故】別に、隠したいものがあるわけじゃないしね。
【きだて】ここに小物を入れても、取り出しにくいんだわ。これはこれで。
【他故】あ~。
――パンパンに入っていると、取り出すのはキツイかもしれませんね。
【高畑】メインのところにいっぱい入れているからね。
【きだて】それで十分だし。何よりも、ポケットに入れたらこのようにザラッと出てこないのよ。
【他故】まあ、そうだね(笑)。
【きだて】ザラッと出して、ここに全員集合させたいわけよ。ここで選び取りたいというのがあるからね。今のところ、これ以上のメソッドを思いつかないので、ということはこれがベストな筆箱なのだろうと思うけどね。
【他故】なるほどね~、う~ん。
【きだて】これを初めて触ったときの感動を超えるものには出会ってないね。
【他故】確かに、こうやってザラザラ出すやつって、後追いでもそんなにない気がする。
【きだて】ないんだよ。
【他故】なるべく中を見せようというタイプは、出ているかもしれないよ。
【きだて】トレイになりますというのはあるんだけど、でもあれってフルに出てきていないから。
――180°開きますよというやつですね。
【高畑】「C2」とかはね。
――トレーっぽくなって、中身が出てくるのは他にないかしら。
【他故】ただトレーっぽいやつはあるんですけど、そういうのって大抵は薄型だったりして、元々そんなに入らないですよね。
【きだて】俺の中で、実用面を満たすのはこれ。
【高畑】はいはい。
【きだて】カッターとテープのりとノギスとペンが混在しちゃうと、やっぱりこいう風に出して閲覧するのが一番見つけやすい。
【高畑】今流行りのタテ型ペンケースは、きだてさんが持ち歩いているような小さなテープのりとかを入れるのには向いていないんだよ。
【きだて】そう、沈んじゃうだよね。
【他故】かたちが違うものを一気に入れるとなったときにね。
――そういう場合は、スティック型に統一しないとダメということですね。
【きだて】ペンサイズに統一しないといけなくて、またそれは嫌なわけですよ。
――なるほど、「何故合わせなくちゃいけないんだ」ってなるから。
【他故】まあ、ペン型になると使い勝手が落ちちゃうものもありますからね。
【きだて】一時、様々なサイズのはさみ4本ぐらい持ち歩いてたけど、それも飲み込んでくれたからね。
【他故】その、はさみ4本は使い分けていたということ?
【きだて】それは同時進行ではさみのロードテストやっていたんだけどね。
【他故】そういう使用にも耐えられるんだね。
【きだて】そうね、同じ物を複数持ち歩いて、それでパンパンになることもあるんだけど、それに応えてくれるのがこの容量だったりするので。
【他故】ふーむ。
【きだて】ペンケースを複数持ち歩くのも好きじゃなくて。結局、ガワが増えた分だけ荷物が重くなるんだから、それならひとまとめにしたほうが効率的。
【高畑】この容量だったら、持っているものは全部入るんだ。
【他故】欲しいものはみんなここにある、というかたちにできるわけだね。
――いいんじゃないですか。他故さんときだてさんが対照的で(笑)。
【きだて】毎回違いを浮き彫りにしないと気が済まないな(笑)。
【高畑】まあまあ、基本的にはそうですよね。
【他故】「みんな違って、みんないい」だ(笑)。
【高畑】今回のきだてさんのは、阿部さんが作りたくて作った製品だし、佐久間君のは自分が欲しくて作った手帳だし、カシオのは会社のプライドをかけて作った電卓だし、なんかそういうのもあるしね。
【他故】そういう考えに共感して使っているところもあるわけだからね。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。
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