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【シリーズ企画】独創的だから面白い、キングジムのヒット商品「①デジタルプロダクツ編」

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千葉 勇

1927年創業のキングジムは昨年90周年を迎えた。主力商品はキングファイルをはじめとするファイル類と、テプラ、ポメラなどの電子文具。ロングセラー商品も多いが、最近では、ニッチな市場を狙った独創的なアイデア溢れる新製品を次々と生み出す文具メーカーとして、世間の注目を浴びることが多くなっている。例えば先日発売した荷物を見守るデジタルツール「トレネ」は、これまでにない新しい発想がうけたこともあって、クラウドファンディングで目標の約10倍の支援を集めて話題になった。法人向けでは、扉の反対側に人がいることをライトで知らせてくれる「扉につけるお知らせライト」が好評だ。扉が急に開くことによる衝突の危険性に着目して開発したものだという。

【シリーズ企画】では、ヒット商品を連発するキングジムを隔週で3回連続取り上げる。第1回目は「デジタルプロダクツ編」として、同社が最近上市したユニークな製品をご紹介しよう。

安全対策グッズ「扉につけるお知らせライト」が目標の3倍の売れ行き

お知らせライト1.jpg
ライトの点滅で扉の反対側に人がいることを知らせる、「扉につけるお知らせライト」。オフィス、工場をメーンターゲットに初年度5000個の販売目標を掲げて、2017年6月16日に税抜8000円で発売した。

主な特徴は、①マグネット式で扉を挟むように両面に簡単に取り付けられる、②人感センサーが反応しライトが点滅、③表示シートが3種類から選べることの3点。

本体は親機と子機がコードでつながれていて、背面のマグネットでそれぞれ扉を挟むように取り付けるだけで、簡単に設置できる。しかも電源は乾電池のみなので設置場所を選ばない。サイズは親機が約W103×D30×H76mm、子機が約W103×D23×H76mm、そして両機をつなぐコードが長さ約160mm、質量は約140g(電池含まず)。電池寿命は約6カ月(1日あたり30回センサーが感知時)となっている。

「扉につけるお知らせライト」の開発に携わった山根涼氏は、「オフィスや工場の鉄製の扉で、反対側に人がいることに気づかずに勢いよく開けてしまった経験や、扉が急に開いてびっくりしたことがある方は多いと思います。このような“ヒヤリ・ハット”を防ぐことができないかと考えたのが開発のきっかけです。扉に人が近付くと人感センサーが反応してライトが点滅するため、扉を開ける前に扉の反対側に人がいることを察知でき事故を未然に防ぐことができる安全対策グッズです」と話す。

山根1.jpg「扉につけるお知らせライト」の開発に携わったデジタルプロダクツ課の山根涼氏

その言葉のとおり、扉が不意に開いてぶつかりそうになった経験がある人は多いだろう。それでは、これまではどのような対策がとられていたのだろうか。その疑問に対して山根氏は「これまでは、高い費用をかけて扉を窓付きに変更するか、扉に『ゆっくり開けてください』と書いた紙を貼って注意を促すなどといった対策が取られていたようです」と答えてくれた。一方「扉につけるお知らせライト」は、低価格で簡単に取り付けられる安全対策グッズのようだ。

「本体はマグネット式で扉を挟むように簡単に取り付けられるのが大きな特徴で、設置のために大がかりな施工をする必要がありません。そのため、あまりコストをかけずに簡単に安全対策ができます。本体価格が安いので、とりあえず1台購入してみて、あとから全フロアに設置されたケースもあると聞いています。また、磁性のある鉄扉なら特殊な扉を除けば設置できる仕様になっていますので、一般的なオフィスなどの鉄扉であれば、ほとんどの扉に設置可能です」と山根氏は説明する。

扉の施工を変更するには、数万円から数十万円もかかることを考えると、マグネット式で設置が簡単なうえ、税抜8000円という価格は確かに魅力的。そこで気になる仕組みについても聞いてみた。

「基本的な構成は人感センサーとLEDライトの組み合わせです。ポイントは扉に人がどこまで近付いたらセンサーが反応するか、その最適な距離や範囲を探ることでした。扉に対してまっすぐ人が歩いてくる場合、センサーが反応するまでの距離が遠すぎると扉を開けようとする人以外でも反応してしまったり、逆に近すぎても扉との衝突を防止できないことがわかりました。試作機を作って社内でテストを繰り返した結果、約1.5mが最適距離と判断しました。メインのLEDチップは親機、子機とも1つずつですが、光が反射する面の角度を調節したり、表示シートの裏側にシボを付けて光が拡散するようにしたことで、点ではなく面で光るんですよ」


山根2.jpgLEDライトについて説明する山根氏


本体の表示シートは、イラストで注意を促す「アイコンシート」、文字で注意を促す「注意文シート」、用途に合わせた表示内容をオリジナルでデザインできる「無地シート」の3種類(親機用、子機用各1枚)で、オフィスや商業施設など、利用シーンに合わせて選択できる。

初年度販売目標5000個のところ、発売からコンスタントな売れ行きを示し、これまでに目標の3倍のペースで売れているという。年度末・年度始めに向けて、オフィスや工場の安全対策、業務改善グッズとしてますます需要が増えそうな「扉につけるお知らせライト」である。

ニッチな市場を狙ったデジタルプロダクツたち

法人向けのデジタルプロダクツである「扉につけるお知らせライト」に続いて、個人向けのデジタルプロダクツを見ていこう。

まずは冒頭でも紹介した、自分の荷物を見守ってくれるモニタリングアラーム「トレネ」。
カフェなどの外出先で仕事をするオフィスワーカーが増えているが、荷物を置いたまま離席するのはちょっと心配だと感じたことがある方も多いだろう。そのような方に向けて開発されたのが「トレネ」で、スマートフォンと連携して荷物の"見守り"をしてくれる便利なツールだ。

使い方は、スマートフォンと「トレネ」を専用アプリで連携させ、荷物の上に「トレネ」を設置。スマートフォンを持ったまま「トレネ」から離れると自動的に警戒状態になり、荷物を動かそうとして「トレネ」に振動が加わると、警告のアラームが鳴る仕組みになっている。また、スマートフォンを持って「トレネ」に近づくと自動的に警戒状態が解除される(このとき「トレネ」に振動が加わってもアラームが鳴ることはない)。

昨年10月から実施したクラウドファンディングに続き、2月からはいよいよ一般販売も開始された、今注目の製品だ。

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離席したときに、自分の荷物を見守ってくれるモニタリングアラーム「トレネ」


女性にターゲットを絞ったデジタルプロダクツも展開している。ラベルライター「テプラ」を女性向けにアレンジしたガーリー「テプラ」や、マスキングテープに文字が印刷できる“こはる”はその代表例。

2017年5月19日に発売した“こはる”MP20は、専用のマスキングテープやフィルムテープに好きな文字やイラストを印刷して、簡単にラベルを作ることができる手のひらサイズのかわいいプリンター。インテリア雑貨のような北欧風デザインにこだわり、見た目をおうち型にしたのがポイント。“煙突”に見立てたカットボタンや、“窓”の形の液晶画面やプリントボタン、“ドア”の形をした電源ボタンなど、細部まで遊び心のあるデザインが女性にうけている。

さらに、搭載された絵文字やイラスト、フレームなどのデザインにも北欧風のモチーフを取り入れている。使用可能なテープは、“こはる”専用のフィルムテープやマスキングテープなど全46種類。

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「“こはる”MP20」と専用テープ


一方、男性にうけている代表的な商品と言えばテキスト入力に特化したデジタルメモ「ポメラ」だろう。最新機種の「ポメラ」DM200は、テキスト入力のしやすさを徹底的に追求したモデルで、スピーディーで誤りのない日本語入力を実現するため、同機向けに最適化した日本語入力システム「ATOK for pomera[Professional]」を搭載。パソコン版ATOKと同等の高性能な日本語変換エンジンの搭載によって、誤変換が削減できるほか、語彙数も従来機種の約3倍にアップしてスムーズな変換を実現している。

本体には、7インチワイド画面と、キーピッチ17mmのキーボードを採用することで、快適な入力作業を実現。また、電源には「ポメラ」シリーズ初のリチウムイオンバッテリーを採用した。連続駆動時間は約18時間で、モバイルバッテリーからの充電も可能。
さらに、「ポメラ」シリーズで初めて、無線LANを搭載した。これによって、「ポメラ」から直接クラウドストレージにファイルのアップロードが行えるようになった。そのほか、iPhoneやMacに標準搭載されているメモアプリと同期して双方向で文章編集することも可能にしている。

「ポメラ」DM200は、文具王・高畑正幸編集長もカバンに入れて愛用しているユーザーのひとり。パソコンよりも画面が見やすく、集中できるというのがその理由で、入力した文字数が分かりやすい点も気に入っているという。

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文具王・高畑編集長が愛用している「ポメラ」DM200

【シリーズ企画】第2回目はファイル編へと続く

このように、近年のキングジムはユニークなデジタル製品を多数市場に送り込んで私たちを楽しませてくれている。一方、同社の昔からの主力であるファイル製品についても、「なぜ今までなかったのだろう」「まさにかゆいところに手がとどく」といった新発想の製品が次々誕生している。

そこで次回はファイル編として、同社の特徴のあるファイルの数々を紹介する予定。お楽しみに。


【シリーズ企画/第2回】「②ファイル編」の記事へ。
http://www.buntobi.com/articles/entry/stationery/007427/

【シリーズ企画/第3回】「③デスク周りの便利グッズ編」の記事へ。
http://www.buntobi.com/articles/entry/stationery/007484/

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