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【シリーズ企画】独創的だから面白い、キングジムのヒット商品「②ファイル編」

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千葉 勇

『「ファイル」と「テプラ」のキングジム』と言われるくらい、この2つの商品は同社の2本柱で、双方ともその分野では圧倒的なシェアを誇っている。特に1964年に発売された「キングファイル」シリーズは、日本のオフィスにファイリングという習慣をもたらした偉大な商品で、これまでの販売実績は延べ5億冊以上。すでに日本のオフィスのスタンダードファイルとも言える存在として確固たる地位を築いている。その一方、同社では新たな視点による独自のアイデアを付加したファイルの開発にも積極的に取り組んでおり、昨年から今年にかけても、「カキコ」「コンパック」「フラッティ」といった個性あふれるヒット商品が相次いで生まれている。

【シリーズ企画】では、ヒット商品を連発するキングジムを隔週で3回連続取り上げる。第1回の「デジタルプロダクツ編」に続いて、今回は「ファイル編」として、最近注目を浴びている製品を中心にご紹介しよう。

新発想のクリアーファイル「カキコ」が大人気

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「カキコ」は、通常のクリアーファイルのようにポケットが袋状ではなく、上下についたフラップで書類を挟むように工夫したことで、書類を収納したままでも直接文字を書き込むことができる、新発想のクリアーファイル。一般的なクリアーファイルは書類の保管・閲覧を主な目的としているため、収納した書類に書き込みをしたいときは、一度ポケットから取り出さなくてはならないという手間があった。

その手間を解消したのが「カキコ」で、打ち合わせで使用する資料や授業で配布されるプリントまたは楽譜など、後から追記したりマーカーを引いたりする書類の収納に絶大な効果を発揮する。また、上下のフラップで書類を挟む形状のため、ファイル自体はA4サイズながら見開きでA3サイズの書類を収納することも可能。

さらに、裏表紙にはペンホルダーがついていて、書類とペンを一緒に持ち運ぶことができる。ポケット枚数は20ポケット(税抜600円)と40ポケット(同900円)の2種類で、カラーは赤、水色、ネイビー、黒、白の5色展開。

2018年2月16日に発売したところ瞬く間に人気が出て、初年度販売目標の7万冊を早い段階でクリアするのは間違いない状況で、目標の数倍は売れるのではないかと予想されている。

「カキコ」の開発に携わった井上彩子さんは、「クリアーファイルに保管した書類に何かを書き込みたいときは、一度ポケットから取り出さないといけないわけですが、何度も書いたりしまったりを繰り返しているうちに、そのまま書くことができたら便利だと思ったのが開発のきっかけです」と話す。

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「カキコ」の開発に携わった井上彩子さん


確かに、そのまま書き込めるクリアーファイルは便利だと思うが、そういった機能を持ったファイルはこれまでなかったのだろうか。その疑問に対して井上さんは「調べてみると、楽譜専用のファイルとして楽器店などが扱っている製品はありましたが、文具売り場で売られているものはありませんでした。そこでオフィスユーザーをメーンターゲットに、A4・A3兼用を必須の仕様要件にしたファイルの企画がスタートしました」という。

開発にはおよそ8カ月をかけた。中でもこだわったのが、書類を挟むフラップの形状とのこと。「カキコのフラップは上下とも直線ではなく、ゆるやかなアーチ状になっています。その理由は、書類をとじる際にフラップを持ち上げるとき、直線よりもアーチ状の方が手がかりがあって書類を差し込みやすいからです。しかも、アーチ形は真ん中が膨らんでいるので、中心部で書類をしっかり押さえることもできます。さらに、ページ内側のアーチの切れ込みを深くすることで、見開きでA3サイズの書類を入れる際も、フラップが邪魔にならないように工夫しました。他にも、フラップの幅は収納した書類に書き込む際の妨げになりにくいように、Wordの標準書式で印刷した際の上下の余白とほぼ同じ幅にしています。」

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書類の挟み方を説明する井上さん


フラップに挟んだだけで書類が落ちることはないのか心配する人もいるかもしれないが、試しにファイルを強くゆすってみたところ、書類が脱落することはなかった。一般的な使用では落ちない設計になっているので、安心して使用できる。

デザイン面では、表紙のカラーリングにこだわり、雑貨テイストの赤、水色、ネイビー、黒、白の5色展開とした。採用した色はオフィスやプライベート、また楽器演奏時など様々なシーンにマッチするカラーバリエーションとなっている。また、背見出しの部分は一般的なクリアーファイルに比べて短い設計にした。短くしたのは譜面台に立てたとき、背見出しが譜面台と干渉しないように配慮したため。しかも背紙の裏側を方眼にする細かい工夫も行っている。

クリアーファイル本来の目的である書類の保管・閲覧に加えて、後から文字を書き込むことができる新たな機能を付加したのが「カキコ」の最大の魅力。想定していたよりもユーザーは幅広いそうで、今後のラインアップの拡充にも期待したい。

ひと味違う個性的なファイルをピックアップ

まず紹介したい個性的なファイルは、A4サイズの書類をパラパラとめくって閲覧でき、持ち運ぶ時にはコンパクトに折りたためる、二つ折りクリアーファイル「コンパック」。これまでにもA4サイズの書類を二つ折りにして持ち運ぶことができるケースのような製品は存在したが、クリアーファイルで実現したのは同社の製品が初めて。A4サイズを半分にして持ち運べる携帯性と、ページをめくって閲覧できるという特徴を両立させた点がヒットの理由。書類をコンパクトに持ち運びたいというニーズはかなり大きなものがあるということだろう。

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A4を半分にして持ち運べる携帯性バツグンの「コンパック」

開発に携わった栗山朋之さんは「二つに折るクリアーファイルの開発は簡単にできると思っていた」と振り返る。しかし、開発を始めてすぐ、自分の考えが甘かったことに気づいたという。ファイルを単に二つに折るだけでは、どうしてもポケットがたわんでしまうという問題が発生したからだ。

そこから試行錯誤が始まった。その解決策を見つけるまでには2カ月を要した。何度も試作を繰り返した結果、栗山さんの出した答えは、ポケット長辺の上側半分だけを表紙に溶着して固定し、下側はレールを使って動くようにしたこと。この新開発の「二つ折り機構」によって、ファイルを二つに折ろうとすると、ポケットの下側だけがレールに沿って動き、ポケットのたわみを吸収することで、きれいに二つに折ることができる。この「二つ折り機構」は特許出願中だ。

「コンパック」というネーミングは、「コンパクト」と「パックする」を合わせて名付けた。背表紙は折りたたみやすくフラットにもしやすい、やわらかい素材を使用し、書類に折り目が付きにくい仕様にした。ポケット枚数は5ポケット(税抜500円)と10ポケット(同600円)の2種類で、カラーは6色(オレンジ、黄、水色、ネイビー、白、黒)展開。

「コンパック」の特徴については、文具王・高畑正幸編集長が『動画解説』で詳しく説明しているので、ぜひご覧いただきたい。

続いては、バッグインバッグとファイルの中間に位置するような商品「フラッティ」。近年、カバンの中を整理できるバッグインバッグに人気が集まっているが、同社が開発した「フラッティ」は、カバンの中で散らかりがちな小物類と書類を同時に整理収納できるのが特徴。一般的なバッグインバッグが小物類の収納を主目的としている中で、同社の製品はファイルで培ったノウハウを活かし、後ろ側に芯材を入れたのが注目ポイント。これによって、スリムなのにカバンの中でもしっかり自立し、紙類を入れた場合も折れずに保護できるようにした。前面が透明のため、中身が一目でわかって使いやすい。また、留め具はマグネット製で、カバンの中でもワンタッチで開閉が可能。

サイズは封筒、A5、A4の3種類で、カラーは、赤・黄・水色・ネイビー・白の5色展開。価格は封筒サイズが税抜780円、A5サイズが同880円、A4サイズが同1050円。

フラッティ.jpg芯材を入れることで、小物類だけでなく書類も保護できる「フラッティ」


結びに紹介したいのが、クリアーホルダーよりもしっかり書類を保護してくれる「スーパーハードホルダー」。クリアーホルダーの進化系ともいえるこの製品は一度使うと手放せなくなる超丈夫(スーパーハード)なホルダーだ。通常のクリアーホルダーの3倍の厚みがある丈夫なシートを採用しており、書類を入れてもたわまないから持ち歩きに最適。スリムなのでカバンや机に入れてもスッキリ収納できる。

また、裏面にペーパーストッパーが付いているため、机のない場所でも下敷きボードにして立ったまま筆記できる。マチ付きや2ポケットタイプ、インデックス付きなど、様々なタイプをラインアップしており、用途に合わせて使い分けることができる。



スーパーハードホルダー.jpgしっかり書類を保護できる「スーパーハードホルダー」は、下敷きボードにして立ったまま筆記できる

【シリーズ企画】3回目はデスク周りの便利グッズ

今回はちょっと個性的なファイルをピックアップして紹介したが、これらはまだほんの一部にすぎず、機能性ファイルはこのほかにも数多く存在する。まさに痒い所に手が届くといった表現がぴったりなファイルもあるので、興味のある方は同社のホームページを覗いてみることをおすすめしたい。
http://www.kingjim.co.jp/products/file

次回はデスク周りのグッズ編として、同社が最近力を入れているユニークで便利なデスク周りのグッズの数々を紹介する予定。お楽しみに。


【シリーズ企画/第1回】「①デジタルプロダクツ編」の記事へ。
http://www.buntobi.com/articles/entry/stationery/007365/

【シリーズ企画/第3回】「③デスク周りの便利グッズ編」の記事へ。
http://www.buntobi.com/articles/entry/stationery/007484/

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